ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』あらすじと感想~ユゴーの原作との比較
ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』解説とキャスト、あらすじ
原作の『レ・ミゼラブル』を読み終わった私は早速その勢いのままにミュージカル映画版の『レ・ミゼラブル』を観てみることにしました。
予告編の段階でその壮大さが感じられると思います。
「Yahoo!映画」にこの映画の解説とあらすじがありましたのでそちらを引用します。
文豪ヴィクトル・ユーゴーの小説を基に、世界各国でロングラン上演されてきたミュージカルを映画化。『英国王のスピーチ』でオスカーを受賞したトム・フーパーが監督を務め、貧しさからパンを盗み19年も投獄された男ジャン・バルジャンの波乱に満ちた生涯を描く。主演は、『X-MEN』シリーズのヒュー・ジャックマン。彼を追う警官にオスカー俳優のラッセル・クロウがふんするほか、『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイ、『マンマ・ミーア!』のアマンダ・セイフライドら豪華キャストが勢ぞろいする。
「Yahoo!映画」より
あらすじ
「Yahoo!映画」より
1815年、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、19年も刑務所にいたが仮釈放されることに。老司教の銀食器を盗むが、司教の慈悲に触れ改心する。1823年、工場主として成功を収め市長になった彼は、以前自分の工場で働いていて、娘を養うため極貧生活を送るファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、幼い娘の面倒を見ると約束。そんなある日、バルジャン逮捕の知らせを耳にした彼は、法廷で自分の正体を明かし再び追われることになってしまい……。
この映画はユゴーの『レ・ミゼラブル』を原作にロングラン上演されてきたミュージカルを映画化したものです。
ミュージカルということでもうとにかく!歌と音楽が素晴らしすぎます!
その中でもこの作品の代表曲たる邦題「夢やぶれて」。こちらはスーザン・ボイルが歌ったことでも有名な曲です。
物語を観ながらこの曲を聴いたらもう涙が出てくるほど心が震えさせられます。
またもう一つの代表曲、「民衆の歌」
「虐げられた者たちが正義のために立ち上がり、いざ戦うのだ」という若者たちの熱い思いが壮大な音楽とともに熱唱されます。
やはり音楽の力はすごい!有無を言わせず人間を奮い立たせる何かがあります。
これはきっと、もはや人間の本能なのでしょう。
直球ど真ん中。心にズドン!と来ます。
一度聴いたら頭から離れない。映画を観終わった後も何度も何度も勝手に脳内でリピートされています。それほど素晴らしい楽曲たち!
この映画の最大の魅力はやはりこの音楽でしょう。名曲ぞろいです。
さすが『レ・ミゼラブル』。
ミュージカルとして長きにわたってたくさんの人から愛されている理由がよ~くわかりました。
もともとミュージカルの『レ・ミゼラブル』は私の妹がファンで、よく「レミゼレミゼ!」と嬉しそうに言っていたので、映画を観た今となっては妹の気持ちもよくわかりました。
これを劇場で生で見たらそれはハマるよなと思います。調べてみると2021年にまた国内で公演が再開されるそうなのでぜひ行ってみたいです。帝国劇場でのキャストさんによる素晴らしい映像もありましたのでぜひここに紹介します。
また、この映画の撮影の裏側を語る動画がありましたのでそちらもここでご紹介します。この映画がいかに斬新な手法を用い、音楽にとことんまでこだわっているかがわかります。ぜひご覧ください。
ミュージカル映画と原作の違い
まず1番の違いは尺の違い。これは映画というおよそ2時間半という映画の時間制限がある以上仕方がない問題です。
文庫で5冊になる作品を2時間半に収めるにはやはり多くの場面を削らざるをえません。
また、ひとつひとつの場面を丁寧に掘り下げることも難しくなります。
ですがそれをいかにうまく構成し、劇的にまとめることができるかがミュージカルの見せ場になります。
この映画ではそれが絶妙にうまくまとめられているように私には思えました。
もちろん、原作と比べると「そこをもっと掘り下げてほしかったな~」という場面もあるのですが、そこは歌と音楽の力がカバーしています。
歌があるおかげで登場人物の感情や葛藤、状況がこちらに伝わってきます。
削れるぎりぎりのラインで『レ・ミゼラブル』の原作を生かしているなと、観ていて感嘆しました。よくあんな大作をここまできれいにまとめられるなと驚くばかりです。
いずれにせよ、壮大な音楽と映像効果でもはや強制的に感動させられます。「圧倒」の一言に尽きます。
一緒に観た家族は原作を読んでいませんでしたので、「これで十分すぎるよ!まだ他にあるの!?」と逆に驚いていました。
これは原作とはまた別の、ひとつの作品として完成されています。
本当に素晴らしい映画だと思います。
映画に感動した人へ―やはり原作も読んでほしい!もっとレミゼが好きになります!
