マルクス

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(6)レーニンが受けた寛大なシベリア流刑~過酷なドストエフスキー流刑時代との違いとは

レーニンは海外旅行から帰国後の1895年12月、革命活動の容疑で逮捕されます。これが彼にとっての初めての逮捕となりました。

ですが想像以上に監獄は緩かったようです。むしろ快適とさえ言えたかもしれません。レーニンはこの監獄期間を利用したくさんの本を読み、政治的著作の執筆まで行っています。

差し入れも自由で、監視をかいくぐっての秘密のメッセージ交換までしていました。

これでは革命家を捕まえて監獄に入れた方が政府にとっては都合が悪いのではないかと思ってしまうほどです。

ドストエフスキーが逮捕された1849年の時とはまるで違う状況です。その頃の留置はかなり過酷で発狂する者や命を落とす者もいたというのですからその違いは歴然であるかと思われます。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(5)なぜ口の強い人には勝てないのか~毒舌と暴言を駆使するレーニン流弁論術

レーニンは議論において異様な強さを見せました。その秘訣となったのが彼の毒舌や暴言でした。

権力を掌握するためには圧倒的に敵をやっつけなければならない。筋道通った理屈で話すことも彼にはできましたが、何より効果的だったのは毒舌と暴言で相手をたじたじにしてしまうことでした。

この記事ではそんなレーニンの圧倒的な弁舌についてお話ししていきます。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(4)革命家のバイブル、チェルヌィシェフスキーの『何をなすべきか』に憧れるレーニンとマルクスとの出会い

レーニンは兄の処刑によって革命家の道に進むことになりました。しかし最初からマルクス主義者として出発したのではありませんでした。彼はまずチェルヌイシェフスキーに傾倒します。

レーニンの母は彼が兄と同じ道を辿ることを恐れました。そのため農地経営を彼にさせようとしますが全く興味を示しません。彼は田舎生活を読書三昧で過ごし、自らの思想を練っていたのです。

そしてその後さらに心配した母は今度は弁護士になることを勧めます。そして驚くべきことに通常4年かかるカリキュラムを1年で終え、全ての科目でトップを取るという異次元の頭脳を見せつけました。やはりレーニンは驚くべき人物です。

こうして弁護士としての資格を取得しつつも、彼は革命家としての道を進んで行くことになります

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(2)レーニンの出自~貴族階級で裕福な家庭環境と人生を変えた兄の処刑とは

レーニンといえば、その後のソ連の方向を決定づけた冷酷な独裁者というイメージがありました。しかし彼は裕福で温かな家庭で育った普通の人間でした。そこから兄の処刑、町でのつまはじきなど、これまでの生活ががらりと変わってしまいました。こうした背景があったからこそレーニンが革命家になっていったと知り、それまでの冷酷で残酷な独裁者とはちょっと違った印象を受けることとなりました。

もちろん、レーニンのことを全肯定したとかそういうことではありません。しかし、身内が皇帝に殺されたという背景、家庭が壊されたという被害者意識、周囲の人間たちに手のひら返しをされたことによる人間不信など、様々な要因があってレーニンは革命へと突き進んでいったことを知ったのでありました。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(1)なぜ今レーニンを学ぶべきなのか~ソ連の巨大な歴史のうねりから私たちは何を学ぶのか

ソ連の崩壊により資本主義が勝利し、資本主義こそが正解であるように思えましたが、その資本主義にもひずみが目立ち始めてきました。経済だけでなく政治的にも混乱し、この状況はかつてレーニンが革命を起こそうとしていた時代に通ずるものがあると著者は述べます。だからこそ今レーニンを学ぶ意義があるのです。血塗られた歴史を繰り返さないためにも。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

V・セベスチェン『レーニン 権力と愛』~ロシア革命とはどのような革命だったのかを知るのにおすすめの伝記!

この本ではソ連によって神格化されたレーニン像とは違った姿のレーニンを知ることができます。

そして何より、この伝記はとにかく面白いです!なぜロシアで革命は起こったのか、どうやってレーニンは権力を掌握していったのかということがとてもわかりやすく、刺激的に描かれています。筆者の語りがあまりに見事で小説のように読めてしまいます。

この本はとにかくおすすめです。

ロシア革命やレーニンを超えて、人類の歴史や人間そのものを知るのに最高の参考書です。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

梶川伸一『幻想の革命 十月革命からネップへ』~飢餓で始まり、幻想で突き進んだ革命の実像

1921年、ソ連は大飢饉に見舞われていました。ですが、この飢饉は天災ではなく、人災でした。前年にレーニンが農民から徹底的に食料を収奪し、翌年に植えるための種まで持って行ってしまったため農村では大混乱が起き、未曽有の飢饉に苦しむことになったのです。

このままではソ連が崩壊するということでソ連は新経済政策(ネップ)を打ち出すことになります。このネップと飢餓の関係が本書の主要テーマとなります。

ソ連の描く素晴らしい未来とネップが結び付けられがちですが、著者の梶川氏は当時の資料を基に、ネップがそもそも飢餓と結びついたものでありとても理想的な政策とは呼べるものではないということを述べていきます。

ソ連首脳部が描いた幻想が膨大な餓死者を招いたという恐るべき事実をこの本では知ることになります。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

高本茂『忘れられた革命―1917年』~ロシア革命とは何だったのか。著者の苦悩が綴られた一冊

この本では1917年のロシア革命からその後のソビエトの独裁の流れについて解説されていきます。

この本の特徴は、かつて著者自身がロシア革命の理念に感銘を受け、マルクス思想に傾倒したものの、やがて時を経るにつれてソ連の実態がわかり、今ではそれに対して苦悩の念を抱いているという立場で書かれている点です。

最初からマルクス主義に対して批判をしていたのではなく、長い間それに傾倒していたからこそ語れる苦悩がこの本からは漂ってきます。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

S.P.メリグーノフ『ソヴィエト=ロシアにおける赤色テロル(1918~1923)』~レーニン時代の凄惨な弾圧システムに衝撃を受ける…

ソ連時代に一体何が起きていたのか、それを知るために私はこの本を読んだのですが、想像をはるかに超えた悲惨さでした。人間はここまで残酷に、暴力的になれるのかとおののくばかりでした。

私は2019年にアウシュヴィッツを訪れました。その時も人間の残虐さをまざまざと感じました。ですがそれに匹敵する規模の虐殺がレーニン・スターリン時代には行われていたということを改めて知ることになりました。

この本はかなり衝撃的です。読んでいて目を反らしたくなるほどのものでした。