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WW2の流れを掴むのにおすすめ!神野正史『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』概要と感想
今回ご紹介するのはベレ出版より2019年に出版された神野正史著『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』という1冊です。
前回の記事では独ソ戦を学ぶ入門書としておすすめな本、大木毅著『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』をご紹介しましたが、この本はさらに広く、第二次世界大戦全体の流れを掴むのにおすすめな本となっています。
表紙裏にはこの本について次のように書かれています。
〇ドイツの全権委任法成立直後から第二次世界大戦終結までの欧米各国の動きを詳しく解説。
〇まるで映画や舞台を観るような感覚でスイスイ読めてわかりやすい!
〇歴史が”見える”イラスト”が満載!
〇歴史を学びなおしたい大人から、歴史が苦手な高校生まで楽しめる。
ベレ出版、神野正史、『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』
当ブログでも神野正史さんの世界史劇場はすっかりおなじみとなりましたが例のごとく、「はじめに」を読んでいきましょう。ここに神野さんのメッセージが詰まっています。
はじめに
歴史には”節目”というものがありますが、「第二次世界大戦」は人類史上でも指折りの大きな”節目”と言ってよいでしよう。
1956年発表の年次経済報告に「もはや戦後ではない」と記されましたが、それは「戦後復興期の終了」を意味するものであって、今現在我々の目の前にある”世界”が第二次世界大戦の影響下に存在しているーという意味では、”戦後”は今日までつづいていると言えます。
したがって、現代世界の枠組を決定づけた「第二次世界大戦」の理解なくして、「現代」の理解などあり得ません。
しかし、これほどの大テーマとなると、「第二次世界大戦だけ」を学んでもそれは歪な換骨奪胎に終わってしまいます。
喩えるなら、「絵心のない者が『モナリザ』を模写」しているようなもので、出来上がった”それ”が元絵とは似ても似つかぬものとなるのと同じです。
しかし、これが「絵」なら自分の模写したものがヘタクソだとすぐに自覚できるのですが、「歴史」の場合は自分の歴史理解が歪で的外れなものとなっていることにまったく気づけないのが厄介です。
そのため自分の歴史理解が正しいと信じてしまい、自分の歴史理解と異なる見解を見聞きすると、自分の方が歪んでいるとは思いもよらず、「この人の歴史認識は偏っている!」と噛みつくのです。
それは、本物の『モナリザ』を見て「これは贋物だ!なぜなら私が模写した絵とぜんぜん違うからな!」と叫ぶほどに滑稽な姿で、もはやかける言葉も見つからないほどですが、本人は得意満面。
『モナリザ』を正確に模写したければ、まず絵の技術を基礎から叩き込まなければならないように、歴史は全地域・全時代の歴史を総体的・有機的・立体的に理解したとき、初めて「部分」の本質が見えてくるようになるものなのです。
したがって、「第二次世界大戦」を理解するためには、それを形づくった「戦間期」の理解が必須ですが、その戦間期の理解のためにはそれを形づくった「第一次世界大戦」の理解が必須になります。
さらにいえば、戦後世界を牽引した「米・ソ」という超大国の本質的な理解も絶対的に必須となりますが、国の本質を理解するためには、その国が生まれた歴史背景を理解しなければなりません。
本当はもっともっと遡り、究極的には全地域・全時代を学ばなければならないのですが、キリがないのでとりあえず「最低限の基礎知識」として上記のあたりまでは知っておきたい。
じつは、本『世界史劇場』シリーズは「第二次世界大戦を書いてほしい」というご要望を各方面からいただいていたのですが、このような理由によって敢えて「第二次世界大戦」を書くことは避けておりました。
「微分積分」を学ぶ前にまず”四則計算”を学ばなければいけないように、「第二次世界大戦」という大テーマを学ぶ前に”最低限の基礎知識”を揃えておきたかったからです。
幸い、本『世界史劇場』シリーズは読者の皆様から幅広いご支持いただく僥倖に与り、巻を重ねた結果ー
・「第一次世界大戦」については、『第一次世界大戦の衝撃』にて、
・「戦間期」については、『ナチスはこうして政権を奪取した』にて、
・「アメリカ建国史」については、『アメリカ合衆国の誕生』にて、
・「ソ連建国史」については、『ロシア革命の激震』にてそれぞれ取り上げてまいりました。
いよいよ機は熟したようです。
それでは、世界史劇場「第二次世界大戦」ー開幕です。
ベレ出版、神野正史、『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』
歴史は唯一絶対の真実が存在しているというわけではなく、あくまで私たちがそれをどう見るのかという認識の問題です。
これは歴史だけでなく思想や文学を含めてあらゆることに関わる問題です。
自分の歴史認識が絶対に正しいと信じ込むことの危険性を神野氏は『世界史劇場』シリーズで何度も述べています。
ですが逆に言えば、神野氏のこの本も鵜呑みにしてはいけないということです。
「神野氏がこう書いているのだから絶対正しい」という受け取り方ではなく、本当にそれが正しいのか他の文献も当たって調べてみなければなりません。もしそこまでできないのならば「神野氏はこう言っているがとりあえず判断は保留にしよう」という態度でいることも肝要です。神野氏が意図的に間違ったことを述べようとしているとは思いませんが、神野氏の「歴史認識」に沿ってこの本は書かれています。ですのでそのままそれを鵜呑みをすることもやはり神野氏の本意ではないように私は思うのです。最後は自分で調べて自分の頭でよく考える。それが大切なように思います。
とはいえ神野氏の『世界史劇場』は歴史の流れを知る上で最高の手引書です。今回の『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』もびっくりするほどわかりやすいです。ここで第二次世界大戦の流れをざっくりと頭に入れておくことでここから先の勉強がものすごくはかどります。
そういう意味でもやはりこのシリーズは非常にありがたい参考書です。
第二次世界大戦とは実際にどのような戦争だったのか。ナチスはどのように動いたのか。スターリン率いるソ連はそれにどのように対抗したのか。イギリス、フランス、アメリカは?
複雑怪奇な国際情勢をこの本では学べます。そして単に出来事の羅列ではなくなぜ歴史がそのように動いたのかという「なぜ」を神野氏は強調していきます。ここが『世界史劇場』シリーズの素晴らしいところだと思います。単なる暗記ではなく、「なぜ」を考える思考力を鍛えてくれるところにこの本の特徴があると私は思っております。非常におすすめな一冊です。
以上、「『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』WW2の流れを掴むのにおすすめな1冊」でした。
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