ドイツ

冬に記す夏の印象ドストエフスキー作品

ドストエフスキー『冬に記す夏の印象』あらすじと感想~西欧社会を厳しく批判!異色のヨーロッパ旅行記

この『冬に記す夏の印象』はドストエフスキーのヨーロッパ観を知る上で非常に重要な作品です。

また「奇妙な旅行者」ドストエフスキーの姿を見ることができる点もこの作品のいいところです。小説作品とはまた違ったドストエフスキーを楽しむことができます。

文庫化された作品ではありませんが、『冬に記す夏の印象』はもっと世の中に出てもいい作品なのではないかと強く感じます。

日本人には特に共感できる内容なのではないかと思います。

壊滅ブログ筆者イチオシの作家エミール・ゾラ

ゾラ『壊滅』あらすじと感想~フランス第二帝政を崩壊させた1870年普仏戦争を見事に活写! 戦争文学の傑作!

今作は日本ではあまり知られてはいませんが戦争文学の金字塔と評価されている作品です。

ゾラ得意の五感を刺激する文章はまるで自分が間近で戦争を見ているかのような感覚にさせます。

ゾラはやはり芸術家です。読む者に恐るべきインスピレーション、イメージ、ショックを与えます。彼は単に世の中の相を写し取っただけではなく、それを芸術に昇華させています。

『壊滅』は叢書のクライマックスにふさわしい重厚な作品でした。戦争文学の傑作、金字塔という名声は疑いようもありません。素晴らしい作品でした。

金ブログ筆者イチオシの作家エミール・ゾラ

ゾラ『金』あらすじと感想~19世紀パリで繰り広げられたロスチャイルドVSパリ新興銀行の金融戦争!

『獲物の分け前』で主に土地投機によって巨額の金を稼いだ主人公のサッカールでしたが、今作では巨大銀行を設立することで新たな戦いに身を投じていく様子が描かれています。サッカールのライバルのユダヤ人はあのロスチャイルド家がモデルになっています。フランス第二帝政期では実際に新興銀行とロスチャイルド銀行との金融戦争が勃発していました。ゾラはこうした事実を丹念に取材し、この作品に落とし込んでいます。

ジェルミナールブログ筆者イチオシの作家エミール・ゾラ

ゾラ『ジェルミナール』あらすじと感想~炭鉱を舞台にしたストライキと労働者の悲劇 ゾラの描く蟹工船

『ジェルミナール』では虐げられる労働者と、得体の知れない株式支配の実態、そして暴走していく社会主義思想の成れの果てが描かれています。

社会主義思想と聞くとややこしそうな感じはしますが、この作品は哲学書でも専門書でもありません。ゾラは人々の物語を通してその実際の内容を語るので非常にわかりやすく社会主義思想をストーリーに織り込んでいます。

難しい専門書を読むよりずっとわかりやすく、面白く学ぶことができることかと思います。

生きる歓びブログ筆者イチオシの作家エミール・ゾラ

ゾラ『生きる歓び』あらすじと感想~ゾラ流のショーペンハウアー的ペシミズムへの回答とは

概要とあらすじでは主人公の少女ポリーヌがダメ人間ラザールに恋をしてしまう可哀そうな物語とお話ししましたが、そこはゾラ師匠。単なる優しい女の子の残念な恋愛で終わらせません。

実はゾラはラザールに当時大流行していたショーペンハウアー的なペシミズム(悲観主義、厭世主義)を意図的にまとわせ、それに対置する形で生きる歓びを体現するポリーヌを立たせているのです。

そうしてゾラは当時大流行していたペシミズムに対する反論を述べようとしているのでした

キリスト教ドストエフスキーとキリスト教

フスト・ゴンサレス『キリスト教史』~キリスト教の歴史の大枠を学ぶのにおすすめの参考書!

この本では「キリスト教こそ絶対に正しくて、異教徒は間違っている」というニュアンスはまず存在していません。歴史的にその出来事はなぜ起こったのかということをできるだけ客観的に見ていこうという視点が感じられます。

また、この本はそもそも読み物としてとても面白いです。キリスト教史の教科書というと、固くて難しい本をイメージしてしまいがちですが、フスト・ゴンサレス『キリスト教史』は一味も二味も違います。

木下豊房ドストエフスキー論

木下豊房『ドストエフスキー その対話的世界』~ドストエーフスキイの会会長によるドストエフスキー論

この著作では国内外の研究をふまえて、作品を論じていきます。これまでドストエフスキーがどのように研究され現在はどのように論じられているかという流れがわかりやすく説かれています。

特に以前紹介したバフチンや、夏目漱石、小林秀雄など日本の文人とドストエフスキーの繋がりの歴史も知ることででき、新しい発見をすることができました。

また著書の後半にドストエフスキーに関するエッセイが多数収録されていますが、その中でもドストエフスキーゆかりの地を巡るシリーズは特に興味深かったです。

シェストフドストエフスキー論

シェストフ『悲劇の哲学 ドストイェフスキーとニーチェ』~『地下室の手記』に着目したドストエフスキー思想の古典 

ドストエフスキーの思想を研究する上で『地下室の手記』が特に重要視されるようになったのもシェストフの思想による影響が大きいとされています。そのためシェストフの『悲劇の哲学 ドストイェフスキーとニーチェ』はドストエフスキー研究の古典として高く評価されています。

『地下室の手記』と合わせて読むことでドストエフスキー思想の研究に役立つ作品です。

アンナの日記ドストエフスキー伝記

ドストエーフスカヤ『ドストエーフスキイ夫人 アンナの日記』~ドストエフスキーのギャンブル中毒による悲惨な生活を知れる第一級の資料

この日記にはドストエフスキーの狂気がとことんまで描かれています。

賭博に狂い、有り金全てを賭けては負け、挙句の果てに結婚指輪まで質に入れ賭博場へと駆け出していくドストエフスキー。

アンナ夫人の日記にはそんな夫を見送る悲しさややるせなさ、憤りが涙と共に記されています。この時のドストエフスキーはまさしく究極のダメ人間です。

もはや壮絶としか言いようがないです。並の小説を読むよりはるかに劇的でショッキングなものになっています。

回想のドストエフスキードストエフスキー伝記

アンナ・ドストエフスカヤ『回想のドストエフスキー』~妻から見た文豪の姿とは。これを読めばドストエフスキーが好きになる!

こちらはドストエフスキーの奥様アンナ夫人によって書かれた回想記で、私はこの本を読んでドストエフスキーを心の底から好きになりました。

ギャンブル中毒になりすってんてんになるダメ人間ドストエフスキー。生活のために苦しみながらも執筆を続けるドストエフスキー、愛妻家、子煩悩のドストエフスキーなど、意外な素顔がたくさん見られる素晴らしい伝記です。ぜひ読んでみて下さい。きっとドストエフスキーのことが好きになります!