日本仏教

ブッダの生涯インドにおける仏教

平川彰『ブッダの生涯 『仏所行讃』を読む』~漢訳された仏伝をもとに超人間的なブッダの生涯を見ていくおすすめ入門書

前回の記事では2世紀頃に活躍したアシュヴァゴーサによる仏伝叙事詩『ブッダチャリタ』をご紹介しました。

この『ブッダチャリタ』は西暦430年頃に曇無讖によって『仏所行讃』として漢訳されました。これが日本にも伝来し日本の仏教者にも伝えられたのでありました。最澄や空海、法然や親鸞もこの仏伝を読んでブッダに思いを馳せていたのではないでしょうか。

本書はこの漢訳の『仏所行讃』の書き下し文を読みながらブッダの生涯がわかりやすく解説される仏教入門書になります。

ブッダチャリタインドにおける仏教

『完訳 ブッダチャリタ』~アシュヴァゴーシャ(馬鳴)による『仏所行讃』としても知られる仏伝の大元!ブッダの生涯を叙事詩化!

今作『ブッダチャリタ』は1~2世紀頃にインドで活躍した仏教詩人アシュヴァゴーサ(馬鳴)による仏伝です。漢訳では曇無讖によって『仏所行讃』として翻訳されています。空海や最澄、鎌倉仏教の開祖たちもこの仏伝を読んでブッダの生涯を学んでいたのではないでしょうか。

現在語られるブッダの生涯の大元となったアシュヴァゴーシャの『ブッダチャリタ』。物語としても非常に面白い作品でした。

インドの僧院生活インドにおける仏教

G・ショペン『大乗仏教興起時代 インドの僧院生活』~定説だった大乗仏塔起源説を覆した衝撃の説!インド仏教の実際の姿とは!

大乗仏教は紀元後から小乗仏教を批判する形で生まれ、大きな勢力となりやがては中国を経由して日本にやって来た。私たちはそうしたイメージで大乗仏教を考えてしまいがちですが、大乗仏教教団そのものが5、6世紀になるまで存在していた形跡がないというのは驚くべき事実です。大乗経典自体は紀元一世紀頃から生まれてはいるものの、小乗教団と別の形で大乗教団が存在していたわけではないとショペンは言うのです。

「経典があるのに教団がないってどういうこと?」と皆さんも不思議に思うかもしれません。私もそうでした。

ですがショペンはこの本の中で鮮やかにその仕組みを解き明かします。正直、衝撃としか言いようがありません。

大乗仏教とは何かインドにおける仏教

『シリーズ大乗仏教 第一巻 大乗仏教とは何か』~最新の研究を基に様々な視点から大乗を考察する参考書

『シリーズ大乗仏教』は最新の研究成果が反映されているところにその特徴があります。

出版されたのが2011年と、今から十年以上前ではないかと思われるかもしれませんが1900年代の仏教学と比べるとその学説は大いに変化したものがあります。

その変化については以前当ブログでも紹介した『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』でも紹介されていて本書とも重なる内容も多いのですが、『新アジア仏教史』シリーズとは違う執筆陣による論集になりますので、さらに広い視野をこの本で得ることができます。

この本では仏教学の現在についてや参考書なども豊富に掲載されています。ですのでここで述べられるように、これから大乗仏教を学びたいという方への「確かな道標」となる作品です。

新アジア仏教史03インドにおける仏教

『新アジア仏教史03 インドⅢ 仏典からみた仏教世界』~仏伝や経典に説かれる史実はどこまで史実たりえるのだろうか!

