シェイクスピアおすすめ解説書一覧~知れば知るほど面白いシェイクスピア!演劇の奥深さに感動!
シェイクスピアおすすめ解説書一覧~知れば知るほど面白いシェイクスピア!演劇の奥深さに感動!
当ブログではこれまで様々なシェイクスピア作品や解説書をご紹介してきましたが、今回の記事ではシェイクスピア作品をもっと楽しむためのおすすめ解説書をご紹介していきます。
それぞれのリンク先ではより詳しくその本についてお話ししていますので興味のある方はぜひそちらもご覧ください。
では早速始めていきましょう。
阿刀田高『シェイクスピアを楽しむために』
シェイクスピアの代表作といえば、『ハムレット』や『マクベス』、『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』などが挙げられますが、ここには挙げきれないほどの名作傑作を彼は生み出しています。
ただ、いきなりそれらの名作を読もうと思っても意外と苦戦することになります。
なぜなら日本の歌舞伎と一緒で、その演目の時代背景や人物、あらすじを知っていないとなかなかすぐには物語には入り込めないということが起こるのです。
シェイクスピア作品は基本的に舞台で演じられるものですので、読み始めるといきなり物語が幕を開け、登場人物の会話から始まります。
せっかく舞台が始まったのに、そこから舞台背景をわざわざ説明調で演者に解説させるのも演劇として無粋な話。
最初の段階でおおまかなあらすじや舞台背景を知れなければそのまま誰が何を言いたいのやらがまったくわからないまま物語が進んでしまいます。これだとやはり物語の面白さもわからず、読むのも挫折してしまうということになってしまうでしょう。
というわけでシェイクスピア作品を読むときにはあらかじめある程度の知識が必要となってくるのです。
そこでおすすめなのがこの阿刀田高氏の『シェイクスピアを楽しむために』という本です。
これを読めば早くシェイクスピア作品を読みたくなりうずうずしてくるほどです。それほどシェイクスピア作品を魅力たっぷりにお話ししてくれます。
私自身もこの本にとても助けられました。
特に『ジュリアス・シーザー』では最初何の解説もなしに読み始めたのですがなかなか物語に入り込めず挫折してしまったのですが、この本を読んであらすじや舞台背景を知った後に読み返して見るとこれが面白いのなんの!
今では『ジュリアス・シーザー』が特にお気に入りになったくらいです。
それほどこの本はシェイクスピアを読むにあたって大きな助けになります。
ぜひシェイクスピアを読む前にこの本を読んでみてください。物語の楽しみが何倍にもなること請け合いです。
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河合祥一郎『シェイクスピア 人生劇場の達人』
この作品はシェイクスピアの生涯や時代背景、作品の特徴を知れるおすすめの入門書です。
この本を読めばシェイクスピアの生涯や時代背景を知ることができます。やはり時代背景がわかれば作品も違って見えてきます。そして第4章の「シェイクスピア・マジック」も必見です。シェイクスピアの面白さの秘密がここで明らかにされます。読めば思わず「なるほど~!」と膝を打ちたくなること間違いなしです。
シェイクスピアをこれまで読んだことがなかった方にもおすすめです。きっとシェイクスピア作品を読みたくなることでしょう。
ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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松岡和子『深読みシェイクスピア』
この本は筑摩書房のシェイクスピア全作品翻訳で有名な松岡和子氏による作品です。
松岡和子氏の作品については以前「松岡和子『すべての季節のシェイクスピア』~シェイクスピア演劇の奥深さ、楽しさを学べる珠玉のエッセイ集!」の記事でも紹介しました。
私はこの本を読んで「もっと松岡さんの本を読んでみたい」強く思い、本書『深読みシェイクスピア』を手に取ったのでした。
そしてこの本もものすごかった・・・!正直、シェイクスピアに対する見方がまたぐっと変わっていくほどのものでした。
そしてタイトルにも書きましたが、何より超一流の役者さんたちの凄まじさたるや!私は以前から役者さんに対する憧れ、尊敬の念があったのですがこの本を読んでますますその思いが強くなりました。
シェイクスピアがいかに人間の機微を緻密に捉えていたかがよくわかります。私自身もこの作品でハッとしたことが満載でした。
シェイクスピア、演劇、いや文学そのものについても目が開かれた思いでした。2023年早々、ものすごいショックを受けた作品でした。これはぜひぜひおすすめしたい名著中の名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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河合祥一郎『シェイクスピアの正体』
実は、私はこの作品を実際に手に取るまでその内容を勘違いしていました。
巷に溢れる、「〇〇の真実」、「誰も知らない〇〇」「真の〇〇」という刺激的なタイトルの作品たち。「我こそは真の〇〇を語っている!これまでの通説は嘘だ!」のような、そんな流れの本のように私はこの本も見てしまっていたのです。
たしかに、タイトルだけを見れば『シェイクスピアの正体』という、まさに上で述べたようなタイトルです。
河合祥一郎先生については、これまで翻訳書やシェイクスピアの解説などでお世話になっていたので疑いを持ったことはなかったのですが、この本にはどうも手が伸びないでいたのです。
ですが、いざこの本を読んでびっくり。なんとこの本はそんな巷に溢れる「〇〇の真実」的なゴシップ、陰謀論的なものに真っ向から立ち向かった最高にハードボイルドな作品だったのです!これには驚きでした。
そして読みながら何度「ブラボー!」と喝采を送りたくなったことか!
