おすすめSF・ディストピア小説16作品一覧~SF・ディストピアから考える現代社会
おすすめSF・ディストピア小説16作品一覧~SF・ディストピアから考える現代社会
当ブログでSF小説を紹介するきっかけとなったのはディストピア小説の王道中の王道ジョージ・オーウェルの『一九八四年』がきっかけでした。
私がこの作品を初めて読んだのは10年ほど前の学生時代でした。まだ20歳そこそこで世界のこともあまりわかっていなかった私でしたが、この本の恐ろしさに強烈な印象を受けたのを覚えています。
今回久々に『一九八四年』を読み直したわけですが、今度の『一九八四年』は前回とは全く違った恐怖を感じることになりました。
と言うのも、私は最近、ソ連やナチス、独ソ戦の歴史を学び、全体主義の恐怖をこれでもかと感じていたからです。
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できることならばすべての記事を紹介したいところですがそれもできません。
ただ、ソ連やナチスの歴史の学んだ上で『一九八四年』を読んですぐに気づいたのは、『一九八四年』が単に未来のディストピアを予言して描いたものではなく、当時現実に起こっていたことを驚くべき正確さでもって描いていたということでした。
もちろん、テクノロジーの問題がありますので全てが全て現実通りというわけではありません。しかしビック・ブラザー率いる党の理念や行動原理はまさにソ連の全体主義とそっくりであることを感じます。
SF小説はその小説世界を通じて私たちの「今」を問うてきます。
「今」、私たちはどのような世界に生きているでしょうか。
私はコロナ禍が始まった頃からこのことに対し特に恐怖を感じています。
皆さんはどう思いますか?『一九八四年』を読んだ方には特に聞いてみたいです。私は『一九八四年』をフィクションだからと見過ごすことができません。歴史を振り返って見れば、この小説は単なる未来のディストピアで済ませられるものではないのです。いつ私たちの前にビック・ブラザーが現れてもおかしくないのです。
そして恐いのは、ビック・ブラザーがビック・ブラザーとわからないように現れてくるということも大いにありえるということなのです。それこそ知らぬ間に管理社会が完成することがありうるのです。
SF小説はその面白さは言うまでもありませんが、現在を生きる私たちに大きな問いを投げかけてきます。
楽しんで読むもよし。
今の世界をじっくり考えながら読むもよし。
色んな楽しみ方ができるのがSF小説のいいところだと思います。
それぞれのリンク先ではその本についてより詳しくお話ししていきますので興味のある作品があればぜひそちらもご覧いただければと思います。
では早速おすすめの作品を紹介していきましょう。
オーウェル『一九八四年』
『一九八四年』は言わずと知れたディストピア小説の最高峰です。
『一九八四年』は党の体制に疑問を抱く主人公ウィンストンを軸に物語が進行していきます。どうしても党のあり方に順応できない彼は異端者です。本人も「自分がすでに死んでいる」存在であることを感じています。
そんな異端者ウィンストンの目を通して読者の私たちもその社会の異様さを見ていくことになります。
オーウェルが巧みだなと思うのはウィンストンを孤独な異端者にすることで、読者である私たちも同じ異端者の目でその世界を見ることができる点です。ウィンストン以外の人間は彼らが生きる世界をおかしいとは思っていません。彼らはビック・ブラザーの教えを忠実に守り、もはやそれに対し全く疑問を持たないように教育され、それが完全に身に沁みついているのです。もしそんな彼らの目を軸にウィンストンを眺めていったなら全く違った雰囲気の作品になったと思います。(それはそれで恐ろしいものが出来上がったでしょうが・・・)
また、この小説の優れたところは全体主義のメカニズムを詳細に解説していく点にあると思います。いかにして国民の意識をコントロールするか、異端者をあぶり出すか、そうしたプロセスが詳細に語られます。
また、何より恐ろしいのは異端者たるウィンストンをただ捕まえて殺そうとするのではなく、彼の精神を完全に書き換え、善良なるビック・ブラザーの徒に作り変えてしまおうとする党のあり方です。執行官のオブライエンが淡々とウィンストンを追い詰め、改造していくシーンは戦慄ものです。
異端者がある日突然消えることはソ連時代には日常茶飯事でした。この作品ではそれを「蒸発する」と表現していますが、ウィンストンの改造は蒸発のさらなる先を示しています。
この作品は単に未来のディストピアを想像して書かれたものではありません。実際にソ連やナチスの全体主義で行われていたことが描かれています。
