『アンデルセン傑作集 マッチ売りの少女/人魚姫』大人だからこそ読みたいアンデルセン童話!

イギリス・ドイツとドストエフスキー

『アンデルセン傑作集 マッチ売りの少女/人魚姫』大人だからこそ読みたいアンデルセン童話!

前回の記事ではドイツの大作曲家メンデルスゾーンとデンマークの童話作家アンデルセンのつながりについて書かれた『芸術家たちの秘めた恋―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代』をご紹介しました。

アンデルセン童話と言えば誰しもが子供の時に絵本やアニメなどでお世話になった経験があると思います。私もその一人です。メルヘンチックだけれどもどこか切なさを感じさせるストーリーは一度読んだら忘れられない印象を残しますよね。

前回の記事ではそんなアンデルセンとメンデルスゾーンが同時代人であることをお話ししました。私自身、アンデルセンはもっと昔の人だと思っていたのでまさか19世紀中頃という、割と最近の時代に活躍していたとは驚きでした。この時代の同時代人といえばバルザックやユゴー、ディケンズ、ドストエフスキーもそうです。グリム童話のグリム兄弟もこの時期です。

そして今回はそんなアンデルセン童話を、大人になった今だからこそ再び読んでみようということでこの本を手に取ってみました。

私が読んだのは2015年に新潮社より発行された天沼春樹訳『アンデルセン傑作集 マッチ売りの少女/人魚姫』です。

早速この本について見ていきましょう。

雪の降る大晦日の夜、あまりの寒さに少女はマッチをともして暖をとろうとした。すると目の前に不思議な光景が浮かび上がってくるが……。

人間の王子を好きになった人魚姫が犠牲にしたものは?世界中で親から子へと今も親しまれているアンデルセンの物語。その中から『親指姫』『赤い靴』『ある母親の物語』『木の精のドリアード』『歯いたおばさん』などヒロインが活躍する15編を厳選。

新潮社、アンデルセン、天沼春樹訳『アンデルセン傑作集 マッチ売りの少女/人魚姫』裏表紙

こちらが目次になりますが、まずこの本で最初に顔を合わすのは『親指姫』です。

この作品もものすごく有名ですよね。私も読んだ記憶があります。

そしていざ読んでみると、すぐに驚くことになりました。

言葉自体は易しいですし、物語もヒキガエル、モグラ、ツバメたちと人間のように言葉を交わす童話的なものです。ですがその物語に何とも言えない奥深さを感じるのです。子供向けだと油断しているとびっくりすることになります。ここ数年私はひたすら本を読んできましたが、それらの本と全く遜色がないくらい、いや、童話として語られているからこそその奥深さがより感じられるような気がしました。

語りもストーリーも易しいのです。ですがそこで親指姫や動物たちの姿を通して語られる人間の心がなんとも言えない味があるのです。これはぜひ読んで頂きたいです。大人だからこそわかる物語の繊細さがあります。大人になって色んな経験をし、人生について様々な思いがあるからこそ見えてくるアンデルセン童話の味わい。

これはぜひおすすめしたいです。私は読み始めてからあっという間に引き込まれてしまい、そこからもう止まりませんでした。一つ一つの作品も短いのでテンポよく読み進めることができるのもありがたいです。

そしてもう一つだけ作品を紹介します。『人魚姫』ですね。

これはディズニーの『リトルマーメイド』の原作になった作品です。ディズニーとアンデルセンの原作との違いを感じながら読み進めるのもとても面白かったです。アンデルセン童話の方はやはりアンデルセンといいますか、かなり切ない終わり方です。

何とも言えない切なさを描くのにこのアンデルセンほど巧みな作家はいないのではないでしょうか。これを子供の時に読むことの意味は計り知れないものがあるかもしれません。大人になって読み返して気付いたのですが、本当に繊細な感受性が溢れている作品ばかりです。

アンデルセン自身はあまり男前といったわけではなく、無骨な大男といったルックスだったそうです。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805-1875)Wikipediaより

しかもスウェーデンの歌姫ジェニー・リンドに激しい恋をしていたことは前回紹介した『芸術家たちの秘めた恋―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代』の中でも説かれていました。彼は猪突猛進型でかなり激しい感情の持ち主だったそうです。アンデルセン自身、結局恋は実らず、こんなに真面目に熱烈に愛しているのに報われないという苦しみに悶えていたそうです。そんな感情が彼の童話にも反映されているとも言われています。

たしかにそう言われてみれば今回紹介した『親指姫』に出てくるツバメ君も美しい親指姫に恋をし献身的にお世話をしますが、最後に親指姫は美しい王子様とあっという間に結婚してしまいます。このツバメ君もなんとも切ないんですよね・・・(この時はまだジェニー・リンドと出会っていませんが、彼にはそうした性格がすでにあったことがうかがえます)

猪突猛進、激情型の大男アンデルセンがこんなに繊細な物語を書いているというのは驚きでしたが、どんなことにも繊細に反応してしまう彼の敏感な心があるからこそ彼は激情家にならざるをえなかったのではないかとも思ってしまいました。

アンデルセン童話はぜひ子供たちに聞かせてあげたいなと心から思います。

そして同時にそれを読み聞かせる大人の側にも素晴らしい経験になるということも。

アンデルセン童話は想像していたよりもはるかに奥深い作品でした。これは大人だからこそ味わえる絶品でもあります。一つ一つの物語もコンパクトで、語りも易しく読みやすい。ちょっとした移動時間でも気楽に読むことができます。

これはぜひぜひおすすめしたいです!ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。きっと驚くような体験になると思います。この切なさ、繊細な感受性をぜひ味わってみて下さい。本当に面白いです。

以上、「『アンデルセン傑作集 マッチ売りの少女/人魚姫』大人だからこそ読みたいアンデルセン童話!」でした。

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