こんなに痛快な本はなかなかないです。今まで手に取らなかったのが本当にもったいなかったと後悔しています。
いやぁ素晴らしい作品です!これはぜひぜひおすすめしたい名著です!ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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中野好夫『シェイクスピアの面白さ』
この作品は「名翻訳家が語るシェイクスピアの面白さ」という、直球ど真ん中、ものすごく面白い作品です。
「シェイクスピアを読む読者は、彼が曠古の文豪だの、その作品が不朽の古典などということを、まず一切念頭から拭い去ってしまうがよい。そして誰か、せいぜい浅草あたりの大衆芝居の座付無名作者が書き下した新作をでも読むような、つもりで読むことである。」
「文豪だから」とか、「古典の傑作だから」とか、そういう肩肘張った姿勢でシェイクスピアは読まなくていい!ただシンプルに観て、読んで感じたままでいいのだ!当時の人たちはそうやってシェイクスピア劇を楽しんでいたのだから。
そう言われてみると、「あぁ!なるほどなぁ!」と強く感じますよね。
この本はシェイクスピアを楽しむ上で非常にありがたい作品となっています。シェイクスピアが身近になること間違いなしです。ぜひおすすめしたい作品です。
中野好夫『シェイクスピアの面白さ』~シェイクスピアがぐっと身近になる名著!思わず東京03を連想してしまった私
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熊井明子『シェイクスピアの町 ストラトフォード=アポン=エイヴォンの四季』
この本はシェイクスピアの故郷、イギリスのストラトフォード=アポン=エイヴォンについて語られた作品です。
シェイクスピアの故郷はロンドンとマンチェスターのちょうど中間あたりにある町です。
この本ではそんなシェイクスピアの故郷の春夏秋冬をこの町を愛してやまない著者が楽しく紹介してくれます。
この本を読んでいて常に感じるのは著者のこの町への愛です。本当にこの町が好きなんだなということがものすごく伝わってきます。読んでいて思わず微笑んでしまうような、ほっこり感満載の素敵な一冊です。
私もシェイクスピアが好きなのですが、この本を読んだらもうものすごく現地に行ってみたくなります。そういう意味ではある意味危険な書物かもしれません(笑)行きたくて行きたくて仕方なくなります(笑)
この本でありがたいのはこの町の風景やおすすめポイントだけでなく、滞在時に役立つ情報もたくさん書かれている点です。
どのホテルがおすすめか、どのお店がおいしいか、どんな過ごし方がおすすめかなどなど、実践的なお役立ち情報が満載です。これはありがたいです。旅人として現地で長い時間を過ごした著者だからこその情報はとても貴重なものだと思います。
そういう面でもこの本はとてもおすすめな1冊となっています。
ほっこりした心地よい時間を過ごせた読書になりました。
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シェイクスピアの町: ストラトフォード=アポン=エイヴォンの四季
松岡和子『すべての季節のシェイクスピア』
圧倒的な数の演劇、演劇人と触れ合ってきた著者の経験はすさまじいものがあります。
私はこの本を読んでいて、そのシェイクスピア演劇の奥深さと言いますか、無限の幅を感じました。「あ、ここはそう理解していけばいいのか!」「なるほど、ここはそうやって作られていったのか!」「え?そこからそういう解釈の演劇もありなんだ!」という目から鱗の発見がどんどん出てきます。
シェイクスピア作品を私は舞台に観に行ったり本で読んでいるわけですが、舞台と本の違いということを特に意識させられた読書になりました。
これは盲点でした。「書かれていること」だけでなく、「書かれていないこと」にまで思いを馳せることができるのか、これが演出家の腕の見せ所なのだということをこの本から教えて頂きました。
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秋島百合子『蜷川幸雄とシェークスピア』
この本は蜷川幸雄さんが演出したシェイクスピア作品を解説と共に見ていく作品です。舞台制作時のエピソードや蜷川さんの演出についてこの作品では知ることができます。
作品ごとのエピソードもとても興味深く、実際にその舞台を観たくなってきます。演劇制作の奥深さやシェイクスピア作品の面白さをこの本では知ることができます。
私も今DVDで蜷川さん演出のシェイクスピアを少しずつ観ています。ものすごく面白いです。生で観てみたかったなあと心の底から思います。
そんな蜷川さんのシェイクスピアを概観できるありがたい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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ピーター・アクロイド『シェイクスピア伝』
この伝記はシェイクスピアの生涯を詳しいながらも面白く紹介してくれる作品です。当時のイギリスの時代背景も特に詳しく解説してくれるのでこれはとてもありがたいです。シェイクスピアという偉人がどのような社会状況の下生まれてきたかを知ることができます。
あとがきのはじめでは、この本がいかに英米で評価されてたかが語られます。読み物として非常に高い評価を得た作品であることがここからわかります。
しかしこの本には弱点もありました。それも含めてこの本を日本でどう出版するかについてもこの本は詳しく語られています。
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S・グリーンブラット『シェイクスピアの驚異の成功物語』
この本の特徴は「シェイクスピアは、どのようにしてシェイクスピアになったのか?」ということを追求していく点にあります。
上で紹介したピーター・アクロイドの『シェイクスピア伝』もかなり詳しく時代背景を描写していましたが、この作品はさらに踏み込んだ社会背景、思想状況まで語られていきます。
この伝記を読んでいて気づくのは、「シェイクスピアはもしかすると~~だったかもしれない」という形の表現が何度も出てくるということです。
この本では上の解説にありますように「想像力による推測」が語られます。シェイクスピアは謎の多い作家で、直接的な資料が存在しない時期が多いという問題があります。
ですが著者は歴史的背景を徹底的に調べ上げ、そこから「シェイクスピアもこうした時代背景の影響を受けたであろう」という形で彼のことを論じていきます。
厳格な学者からは批判を受けたかもしれませんが、多くの評者から高評価を受けたのは、彼の推測が「単なる憶測」ではなく、当時の時代背景がしっかり押さえられているからであると思われます。
その中でも読んでいて興味深かったのはシェイクスピアが生きていた頃の政治状況、特にエリザヴェス女王の治世が人々にとってどのようなものだったのかということ、さらにイギリスにおけるキリスト教事情でした。
当時のイギリスはローマカトリックから分離した「イギリス国教会」を国教としていました。
しかしそれに対してローマカトリックも黙っていません。カトリックは未だイギリス国教会を認めず、それを打ち倒すための破壊工作を続けていました。
この辺のどろどろ具合、血みどろの弾圧、スパイ活動、政治工作の裏側をこの本で知ることができます。
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陶山昇平『薔薇戦争』
私が本書『薔薇戦争』を手に取ったのはシェイクスピアの『ヘンリー六世』や『リチャード三世』の時代背景を知りたいと思ったからでした。
と言いますのも、私はシェイクスピア初期の史劇であるこれら『ヘンリー六世』や『リチャード三世』を読み始めたのですが、登場人物が多かったりその立場などもさっぱりわからず挫折してしまったのです。
これは以前当ブログでも紹介した『ジュリアス・シーザー』や『アントニーとクレオパトラ』でも起きた現象でした。古代ローマを舞台にしたこれらの作品も時代背景を知らずに読み始めたのですが、さっぱりわからず挫折してしまったのです。
ですが阿刀田高さんの『シェイクスピアを楽しむために』を読んで時代背景を知ってから再挑戦したところ、これが面白いのなんの!