『一九八四年』は非常に恐ろしい作品です。ですがこれほど重要な作品もなかなかありません。現代の必読書の一つであると私は思います。ぜひ、読んで頂きたい作品です。
オーウェル『一九八四年』あらすじと感想~全体主義・監視社会の仕組みとはー私たちの今が問われる恐るべき作品
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オーウェル『動物農場』
私は『一九八四年』と同じく、この作品も10年ほど前の学生時代に初めて読みました。その時の衝撃は今でも忘れません。
特に物語の最終盤で豚が二足歩行で行進するシーンはあまりのショックで、その時の驚きは今でも鮮明に覚えています。
そして時を経てソ連の歴史を学んでからこの本を改めて読み返してみると、この作品がいかに優れた作品かがよくわかりました。1917年のロシア革命からレーニン、スターリン体制のソ連の動きをこれほどうまく描写し、風刺する技術には驚くほかありません。
この物語はレーニンを連想させるメージャー爺さんという豚の演説から始まります。
敵を作り出し、そしてそれさえ倒してしまえば理想郷がやってくる。彼は動物たちにそう説きます。そしてそれが正義であることも・・・
崇高な理想を語り、動物たちに夢を見せ、憎むべき敵さえ倒してしまえば理想郷がやってくると豚たちは述べます。しかし、農場主を倒した後、結局その座に収まったのは豚たちで、動物たちは相変わらず、いやもっとひどい生活を送ることになるのです。
この『動物農場』を読んでいてつくづく思うのは、甘い言葉や憎悪を煽る言葉に気をつけねばならないということでした。そしてまた気づくのは豚たちの話術の強さです。彼らの雄弁によって農場の動物たちは「おかしいな」と感じつつもついつい丸め込まれてしまいます。そして気付いた頃には暴力で支配されてしまうのです。しかもそうなったにも関わらずまだ彼らの巧妙な偽装のトリックに騙され続けるのです。
『動物農場』は150ページほどの短い作品です。文体も読みやすく、一気に読めてしまいます。そんな読みやすい作品でありながら驚くほどのエッセンスが凝縮されています。
『一九八四年』は大作ですし、内容的にも読むのが大変なのも事実。挫折された方も多いかもしれません。そういう方にはぜひこの『動物農場』をおすすめしたいです。もちろん、『一九八四年』とセットで読むのがベストですがこの一冊だけでも衝撃的な読書になること請け合いです。
非常におすすめな一冊です。今だからこそぜひ読みたい作品となっています。
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オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』
ディストピア小説といえばオーウェルの『一九八四年』が有名ですが、この作品はなんと、その17年も前に発表された作品です。1932年の段階でこの作品が書かれたことにまず驚きました。
そして『一九八四年』が徹底した管理社会の構築によって完成された暗い世界を描いているのに対し、ハクスリーの『すばらしい新世界』ではそんな暗さがありません。そこに生きる人たちはあくまで「幸福」であり、『一九八四年』のような徹底した監視すら必要ないのです。ここが大きな違いなのですが、不気味な「幸福さ」とその幸福がいかにして出来上がっているかに私たち読者は恐怖や違和感を覚えることになります。
この作品で特に印象に残るのがソーマという薬です。
これがあればストレスとはおさらば。嫌なことはさっぱり忘れることができます。しかも副作用もなし。
ですのでこの世界に生きる人達は皆ストレスとは無縁です。しかも余暇も充実し、病気も無縁。テクノロジーのおかげで60歳まで若者の体のままでいられ、性的な楽しみに耽り続けることを奨励されます。そして実際に皆それに満足し楽しんでいます。(60歳になれば皆ぽっくり死ぬようプログラミングされていますが誰もそれを恐れていません。死を恐れないようにもプログラミングされているのです)
これだけ聞けばたしかに「すばらしい新世界」、「ユートピア」です。
しかしこれがどのように成し遂げられているかとなると、これが頗る不気味なのです。
この作品はディストピア小説の元祖であり、SFファンのみならず全ての人におすすめしたい1冊です。『一九八四年』は読んでいてかなり辛くなりますが、この作品はそこまでどぎついものはではありません。(とはいえかなり考えさせられますが・・・)
『一九八四年』に挫折した人でも読みやすい作品となっています。
