『レニングラード封鎖 飢餓と非情の都市1941-1944』~80万人以上の餓死者を出したサンクトペテルブルクの包囲戦

この本はあまりにショッキングです。かなり強烈な描写が続きます。地獄のような世界でレニングラード市民は生きていかなければなりませんでした。市民が飢えていき、どんどん死んでいく様子がこの本では語られていきます。生き残るために人々はどんなことをしていたのか。そこで何が起きていたのか。その凄まじさにただただ呆然とするしかありません。80万人以上の餓死者を出したというその惨状に戦慄します・・・

独ソ戦の悲惨さを学ぶのにレニングラード包囲戦は必読です。弾丸飛び交う戦場だけが戦争ではありません。一般市民を餓死させるという戦略的包囲も戦争のひとつの大きなあり方です。

この本はそうしたことを学ぶ上でも最適な1冊です。読むのに覚悟がいる本ではありますがぜひおすすめしたい作品です。

A・ナゴルスキ『モスクワ攻防戦ー20世紀を決した史上最大の戦闘』~独ソ戦をもっと知るならこの1冊!

前回の記事で紹介しました大木毅著『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』では、第二次大戦における独ソ戦の全体像が語られていました。その本の巻末にある文献解題でも本著『モスクワ攻防戦ー20世紀を決した史上最大の戦闘』は紹介されており、独ソ戦をもっと知りたい方にはとてもおすすめな本となっています。

写真や図も豊富で当時の様子をイメージしやすくなっています。

そして何より、読み物としてとても面白いです。著者の語り口が素晴らしく戦争という難しい内容ながらぐいぐい引き込まれてしまいます。なぜモスクワ攻防戦は世界最大規模の戦闘となったのか。なぜ兵士たちは無駄死にしなければならなかったのか。無敵と思われたドイツ軍がなぜ敗北したのかということがドラマチックに語られていきます。

神野正史『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』~ヒトラーの権力掌握の過程を知るのにおすすめな参考書!

民主主義であったはずのドイツがなぜ全体主義へと突き進んでいったのか。

これは日本においても当てはまる事象です。

ナチスを学ぶことは私達の歴史を学ぶことにもつながります。

この本ではいつものごとく、神野氏の絶妙な解説で進んで行きます。とにかく面白く、読みやすいです。ドイツの流れをまずは知りたいという方には非常におすすめな1冊となっています。

神野正史『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』~WW2の流れを掴むのにおすすめな1冊

第二次世界大戦とは実際にどのような戦争だったのか。ナチスはどのように動いたのか。スターリン率いるソ連はそれにどのように対抗したのか。イギリス、フランス、アメリカは?

複雑怪奇な国際情勢をこの本では学べます。そして単に出来事の羅列ではなくなぜ歴史がそのように動いたのかという「なぜ」を神野氏は強調していきます。ここが『世界史劇場』シリーズの素晴らしいところだと思います。単なる暗記ではなく、「なぜ」を考える思考力を鍛えてくれるところにこの本の特徴があると私は思っております。非常におすすめな一冊です。

大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』独ソ戦の入門書におすすめ!

この本は今とても売れているそうで、2020年新書大賞の1位を獲得しました。

この本では独ソ戦がなぜ始まったのか、そしてどのように進んで行ったかがわかりやすく解説されています。

そしてこの戦争における巨大な戦闘、モスクワ攻防戦、レニングラード包囲戦、スターリングラード攻囲戦についても解説していきます。独ソ戦の勝敗を決定づけるこれらの巨大な戦いとは一体どんなものだったのか。信じられないほどの犠牲者を出した圧倒的な戦いを私たちは知ることになります。

わかりやすく、そして読みやすい!そして新書サイズの本で巨大な独ソ戦がコンパクトにまとめられているのもありがたいです。

私達日本人が今あえて独ソ戦を学ぶ意義ー歴史は形を変えて繰り返す・・・

戦争がいかに人間性を破壊するか。

いかにして加害者へと人間は変わっていくのか。

人々を戦争へと駆り立てていくシステムに組み込まれてしまえばもはや抗うことができないという恐怖。 平時の倫理観がまったく崩壊してしまう極限状態。

独ソ戦の凄まじい戦禍はそれらをまざまざと私たちに見せつけます。

もちろん太平洋戦争における人々の苦しみを軽視しているわけではありません。 ですが、あえて日本から離れた独ソ戦を学ぶことで戦争とは何かという問いをより客観的に学ぶことができます。だからこそ私はあえて独ソ戦を学ぶことの大切さを感じたのでした。

ジイド『ドストエフスキー』~ノーベル賞フランス人作家による刺激的なおすすめドストエフスキー論

『ソヴェト旅行記』と同じく新潮社版のジイド全集は旧字体で書かれているので一瞬面を食らうのですが、読み始めてみるととジイドの筆が素晴らしいのかとても読みやすいものとなっていました。

そして何より、ドストエフスキーに対する興味深い見解がいくつもあり、目から鱗と言いますか、思わず声が出てしまうほどの発見がいくつもありました。今まで疑問に思っていたことや、かゆいけど手が届かなかった微妙なところをとてもわかりやすく解説してくれます。

フランス人作家ということでバルザックなどフランス文学との対比によってドストエフスキーを語ってくれるのも非常にありがたかったです。

この本は本当にすごいです。出版は1923年ということで、ドストエフスキー論の古典として有名な本ですがその内容は全く古びていません。

ジイド『ソヴェト旅行記』~フランス人ノーベル賞文学者が憧れのソ連の実態に気づいた瞬間

憧れのソ連を訪問し、どれほどこの国は素晴らしいのかと期待していたジイドでしたが、そこで彼は現実を知ってしまうことになります。その心情を綴ったのがこの『ソヴェト旅行記』という本になります。

ジイドの『ソヴェト旅行記』は非常に興味深い本でした。この記事ではその一部をご紹介していきますが、本当はもっともっと紹介したい箇所があります!それほど面白いです!

ぜひ皆さん自身で手に取ってみてください。ものすごく面白い本ですのでとてもおすすめです。

ドストエフスキーとも非常に関係の深い内容となっていますので、ドストエフスキーファンにもぜひおすすめしたい作品です。

『共食いの島 スターリンの知られざるグラーグ』~人肉食が横行したソ連の悲惨な飢餓政策の実態

この本ではこうした人肉食が起こるほどの飢餓がなぜ起きたのか、なぜロシアがこれほどまでに無秩序な無法地帯になってしまったのかが語られます。
この本はかなりショッキングな内容の本ですが、大量殺人の現場で何が起きていたのか、モスクワとシベリアの官僚たちのやり取り、ずさんな計画を知ることができます。

そして何より絶望的な飢餓の状況で人間はどうなってしまうのかということ。

ロシアを知るだけではなく、人間の歴史を知る上でも非常に重要な示唆が詰まった本となっています。とてもおすすめです。