やはり時代背景や大まかな話の流れがわからないとシェイクスピア作品はなかなか厳しいということがよくわかりました。
ですがこれは歌舞伎もそうですよね。私も初めて観に行った時は何が何だかさっぱりわからないまま帰って来てしまった記憶があります。ですがしっかり勉強してその流れを知っていたならばきっとまったく別の世界が見えていたのではないかと今は思います。
というわけで私は『ヘンリー六世』や『リチャード三世』の舞台となる薔薇戦争について知りたいと思い、この本を手に取ったのでありました。
そしてこの本を読んで改めて思い知らされました。
当時のイギリス、いやヨーロッパがとんでもなく入り組んだ複雑怪奇な状況だったということを。
15世紀のイギリスでは大小様々な権力者たちが入り乱れてのとてつもない覇権争いが繰り広げられていたのでした。興味深いことに、15世紀、国を巻き込んだ戦乱と言えば日本でも応仁の乱が起こっています。この時も弱肉強食、権謀術数、下克上のとてつもない乱世だったわけです。2つの陣営に分かれての巨大な戦乱がくしくも同時期に起きていたというのは私にとっても驚きでした。
とんでもなく複雑で難しい薔薇戦争というテーマは、普通なら読み進めるのも大変な書物になってしまうでしょう。ですがこの本は違います。たしかに一読して全てを理解するのは難しいとしても、この戦乱の全体像を把握しながらすんなりと最後まで読み進めることができるのです。このこと自体がものすごいことだと思います。
実際この作品を読んでから『ヘンリー六世』や『リチャード三世』を読み直したのですが、前回とは全く違った印象を受けることになりました。話の流れが見えるのです!やはり時代背景や話の流れはある程度分かっていた方が楽しめること間違いなしです。『ジュリアス・シーザー』や『アントニーとクレオパトラ』と同じでした。
シェイクスピアに興味のある方だけではなく、イギリスに興味のある方にもぜひおすすめしたい作品です。複雑で難しい薔薇戦争について知るならこの本はピカイチだと思います。
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佐藤猛『百年戦争 中世ヨーロッパ最後の闘い』
この作品は上で紹介したイギリスの「薔薇戦争」に先立つ英仏百年戦争についての参考書になります。
この本はシェイクスピアの『リチャード二世』の時代背景を知る上でとても参考になる作品です。
百年戦争といえばあのジャンヌ・ダルクが活躍した戦いです。ジャンヌ・ダルクという名を知らぬ人はいないと思いますが、彼女がいつの時代にどこで活躍したのかというのは意外とわからないですよね。私もそうでした。
そしてこの本を読んで驚いたのは「百年戦争」という壮大な名前が付けられたこの戦いが実際にはどういうものだったのかということでした。「百年間ずっと戦い続けていたわけではない」ということはよく言われることですが、では実際にこの時期に何が起きていたのかということをこの本では学ぶことができます。
私はこの時期のイギリス・フランスについてはほとんど知りませんでしたので、イギリスがフランス本土に多くの領地を持ち、なおかつフランス王の臣下としてその土地を領有していたということを知りかなり驚きました。
さらにはそもそもイギリス・フランスという国家意識が生まれてきたのがこの戦争からだったということ、これも大きな驚きでした。私達は「国」というと昔からそこにあったかのように感じてしまいますが「国」や「国民」という概念が人々の間で確固たるものになるのは本来とてつもなく難しいことなのだなということを考えさせられました。
この本は薔薇戦争に先立つ百年戦争について学ぶのに非常におすすめな参考書です。シェイクスピア史劇をより楽しむためにも必読な作品なのではないでしょうか。ぜひおすすめしたい作品です。
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陶山昇平『ヘンリー八世 暴君かカリスマか』
ヘンリー八世といえばシェイクスピアの『ヘンリー八世』で有名なイングランド王で、16世紀前半から中頃にかけて在位した人物です。
ヘンリー八世は並外れたカリスマ、暴君とも知られており、離婚問題でローマカトリックと対立し、そのままイギリス国教会を立ち上げたことでも有名です。そこからイギリスの反カトリックの流れが出来上がり、陰謀うずめく血みどろの政治闘争が続けられることになります。こうした流れで出てくるのが血まみれのメアリーやエリザベス女王になります。この2人が共にヘンリー八世の子だったというのは興味深いですよね。
さて、私がこの本を手に取ったのは一見ヘンリー八世とは関係のない1527年のサッコ・ディ・ローマ(ローマ劫掠)事件がきっかけでした。私がこの事件を知ったのは以前当ブログでも紹介した『教皇たちのローマ』のおかげです。
この事件は1527年にローマが攻撃され、虐殺、略奪の限りが尽くされた恐るべき出来事でした。ここではこの事件とヘンリー八世の繋がりについてはお話しできませんが、この記事内で詳しくお話ししていますので興味のある方はぜひご参照ください。
このローマとの関係性を経てシェイクスピアが生まれた時代へと繋がっていきます。シェイクスピアが生きた時代背景を考える上でも非常におすすめの参考書です。
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星野立子『シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たち』
この本はタイトル通り、シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たちとのつながりについて書かれた作品です。
