目次
「ルーゴン・マッカール叢書」第6巻『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』の概要とあらすじ
『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』はエミール・ゾラが24年かけて完成させた「ルーゴン・マッカール叢書」の第6巻目にあたり、1876年に出版されました。
私が読んだのは論創社出版の小田光雄訳の『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』です。
では、早速あらすじを見て参りましょう。今回も帯を引用します。
ナポレオン三世によるクーデタのあと、第二帝政の政治力学の光と影を活写する。
第二帝政の内幕を明かしボナパルティスムの実態を政治家・ウージェーヌの活動を通して照射する政治小説。
1852年のクーデタ参画の功績によって、ウージェーヌは政府の参事院長宮の地位にあり、それが皇帝とその取り巻きたちの意向の影響を受け辞任するところから『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』は始まっています。そしてルーゴンを支えた一味、謎のイタリア人女性クロランドが絡み、ルーゴンの個人的性格ばかりでなく、政治や権力に対する資質も描かれ、この作品を「ルーゴン=マッカール叢書」唯一の政治小説とならしめていると言っていいでしょう。
論創社出版 小田光雄訳『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』
この作品はルーゴン家の長男ウージェーヌ・ルーゴンが主人公の物語です。
「ルーゴン・マッカール叢書」の第1巻『ルーゴン家の誕生』でもウージェーヌがいち早くパリへと出発し、そこで得た政治的影響力によってルーゴン家はプラッサンでの権力闘争に勝利することになります。
第2巻の『獲物の分け前』でも三男のアリスティッド(サッカール)への便宜を図ったり、要所要所でこの人物は姿を現します。
ルーゴン・マッカール家家系図
家系図ではウージェーヌは左側に位置します。
今回の作品ではその彼がどのように権力を手中に収め、政治家として活動しているかが描かれます。
フランス第二帝政期の政治がどのように行われていたのかをこの小説では垣間見ることができます。
感想―ドストエフスキー的見地から
この小説ではドストエフスキーとの目立った関連性はありませんでしたが、政治の裏側を覗くことができて興味深い内容でありました。
ウージェーヌが戦う場のなんと難しいことか。
あまりに複雑な人間関係、利害関係。
支援してくれる人間にどのように恩恵を施すか。
窮地に陥った時でも彼らに約束した恩恵を与えなければならない。でもできない。さあどうする!と常に彼は戦い続けています。
ウージェーヌは結局失脚してしまうのですが物語のラストでは見事な復活を果たしています。
彼は目先の浮き沈みではなく長期的な視野で戦っていたのです。その戦略的な政治的駆け引きには驚くしかありませんでした。
もし現実の世界でも政治という世界がこうしたとんでもない駆け引きのやり合いだとしたら、政治の世界で何が起こっているかなんて私にはさっぱりわかりません。
私が普段見ている様々なメディアの情報はその一部を切り取った表面的で局所的なものでしかありません。その裏でウージェーヌのような長期的、戦略的な駆け引きがあるのだとしたらもうお手上げです。
政治家は政治家で求められる資質がある。
この小説を読んでそう思わせられました。
以上、「ゾラ『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』政治家もつらいよ。パリの政治家の生態と駆け引き」でした。
※2021年5月4日追記
今現在、私はソ連の歴史を学んでいます。その過程で学んだレーニンとスターリンという存在の巨大さは計り知れないものがあります。世界を動かす政治家というのはどういうものかということを考えさせられました。以下の記事でこの二人について詳しく紹介していますのでぜひご覧ください。
Amazon商品ページはこちら↓
ウージェーヌ・ルーゴン閣下 (ルーゴン・マッカール叢書 第 6巻)
次の記事はこちら
前の記事はこちら
関連記事
コメント