大乗仏教

東南アジア上座部仏教への招待スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

『東南アジア上座部仏教への招待』~日本と異なる東南アジアの仏教を知るのにおすすめ!

この本では東南アジア各国の仏教の教義を細かく見ていくというよりは、その国の仏教徒の生活や信仰の実践がどのようなものなのかを見ていく形を取ります。

もちろん、本書の第一章で上座部仏教とはそもそも何なのかをわかりやすく解説してくれるので、専門知識のない方にも優しい作りになっています。大乗仏教との違いをわかりやすく解説してくれるこの作品は非常に貴重です。しかも入門者でも親しみやすく読めるような語り口で説かれるので、仏教だけでなく文化そのものを学びたいという方にも非常におすすめです。

上座部仏教とは何か、そしてそこに生きる人々の生活レベルでの仏教を知れるこの本はとても刺激的でした。日本仏教との違いや共通点を考えながら読むのはとても興味深かったです。

新アジア仏教史02インドにおける仏教

『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』~仏教のイメージが覆る?仏教学そのものの歴史を問う参考書

私達が当たり前だと思って享受していた〈仏教学〉が日本の仏教思想や文化とは全く無関係に生まれたものだった。

この本を読めば〈仏教学〉というものがどんな流れで生まれてきたのか、そしてそれがどのように日本にもたらされ、適用されることになったのかがよくわかります。

日本仏教に対する批判で多いのは「原始仏教と比べればなんと日本仏教は堕落しているのか」というものなのですが、こうした批判がなぜ生まれてきたのかも考えることになります。そして同時にこの批判の問題点についても私達読者は気づくことになるでしょう。

この本は改めて〈仏教学〉という学問そのものを俯瞰で見ることができる素晴らしい作品です。

新アジア仏教史01インドにおける仏教

『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』~仏教とカースト制の関係や時代背景を学ぶのにおすすめ!

この本は仏教教団が生まれた当時のインド社会を知るのにおすすめの作品です。

仏教もゴータマ・ブッダという偉大な人物が突然生まれたわけではなく、古代より続くインド世界の文脈の中で生まれてきたことがよくわかります。

当時の社会事情を見ていくことで思想や理論だけでは見えてこない仏教教団の姿が見えてきます。これは刺激的でした。やはりインドは一筋縄ではいかない存在だなと改めて実感することになりました。

『新アジア仏教史』シリーズは2010年段階最新の研究が反映されています。その点もこのシリーズのおすすめポイントとなっています。

大乗仏教の思想インドにおける仏教

中村元選集第21巻『大乗仏教の思想』~原始仏教と初期大乗について考えるのに刺激的なおすすめ参考書

今作では日本仏教にも直接関わってくる大乗仏教の思想やその成立・発展過程を知ることができます。中村元先生の特徴は単に思想だけでなく当時の時代背景と絡めて語る点にあります。この本でも当時の時代背景や当地の気候風土、民族性など幅広い視点から仏教を見ていきます。

この本では冒頭からいきなりドキッとする指摘がなされます。記事タイトルにありますように仏教とは何かを考える上で非常に興味深い指摘満載の名著です。

パウッダインドにおける仏教

中村元、三枝充悳『バウッダ[佛教]』~阿含経とは何か、大乗経典の成立伝播の過程を学ぶのにおすすめの参考書

この本は日本ではあまり馴染みのない阿含経典についてや大乗仏教の成立伝播の過程を学べる参考書となっています。

私も阿含経典とはどのようなものなのか、いつどのようにして日本に入りどのように読まれてきたのかということに興味があったのでこの本は非常にありがたいものがありました。詳しいながらもわかりやすい解説ですので仏教をより深く学びたい方にも読み応え抜群だと思います。

大乗仏教についてもその成立と伝播の過程がわかりやすく解説されます。日本に伝わってきた仏教がどのようなものだったのか、また日本で信仰されてきた仏教とインドの原始仏教との違いがこの本で明らかにされます。