この本ではプーシキンやドストエフスキー、トルストイ、チェーホフ、スタニスラフスキー、パステルナークと、ロシア文学界の大御所がずらりと並んでいます。
これまで「親鸞とドストエフスキー」をテーマに学んできた私にとって、トルストイやドストエフスキーについて学べるこの本はとてもありがたいものがありました。
特に「シェイクスピアとドストエフスキーのつながり」は最近私が最も注目していたテーマでした。
と言いますのも、以前当ブログで紹介したジョージ・ステイナー著『トルストイかドストエフスキーか』という作品でまさに「ドストエフスキーがシェイクスピア的である」ということが指摘されていたからです。
特にこの本で語られる『リア王』と『カラマーゾフの兄弟』のつながりが非常に興味深く、私はシェイクスピアに対してますます興味が湧いてきたのでした。
そして今ちょうどシェイクスピア作品や様々な参考書を読んでいる中で私は今作『シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たち』と出会ったのでした。
この本ではプーシキンから始まり順にドストエフスキー、トルストイ、チェーホフと進んでいきます。
ロシア文学の祖と言っても過言ではないプーシキン。彼がシェイクスピアに傾倒したことでロシア文学界でシェイクスピアが大きな存在となりました。そしてそのプーシキンを深く敬愛していたドストエフスキーもその影響を強く受けることになります。こうした流れを知れるのもこの本のありがたいところです。
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トルストイ『シェイクスピア論および演劇論』
この論文はシェイクスピア嫌いとして有名なトルストイがその理由を上下二段組で50ページほどかけて延々と述べていくという、ある意味驚異の作品となっています。
私はトルストイと反対にシェイクスピアが大好きですので、これは逆に気になる問題でもありました。「シェイクスピアの何が気に入らないんだろう。こんなに面白いのに」と思わずにはおれません。
というわけで興味津々で私はこの作品を読み始めたのでありました。
この記事ではそんなトルストイが何を言わんとしていたのか、シェイクスピアの何がお気に召さなかったのかをじっくりと見ていきます。ぜひこの記事も読んで頂けたらと思います。トルストイとシェイクスピアの文学理念が見えてくるようで非常に刺激的です。
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福田恆存『人間・この劇的なるもの』
著者の福田恆存はシェイクスピア作品の翻訳で有名で、私もいつもお世話になっています。私は上で紹介してきた新潮社版のシェイクスピアが好きで格好いいセリフや言葉遣いにいつも痺れています。
この本について裏表紙には次のように書かれています。
人間はただ生きることを欲しているのではない。現実の生活とはべつの次元に、意識の生活があるのだ。それに関らずには、いかなる人生論も幸福論もなりたたぬ。一胸に響く、人間の本質を捉えた言葉の教々。愛するということ、自由ということ、個性ということ、幸福ということ……悩ましい複雑な感情を、「劇的な人間存在」というキーワードで、解き明かす。「生」に迷える若き日に必携の不朽の人間論。新潮社、福田恆存『人間・この劇的なるもの』裏表紙
翻訳家、劇作家、批評家として第一線で活躍してきた福田恆存の人間観、人生論がこの本で語られます。
この本は1956年に初めて刊行され、今でも重版されている名著中の名著です。現代においてもまったく古さを感じません。
自分とは何か、個性とは何か、自由とは何か。
私たちの根源に迫るおすすめの1冊です。非常におすすめです!ぜひ手に取って頂ければなと思います。
この記事でより詳しくこの本の面白さをお話ししていきますのでぜひご覧ください。
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松岡和子『「もの」で読む 入門シェイクスピア』
著者の松岡和子さんについては当ブログでもシェイクスピア作品や著書『すべての季節のシェイクスピア』、『深読みシェイクスピア』などを紹介してきました。
松岡和子さんは上の本紹介にもありますようにシェイクスピア全作品の翻訳を手掛けられた方です。その松岡さんがその作品ごとに興味深い「もの」を取り上げて語るのが今作『「もの」で読む 入門シェイクスピア』になります。
これまで素通りしてしまった「一見ささいなもの」が実は重要な意味を持っていた。これに気づくか気づかないかで作品の見え方はずいぶんと変わってきます。シェイクスピアの巧みな物語制作に思いを馳せるならこの本は非常におすすめです。
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「もの」で読む入門シェイクスピア (ちくま文庫 し 10-34)
扇田昭彦『舞台は語る』
今作は2002年当時までの演劇事情を知ることができる作品です。
特に劇団四季や『レ・ミゼラブル』など私も大好きなミュージカルの話も聞けるのは嬉しい限りでした。
そして何と言っても日本におけるシェイクスピア演劇の流れを知れたのが大きかったです。シェイクスピアが日本でブームになっていった歴史的背景は非常に興味深かったです。翻訳家の小田島雄志や演出家出口典雄の登場、あの吉田鋼太郎さんも所属していたシェイクスピア・シアターの存在。ピーター・ブルックやトレバー・ナンら海外の著名な劇作家の影響。そして蜷川幸雄さんの斬新な演出。
こうした流れを扇田さんの名解説で聴くことができます。扇田さんの名解説には以前当ブログで紹介した井上ひさし著『ロマンス』からすっかりファンになっています。