幸せとは何か、ユートピアとは何か、もしソーマという苦しみを忘れられる魔法の薬があったらどうなるのだろうか、それをはたして自分は使うだろうか、仮に使ったとしてすべての苦しみを忘れて忘我恍惚状態になることが人生と言えるのだろうか、などなど思うことはそれこそ無数に出てきます。『一九八四年』もものすごく頭がフル回転になる作品ですがそれとはまた違ったフル回転をこの作品ではすることになります。
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レイ・ブラッドベリ『華氏451度』
先に申し上げておきますが、この本はものすごいです・・・!前半部分はその世界観に入り込むのが難しく、読むのが辛かったのですが中盤くらいから一気に引き込まれてしまいました。そこから怒涛のように読み耽り、読み終わった瞬間には放心状態になるほどでした。しばらく何もできないくらいの読後感です。これほどまでの読後感は久々でした。それこそ、真っ白。完全にこの作品に憑依されてしまったかのような感覚でした。
この作品は書物が禁止された未来の世界が舞台で、主人公はそんな書物を焼き尽くす仕事「昇火士」として働くモンターグという男です。
書物を焼いている時点で想像できると思いますが、この世界は思想統制された管理社会です。何が良くて何が悪いかは国によって決められ、人々は小さな頃から徹底して教育されています。そして人々に対しては「素晴らしい」娯楽や気晴らしも与えられています。この辺りは『一九八四年』よりも『すばらしい新世界』に似ている世界観です。徹底した監視社会と憎悪と不安で人々を支配するオーヴェル的世界観ではなく、人々の苦悩を消し去り、幸福な世界を夢見させる方向で管理していく世界ですね。
ですが、そんな世界にも当然、異端者は存在します。そしてそんな者たちは概して書物を持っています。昇火士はそんな書物を探し出し、それを焼き尽くすことを任務としています。そして異端者を見つけ出すことも当然ながら任務とされます。
主人公のモンターグも昇火士ですから彼もこうした世界観に従順な人間でした。しかし、彼はこの世界に少しずつ違和感を感じていました。妻はこの世界にどっぷりで彼のことなどまったく理解しようともしません。そんなすれ違いも彼のことを蝕んでいました。
そして上のあらすじにもありましたように、ある少女との出会いによって彼の歯車が動き出します。これまで当たり前だと思っていた世界の奇妙さに気づいてしまったのです。当たり前のように「本は悪だ」と焼き払っていた事実に彼はおののくことになります。そして彼はついに禁じられた行為に走ることになり・・・
というのがこの作品の大まかな流れとなります。
この作品は『一九八四年』、『すばらしい新世界』と並ぶSFディストピア小説の傑作です。ぜひ手に取ってみてはいかかがでしょうか。非常におすすめです
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フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
この作品は有名なSF映画『ブレードランナー』の原作になります。
SF映画の金字塔として知られるこの作品ですが、その原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』も非常におすすめな小説となっています。映画と原作はストーリーもかなり違うので、全く別の作品として読むことができます。そして小説版もものすごくいいんです・・・!映画とはまた違った魅力がこの小説に詰まっています。
映画『ブレードランナー』は圧倒的な映像美やアクション、構成でSF映画の傑作という地位を不動のものとしました。
ですがこの原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』はそういう視覚的な美しさや手に汗握るアクションというよりは、ダークな空気感の中、自分の心とじっくりと向かい合っていくような「静的な」作品となっています。
これは本ならではの魅力であると私は思います。
じっくりと著者の語る言葉に聴き入り、それを反芻していく・・・。そうして自分の心の奥底にぽたっぽたっと雫が垂れていくような、そんな奥深い感覚を味わえるのが小説の魅力ではないでしょうか。
この作品もぜひぜひおすすめしたい作品です。SFの王道中の王道です。ぜひこの面白さ、奥深さを体感して頂けたらなと思います。
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W・ゴールディング『蠅の王』
さて、ここでご紹介する『蠅の王』ですがこれまた凄まじい作品となっています。
