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モンテフィオーリ『ロマノフ朝史1613-1918』あらすじと感想~ロシアロマノフ王朝の歴史を学ぶのに最高の1冊!

目次

モンテフィオーリ『ロマノフ朝史1613-1918』概要と感想~おすすめ!ロシアの歴史を学ぶのに最高の1冊!

今回ご紹介するのは2021年に白水社より発行されたサイモン・セバーグ・モンテフィオーリ著、染谷徹訳の『ロマノフ朝史1613-1918』です。

早速この本について見ていきましょう。

「ロシア帝国300年間」の栄枯盛衰と人間模様

本書は、上巻がピョートル大帝からエカチェリーナ大帝、ナポレオン戦争まで、下巻がクリミア戦争から、日露戦争、第一次大戦、ロシア革命までの300年間、愛憎相半ばする一族、戦争と革命、陰謀と謀反、弾圧と殺害、性愛と嗜虐……王朝の絢爛たる歴史絵巻と血にまみれた「秘史」を、赤裸々に物語る通史だ。欧州の公文書館の膨大な史料、未刊行の日記類、未公開の書簡などに基づいて、ロマノフ朝の栄枯盛衰を追いながら、登場人物たちの心理の襞にまで分け入り、臨場感あふれる筆致で描き出している。著者は本書の主題を、「ロマノフ家は偉大な王朝であるだけでなく、絶対的専制支配の象徴であり、その歴史は絶対的権力につきまとう愚昧と傲慢の物語集に他ならない」と述べている。
著者は英国の歴史家・作家で、『スターリン:赤い皇帝と廷臣たち 上・下』で「英国文学賞」の年間大賞、『スターリン:青春と革命の時代』(以上、白水社)で「コスタ伝記文学賞」ほか多数を受賞している。
カラー口絵各16頁・地図・家系図・人物紹介・人名索引(下巻)を収録。

Amazon商品紹介ページより

この本の著者サイモン・セバーグ・モンテフィオーリは以前当ブログでも紹介した『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち』『スターリン 青春と革命の時代』の著者でもあります。

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この2冊ですが、とにかくものっっっっすごく面白いです!

スターリンの生涯をこれだけ緻密、かつドラマチックに描きながら、さらには時代背景や人間と権力の問題をかなり深く掘り下げていくモンテフィオーリには心の底から驚愕しました。

私にとってモンテフィオーリは絶大な信頼を寄せる歴史家なのですが、今回の『ロマノフ朝史1613-1918』も安定のモンテフィオーリクオリティーでした。「素晴らしい」の一言です。

写真を見てわかりますように、この本はとんでもない大ボリュームです。上下巻合わせて1200ページを軽く超えてきます。

ですが驚くべきことに、すらすら読めてしまうんです。

さすがモンテフィオーリ。とにかく読みやすい!

ロマノフ王朝の始まりからいかにしてロシアが拡大し、力を増していったのかをドラマチックにテンポよく学ぶことができます。

それぞれの皇帝ごとに章立ても進んでいくので時代の流れもとてもわかりやすいです。

著者はこの本について「序言」で次のように述べています。

本書は、ある意味で人間性の研究であり、絶対的な権力を手にした人間の人格がその権力によっていかに変容するかを見究めようとする試みである。

その試みの過程で、家族の情愛、結婚、姦通、親子関係など、数々の物語が展開される。

しかし、それらの物語は普通一般の家族の物語とは明らかに趣を異にしている。

なぜなら、帝政の特徴である絶対的権力は、皇帝の家族関係に甘美な陶酔をもたらすだけでなく、破滅的な毒をも吹き込むからである。権力にともなう魅惑と腐敗が血縁の紐帯や情愛を破壊することも稀ではなかった。

本書は歴代の専制君主とその親族および君主を取り巻く廷臣たちの群像の歴史であると同時に、ロシアの絶対主義制度の全容を描き出すための王朝の肖像画でもある。

ロシアに対する見方が何であれ、ロシアの文化、ロシアの精神、ロシアの本質が世界に例のない特異なものであることは否定できない。そして、その特異さは、皇帝の家族のあり方そのものにも集約されている。ロマノフ家は偉大な王朝であるだけでなく、絶対的専制支配の象徴であり、その歴史は絶対的権力につきまとう愚昧と傲慢の物語集に他ならない。

君主と臣民の関係および国民の文化に関して言えば、ロマノフ王朝に比肩し得るのはローマ帝国のカエサル王朝のみであり、両王朝は、昔と今の違いこそあれ、ある個人が絶対的権力を掌握した場合に発生する事態をきわめて分かりやすく示す点で酷似している。「皇帝」を意味する言葉として、ロマノフ朝の歴代皇帝がラテン語由来のロシア語である「インぺラートル」ではなく、「カエサル」に由来する「ツァーリ」を名乗ったことは偶然ではない。

ロマノフ家の人々が暮らした世界は、一族内部の拮抗と対立、支配者の座をめぐる野心の衝突、毒々しいまでの魅惑、性的な放縦と逸脱、異常な嗜虐趣味などが入り組んだ複雑な世界だった。

混沌としたその世界では、どこの誰とも知れない闖入者が突如として現れて死んだ皇帝の生まれ変わりを名乗り、皇帝の花嫁が毒殺され、父親が息子を虐待して死に至らせ、息子が父親を弑逆し、妻が夫を殺害し、毒殺された聖人あるいは銃殺されたはずの聖人が死から甦り、床屋や農民だった男が最高権力者の座に上りつめ、巨人や狂人が見世物として収集され、矮人が放り投げられ、斬首された首がロづけされ、舌が引き抜かれ、激しい鞭打ち刑によって肉が骨から引き剥がされ、腸が引き出されて串刺しにされ、嬰児が虐殺されるという類の事態が繰り返された。

衣装狂いで色情狂の女帝がいるかと思えば、レズビアンがらみの三角関係があり、国家君主の筆になるとは思えないほど露骨な性的表現を含む手紙を書く皇帝が現れるというありさまだった。

しかし、それは、また、恐れを知らない冒険的征服者や有能な政治家が立ち現れてシべリアを征服し、ウクライナを併合し、パリやべルリンを攻め落とした帝国でもあった。この帝国は、また、プーシキン、トルストイ、ドストエフスキー、チャイコフスキーなどの芸術家を生み出し、高度の文化と繊細巧緻な美を誇る文明をも生み出したのである。
※一部改行しました

白水社、サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ、染谷徹訳『ロマノフ朝史1613-1918』上巻P14-15

ここで語られるように、ロマノフ王朝は私たちの常識をはるかに超えるスケールの存在です。こうした独特な歴史を持った国がロシアという国です。

ロシアという国がどんな歴史を経て今に繋がっているかを学ぶのにこの本は最適です。

たしかに分厚くてなかなか手が出にくいかもしれませんが、買う価値はあります。これを読めば歴史の流れをかなりはっきりとイメージすることができます。

信頼のモンテフィオーリクオリティーですので、読みやすさ、面白さ、資料のレベルの高さは折り紙つきです。

この本と合わせてスターリン伝を読めばさらにロシアについて学ぶことができるので強くおすすめします。

これは名著です!ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「モンテフィオーリ『ロマノフ朝史1613-1918』ロシアロマノフ王朝の歴史を学ぶのに最高の1冊!」でした。

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ロマノフ朝史 1613-1918(上)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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