日本

光の画家フェルメールと科学革命

ティモシー・ブルック『フェルメールの帽子』~西洋「東インド会社」と中国・日本・アジア貿易から考えるオランダ絵画とは

フェルメールが生きた17世紀オランダは1602年に設立された東インド会社の繁栄によって黄金時代を謳歌していました。

その莫大な財とグローバルな市場があったからこそフェルメールの絵はフェルメールの絵たりえたのです。

そしてフェルメールの絵に出てくる数々の「もの」はまさしく中国やアジアからやって来たものです。これらの「もの」に注目することで17世紀のグローバルな世界を概観することができる。

それがこの本の大まかな流れになります。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

アダム・ヒギンボタム『チェルノブイリ』~原発事故はなぜ起こったのか、ソ連の政治経済・官僚システムとの繋がりも知れる名著

この本は単にチェルノブイリ原発の事故そのものだけを語るのではなく、この事故が起きるそもそもの原因となったソ連の構造そのものについても多く言及しています。

これはものすごく興味深かったです。ソ連末期がどのような状態だったのかということもこの本で知ることができます。

ロシア・ウクライナ問題に揺れる今、原発の問題が強く注視されています。

日本も全く他人事ではない原発事故について大きな示唆を与えてくれる衝撃の一冊です。

冷戦世界の歴史・思想・文学に学ぶ

O.A.ウェスタッド『冷戦 ワールドヒストリー』~冷戦時代の世界を網羅したおすすめ通史

この本を読んでいて驚いたのは冷戦が本格的に始まる第二次世界大戦後からソ連の崩壊に至るまで、それこそ世界のどこかで絶え間なく争いが起きているということでした。しかもその争いというのもいつ全面戦争になってもおかしくないほど危険なものだったということです。

冷戦といえばキューバ危機を思い浮かべていた私にとって、この事件の他にも全面戦争の危機が何度も何度もあったというのは本当に驚きでした。

第二次世界大戦の後は戦争が終わり、世界は平和だったと日本では考えがちですがまったくそんなことはなく、たまたま日本が戦場になっていないというだけの話で、世界中危険な空気があったということを思い知らされました。

ドイツの大詩人ゲーテを味わう

水木しげる『総員玉砕せよ!』あらすじと感想~自身の壮絶な戦争体験を描いた傑作漫画

Twitterで知り合った方に薦めていただいたご縁で読んだ『総員玉砕せよ!』でしたが、非常に心に残った本になりました。水木しげるさんがどのような過去を背負って生きていたのかを全く知らなかった自分が少し恥ずかしくなりました。『ゲゲゲの鬼太郎』を見る目もきっと変わったと思います。

この作品は漫画で書かれていますので、誰にでも手に取りやすい本となっています。戦後75年が経過し、コロナ禍で大混乱の今だからこそ大切にしたい1冊だと私は思います。非常におすすめです。

ドイツの大詩人ゲーテを味わう

『戦争と読書 水木しげる出征前手記』~知られざる水木しげるの姿と『ゲーテとの対話』のつながり

この作品は水木しげるが出征前に書いた手記と、それを基に荒俣宏がその手記の背景と、戦前、戦中、戦後の青年たちがどのように読書していたのかということが語られます。

もそもこの本を読むまで私は水木しげるのことを『ゲゲゲの鬼太郎』以外ほとんど知りませんでした。まさか戦争に出征してそこでの体験から様々な作品を書いているとは思ってもいませんでした。

この本は得るものの多い素晴らしい一冊でした。水木しげるをはじめとした青年たちが当時何を思い読書していたのか、そして彼らはどんな思いで戦争時代を生きていたのかを垣間見ることができます。非常におすすめです。

スターリンとヒトラーの虐殺・ホロコースト

ソ連兵は何を信じ、なぜ戦い続けたのか~「独ソ戦に学ぶ」記事一覧

この本では一人一人の兵士がどんな状況に置かれ、なぜ戦い続けたかが明らかにされます。

彼ら一人一人は私たちと変わらぬ普通の人間です。

人は何にでもなりうる可能性がある。置かれた状況によっては人はいとも簡単に残虐な行為をすることができる。自分が善人だと思っていても、何をしでかすかわからない。そのことをこの本で考えさせられます。

スターリンとヒトラーの虐殺・ホロコースト

(3)ソ連の人海戦術と決死の突撃~戦場における「ウラー!」という叫び声とは

殺しても殺しても次から次へ死を恐れずに突撃してくる。これほどの恐怖はありません。

そして無謀な突撃は案の定壊滅的な被害を出しソ連兵は撤退するのですが、驚くべきことに、撤退する兵士を今度はソ連司令部が殺戮するのです。

ソ連軍において撤退は許されません。この後で紹介しますが、死ぬまで戦えという指令が鉄の掟として存在していたのです。だから撤退して戻ってきた兵士を軍規違反として殺すのです。

ソ連兵はナチス兵に蹂躙され、逃げれば今度はソ連軍にも殺されるのです。

こうして最前線に立たされる無数の兵士の死体が累々と積み重ねられていったのです。「ウラー!」の叫びと共に人海戦術が行われていたのでありました。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

富田武『シベリア抑留』~ソ連による戦後の過酷な強制労働の歴史

シベリア抑留と言うと日本人がソ連によって悲惨な目に遭わされたというイメージが浮かんできますが、ソ連の政治体制、独ソ戦の影響が大きく関わっていたことをこの本では知ることができます。

また、本の途中でいくつかコラムが挟まれ、ここでシベリア抑留をより知るためにおすすめな本が紹介されます。過酷な体験を基にした小説や回想録が紹介され、シベリア抑留をもっと知りたい方にとってありがたい情報が満載です。

シベリア抑留の全体像を掴むのにとてもおすすめな一冊です。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

S・D・ゴールドマン『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』~日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか。衝撃の名著!

まず先に言っておきます。この本はものすごいです。

ノモンハン事件という、私たちも名前だけは知っている歴史上の出来事が想像もつかないほど巨大な影響を世界に与えていたということがこの本で明らかにされています。

日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか、なぜ軍部が暴走し無謀な戦闘を繰り返したのかもこの本では分析されています。読むとかなりショックを受けると思います。私もこの本を読んでいて何度も「嘘でしょ・・・」と唖然としてしまいました。それほどショッキングな内容となっています。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

神野正史『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』~ヒトラーの権力掌握の過程を知るのにおすすめな参考書!

民主主義であったはずのドイツがなぜ全体主義へと突き進んでいったのか。

これは日本においても当てはまる事象です。

ナチスを学ぶことは私達の歴史を学ぶことにもつながります。

この本ではいつものごとく、神野氏の絶妙な解説で進んで行きます。とにかく面白く、読みやすいです。ドイツの流れをまずは知りたいという方には非常におすすめな1冊となっています。