『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』ドストエフスキーも愛した『システィーナの聖母』を描いたルネッサンスの天才のおすすめ入門書!

クラシック・西洋美術から見るヨーロッパ

『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』ドストエフスキーも愛した『システィーナの聖母』を描いたルネッサンスの天才のおすすめ入門書!

今回ご紹介するのは2009年に東京美術より発行された『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』です。

私はこれまでひのまどかさんの「作曲家の物語シリーズ」でヨーロッパの音楽の歴史をたどってきました。

この伝記シリーズは作曲家の人生だけではなく時代背景まで詳しく見ていける素晴らしい作品です。そしてその中で出会ったのがメンデルスゾーンであり、そこから私はイギリスの大画家ターナーに興味を持つようになりました。

そしてこの『もっと知りたいターナー 生涯と作品』がこれまた面白く、これを読んで今度は絵画を通してヨーロッパの歴史、思想、文化を見ていきたいなと私は思ってしまいました。

正直、本を読んでいくスケジュールがかなり押していて厳しい状況なのですが、東京美術さんの絵画シリーズ「ABC アート・ビギナーズ・コレクション」は内容が濃いながらコンパクトに絵画を学んでいけるので今の私にはぴったりなような気がします。

では、早速この本について見ていきましょう。

ルネサンス三大巨匠のひとり、ラファエッロの全貌を紹介した初めての入門書を刊行!

●「聖母子の画家」だけではない、意外と知られていないマルチな才能
ラファエッロは素描家、神話画家、肖像画家としても高く評価されています。本書はその多才な仕事ぶりをテーマ別に分析します。
●ヴァチカン観光で誰もがうちのめされる壮麗な壁画の全体像を収録
ルネサンス美術の頂点ともいわれるヴァチカン宮殿の幅8m級の壁画は観光スポットとしても人気。本書はその壁画を全て収録した唯一の入門書です


Amazon商品紹介ページより
ラファエロ・サンティ(1483-1520)Wikipediaより

ラファエロは言わずもがなですが、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチと並ぶルネッサンスの巨匠です。

『システィーナの聖母』Wikipediaより

ラファエロの代表作『システィーナの聖母』はあのドストエフスキーも愛していた作品です。

著者はラファエロとこの本について「はじめに」で次のように述べています。

イタリア料理のレストランの壁に描かれた、二人の天使の可愛らしい姿を誰しも目にしたことがあるだろう。彼らは暇をもてあましたように、頬杖をついたり両手を組んだりしながら、上のほうを見上げている(下図)。彼らの姿は「愛くるしいもの」のアイコンとなって、ファンシーなレターセットやポスターなどで繰り返し再生産されている。かように、ラファエッロの絵から抜け出たイメージは私たちのまわりにあふれかえり、そのついでにラファエッロの名も、日本でもっとも知られたルネサンス画家のひとりとなっている。

しかし実のところ私たちは、その画家が何者であるかはとんど知らない。生きている間に世界を驚かせ、またたく間にこの世を駆け抜け、死後は数世紀にわたって美の規範となったものの、その後評価が失墜した人であることなど、知る人はほとんどいない。本書は、ラファエッロの知名度と理解度の間にあるこの激しいギャップを、少しでも縮めることを目的としている。そして、彼とその作品世界の真の姿への、平易で適切な導入となりたいと願っている。


東京美術、池上英洋『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』P2

ここで語られる2人の天使はまさに上で紹介した『システィーナの聖母』の下部に描かれたものです。この2人は世界で一番有名な天使二人組かもしれませんね。

ラファエロといえば聖母子のイメージが強いですが、そのことについて著者は次のように述べています。

『小椅子の聖母』Wikipediaより

ラファエッロは今日、優美なる聖母子像の画家として一般に知られている。この評価は、すでに当時からラファエッロに対して与えられていた。しかし彼の聖母子が賞賛された理由は、それらが聖母の甘い優しさと幼児キリストの愛くるしさとを有していただけにとどまらない。それ以上に、彼の作品が、当時聖母子像に望まれたすべての要素を満たしていた点と、同時に革新的な目新しさをも備えていた点こそ重要である。

上下分割などの大胆な画面構成。三角形にきれいにおさまる秩序正しい幾何学的構図。そして、ときに激しいほどの手振りや姿勢。豊かな感情表現と、親子間の親密な関係。そして暗い運命の暗示。ラファエッロはレオナルドら先人から多くを学び、それを独自の世界へと昇華させていった。

東京美術、池上英洋『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』P5

この本ではここから一枚一枚の絵を解説付きでじっくりと見ていくことになります。ラファエロの生涯を辿りながら時代順に作品を見ていくので作風の変化なども感じることができます。

私は2019年にバチカンを訪れ、その時にラファエロの絵画と何度も対面しました。

この本では有名な上の作品の解説も詳しく掲載されています。

そして私がバチカンで対面した中でも特に印象に残っているのがラファエロの最後の作品『キリストの変容』でした。

『キリストの変容』撮影上田隆弘

この絵についての解説も見ていきましょう。

遺作となった作品。のちに教皇クレメンス七世となるジュリオ・デ・メディチ枢機卿は、1515年にナルボンヌの大司教となった。2年後、枢機卿はラファエッロと、ミケランジェロ一派の領袖であるセバスティアーノ・デル・ピオンボに、ナルボンヌ大聖堂のための作品をそれぞれ注文した。ライヴァル同士を競わせようとしたこの企みに対し、ラファエッロは晩年の作品には珍しく、ほとんどをひとりで仕上げた。上半分にキリスト変容場面、下半分に悪魔に憑かれた少年が癒される場面が展開されている。いくつか残っている習作(うち1枚が7頁上図参照)によれば、ラファエッロはいつものように試行錯誤を繰り返し、そしていつものように、完成作は大いなる飛躍の証明となった。最初キリストは地面に立っていたが、完成作では飛翔している姿に変えられた。下半分ではドラマチックな叙述がくりひろげられ、少年は苦しみながらもキリストを指さして両場面をつなぐ役割をはたす。わずか37年の短い生涯のうちに、ひとりの画家にみられるものとは思ないような激しい展開を、ラファエッロがたしかに遂げていたことかわかる。


東京美術、池上英洋『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』 P76

この絵を観て感じたのはイエスと弟子たちの浮遊感でした。他の美術館でもこの絵のレプリカを観る機会があったのですが、やはりレプリカだとその絶妙な浮遊感が失われていたのです。何がどう違うのかはわからないのですがオリジナルのあの何とも言えない軽やかさは天才ラファエロだからこそ生み出せる驚異の技術なのだなということを感じました。

オリジナルを生で観た衝撃もさることながら、レプリカを観て比べた時の驚きがとても印象に残った作品でした。

そんなラファエロの作品や生涯を辿る入門書として本書は非常におすすめです。

以上、「『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』ドストエフスキーも愛した『システィーナの聖母』を描いたルネッサンスの天才のおすすめ入門書!」でした。

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