レイ・ブラッドベリ『華氏451度』あらすじと感想~本好きの方に特におすすめ!書物が禁止された世界で人はいかに生きる?

ディストピア・SF小説から考える現代社会

レイ・ブラッドベリ『華氏451度』あらすじと感想~書物の焚書と管理社会の戦慄

今回ご紹介するのは1955年にレイ・ブラッドベリにより発表された『華氏451度』です。

私が読んだのは早川書房版、伊藤典夫訳の『華氏451度』です。

早速この本について見ていきましょう。

華氏451度ーこの温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたへルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士ファイアマンのひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!

早川書房、レイ・ブラッドベリ、伊藤典夫訳『華氏451度』裏表紙

この作品は映画化もされていて、そちらで知っている方も多いのではないでしょうか。

私は映画を観たことはありませんでしたが、この作品はいつか読んでみたいSFの筆頭にずっとあり、この度ようやく読むことができました。

先に申し上げておきますが、この本はものすごいです・・・!前半部分はその世界観に入り込むのが難しく、読むのが辛かったのですが中盤くらいから一気に引き込まれてしまいました。そこから怒涛のように読み耽り、読み終わった瞬間には放心状態になるほどでした。しばらく何もできないくらいの読後感です。これほどまでの読後感は久々でした。それこそ、真っ白。完全にこの作品に憑依されてしまったかのような感覚でした。

この作品は書物が禁止された未来の世界が舞台で、主人公はそんな書物を焼き尽くす仕事「昇火士」として働くモンターグという男です。

書物を焼いている時点で想像できると思いますが、この世界は思想統制された管理社会です。何が良くて何が悪いかは国によって決められ、人々は小さな頃から徹底して教育されています。そして人々に対しては「素晴らしい」娯楽や気晴らしも与えられています。この辺りは『一九八四年』よりも『すばらしい新世界』に似ている世界観です。徹底した監視社会と憎悪と不安で人々を支配するオーヴェル的世界観ではなく、人々の苦悩を消し去り、幸福な世界を夢見させる方向で管理していく世界ですね。

ですが、そんな世界にも当然、異端者は存在します。そしてそんな者たちは概して書物を持っています。昇火士はそんな書物を探し出し、それを焼き尽くすことを任務としています。そして異端者を見つけ出すことも当然ながら任務とされます。

主人公のモンターグも昇火士ですから彼もこうした世界観に従順な人間でした。しかし、彼はこの世界に少しずつ違和感を感じていました。妻はこの世界にどっぷりで彼のことなどまったく理解しようともしません。そんなすれ違いも彼のことを蝕んでいました。

そして上のあらすじにもありましたように、ある少女との出会いによって彼の歯車が動き出します。これまで当たり前だと思っていた世界の奇妙さに気づいてしまったのです。当たり前のように「本は悪だ」と焼き払っていた事実に彼はおののくことになります。そして彼はついに禁じられた行為に走ることになり・・・

というのがこの作品の大まかな流れとなります。

この作品でも物語の中盤から後半にかけて、この世界をよく知る人物からこの世界の成り立ちと仕組みを暴露されます。『一九八四年』も『すばらしい新世界』もそうでしたが、この暴露がやはり秀逸です。焚書に至らなければならなかった経緯の解説はまさに息を呑むほどです。これは未来のディストピアを描いたフィクションですが、今まさに私たちの身に起こっていることを驚くほど正確に言い表しています。

私たちが日々摂取している情報とは一体何なのか。本とは何を私たちにもたらすのか。テクノロジーの進化で簡単に情報にアクセスできる一方、その弊害は何なのか。

これらが明快に語られます。私はこれを読んで心底恐ろしくなりました・・・1955年に発表されたこの作品があまりに現代を的確に言い当てていることに戦慄を覚えました。これは今を生きる私たちに対しての警告です。絶対に知っておいたほうがいいです。このことについては次の記事で改めて紹介していきたいと思います。

この作品の読後感は異常でした。ここまで真っ白になったのは久々かもしれません。

ただ、この作品の前半部分は正直、あまり面白くはありません。この作品が好きだからこそあえて厳しめに言います。ただ単にSF特有の世界観がわかりにくいというだけならまだいいのですが、それに加えて話が冗長だったり、言葉のやりとりも私にとっては合わない感覚でした。これは私個人の感覚ですのでそうではない感想を持つ方もたくさんおられると思います。ただ、この作品の前半部分で挫折してしまった人が多いのではないのかと私は思うのです。私自身、何度読むのをやめようと思ったことか・・・

ですが中盤くらいから一気に物語が面白くなってきます。そうなったらもう止まりません。驚くほどこの作品に没頭してしまいました。前半部分をなんとか乗り切ればその後は恐ろしいほどの面白さです。ですので、なんとかあきらめずに、前半は流し読みでもいいのでとにかく中盤まで進んで下さい。そうすればきっとこの本の面白さが伝わってきます。正直、別の人が書いたんじゃないかというくらい、私の中でがらっと印象が変わりました。

この作品は『一九八四年』、『すばらしい新世界』と並ぶSFディストピア小説の傑作です。ぜひ手に取ってみてはいかかがでしょうか。非常におすすめです!

以上、「レイ・ブラッドベリ『華氏451度』あらすじと感想~本好きの方に特におすすめ!書物が禁止された世界で人はいかに生きる?」でした。

次の記事では引き続き『華氏451度』から、ファストフードならぬファスト情報の恐ろしさについてお話ししていきます。現代社会を生きる私たちはメディアやスマホを通じて、ほぼ常に情報にアクセスしています。その情報が私たちにどんな影響を与えているのか、その弊害、恐怖をこの作品から見ていきたいと思います。ぜひ、ぜひ引き続きお付き合い頂けますと幸いです。

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