この本も日本の演劇やミュージカルの大枠を掴むのに最高の手引書となっています。ぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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丹下和彦『ギリシア悲劇』
この作品は直接的にはシェイクスピアと関連が薄いかもしれませんが、『リア王』や『マクベス』など傑作悲劇を残したシェイクスピアを学ぶ上で役に立つ解説書です。
この作品ではギリシア悲劇の起源やその流れをまず序章で学ぶことになります。
そこから時代順に、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスというギリシア悲劇の重鎮たちの作品を通してその奥深さを考察していく流れになります。時代を経ていくにつれて悲劇の内容がどう変わっていったのかが非常にわかりやすく説かれているのでこれはとてもありがたかったです。
ただ、この本ではそれらの悲劇の内容を丁寧に見ていくのでギリシア悲劇を全く知らない人でも読めるようになってはいるのですが、やはりいきなりこの本を読むのは少しハードルが高いなと私は感じました。あらかじめギリシア神話などについての知識を少しでも持っているとよりすっと入っていけるのでないかと思います。
私はギリシア神話については阿刀田高さんの『ホメロスを楽しむために』や『ギリシア神話を知っていますか』などの本を読んでいました。これらの本を読んでいたことでギリシア悲劇に出てくる人物たちや神話の背景、歴史などもある程度前知識として持つことができました。それがなかったらこの本を読むのも少し大変だったかもしれません。
ですのであらかじめギリシア神話に関する入門書を読んでからこの本に取りかかることをおすすめします。そうすればもっともっとこの本を楽しむことができるのではないかと思います。
名前は知っていてもなかなかその中身までは知らないギリシア悲劇。そのギリシア悲劇の奥深さを知れるおすすめの入門書です。
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蜷川幸雄『千のナイフ、千の目』
私がこの作品を手に取ったのは2022年に公演された彩の国シェイクスピア・シリーズ、『ジョン王』がきっかけでした。
彩の国シェイクスピア・シリーズは蜷川幸雄演出によるシェイクスピア演劇で、私は『ヘンリー八世』も観に行きました。このシリーズについて公式HPでは次のように紹介されています。
1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもとでシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指し、国内外に次々と話題作を発表してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。2017年12月、シリーズ2代目芸術監督に就任した俳優・吉田鋼太郎が演出する『アテネのタイモン』でシリーズが再開され、2019年2月に『ヘンリー五世』、2020年2月に『ヘンリー八世』を上演。
彩の国シェイクスピア・シリーズ、『ジョン王』HPより
蜷川幸雄さんが2016年に亡くなられた後、芸術監督を引き継いだのが吉田鋼太郎さんになります。私は蜷川幸雄さんが演出した舞台を生で観たことはありませんが、その魂を引き継いだこのシェイクスピア・シリーズに私は心打たれました。
こんな素晴らしい演劇シリーズを生み出した蜷川幸雄さんについてもっと知りたい。そんな思いで手に取ったのが本書『千のナイフ、千の目』でした。
この本、タイトル通りかなり切れ味抜群です。鋭いです。
前半では蜷川さんの若き日を知ることができます。戦後から高度経済成長、学生運動の時代の壮絶な空気感を感じることになりました。私は1990年生まれで、バブル期のことすらわかりません。そんな私にとって社会闘争のバチバチの雰囲気は未知の世界です。しかも蜷川さんのいた演劇の世界は特にラジカルな場所だったようでその真剣さ、厳しさには驚かされました。今と全く違う世界がそこにあったんだとこの本を読んで感じました。
タイトルの由来になった「千のナイフ」事件もすさまじいです。今では考えられません。あの当時、いや今もかもしれませんが「演劇の世界」、特に蜷川さんの世界の厳しさを目にすることになりました。
そして後半のはじまりのインタビュー記事なのですがこれがまた鋭いのなんの・・・!
ぜひぜひおすすめしたい名著です。
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ピーター・ブルック『なにもない空間』
本書『なにもない空間』の著者ピーター・ブルックはイギリスの演出家で演劇界で絶大な影響力を持つ人物です。
特に1970年のシェイクスピア『夏の夜の夢』の演出では世界中の度肝を抜き、シェイクスピア演劇に革命をもたらしたことでも知られています。
日本の演劇界においてもピーター・ブルックは絶大な影響があったようで、あの蜷川幸雄さんもその著書の中で度々ピーター・ブルックについて言及しています。『蜷川幸雄の仕事』という本の父娘対談では次のように述べていました。
―幸雄さんが今も演劇を続ける原動力は何なのでしょう?
実 私、この間、同じ質問したの。そうしたら「まだ正当に評価されていない」って。あまりに面白い答えでびっくりしたんだけど。
幸 海外の人が書いた本だと、俺は世界の10人の大演出家の一人には入っているんですよ。だけど、俺はすでにトップ3だろうと思ったわけ。「トップ3と書け」と言うには判定勝ちじゃダメ、ノックアウト勝利しなければ。それくらいヨーロッパの階級構造は強いし。
―その3人とは?
幸 ピーター・ブルック、ドイツのぺーター・シュタイン、そして俺。
―ノックアウトするために作品を作り続けるのですか?
