インド思想と文化、歴史

インド・カレー紀行インド思想と文化、歴史

辛島昇『インド・カレー紀行』~カレーとはそもそも何か?奥深いインド文化も知れるおすすめ作品!

「私が本書で展開しているのは、カレーとして理解されるインド料理を素材とした、インド文化についての「文化論」なのである」

この本の素晴らしい点はインドのカレーという私たちにとって親しみやすいテーマからインドの歴史や文化も学べるところにあります。

「へ~!インドのカレーってそういうことだったんだ!」という発見からインドそのものの文化や歴史に自然と繋がっていく流れはお見事としか言いようがないです。これは面白い!

写真も豊富でインド料理やその原料となるスパイスなども具体的にイメージすることができるのもありがたいです。

インド人とのつきあい方インド思想と文化、歴史

清好延『インド人とのつきあい方―インドの常識とビジネスの奥義』~謎の国インドと日本人との違いを知れるおすすめ本!

この本は私たちにとって「謎」としか言いようのないインド人とはどのような人たちなのかを知ることができる作品です。

インド人というと私たちにとっては様々なステレオタイプがあると思います。ターバンやカレー、歌やダンス、頭の良さ、インドのカオスなどなど、どれをとっても何かしら強烈なイメージがあるのではないでしょうか。

そんな強烈なイメージのインド人は一体どのような人たちなのか、それをインドの歴史や生活、文化、ビジネスと絡めて様々な観点から学んでいくのが本書の大筋になります。

モディが変えるインドインド思想と文化、歴史

笠井亮平『モディが変えるインド』~現代インドの政治経済、外交を知るのにおすすめ!

この本では複雑なインド社会をモディ首相という人物を軸に見ていくことになります。

モディ首相の簡単な略歴やその人柄、どのようにしてインド屈指の影響力を持つようになったのかがわかりやすく説かれます。

そしてモディ首相の政策やスローガンを通してインドの実態もあぶり出されてきます。モディ首相はインド国民から熱い支持を受けていますが、もちろん全てが順風満帆でうまくいっているわけではありません。インドという大国の隅から隅まで納得させる一律の政策など不可能です。複雑怪奇とすら言える多様性があるインドです。問題は山積みです。ただ、それでもなお国民に期待を抱かせる存在がこのモディ首相なのでした。

現代インドの政治経済、外交の概要を知る入門書としてこの本は非常に優れていると思います。

インドの正体インド思想と文化、歴史

藤本欣也『インドの正体―好調な発展に潜む危険』~写真も豊富!2006年段階のインドを広く学べるおすすめ本

この本では2006年当時のインド社会を知ることができます。2023年となった今、インドは中国を凌駕する勢いで成長し続ける巨象です。この本はそのインドの2006年当時はどのような状況だったのかを知れる非常に興味深い作品です。

この本では「社会、文化、ビジネス」と様々な視点からインドを見ていきます。写真も豊富ですので非常に読みやすく、現地の状況もイメージしやすいです。また、格差の問題はインドに限った問題ではありませんが、カースト問題が今なお残るインドならではの問題もこの本では知ることができます。

現代インドについて知りたいという方に非常におすすめな作品です。

歴史のなかのカーストインド思想と文化、歴史

藤井毅『歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』~カーストはイギリスの植民地政策によって固定化された?

インドにおけるカースト制はとにかく複雑です。

古代インドにもカースト制はありました。ですが、そのインド土着のカースト制を一変させ、より強固なものに変えてしまったのがイギリス植民地政策だったのでした。そしてさらに難しいことに、イギリス植民地統治を生き抜くために自分たちのカーストを利用したという、インド人側からの働きかけもあったことをこの本では知ることになります。

イギリスをはじめとした西欧諸国と現地のインド人、その双方向の作用があって現在のカーストに繋がっている、そのことを詳しく見ていけるこの本はとても貴重です。

著者はインドのカースト制度は単純化されて語られがちであるということを本書で指摘していました。この本ではなぜそうした単純化したカースト制が語られてしまうのかを歴史的な背景から解き明かしてくれます。

インド残酷物語インド思想と文化、歴史

池亀彩『インド残酷物語 世界一たくましい民』~カースト制度の根深い闇。大国インドの現在を学ぶのにおすすめの一冊!