私がこれを初めて読んだのが5年前の2017年。そして今回5年ぶりにこの作品を読み返したのですがこの本は一度読んだら忘れられないシーンばかりであることを改めて実感しました。5年ぶりであるにも関わらずほとんどその流れや重大なシーンを覚えていました。
この作品を初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。
最初は子供たちだけで楽しく暮らしていたはずだったのがいつの間にそれが崩壊していく。そして理性的で善良な子たちが野蛮で暴力的な力に屈していく過程は読んでいて非常に辛い気持ちになります。
読んでいると本当に胸の奥がむかむかしてきます。善良な子供たちがなぜ暴力的な子供たちからそんなに苦しめられなければならないのかと本気で憤りが湧いてくるのです。はっきり言います。この本は読むのが辛いです。笑って楽しむ作品ではありません。
ですが人間の本質を考える上でこの上ないインパクトを与える作品であることは間違いないです。
人間は何にでもなりうる。理性的にも獣的にも。
はじめは仲良しだったはずの子供たちがなぜ殺人まで犯してしまったのか。そのメカニズムをこの上なく的確に暴き出している作品です。
正直、この作品については思うことがあまりに多すぎてなんと書いていいのかもうわかりません。
ゴールディングの寓意が効きすぎてどこから何を話していいのか、もはやわからないのです。パニック状態です。
それほどこの作品は強烈です。
ぜひこの作品を読んでその衝撃を味わって頂けたらなと思います。非常におすすめな作品です。
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野島一人『メタルギア ソリッド サブスタンスⅠ シャドーモセス』
この作品は20世紀最高のシナリオと称えられたゲーム『METAL GEAR SOLID』のノベライズ作品です。
『メタルギア』シリーズは小島秀夫監督の下制作されたゲームで、そのシナリオは冷戦や反戦、反核をテーマに描かれています。
そして実際にこのゲームがどのようなものであるかは以下の動画を観て頂ければ早いと思います。
さて、このゲーム『メタルギア』シリーズですが、実は私はプレイしたことがありません。
ですがこのシリーズの大ファンであります。
これはどういうことかというと、メタルギアシリーズはノベライズ(小説化)されていて、そのシナリオを作品として読むことができるのです。
私がこのメタルギアシリーズと出会ったのは元々は伊藤計劃さんの『虐殺器官』というSF小説がきっかけでした。そしてその伊藤計劃さんが『メタルギアソリッド4 ガンズ オブ ザ パトリオット』のノベライズ作品を発表していたのを知り読んでみたのが始まりでした。そこからメタルギアシリーズにはまるのは、それこそあっという間のことでした。
冷戦、核、遺伝子。
こうしたテーマを基にこの作品は創り上げられることになりました。20世紀最高のシナリオと呼ばれる所以はこうした壮大なテーマと、ストーリーそのものの面白さが完璧に融合したからこそでありました。
著者の野島一人さんの語り口も非常に素晴らしいです。単にゲームのシナリオを追っていくのではなく、ノベライズならではの仕掛けで私たち読者を楽しませてくれます。最初はその形式に私も戸惑ったのですが、読み進めていくにつれてそこに込められた意味を知り、「これはすごい!」と唸ってしまいました。
そして皆さんにぜひおすすめしたいものがあります。
この映像はゲームの『メタルギアソリッド』を編集して一本の映画のように構成したものになります。
ゲームをプレイしたことのない方にもこれはぜひともおすすめしたいです。
先程もお話ししましたが、私もこのゲームをプレイしたことがありません。私はノベライズからメタルギアシリーズにはまった人間です。
そんな私でもメタルギアの世界観を知ることができた素晴らしい映像です。ものすごく面白いです。ゲームの域を完全に超えています。見ればその面白さ、深さにきっと驚くと思います。
ノベライズの作品と合わせてぜひぜひこの映像もおすすめしたいです。
野島一人『メタルギア ソリッド サブスタンスⅠ シャドーモセス』あらすじと感想~20世紀最高のシナリオを小説化!
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野島一人『メタルギア・ソリッド・サブスタンスⅡ マンハッタン』
さて、この野島一人著『メタルギア ソリッド サブスタンスⅡ マンハッタン』ですが、はじめに言わせて頂きます。
この本はすごいです・・・!
メタルギアシリーズの中で私が最も強烈なインパクトを受けたのがこの作品です。シナリオがあまりにえげつない・・・!