原作はたしかに長い!
これは否定できません。
ですが少し考えてみてください。
長いということは、もっともっと深く掘り下げられているということなのです。
例えばその一例を挙げるとジャン・ヴァルジャンはなぜ良い人間になったのかという問題です。司教さんに救われたとはいえそれだけでそんなにも変われるものなのでしょうか。
これについては以前の記事でも紹介したのですが、原作の第一巻にその秘密があります。
この記事から引用します。
この本を読み始めてみると、驚きの展開が待っています。
なんと、主人公のジャン・ヴァルジャンがまったく出てこないです。
この作品で最初に描かれるのはミリエル司教という人物。
彼は高潔な高位聖職者で、一言で言うならばいい人過ぎるほどいい人なのです。
この物語は最高に善良な司教ミリエル氏がいかなる人物であるかというお話からスタートします。
彼はいつも自分の手元にあるお金のほとんどを貧しい人たちに分け与え、人知れず街のために身を捧げます。
そんな彼の善良さを語る物語がなんと、111ページまで続きます。
つまり、主人公が登場するまでに100ページ以上も一見ストーリーとは全く関係なさそうな司教のエピソードを見せられることになるのです。
ミュージカルや舞台ではこのくだりはカットされていて知ることはありません。
ですがこのミリエル司教こそ、19年間の監獄生活で身も心も荒みきっていたジャン・ヴァルジャンの生き方を決定的に変える人物であり、彼の存在がなければ後のジャン・ヴァルジャンはありえないというほどの重要人物なのです。
映画ではいきなり現れてジャン・ヴァルジャンを救いますが、原作では100ページ以上もかけてミリエル司教の人柄を私たちは見つめることになります。
それによってジャン・ヴァルジャンが救われた瞬間の重みがまさに100ページ分強まるのです。
ミリエル司教がいかに偉大な人物か、そして絶望に苦しむジャン・ヴァルジャンの心の葛藤、そして救い。
この辺りの描写が余すことなく原作では描かれています。
当ブログ記事 『レ・ミゼラブル㈠ 第一部 ファンチーヌ』あらすじ感想―偉大なる主人公ジャン・ヴァルジャンとは! より
このように、原作を読むと登場人物達についてもっともっと知ることができます。これはファンとしてはたまりません。
他にも、
なぜミリエル司教と出会った後、数年で市長にまでなれたのか。
なぜ最後にジャン・ヴァルジャンは突然去り、死のうとしていたのか。
さらに言えば、映画化されていないシーンの中にこそ『レ・ミゼラブル』の根幹に関わる出来事が語られていたりするのです。
しかしそれを映画化してしまうと、尺が一気に伸びてしまうのでばっさりカットするしかなくなってしまいます。
映画では目まぐるしく展開が変わっていきます。
映画のレビューでもよく見られたのですが、マリユスとコゼットの恋が唐突すぎるとか、バリケード戦の後のマリユスの心情、ジャヴェールがなぜ死んだのかがわからない等々、観ている人が困惑するシーンも多々あります。
ですがこれが原作になると、驚くほど丁寧に描かれています。先程紹介したミリエル司教のエピソードからもわかるように原作ではかなり深堀りされています。マリユスとコゼットの恋に関してはびっくりするほどプラトニックで、恋が始まるまでかなりの時間がかかっています。以下の記事でそのことについてお話ししていますので興味のある方はご参照ください。
ジャヴェールに関しては第1巻からずっとジャン・ヴァルジャンと戦い続けた男です。文庫本5冊にわたって読者は彼のことを見続けることになります。
そして彼の死に至る葛藤はまさしくこの作品の白眉です。映画では残念ながらその苦しみが完璧には表現しきれず、なぜ彼が死を選んだかがあいまいです。ですがこれは仕方ありません。いかんせん尺が限られ過ぎています。
映画のいいところは、長大な作品を短い時間に圧縮し、名シーンをギュギュっと詰め込むことができる点にあります。
たしかに『レ・ミゼラブル』はそれに成功した作品と言えます。
ですが、この映画に感動し、もっともっと好きになりたいという方にはぜひ原作も読んでほしいです。
普通、圧縮した方が凝縮されて濃いものになるのが普通ですが『レ・ミゼラブル』は一味違います。