この本は現代インドにおけるカースト制について語られる作品です。この本は著者の現地での調査に基づいた貴重な記録です。机の上で文献を読むだけでは知りえない、リアルな生活がそこにはあります。

この本を読んで、カースト差別が現在でもこれほど強力に残っているのかということに驚いたのはもちろん、「実際にどんな差別を受け、どんな恐怖、屈辱に生きていかなければならないか」を知り、私はそれこそ恐れおののいてしまったのでした。

圧倒的な成長を見せるインドの影をこの本では知ることになります。この本を読めばインドという強烈な存在を通して私たちの生きる日本についても考えることになることでしょう。

古代インドの文明と社会インド思想と文化、歴史

山崎元一『古代インドの文明と社会〈世界の歴史3〉』~インドの思想・宗教が生まれてくる時代背景を学ぶのにおすすめ!

この本は古代インドの歴史や文化を詳しく知ることができるおすすめの解説書です。

「詳しく知ることできる」というと、難しくて読みにくい本というイメージが湧いてくるかもしれませんがこの本は全く違います。ものすごく読みやすく、わかりやすいです。

そして私がこの本を手にったのは仏教が生まれてくる時代背景を知りたかったからでした。なぜ仏教が人々に受け入れられたのかを知るには、思想面だけではなくそれが受け入れられた土壌も知らねばなりません。当時の人々がどんな社会に生き、どんな生活をしていたのか、それを私は知りたかったのです。

この本はそんな私の疑問に答えてくれた素晴らしい作品でした。

インド宗教興亡史インド思想と文化、歴史

保坂俊司『インド宗教興亡史』~仏教、ヒンドゥー教、イスラム教だけでなくシク教、ジャイナ教などとの相互関係も知れる参考書!

この本はインドの宗教を学ぶ上で非常にありがたい参考書です。

と言いますのも、この本ではインドに多数ある宗教をそれぞれ別個に見ていくのではなく、その相互関係に着目して語っていく点にその特徴があるからです。

インド古代のバラモン教と仏教、ジャイナ教の関係。そこから時を経てヒンドゥー教とイスラム教が力を増す背景とは何だったのか。なぜ仏教は衰退したのか、そしてその姉妹宗教と言われるジャイナ教はなぜ今も生き残ることができたのか。これらを時代背景や宗教間の相互関係から見ていけるこの本は非常に貴重です。宗教は宗教だけにあらず。歴史や文化、政治経済すべてが関わります。この本ではそんな歴史のダイナミズムを感じることができる非常に刺激的な作品です。

ヒンドゥー聖地インド思想と文化、歴史

宮本久義『ヒンドゥー聖地 思索の旅』~巡礼者が訪れるインドの秘境やガンジスの聖地を知るのにおすすめ

ヒンドゥー教において聖地巡礼は非常に大きな意味を持っています。インドにおける聖地として有名なのはバラナシのガンジス川ですが、他にも多くの聖地があります。この本では私達日本人にとってあまり馴染みのない聖地が出てきます。特に5000メートルを超える山々にある聖地はそこに行くだけでも非常に過酷です。時には命がけの巡礼にもなるこうした聖地をインドの人々はどんな思いで歩いているのか。体の弱い私には不可能であろうインドのあまりにディープな世界をこの本では知ることができます。

古代インドの思想インド思想と文化、歴史

山下博司『古代インドの思想―自然・文明・宗教』~インドの気候・風土からその思想や文化の成り立ちを知れるおすすめ参考書

この本ではインドの思想がその独特な気候や風土から大きな影響を受けていることを知ることができます。インドではなぜ無限の宇宙的な哲学が生まれたのか、なぜインド人は多神教的な宗教を信仰するのか、そうしたことを自然や風土という切り口から見ていけるこの作品は非常に刺激的です。

文化や思想、宗教は自然環境と無縁ではいられない。この解説には思わず「なるほど!」と膝を打ってしまいました。

この本では他にもモンスーン気候や乾季、雨季、森などインド思想を考える上で非常に興味深いことが語られます。

これは面白いです。インドだけでなく、あらゆる宗教、思想、文化を考える上でもとても重要な示唆を与えてくれる一冊です。