2021年

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『かもめ』あらすじと感想~ロシア演劇界に革命を起こしたチェーホフの代表作!

『かもめ』はチェーホフの代表作として今では有名ですが、実はこの劇の初演はとてつもない大失敗だったと言われています。

『かもめ』は当時の劇としては斬新すぎてお客さんどころか演じる役者ですら全く理解できなかったそうです。

しかしその2年後ダンチェンコによってモスクワ座で『かもめ』が再演されます。チェーホフの意図するところを深く理解した彼によって指揮された『かもめ』はロシア演劇界最大級の事件になるほどの大成功を収めます。

この成功があったからこそ後の『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』という名作劇が作られていくことになったのでした。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『僧正』あらすじと感想~幼い頃の幸福な思い出~僧正と母の再会・死別を描いた感動作

この物語は20ページほどの短い物語ではありますが思わずじーんとくるものがあります。母が最期に息子に呼びかけるシーンは何度読んでも泣きそうになります。

この作品が書かれたのはチェーホフの晩年です。

チェーホフ自身も結核でこれ以上あまり長く生きられないことを覚悟していたと思います。そういう時期にこの作品が書かれたというのもチェーホフを知る上で非常に意味があることなのではないかと私は感じました。

この作品もおすすめです。チェーホフ作品の中でも随一の感動作です。

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チェーホフ『犬を連れた奥さん』あらすじと感想~不倫は悪か…チェーホフが見つめた男女の愛と苦悩とは

この物語は不倫の物語です。

チェーホフはこうした不倫の物語を多く描いています。 実はこれ、フランス人作家エミール・ゾラにもそうした傾向がありました。

ゾラにしろチェーホフにしろ、なぜ不倫ものを書いたのでしょう。私はそこに彼ら流の問題提起があるように思えます。

不倫ものをチェーホフは多く書きましたが、単にゴシップ的なものを書きたかっただけというのではなく、そこにある人間の苦悩をチェーホフは見つめていたのではないでしょうか。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『谷間』あらすじと感想~チェーホフの人間愛が感じられる名作

チェーホフの『谷間』の老人はドストエフスキーの『百姓マレイ』を彷彿とさせるものがあります。農村に生きる素朴な老人。彼らの優しさが人間性への信頼を取り戻させてくれたのです。

この作品はたしかに暗い雰囲気があるものの、救いがあります。チェーホフの人間愛や優しさが感じられる作品です。

ゴーリキーやトルストイなど錚々たる人達にも絶賛された作品です。ページ数も50頁ほどと読みやすい分量になっています。ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『可愛い女』あらすじと感想~トルストイ大のお気に入りの作品

『可愛い女』を大絶賛し他人の前で何度も朗読までしたトルストイ。彼がいかにこの作品を気に入っていたかがうかがわれます。

こうしたところにもトルストイの考える理想像の特徴が見えてきます。

ですがこれに関して一つ裏話があります。

と言うのもチェーホフはトルストイのような意図で『可愛い女』を書いたわけではなかったのです。

チェーホフはまったく自分の意思のないオーレニカを風刺する意図で『可愛い女』というタイトルにしこの作品を書き上げたのでした。

ある作品をどのように読むか。そこに読み手の個性が表れるという好例がこの『可愛い女』とトルストイの組み合わせなのではないかと私は感じました。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『ロスチャイルドのバイオリン』あらすじと感想~人生を無駄にしてしまった男の悲哀と目覚めの感動作

チェーホフ『ロスチャイルドのバイオリン』あらすじ解説―人生を無駄にしてしまった男の悲哀と目覚めの感動作 チェーホフ(1860-1904)Wikipediaより 『ロスチャイルドのバイオリン』は1894年にチェーホフによっ…

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『恋について』あらすじと感想~既婚者に恋した男が語る恋の不思議さとは

この作品は短編三部作の最後の作品で『箱にはいった男』、『すぐり』の続きの物語となっています。

「なぜあんな男にあんないい人が恋しているんだ」

これは男女逆パターンも含めて今でもよく見かける永遠の謎ですよね。

それをチェーホフは得意のユーモアと心理描写で描き出します

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チェーホフ『すぐり』あらすじと感想~幸福とは何かを問う傑作短編!幸せは金で買えるのか。ある幸福な男の恐ろしすぎる実態とは

「『すぐり』は短い作品であるが、鋭く人の心を刺す。人は何のために生きるかを、わずか数ぺージに、香り高く圧縮して見せてくれている。

『すぐり』はすばらしい、そしてある意味でおそろしい作品である。小品といってもいい短い形式の中に盛りこまれた内容は一個の長篇小説に匹敵する。」

ロシア文学研究者佐藤清郎氏も絶賛するチェーホフ短編の最高傑作!

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『箱にはいった男』あらすじと感想~精神の自由を放棄した奴隷人間の末路

「箱に入った男」ことベーリコフはその小心さ故自分で何かを決めることができず、お上、つまり権力者のお墨付きがなければ生きていけない人間です。

お上による禁止というのは従う側にとっては何も考える必要がありません。ただそれを破った人間が悪。単純明快です。

しかしこれが許可とか認可になると、どこまでがよくて何をしたらだめかはある程度自分で考えなければなりません。彼は自分で考えることをとにかく恐れるのです。

この作品を読んでいると今の日本とほとんど変わらない状況が浮かび上がってきます。

この作品は今こそ読みたいおすすめな作品です。

退屈な話ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『黒衣の僧』あらすじと感想~天才と狂気は紙一重?思わず考えずにはいられない名作

天才とは何なのか。逆に言えば狂気とは何なのか。人と違ったことを考えたり、人と違うものが見えることが狂気であるならば、天才とはもれなく治療の必要な狂人となってしまうではないか。

そして巷でもてはやされる天才が結局そうではない以上、凡人が天才として祭り上げられているに過ぎないのではないか。そんな世の中などうんざりだと主人公コーヴリンは語ります。

これはとても考えさせられますよね。

天才ってそもそもなんだろう。狂気と紙一重のものなのではないだろうか。

これはとても面白いテーマです。そして同時に恐ろしくもあります。そんな恐るべき深淵をチェーホフは得意のシンプルな語りで問いかけてきます。