映画のそれぞれのシーンがとことんまで掘り下げられています。私は原作を読んでからこの映画を初めて観ました。
すると、映画を観ていても勝手に原作の内容を補正してしまうのです。
なぜジャン・ヴァルジャンが市長になったのか、そして自分で裁判所に名乗り出るときの葛藤や、ファンテーヌの苦しみの原因やコゼットの境遇、マリユスの幼少期から青年になっていく過程、バリケード戦の背景、仲間たちの思い、ジャヴェールの苦しみ、マリユスとコゼットの愛、そしてジャン・ヴァルジャンの死・・・
ひとつひとつ挙げていけばきりがありません。
勝手に補正することが映画鑑賞をする上で正しいことかはわかりませんが、私はより作中人物に感情移入してしまう脳内状況になってしまっていたのです。
結果、私は何度この映画を観ながら涙を流しそうになったことでしょう。
ラストのシーンはこらえきれず涙が流れていました。
私は家族がいる手前、泣くのは何とも恥ずかしく、とてつもない努力を払って涙をこらえていました。
でも、だめでした。
これがもしひとりで観ていたとなると、たぶんとんでもない泣きっぷりをしていたことでしょう。
かつて私は『オペラ座の怪人』で前科があります。一人暮らしをしていたあの時は、部屋で息もできないくらい泣いていました。カオスです。これは人様に見られるわけにはいきません。
今回は何とかこらえましたが『レ・ミゼラブル』もそれ級の破壊力でした。エンディングは向こうも全力で泣かせにかかってきます。
本当にいいエンディングでした・・・
エンディングロールが流れていっても私は全く動けませんでした。物語の余韻に浸りきっていたのです。
『レ・ミゼラブル』に出会えて本当によかった。
ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』は素晴らしい作品です。
ですが原作はもっともっと特濃です。本当に読む価値があります。
「原作VS映像化作品」は永遠のテーマかもしれません。
これはどっちが良いとかどっちが劣っているとかそういう話ではありません。
私はミュージカル映画としての『レ・ミゼラブル』はそれとしてひとつの完成した素晴らしい作品であると思いますし、同時にその原作も最高の作品だということを感じたのです。
どっちも大好きです。
歌や音楽、映像の力は素晴らしい!
原作の濃厚な言葉の世界も素晴らしい!
それぞれに素晴らしい点があるのです。
いやぁ本当にいい時間を過ごすことができました。ぜひお休みの日など、時間のある時にぜひ手に取って頂きたい作品です。非常におすすめです。
以上、「感動必至!映画『レ・ミゼラブル』解説とあらすじ・感想~ユゴーの原作との比較」でした。
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レ・ミゼラブル(一)(新潮文庫)※2021年6月21日追記
私は最近レミゼのミュージカルに関する2冊の本を読みました。それがこちらです。
この2冊の本を読み、ミュージカルのレミゼがいかにして作られたかを私は知ることとなりました。
長大な作品を3時間という短い時間にまとめるという奇跡のような偉業の裏側をこれらの本は語っています。
「ミュージカルでは尺が限られていて掘り下げられていない箇所があるのが残念だと」私はかつてこの記事で述べました。しかしこれらの本を読み、何度も映画を観たりCDを聴いたりしている内に、そうした気持ちがどんどん変わっていきました。
尺の関係で色々な部分をカットしながらも、それぞれのキャラクターの内面や過去を歌と音楽で表現するその技術に今では驚くばかりです。制作陣がいかに桁外れの仕事を成し遂げたかということに頭が下がる思いです。かつての自分が申し訳ないです。知れば知るほどレミゼのすごさを思い知らされるように感じています。ミュージカル版のすごさを知る上でこの2冊の本は非常におすすめです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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