この作品で語られるメッセージはあまりに強烈です。
こんなに恐ろしい作品はなかなかありません。
ゲームをプレイしたことがない方にもぜひこの作品は見て頂きたいものとなっています。
前作の舞台はアラスカの孤島でしたが、今作は文明の中心、ニューヨークを舞台に世界を揺るがす戦いが行われます。
このノベライズ作品は前作の『メタルギア ソリッド サブスタンスⅠ シャドーモセス』と完全に繋がっている形式で語られます。
前回の記事でもお話ししましたが、著者の野島一人さんの語りは絶品です。
ゲームのノベライズといっても、単にシナリオをなぞっただけのものではありません。このゲームに込められた深いメッセージを絶妙に汲み取り、その語りに還元しています。
そして前作と同じく、この作品も映像で観ることができます!
5時間強の超大作ですが、もう最高です・・・!面白過ぎます・・・!
観て下さい!それしか言えません!信じられないほど完成度の高い作品です!
『メタルギア・ソリッドⅡ』は私にとって、とても思い入れのある作品になりました。
この作品の深さをここで詳しく解説していければ一番いいのかもしれませんが、今の私にはその力量も、時間もありません。正直、語り尽くせないほどの魅力、メッセージがこの作品にはあります。
とにかく読んで下さい!
とにかく観て下さい!
とにかく読んで、観て下さい!
これに尽きます!
メタルギアソリッドシリーズで私が最もインパクトを受けた作品です!
野島一人『メタルギア・ソリッド・サブスタンスⅡ マンハッタン』あらすじと感想~迫りくるAI支配!私たちの現在を問う恐るべき作品!
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長谷敏司『メタルギアソリッド スネークイーター』
上の記事で紹介したメタルギアソリッドⅠ・Ⅱの前史にあたるのがこの作品になります。
メタルギアソリッドシリーズの主人公はタイトル通りソリッド・スネークなのですが、このシリーズを通して最も重要な人物と言ってもいい存在が今作の主人公ネイキッド・スネークになります。
ネイキッド・スネークは後にビックボスと呼ばれ、このシリーズにおいて決定的な役割を演じます。
メタルギアシリーズの根幹をなすこの人物は何者なのか。そもそも「スネーク」という存在とはいかなるものなのか。
この作品も名作中の名作です。いや~素晴らしい!
メタルギアソリッド作品はすべてそうなのですが、何と紹介してよいのか本当に難しい!あまりに盛りだくさんでどこをどう紹介すればいいのか困ってしまいます。
ですが、この作品も例のごとく映像で観ることができます。
前作の『メタルギア・ソリッド・サブスタンスⅡ マンハッタン』では、戦慄するほどの恐怖を体感することになりましたが、今回紹介する『メタルギア ソリッド スネークイーター』は如何ともしがたい現実に対する切なさを感じることになります。
ものすごく面白い作品です。この作品も何度も読みたい私の大好きな作品です。
ぜひぜひ映像と合わせて楽しんで頂けたらなと思います。非常におすすめな1冊です。
長谷敏司『メタルギアソリッド スネークイーター』あらすじと感想~MGSの前史ービックボスの物語はここから始まる
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伊藤計劃『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』
この作品はメタルギアシリーズの物語のフィナーレを描く作品です。これまで語られてきた伏線が回収され、謎に満ちた闘いに決着がつけられます。
ゲームのシナリオの素晴らしさはもはや言うまでもないのですが、このノベライズの最大の魅力は著者の伊藤計劃さんの語り口にあります。伊藤計劃さんはメタルギアシリーズの熱烈なファンでした。そんな伊藤計劃さんのメタルギア愛が溢れたノベライズがこの作品になります。
このノベライズは主人公ソリッドスネークの相棒、オタコンの視点から語られる物語となっています。
私はこの語りにイチコロでした。
繊細でナイーブな感性を持つオタコンの視点から見たメタルギアの世界。
伊藤計劃さんらしさが出ていながらこれほどまでにメタルギアの世界を忠実に再現させるというのは驚異としか言いようがありません。驚くべき傑作です。
この作品は伊藤計劃さんのあとがきにもありましたように、メタルギアと初めて出会う方でも読める作品となっています。過去のエピソードなどもうまく盛り込まれていて、その流れをわかりやすく知ることができます。私もこの作品が初めてのメタルギア体験でした。ですが、感動して泣いてしまうほどこの作品に引き込まれてしまいました。本当に素晴らしい作品です。
そしてこの作品もYouTubeで観ることができます。
8時間弱の超大作ですが、これも必見の映像です。
泣きます。私は何度観ても泣いてしまいます。もう最高です。
実は伊藤計劃さんはこのノベライズの執筆後間もなく病気で亡くなってしまいます。
そうしたことも感じながらこの作品を読み、観ていくとより重みが感じられます。
私がメタルギアシリーズと出会うきっかけをくれたのがこの伊藤計劃さんの『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』でした。私にとって大切な一冊になりました。伊藤計劃さんの思いが詰まったこの本は私の宝物です。
ぜひぜひおすすめしたい作品です。
伊藤計劃『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』あらすじと感想~『虐殺器官』の著者による傑作ノベライズ!