仏教とは何かを考える上で素晴らしい参考書であるのは間違いありません。

原始仏教から大乗仏教へインドにおける仏教

中村元選集第20巻『原始仏教から大乗仏教へ』~仏教史の転換点!日本仏教を考える上でも重要な示唆が満載の名著

今作ではこの時代の仏教思想の豊かさや当時の時代背景とのつながりを学ぶことができます。

また、大乗仏教が生まれてくる萌芽もこの本では詳しく見ていくことになります。大乗仏教は民衆を無視した既存教団への反発から生まれたという単純な構図で語られがちですが、実際はそう簡単な話ではありません。もちろん、そうした側面もあったかもしれませんが、そこには様々な社会要因も絡んでいたこともこの本では学べます。

入門書としてはかなり厳しい内容ですがより詳しく仏教を学びたい方にはとてつもなく読み応えのある大作です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

生活の世界歴史5インド思想と文化、歴史

辛島昇・奈良康明『生活の世界歴史5 インドの顔』~インド人の本音と建て前。生活レベルの精神性を幅広く知れるおすすめ本!

実際の生活には「本音と建て前」があります。これを無視してどちらかだけを取り上げてしまうと全く別のものが出来上がってしまうという著者の指摘にはたしかに「なるほど」と頷けるものがありました。

本書ではこうした宗教面だけでなく、カーストや芸術、カレーをはじめとした食べ物、政治、言語、都市と農村、性愛などなどとにかく多岐にわたって「インドの生活」が説かれます。仏教が生まれ、そしてヒンドゥー教世界に吸収されていったその流れを考える上でもこの本は非常に興味深い作品でした。

原始仏教の生活倫理インドにおける仏教

中村元選集第17巻『原始仏教の生活倫理』~当時のインド社会と在俗信者の生活、葬儀事情を知れる名著

この本は原始仏教教団と共にあった在家の人々と仏教の教えについて説かれた参考書です。原始仏教教団は言うまでもなく出家者の教団です。世俗の生活とは全く離れた修行生活がその本義です。

ですがその教団は出家者だけで成り立つわけではありません。在家信者として生活する一般の人々あってこその出家教団でもあります。この本ではその一般の人々がどのように仏教と共に生きていたかを知ることができます。

また、原始仏教は葬式をしたのかどうかという問題もこの本では詳しく説かれます。葬式仏教批判に対する答えとしてもこの本は大きな意味があると思います。

原始仏教の思想インドにおける仏教

中村元選集第15,16巻『原始仏教の思想Ⅰ、Ⅱ』~最初期の仏教を思想面で見ていく参考書

今作の分量はなんと二冊合わせておよそ1800ページという驚異の大ボリュームです。

仏教の入門書としては正直おすすめすることはできませんが、原始仏教についてより深く学ぶには非常におすすめな作品です。

この本は原始仏教における思想を原典に即して見ていくところにその特徴があります。最初期の仏教教団はどのようなことを説いていたのか、そしてどのように思想が発展、体系化されていったのかを原典を読みながら解説していきます。原典の引用がとにかく膨大です。

思想面にフォーカスしてがっちり説かれるこの本は読みごたえ抜群の名著です。

原始仏教の成立インドにおける仏教

中村元選集第14巻『原始仏教の成立』~仏教はどのようにして生まれたのか。最初期の教団を取り巻く状況を知るのにおすすめ

この本は仏教教団の最初期について解説された作品です。中村元先生は最初期の仏教教団の様子を当時の時代背景や思想界の様相と絡めてこの本でお話ししていきます。

仏教が起こってきた時代背景については以前当ブログでも紹介した中村元著『古代インド』でも語られていました。この『古代インド』は初学者でもわかりやすく読むことができる入門書として非常におすすめな作品ですが、本作『中村元選集〔決定版〕第14巻 原始仏教の成立 原始仏教Ⅳ』ではさらにかっちりと古代インドと原始仏教教団のつながりを見ていくことができます。