「現在われわれの手元にある経典の記述を鵜呑みにして今から二五〇〇年前の仏教の実像に迫ることは不可能であるし、また客観的・批判的研究のフィルターを通しても、その作業は困難を極める。」

私たちはブッダの生涯をこれまで様々なところで見聞きしたことがあると思います。ですが、ここで語られるように実はブッダの歴史的な事実というのはわかっていないことも多々あります。

それをこの本では経典や資料を用いて丁寧に見ていくことになります。特に本書前半の仏伝に関する解説は私にとっても非常に刺激的なものとなりました。

この「新アジア仏教史」シリーズは読む度に新たな驚きがあります。しかも参考資料なども掲載されているのでこれからの学びの指針も与えてくれます。これもとてもありがたいポイントです。

ヒマラヤの寺院スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

佐藤正彦『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』~カトマンズの仏教建築を詳しく知れる驚きの作品

本書はネパールの宗教建築に特化した作品になります。これはかなりマニアックな本です。ですがネパールの独特な宗教建築について詳しく知りたい方にはまたとない作品となっています。

ネパールの雰囲気や宗教建築はインドとも中国とも違います。

そして木がたくさん使われているというのは日本人にとって馴染みのものなのかもしれません。私もいずれネパールを訪ねる予定ですのでその時はじっくり見てきたいと思います。

写真も豊富ですので現地の様子もイメージしやすいです。

かなりマニアックな本ですがネパールの宗教や建築に興味のある方にぜひおすすめしたい一冊です。

ネパール仏教スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

田中公明/吉崎一美『ネパール仏教』~日本と同じ妻帯する仏教が根付く国!その教えと歴史を知るのにおすすめ

この本はものすごく貴重な逸品です。

私たち日本人にとってネパールといえばヒマラヤ山脈というイメージが強くありますが、この国の宗教は何なのかというとほとんどわからないというのが実際のところではないでしょうか。私自身もつい最近までこの国についてほとんど何も知りませんでした。

ですが、この国の宗教事情は知れば知るほど面白い・・・!

まずこの国がヒンドゥー教が主でありながらも今なお仏教が息づいているという点。しかもこの国の仏教の中には私達日本の仏教と同じく妻帯している仏教もあるというのです。これは興味深いです。

インドともスリランカともタイとも中国とも違う独特な仏教の歴史をこの本では知ることができます!おすすめです!

タイ仏教入門スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

石井米雄『タイ仏教入門』~上座部仏教が今なお息づくタイの仏教について知るのにおすすめの入門書

タイに長く滞在し研究調査をした著者ならではの、現地のリアルな仏教な姿を知ることができるのがこの本の魅力です。

この本では難解な哲学や教義について語られるのではなく、あくまで入門書ということで現地の人々の生活や仏教僧の日々の姿が説かれます。

タイの仏教徒が何をもって救いと考えているのか、なぜ仏教を篤く信仰しているのかということも知ることができます。

日本仏教とは違った仏教の姿を垣間見れる本書はとても刺激的です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

東南アジア上座部仏教への招待スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

『東南アジア上座部仏教への招待』~日本と異なる東南アジアの仏教を知るのにおすすめ!

この本では東南アジア各国の仏教の教義を細かく見ていくというよりは、その国の仏教徒の生活や信仰の実践がどのようなものなのかを見ていく形を取ります。

もちろん、本書の第一章で上座部仏教とはそもそも何なのかをわかりやすく解説してくれるので、専門知識のない方にも優しい作りになっています。大乗仏教との違いをわかりやすく解説してくれるこの作品は非常に貴重です。しかも入門者でも親しみやすく読めるような語り口で説かれるので、仏教だけでなく文化そのものを学びたいという方にも非常におすすめです。

上座部仏教とは何か、そしてそこに生きる人々の生活レベルでの仏教を知れるこの本はとても刺激的でした。日本仏教との違いや共通点を考えながら読むのはとても興味深かったです。

新アジア仏教史02インドにおける仏教

『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』~仏教のイメージが覆る?仏教学そのものの歴史を問う参考書

私達が当たり前だと思って享受していた〈仏教学〉が日本の仏教思想や文化とは全く無関係に生まれたものだった。

この本を読めば〈仏教学〉というものがどんな流れで生まれてきたのか、そしてそれがどのように日本にもたらされ、適用されることになったのかがよくわかります。

日本仏教に対する批判で多いのは「原始仏教と比べればなんと日本仏教は堕落しているのか」というものなのですが、こうした批判がなぜ生まれてきたのかも考えることになります。そして同時にこの批判の問題点についても私達読者は気づくことになるでしょう。

この本は改めて〈仏教学〉という学問そのものを俯瞰で見ることができる素晴らしい作品です。