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伊藤計劃『虐殺器官』
この作品はここ数年で私が最も愛した作品と言ってもいい小説です。
タイトルが『虐殺器官』という、およそ僧侶のブログではまず馴染まないであろうフレーズということもあり、ここまでなかなかこの作品を紹介する機会がないまま来てしまいましたが、独ソ戦、冷戦、ディストピア小説と来た今の流れならいけるであろうと、いよいよ勇んでの紹介になります。
私がこの作品と出会ったのはテレビでたまたま流れていたこの映画のCMでした。
このCMがきっかけで私はこの小説を手に取ったのですが、私は読んであっという間にこの本の魅力にやられてしまいました。
リンク先の記事ではなぜこの本が私にとってこんなにもハマるものだったのかということについて詳しくお話ししていきますが、好きな所をひとつひとつ挙げて行ったらそれこそ長大な論文になってしまいかねない勢いです。
この作品は名作中の名作です。もう10回以上読み返しているのですがまったく飽きません。私の愛する作品です。
ぜひぜひおすすめしたい作品です。
伊藤計劃『虐殺器官』あらすじと感想~ぜひおすすめしたい私の最も好きなSF小説!
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伊藤計劃『ハーモニー』
伊藤計劃さんはがんの闘病をしながらデビュー作の『虐殺器官』を書き上げ、この作品も末期がんに近い状況で書き上げたものだったのでした。伊藤計劃さんがプロの作家として活躍できたのはわずか2年ほどだったのです。
闘病生活を送りながらこれほどの作品を書き上げたというのは驚愕以外の何物でもありません。自分の体が若くして病気に侵され、死が目前にある。そうした伊藤計劃さんの実体験と切り離すことができない作品がこの『ハーモニー』なのです。
いのちとは何か。病とは、死とは。
それを伊藤計劃さんはこの作品で突き詰めていきます。
伊藤計劃さん自身の境遇を思うとこの作品の持つ重みがさらに感じられます。
この作品はコロナ禍の今だからこそ読みたい凄まじい作品です。
ぜひぜひおすすめしたい作品です。
伊藤計劃『ハーモニー』あらすじと感想~「命と健康が何より大事」な高度医療社会のディストピア
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星新一『ボッコちゃん』
この本は日本SFの第一人者星新一によるショート・ショート(超短編)集です。
私が星新一作品を知ったのはSF好きな友人がおすすめしてくれたのがきっかけでした。
そして読み始めてみるとその作品のインパクトに驚くことになりました。
この本の最初は『悪魔』という作品なのですが、なんと、ページ数にしてたったの5ページ!ですがその5ページの中であっと驚くような物語が展開されます。1ページ目から「これからどうなるんだろう」と惹き付けられ、最後には予想外なオチにハッとさせられる。
「おぉ!これが星新一か!」
そう思わずにはいられない、独自な世界観でした。これはすごい! こんな短いページ数であっと驚く展開を具現化する力に私はすっかり魅了されてしまいました。
しかも、面白いのはもちろんなのですが私はそこに「なんか、オシャレだな」という思いまで抱いてしまいました。
この本は『ボッコちゃん』という可愛さすら感じさせる不思議なタイトルですが、いやいや、その作品はものすごくカッコいいです。オシャレです。スタイリッシュです。
星新一作品を読むならまずこの本がおすすめです。
ショートショートというくらいですからひとつひとつの作品はものすごくコンパクトです。
ですのでいつでも気楽に読むことができるのも嬉しいところです。
ぜひぜひおすすめしたい作品です。
星新一『ボッコちゃん』日本SFの第一人者によるおすすめショート・ショート集!
