ドイツ

クラシック・西洋美術から見るヨーロッパ

ひのまどか『シューベルト―「孤独な放浪者」』~シューベルトの生涯を知るのにおすすめ伝記!

そしてこの伝記を読んで特に意外だったのは、シューベルトの引っ込み思案、謙虚さ、人のよさでした。普通、歴史に残るような天才は強烈なエゴを持っていたり、破天荒な生活を送るイメージですが、シューベルトは全く違いました。31歳にして命を落としてしまったのが非常に悔やまれます。

カフカの街プラハとチェコ文学

チャペック『マサリクとの対話 哲人大統領の生涯と思想』~チェコの偉大な大統領の傑作伝記!

この本は第一次世界大戦後独立したチェコの初代大統領となったマサリクについての伝記です。彼は元々哲学の教授であり、その人徳から哲人大統領と呼ばれ国民から深く敬愛されていました。チェコがなぜこんなにも文化的なのか。思想、言葉を大切にしているのか。そうしたヒントがマサリクにもあるような気がしました。

カフカの街プラハとチェコ文学

チャペック『山椒魚戦争』あらすじと感想~ナチスを風刺した驚異の作品!科学技術は人間を救うのか?現代SFの古典的傑作!

普通、SFもののスリリングな展開なら宇宙人とか怪物、機械などもっと恐ろしいものを選びますよね。ですがチャペックは一味違います。何と言っても山椒魚。正直ちょっとかわいいくらいの存在です。ですがチャペックの筆にかかるとその不気味さは宇宙人や怪物をはるかに超えてきます。そしてナチズム、全体主義に対する批判もこの作品には込められています。

スターリンとヒトラーの虐殺・ホロコースト

アーレント『エルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』概要と感想~ホロコーストはなぜ起こってしまったのか。人間の闇に迫る一冊

この本はアーレントの有名な「悪の陳腐さ」という言葉が生まれた作品になります。

アーレントはこの作品でナチスのホロコーストにおける恐るべき殺人システムの背景を考察します。

アイヒマンは極悪人ではなく、どこにでもいそうな人間であった。これが世界中を震撼させることになり、同時に激しい論争を引き起こすことになりました。

冷戦世界の歴史・思想・文学に学ぶ

E・ヴォルフルム『ベルリンの壁 ドイツ分断の歴史』~ベルリンの壁の歴史を学ぶのにおすすめな一冊!

この本はベルリンの壁や東西冷戦をまったく知らない人にもわかりやすく書かれた本です。

ですが入門書とあなどるなかれ。この本は私たちをより深いところまで連れて行ってくれます。単に歴史の流れをたどるだけでなく、なぜそうなったのか、そして今現在世界中で何が起こっているのかということまで考えさせてくれます。

この本はベルリンの壁の歴史を学ぶには非常におすすめです。図や写真も豊富で当時の様子もイメージしやすく、とても読みやすい本となっています。ぜひおすすめしたい一冊です。

冷戦世界の歴史・思想・文学に学ぶ

ベン・ステイル『マーシャル・プラン 新世界秩序の誕生』~戦後ヨーロッパ復興の裏側を知れる刺激的な作品

この本を読んでマーシャルプランというものがいかに入り組み、混沌としていたのかがわかりました。

「荒廃した戦後ヨーロッパがアメリカのおかげで経済復活を果たした」と言葉で言うのは簡単ですが、これがどれだけ山あり谷あり、大国同士の老獪な駆け引きありのとてつもないやり取りのもとなされていたというのは驚きでした。単にアメリカが莫大な資金を援助したで済む話ではなかったのです。

敵対するソ連がそれに反発するのはもちろんですが、資金を受け取る側のヨーロッパ諸国も「はいはい、そうですかありがたく頂戴します」とはならないというのが妙味です。特にかつての覇権国家イギリスとフランスの対応はかなり老獪です。さすがそれまで世界を支配していたというだけあり外交的な駆け引きの強さは並大抵ではありません。

冷戦世界の歴史・思想・文学に学ぶ

トニー・ジャット『ヨーロッパ戦後史』~歴史書の金字塔!世界の仕組みを学ぶのに最高な1冊!

この本では著者の超人的な知の広がりを目の当たりにすることになります。読んでいてまさしく、自分の知っている世界が広がる感覚・・・歴史における地理的、文化的な横軸がどこまでも広がり、時間という縦軸がぐ~っと伸びていく感覚・・・うまく言い表せないのですがこの本を読んでいると「自分の世界が広がる」という感覚を味わうことになります。

世界は世界と繋がり合っていること、そして時の流れがいかに世界にとって大きな意味を持っているかを感じさせられます。

ぜひぜひおすすめしたい名著中の名著です!

冷戦世界の歴史・思想・文学に学ぶ

O.A.ウェスタッド『冷戦 ワールドヒストリー』~冷戦時代の世界を網羅したおすすめ通史

この本を読んでいて驚いたのは冷戦が本格的に始まる第二次世界大戦後からソ連の崩壊に至るまで、それこそ世界のどこかで絶え間なく争いが起きているということでした。しかもその争いというのもいつ全面戦争になってもおかしくないほど危険なものだったということです。

冷戦といえばキューバ危機を思い浮かべていた私にとって、この事件の他にも全面戦争の危機が何度も何度もあったというのは本当に驚きでした。

第二次世界大戦の後は戦争が終わり、世界は平和だったと日本では考えがちですがまったくそんなことはなく、たまたま日本が戦場になっていないというだけの話で、世界中危険な空気があったということを思い知らされました。

ドイツの大詩人ゲーテを味わう

水木しげる『総員玉砕せよ!』あらすじと感想~自身の壮絶な戦争体験を描いた傑作漫画

Twitterで知り合った方に薦めていただいたご縁で読んだ『総員玉砕せよ!』でしたが、非常に心に残った本になりました。水木しげるさんがどのような過去を背負って生きていたのかを全く知らなかった自分が少し恥ずかしくなりました。『ゲゲゲの鬼太郎』を見る目もきっと変わったと思います。

この作品は漫画で書かれていますので、誰にでも手に取りやすい本となっています。戦後75年が経過し、コロナ禍で大混乱の今だからこそ大切にしたい1冊だと私は思います。非常におすすめです。

ドイツの大詩人ゲーテを味わう

『戦争と読書 水木しげる出征前手記』~知られざる水木しげるの姿と『ゲーテとの対話』のつながり

この作品は水木しげるが出征前に書いた手記と、それを基に荒俣宏がその手記の背景と、戦前、戦中、戦後の青年たちがどのように読書していたのかということが語られます。

もそもこの本を読むまで私は水木しげるのことを『ゲゲゲの鬼太郎』以外ほとんど知りませんでした。まさか戦争に出征してそこでの体験から様々な作品を書いているとは思ってもいませんでした。

この本は得るものの多い素晴らしい一冊でした。水木しげるをはじめとした青年たちが当時何を思い読書していたのか、そして彼らはどんな思いで戦争時代を生きていたのかを垣間見ることができます。非常におすすめです。