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ひのまどか『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』あらすじと感想~『モルダウ』で有名なチェコ音楽家のおすすめ伝記!

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ひのまどか『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』あらすじと感想~『モルダウ』で有名なチェコ音楽家のおすすめ伝記!

今回ご紹介するのは2004年にリブリオ出版より発行されたひのまどか著『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』です。

早速この本について見ていきましょう。

ベートーヴェン以上に難聴になったスメタナ。生誕180年・没後120年。「ひたすら暗くて、辛い人生を送った人…」と作者は思いこんでいたが、チェコの取材を開始してすぐに、その間違いを知る。全6曲の『わが祖国』をはじめ、耳の病に苦しみつつも大きな成功を得たスメタナの前向きな生きる姿を感動的に描く。

Amazon商品紹介ページより
スメタナの肖像画(油絵、1854年)Wikipediaより

スメタナといえば『モルダウ』!この曲は誰もが知る名曲ですよね。

私もこの曲が大好きです。

2019年にプラハを訪れた時も、この曲を聴きながらモルダウ(ヴルタヴァ川)を眺めて思わず泣いてしまったのを覚えています。

この曲には何度となく泣かされてきました。旅の節目節目でこの曲を聴き、その度に感情が揺さぶられて涙が出てしまいました。今聴いても泣いてしまいそうです。

そんな『モルダウ』でしたが、正直私はスメタナその人についてはほとんど何も知りませんでした。曲自体は知ってはいても、その背景となるものが何もわからなかったのです。(それでも泣けてしまうというのがこの曲のすごいところですよね)

最近私はチェコ文学についてブログの更新をしてきました。その過程でよりチェコのことを知りたいという思いがますます強くなってきました。そこでプラハといえばやはり『モルダウ』、スメタナだなと感じ、この本を手に取ってみたのでありました。

その結果はもう大当たり!素晴らしい伝記と出会うことになりました!『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』。これはいい本です!

読んでいてすぐに引き込まれました。著者のひのまどかさんの素晴らしい語り口。まるで映画を観ているかのようにテンポよくスメタナの劇的な生涯が語られていきます。

あとがきではこの本について次のように書かれています。スメタナ自身についても知れる箇所ですので少し長くなりますがじっくり見ていきます。

強国に支配された国々では国民の抵抗の手段が音楽しかない、ということが歴史上実際にあった。

特に東欧や北欧の小国、チェコ、ハンガリー、フィンランドなどは大なり小なりそうだった。反面そうした国にこそ音楽文化が花開き、今や音楽大国と呼ばれるまでになっている。つまるところ、本当に人の心を打つ音楽を生み出せるのは、逆境で苦しみ闘った作曲家たち、ということになるのだろうか。

スメタナの《わが祖国》を聴く度に、私はこれ程までに痛切に国を愛する気持ちを表明した音楽は稀だと感じてきた。全六曲中の《ブルタワ(モルダウ)》は、美しい自然を描いて我々日本人の感性にもぴったり合うため小・中学校の音楽鑑賞教材にもなっているが、この連作交響詩の背景にある歴史は重く、厳しい。

できればそうしたことを知った上で《わが祖国》全曲を聴いていただきたい、という思いでスメタナ物語を書くことにしたが、最初私はちょっと憂うつだった。

というのも当初分っていた範囲で推測した彼の人生は公私共に悲運の連続で、救いようがなく見えたからだ。

極めつけは途中から耳が聞こえなくなったことだが、音楽家にとり致命的なこの悲運に見舞われた人は、数多い作曲家の中でもベートーヴェンと彼しかいない。さらにこの両者を比べてみても、べートーヴェンの難聴はゆっくりと進行した上左耳は最後までかすかに聞こえていたと言われているのに対し、スメタナは五〇歳の夏に発病し、その年の終りには完全に聴力を失ってしまった。生活に関してもべートーヴェンは多くの貴族の賛美者に物心両面で支えてもらえたが、スメタナにはそうした援助はほとんどなかった。

ひたすら暗くて辛い人生を送った人、多分人柄も重苦しくて憂うつなのだろう、と私は思いこんでいたのだが、チェコでの取材を開始してすぐにそれはとんだ間違いだと知った。

幸運にも入手できたスメタナの日記や手紙や周囲の人々の回想から浮かび上がる彼の人となりは、明るくて、ユーモアがあって、社交的で、大家族の中でみんなから愛されて育ち、自らも愛情豊かな人だということだった。幼い子供三人と最初の妻を相次いで失ったというのはたしかに大きな悲劇だが、同時代のドヴォルジャークやヤナーチェクも同様の体験をしているところを見ると、当時の医療水準ではそうしたことがめずらしくなかったとも思える。

また最晩年、耳の病に苦しめられながらも、音楽上の大きな成功を幾つも得ていたし、自身も最後まで歓びを見つける姿勢を失わなかった。生来の前向きな生き方と強靱な精神力こそスメタナの創作力の源であり、運命には決して負けない人だったのか。

さらに私の心に深く刻まれたのはボヘミアのこの上もなく美しい町や村や自然で、その中で育ち暮らしたスメタナは、幸せな人だったとさえ思えたのである。


リブリオ出版、ひのまどか『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』P263-265

この引用箇所を読むだけでスメタナにものすごく興味が湧いてきますよね。私は本を読む時はいつもまえがきとあとがきを読んでから本文に入っていきます。今回このあとがきを読んだ時、早く本文を読み通したくてうずうずしてしまうほどでした。

この伝記は非常におすすめです。商品紹介に「全6曲の『わが祖国』をはじめ、耳の病に苦しみつつも大きな成功を得たスメタナの前向きな生きる姿を感動的に描く」とありましたように実際私もうるっと来てしまいました。これは素晴らしい伝記です。ぜひぜひ読んで頂きたい逸品です!あまりにこの伝記が素晴らしいので私はこれからひのまどかさんの作曲家の伝記シリーズをすべて読んでいくことにしました。次の記事以降からそのひとつひとつの伝記を紹介していきたいと思います。

以上、「 ひのまどか『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』~『モルダウ』で有名なチェコ音楽家のおすすめ伝記!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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