幸 そう思うと頑張れるかな。
新潮社、『蜷川幸雄の仕事』P15
世界のトップ3の筆頭として蜷川さんはこのピーター・ブルックを挙げています。そしてその彼にノックアウト勝ちするために作品を作り続けているとまで言っています。
というわけで蜷川さんがそこまで評価し、さらには乗り越えたいと思う演出家とは一体何者であるのか、その言葉を聞いてみたいと思い私は本書『なにもない空間』を手に取ったのでありました。
そしてこの本を読み始めて早々、その面白さに圧倒されることになりました。これは名著です。ピーター・ブルックが世界の演劇人に巨大な影響を与えたというのもよくわかりました。
この記事では私の学びという意味も込めまして印象に残った箇所を引用していきます。これを読めばピーター・ブルックの言葉がどれだけ蜷川さんにも影響を与えていたかというのがよくわかると思います。私も読んでいてかなり驚きました。蜷川さんの演劇論と重なるものがとにかく多いのです。ブルックが先か、蜷川さんが先か、たまたま思想が一致したのかは私にはわかりませんが、この符合にはびっくりでした。
演劇論としての枠組みを超えて人生を考える上でもこの本は大きな示唆を与えてくれます。この本が名著として受け継がれている理由がよくわかりました。ぜひ皆さんも手に取ってみてはいかがでしょうか。
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山﨑努『俳優のノート』
私がこの作品を手に取ったのは上でも紹介した松岡和子さんの『深読みシェイクスピア』がきっかけでした。
この本を読み、超一流の役者さんたちの凄まじさに私は驚きました。私は以前から役者さんに対する憧れ、尊敬の念があったのですがこの本を読んでますますその思いが強くなりました。
そしてこの本の中で山﨑努さんの『リア王』に関するエピソードが書かれていて、そこで紹介されていたのが本書『俳優のノート』だったのです。
この本は日記形式で語られていて、『リア王』の公演に向けて奮闘する山﨑努さんの日々を知ることができます。まるでドキュメンタリー番組を観ているかのような臨場感があります。
山﨑さんがいかに『リア王』を深く理解しようとしていたのか、その日々の思索、演技への追求は恐るべきものがあります。まさに求道者。
『リア王』への役作りだけの話ではなくもはや「人生とは何か」という問いまで深く掘り下げられていきます。
山﨑さんの『リア王』理解の深さには驚くしかありません。単に頭で考えて理論を組み立てるのではなく、生活すべてをかけて全身でリア王にぶつかる!そうして生まれてきた深い思索がこの本で語られます。これには驚くしかありません。シェイクスピアを学ぶ上でも非常にありがたい作品でした。
これはぜひぜひおすすめしたい名著です。学校の教科書にしてほしいくらいです。仕事をするとはどういうことか。生きるとは何か。そういうところまで深めていける素晴らしい作品です。
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新装版 俳優のノート (文春文庫) (文春文庫 や 30-2)
長谷部浩『権力と孤独 演出家蜷川幸雄の時代』
この本はシェイクスピア作品の演出を数多く手掛けた蜷川幸雄の伝記です。上で紹介した『千のナイフ、千の目』では蜷川さんの若き日が自伝的に語られていましたが、この作品ではその生涯全体を知ることができます。
著者の長谷部浩さんは蜷川さんと長く関わり続けた演劇評論家で、蜷川さんへのインタビュー集『演出術』も2002年に出版しています。
私はシェイクスピアの演出から蜷川幸雄さんに興味を持ったのですが、そのシェイクスピア演出についてもたくさん語られており私も大満足でした。
また、若手を育てようという蜷川さんの熱意。そして藤原竜也さんがいかに規格外の役者だったのかも知ることになりました。
ものすごく面白い本です。ぜひぜひおすすめしたい作品です。『演出術』と合わせて手に取ってみてはいかがでしょうか。
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ポプラ社『蜷川幸雄の稽古場から』
この本は2010年当時、まだ若手俳優時代だった蒼井優、小栗旬、尾上菊之助、勝地涼、鈴木杏、寺島しのぶ、成宮寛貴、長谷川博己、藤原竜也、松たか子(※敬称略)が蜷川幸雄との仕事を回想し語るという作品です。
2010年当時はまだ若手だったとはいえ、すでに頭角を現していた10人。2023年の今から見ればこれら10人の活躍ぶりはもう言うまでもないですよね。
そしてその活躍の背景には蜷川幸雄さんの稽古場があった。これは興味深いです。
『深読みシェイクスピア』では松岡和子さんが見た役者さんたちの姿を知ることができましたが、今作では役者さんから見た蜷川さんや舞台裏、シェイクスピア作品を知ることができます。
読んでいて「これはまたとてつもない本を見つけてしまった」とドキドキするほど刺激的な作品でした。
いやあ面白い!ぜひぜひおすすめしたい名著です!
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蜷川幸雄『身体的物語論』
この本は蜷川幸雄さんが残した「身体」、「物語」についての考察がまとめられた作品です。『身体的物語論』というタイトルを見ると何か哲学的で難しそうなイメージが湧いてきますが全くそのようなことはありません。
「演劇に詳しい人、親しんでいる人をメインターゲットにした「身体論」ではなく、演劇をふだんあまり見ない人にも蜷川さんの演劇がいかに日本人や時代を捉えているか読んでいただきたい」
こう述べられるように、専門家が語る哲学論ではなく、普段演劇に親しまない方にも気軽に読めるようにとの思いでこの本は作られています。
たしかにこの本を読んでみても、難しい専門用語や哲学議論は出てきません。ひとつひとつの話が身近かつ具体的でとてもわかりやすいです。
この本ではこのように具体的かつわかりやすく現代について蜷川さんが語ってくれます。タイトルで「うっ」となってしまう方もおられるかもしれませんがぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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とんぼの本『蜷川幸雄の仕事』
この作品は新潮社の「とんぼの本」シリーズの一冊になります。「とんぼの本」シリーズは当ブログでもこれまで紹介してきましたが、「旅もの」だったり「歴史もの」のイメージがあったので蜷川さんを取り上げた本書の存在には驚きました。
「とんぼの本」シリーズは写真やイラストが満載でガイドブックとして非常にありがたいです。本作『蜷川幸雄の仕事』もまさにその長所が生きた作品となっています。
『蜷川幸雄の仕事』というタイトル通り、この本では蜷川さんの仕事を多くの写真と共に見ていけるのでその流れがとてもわかりやすいです。