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チャペック『ロボット(R.U.R)』
チェコ文学を代表する作家チャペックとは何者かという興味から手に取ったこの作品ですが、読んですぐに私は度肝を抜かれました。
はっきり申しますと、ものすごく面白いのです!チェコにこんな作品があったのか!と私はただただ衝撃を受けるのみでした。
筋書きはシンプルです。最初はただ働くだけのロボットがやがて「意志」を持ち、人間に攻撃を仕掛けていくというSF作品の王道中の王道です。いや、この作品こそ後のSF小説に道筋をつけたのかもしれません。私はSF小説の歴史に詳しいわけではないので正確なことはわからないのですが1920年にしてこれほどの完成度を持ったSF小説を作り上げたチャペックの想像力には脱帽するしかありません。
そして単にシナリオが面白いだけではなく、チャペックの人間分析のまたなんと深いこと・・・!
彼は人間とは何か、人間とロボットは何が違うのか。人間を人間たらしめているのは何なのかということをこの作品で問うていきます。そしてロボット製造によって世界における「労働」の意味も変わってしまいます。さらには世界経済も激変していくことになります。機械化が極限まで進んで行くと人類の生活はどうなってしまうのか、そうしたことまでこの作品では見せられていくことになります。
しかもこうしたことを彼一流のユーモア溢れる筆致で描いていくので単に暗くて重たい作品にはなっていないのです。これは恐るべき才能だと思います。テーマ自体はものすごく重いのです。ですが彼のユーモアによってそれが絶妙に軽さを与えられているのです。ですのでとにかく読みやすい。そして面白い。ページをめくる手が止まりません。私は時間も忘れて一気に読んでしまいました。これほどの作品に出会えるのはなかなかありません。これは名作中の名作と言っても過言ではありません。凄まじい作品です。
一般的に、プラハ・チェコ文学と言えばまずカフカが連想されると思います。
ですがちょっとお待ちを。ここに恐るべき天才がいました・・・!
私はカフカ作品も好きですが、正直、このチャペックには参ってしまいました。『ロボット』はもっともっと世に知られてもいい作品です。ジャンルは違いますが『変身』と比べてもまったく遜色ない位素晴らしい作品だと思います。
いや~いい本と出会いました。
ぜひぜひおすすめしたい作品です。絶対後悔しないと思います。それほど面白いです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
チャペックおすすめ作品『ロボット(R.U.R)』あらすじと感想~ロボットの語源はこの作品!衝撃の面白さ!
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チャペック『山椒魚戦争』
これまで『ロボット(R・U・R』、『絶対製造工場』とチャペックの傑作小説をご紹介してきましたが、この『山椒魚戦争』もその流れを汲んだ作品となります。
これが書かれたのは1936年という、時代的には第二次世界大戦の直前ですが、すでに驚くほど完成度の高いSF作品をチャペックは完成させています。こんな時代からここまで恐ろしい作品を生み出せるチャペックの想像力には驚くしかありません。この作品について解説では次のように述べられていました。
『R・U・R』は、とかくうるさい労働者の代役をつとめさすために、安上がりで文句も言わないロボットを作った人間が、数の増えたロボットに滅ぼされる、という話である。それは、「科学・技術の発展は、果たして人間に幸福をもたらすか。それは幸福をもたらす反面、あるいは幸福をもたらすようでかえって、不幸をもたらし、けっきょく人類を滅亡にみちびくのではないか」という、チャぺックを一生なやました問題をはじめて提起したという点で、きわめて注目すべき作品である。『山椒魚戦争』は、このテーマをさらに発展させたものである。ここでは、やはり安上がりで扱いやすい労働力として飼育された山椒魚が、けっきょく、おびただしく繁殖し、陸地をしだいに水没させて、人類を征服するのである。
岩波書店、カレル・チャペック、栗栖継訳『山椒魚戦争』2003年第8刷版 P441
人間の都合のいいように働かせることができ、莫大な利益を上げる山椒魚。あっという間に山椒魚は想像を絶する数まで膨れ上がり、しかも徐々に知性も身につけていきます。この山椒魚の発見から実用化までの流れがこれまた不気味です。チャペックの本領がものすごく発揮されています。
チャペックは人間の問題をこれでもかと作品に詰め込み、風刺し、さらにそれらを見事にまとめ上げ私達に警告してくれます。
しかもこれが小説としても超一級品でものすごく面白いんです。
テンポがいいと言いますか、ぐいぐい物語に引っ張られていく感じです。この先どうなってしまうのかとドキドキしながら読むことになります。山椒魚の不気味な生態、そしてその山椒魚の集団に襲われるシーンの緊迫感、ホラー感は凄まじいです。
そして、そもそも山椒魚という存在をチョイスするチャペックの恐るべき才能!
普通、SFもののスリリングな展開なら宇宙人とか怪物、機械などもっと恐ろしいものを選びますよね。ですがチャペックは一味違います。何と言っても山椒魚。正直ちょっとかわいいくらいの存在です。ですがチャペックの筆にかかるとその不気味さは宇宙人や怪物をはるかに超えてきます。
そしてこの作品が書かれたのは第二次世界大戦が勃発する直前です。ナチスが勢力を強め、チェコは国家存亡の危機に立たされていました。ナチズム、全体主義に対する批判もこの作品に込められています。
「現代SFの古典的傑作」と称賛されるこの作品。ぜひぜひおすすめしたいです。チャペックの天才ぶりを体感できる名作です。
チャペック『山椒魚戦争』あらすじと感想~山椒魚がやってくる!科学技術は人間を救うのか?傑作SF小説!
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三島由紀夫『美しい星』
早速この本について見ていきましょう。
ひょっとすると君の御父上は宇宙人じゃないのかね。
大杉家には秘密ができた。一家全員、宇宙人だと自覚したのだ。父は原水爆を憂い米ソ首脳にメッセージを送り、金星人の同胞と称する男を訪ねた娘は処女懐胎して帰ってきた……。対立する宇宙人〈羽黒一派〉との人類救済の是非を巡る論争は『カラマーゾフの兄弟』「大審問官」の章とも比肩する。三島文学の主題がSFエンターテインメントと出会った異色作。新潮社商品紹介ページより
『金閣寺』で有名なあの三島由紀夫が本格SF小説を書いていた!これは青天の霹靂!ぜひ読んでみたい!そんな思いで私は本書を手に取ってみたのでありました。
『美しい星』は三島が37歳の時に発表した作品です。この頃の三島は多作で、この二年前には当ブログでも紹介した名作短編『憂国』を世に問うています。
『憂国』は三島の自決に直結する非常に思想性が強い作品でした。そんな作品を書いていた三島が宇宙人小説を書くというのはそれだけでも驚きです。
しかもこの作品はものすごく読みやすいです。作者名が伏せられていたら三島由紀夫だとわからないくらいの読みやすさです。さらに、ものすごく没入感が強く、気づけば小説の世界にすっかり入り込んでしまいます。大杉家の面々が宇宙人であること、そしてそれとは別の宇宙人の存在も物語途中から現れるのですが、どこからどこまでがリアルかSFかわからなくなるほど絶妙な匙加減です。私達は知らぬ間に計算に計算を重ねた三島文学の術中にどっぷりはまることになります。これは面白い。シンプルに面白い!
いやあ、見事な作品でした。
三島由紀夫『美しい星』あらすじと感想~あの三島がSF小説を書いていた!カラマーゾフの兄弟とのつながりも!
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おわりに
SF・ディストピア小説のおすすめ16作品をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
誰もが知る王道作品もあれば、日本のSFやチェコの作家チャペックの作品もあったりと意外な発見もあったのではないでしょうか。
この記事の最初にもお話ししましたが、SF小説は楽しみながら私たちの現在も問うことができる奥行きのあるジャンルです。
上で紹介した作品はぜひぜひおすすめしたい名作揃いです。
興味のある本があればぜひリンク先のページも覗いて頂けたらなと思います。
以上、「おすすめSF・ディストピア小説16作品一覧~SF・ディストピアから考える現代社会」でした。
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コメント
コメント一覧 (2件)
いつも楽しく拝読させて頂いています。
思想、文学など様々な本をお読みになっていらっしゃるようですが、まさかsfまでにその手が及んでいるとは思いませんでした。
幅広い読書量と知識に、読みたびに感服の念を抱くばかりです。
ラーメン/二郎様、コメントありがとうございます。
そう言って頂きとても嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。