この本では他にもたくさんの写真だけでなく当時のポスターも見ることができて時代の雰囲気も感じることができます。
コンパクトにまとめられた「とんぼの本」シリーズのいいところがぎゅぎゅっと凝縮された素晴らしい一冊です。
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細野晋司『PASSION 蜷川幸雄 舞台芸術の軌跡』
この本は渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演された蜷川幸雄作品の写真集になります。
カメラマンはシアターコクーン創設当初から写真を撮り続けてきた細野晋司さん。
「喜怒哀楽ということばでは掬いきれないあらゆる感情。そのすべてを蜷川さんは増幅させて私たちに呈示する。そして役者に要求する!「その使命を全うせよ。もっと強く!もっと強く!」と」
この写真集ではまさに増幅されたエネルギーのようなものを感じます。とにかく過剰!溢れかえらんばかりの感情エネルギー!ちょっと普通の写真集ではありません。凄まじい本です。細野さんが「私もそれに呼応するように命を削る想いで撮り続けてきた」と述べるのもものすごいですよね。「命を削る想いで写真を撮る」。どれほどの覚悟とエネルギーが必要だったことでしょう。想像もつきません。
この本を読んだことで演劇というものをまた違った視点から見ることができました。
私たちは観客席から舞台を観ていますが、どこにピントを合わせ、いつズームしたり引いたりしているのか、それらはほとんど意識されません。全体を俯瞰で観るように引くこともあれば、好きな俳優がいればそちらに目が行くのは自然なことでしょう。つまり私たちはひとりひとりが様々な視点で縦横無尽に舞台上を見ているのです。そんな中この写真集に収められた写真は、その舞台の「これだ!」という劇的な瞬間を切り取っています。どこにピントを合わせ、どんな距離感、角度から見ているのか。なぜこの場面を選んだのか。そうしたことが写真をじっくり見ていくことで伝わってきます。
まあ、そもそもがとてつもないエネルギーを持った写真たちですので初見から圧倒されてしまうのは間違いありません。「何だこれは・・・!」とびっくりしてしまう写真も多数あります。
写真というもののメッセージ性に改めて感じ入った写真集でした。
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バフチン『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』
私がこの作品を手に取ったのは蜷川幸雄さんがきっかけでした。
ここ最近私はシェイクスピアを学んだ流れから蜷川幸雄さんの舞台に興味を持ち、様々な本を読むことになりました。
そしてその中で蜷川さんが何度も言及していたのがこの『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』という本だったのです。
「『フランソワ・ラブレーの作品とルネッサンスの民衆文化』(編注:ロシアの哲学者ミハイル・バフチンによる民衆と祝祭のことを書いた書)を座右の書のように置きながら、こういう視点でシェイクスピアをうまく描けたら良いなと常に願っているんです。」
まさにこの言葉ですね。
蜷川さんは自身の演劇を語る際、民衆的な劇を大切にしているということをよく語ります。抽象的で洗練された劇よりも、もっと混沌としたエネルギーに満ちた舞台を蜷川さんは求めます。
その演劇論のベースとなったのが本書『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』になります。
「蜷川さんはこの本のどこに惚れ込んで読んでいたのだろう」と考えながら読むのはとても楽しかったです。
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網野善彦『異形の王権』
私がこの本を手に取ったのは上で紹介した『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』がきっかけでした。
たまたま書店に足を運んだ時、ふとこの『異形の王権』という本が目に入りました。その瞬間私は思ったのです。「これはまさにバフチンの理論と重なるのではないかと」。
実際この本を読んでみて平安末期から鎌倉、南北朝時代における民衆・悪党たちのエネルギーというものを感じることになりました。この本では彼らの服装や身なり・道具に注目して中世の社会状況を見ていきます。バフチンの理論と同じく、王侯貴族たち、階級の上側の人間達とは違う人々の存在がいかに社会全体に大きな影響を与えていたかがわかります。
もちろん、バフチンが語る内容そのままがこの本では語られるわけではありませんが、「異形」という、いわゆるアウトロー、混沌とした存在がいかに人間世界に大きな影響を与えたのかということを考えさせられます。
シェイクスピアはそんな人間世界の混沌としたエネルギーを表現し、時代や国を超えて愛されてきました。だとすれば、それは人間的に普遍なものを明らかにしたとも言えるでしょう。つまり、それはヨーロッパを超えて日本の社会でもそのような文化が必ずあったはず。それを確認できたのが本書での大きな収穫でした。
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岩淵達治『ブレヒト 人と思想64』
この本はドイツの劇作家ブレヒトの生涯や時代背景、思想をコンパクトに知れるおすすめの作品です。
私がこの本を手に取ったのはシェイクスピアを学ぶ過程で知った蜷川幸雄さんがきっかけでした。蜷川幸雄さんの本の中でピーター・ブルックやバフチンと共に何度も言及されていたのがこのブレヒトでした。
当ブログでもピーター・ブルックの『なにもない空間』やバフチンの『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』は紹介しましたが、今回ブレヒトとは何者ぞやということで読んでみたのが本書『ブレヒト 人と思想64』になります。
そしてこの本の表紙にいきなり「われわれはシェイクスピアを変えられる。もしわれわれがシェイクスピアを変えられるなら」という、シェイクスピアを学んでいる私にとって非常に興味深いフレーズが書かれていたのでありました。
これはいよいよブレヒトとはどんな人だったのか興味が湧いてきました。
そしてこの本を読み始めてみると、戦後の日本の演劇事情も垣間見えてきました。「なるほど、蜷川さんもこういう空気の中で演劇人として生きていたんだな」とわくわくしながら読むことになりました。
この本は時代背景と演劇のつながりを知れる非常にありがたい作品です。また、あのトーマス・マンとの敵対関係も見どころです。私は個人的にトーマス・マンの作品が好きなのですが、ブレヒトのおかげでまた違った側面からトーマス・マンを考えることができました。
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ジーン・ベネディティ『スタニスラフスキー伝』
この本ではロシアの名俳優スタニスラフスキーの生涯を見ていくことになります。スタニスラフスキーは『俳優の仕事(旧訳は『俳優修業』)』という本で有名で世界の演劇界において凄まじい影響力を持ち、日本でもバイブルのように読まれていたそうです。その演劇論は「スタニスラフスキー・システム」と呼ばれ、今でもその影響力は健在なようです。
この本は単にスタニスラフスキーの生涯をなぞるのではなく、当時の時代背景も掘り下げていきます。そしてその時代背景においてスタニスラフスキーをはじめとした演劇人がどのように動いていたのかを知ることができます。帝政末期のロシアからソ連へと移っていく激動の時代。そしてレーニン・スターリンとソ連的イデオロギーが確立していく時代。演劇が政治やイデオロギーと繋がっていたことがよくわかります。そしてそれが日本における演劇受容の歴史にも関わってくることを強く実感しました。こうした時代の空気感を知る上でもこの本は非常に貴重な資料となっています。
『かもめ』や『桜の園』などチェーホフの演劇に興味のある方にもこの作品は非常におすすめです。
この伝記を読めばそうした演劇界の試行錯誤の戦いも知ることになります。今私たちが当たり前のように観ている演劇も、最初から今のような形で上演されていたとは限らないのです。「演技とは何か」と真剣に探究していた人たちの歩みがあるからこその今なのだなということを感じました。
いやぁ、この本にはいろんなことを考えさせられました。他にもお話ししたいこともあるのですが長くなってしまうのでここまでとさせて頂きます。チェーホフにしろシェイクスピアにしろ、本当に奥が深い・・・
戯曲と舞台の違いということを改めて考えるきっかけとなった読書でした。
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蜷川幸雄演出『天保十二年のシェイクスピア』
この作品は冒頭で、「この戯曲を宝井琴凌とシェイクスピアに捧げる。宝井琴凌の『天保水滸伝』をはじめとする侠客講談を父とし、シェイクスピアの全作品を母として、この戯曲は生れたからである。」と作者井上ひさしさんが述べるように、シェイクスピアの全作品をネタにして書くという驚異の戯曲となっています。
実際に読んでみて思わず「おお!」と驚かずにはいられないパロディやオマージュがどんどん出てきます。舞台の筋書きだけではなく、登場人物の名前にまで現れてくるのですからものすごい!
例えばですが鰤の十兵衛は「ブリテンのリア王」、尾瀬の幕兵衛は「オセローのマクベス」、佐渡の三世次は「リチャード三世」・・・そして私が一番感動したのは「よだれ牛の紋太一家」と「代官手代の花平一家」です。そうです!これは『ロミオとジュリエット』の「モンタギュー一家」と「キャピレット一家」のもじりです。これには笑ってしまいました。お見事すぎです!笑
話の筋もよくぞまあこれだけのものを繋げたなあと感嘆しきりでした。シェイクスピア好きの人にはたまらない作品です。
まさにシェイクスピア演劇を数多く手掛けてきた蜷川さんだからこそできる『天保十二年のシェイクスピア』。
豪華な出演陣、豊かな音楽、刺激的な視覚性、過剰なエネルギー。
これをすべて体感できるのがこの舞台の素晴らしい所です。「蜷川さんらしさ」を知るのに最適な作品なのではないでしょうか。DVDと本と合わせて楽しまれることをおすすめします。
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天保十二年のシェイクスピア (1973年) (書下ろし新潮劇場)
扇田昭彦『日本の現代演劇』
本書では1960年代に始まった小劇場運動からバブル経済を経た90年代の演劇までその歴史の流れを概観することができます。
特に思想の吹き荒れた安保闘争、学生紛争時代における演劇界には強い関心があったのでこのことについて詳しく知ることができたのは非常にありがたいものがありました。
この本を読んでいてとにかく感じたのは演劇人たちの熱気です。しかも並大抵の熱気ではなく、それこそ「すべてを賭けて戦う」という恐るべき本気さ・・・
私にとって60年代、70年代はあまりに謎な時代です。
時代の空気感と演劇の関係を重ねながら学べる本書は非常に興味深い作品でした。蜷川幸雄さんについてもっと知りたいと思っていた私にとってもありがたい一冊でした。
※この記事を書いた時点では「今は時間の都合で手は出せませんが、60,70年代についていつかもっと学んでみたいなと思います。」とお話ししましたが、ようやくこのことについても学ぶことになりました。以下の記事の中で私が読んだ本なども紹介しています。蜷川幸雄さんをはじめ、当時の時代背景を知る上でも非常に参考になる作品ばかりでした。ぜひこちらもご参照ください。
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扇田昭彦『蜷川幸雄の劇世界』
著者の扇田昭彦さんは蜷川幸雄さんの演出家デビューからずっと彼の演劇を観続けてきました。
「私自身がこの演出家の才能と仕事に一貫して強い関心を持ち続け、かなり熱心に書いてきたためでもある。一人の演出家について、私がこれほど多くの原稿を書いた例はほかにはない。」と述べるように、蜷川さんの舞台への深い理解と愛が感じられます。
この本では蜷川さんをずっと追い続けた扇田さんだからこそ見える蜷川さんを知ることができます。演出家デビューから円熟していくにつれてどう演出が変わっていったのか。そしてそれを貫く彼の演劇の本質はどこにあるのかということを深く掘り下げていきます。
ただ、この本は蜷川さんの入門書としてはちょっと難しいです。蜷川さんの舞台作品をいくつか観たり、他の本でその人となりや作品制作の流れを知っておいてから読むのがおすすめです。私も最近蜷川さん演出舞台のDVDを観ているのですが、その舞台を観てからこの本を読むと「あぁ~そういうことなのか!」ともっともっと楽しむことができます。
蜷川幸雄演出やその人となりについてもっと知りたい方にこの作品は非常におすすめです。ものすごく刺激的な一冊でした。
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おわりに
以上、かなり数は多くなってしまいましたが、シェイクスピアを学ぶためのおすすめ参考書をご紹介しました。
かなりマニアックな本も紹介してしまいましたが、ここで紹介した本は私が自信を持っておすすめする名著です。
皆さんのお役に立てましたら何よりでございます。
以上、「シェイクスピアおすすめ解説書一覧~知れば知るほど面白いシェイクスピア!演劇の奥深さに感動!」でした。
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