木村元彦『オシム 終わりなき闘い』~紛争後も民族対立が続くボスニアで何が起きているのかを知るのにおすすめ
オシム監督は2007年66歳の歳に脳梗塞で倒れられ、日本代表監督を退任しました。ですが彼はそこから驚異の回復を遂げ、後遺症を残しながらも精力的に祖国の融和のために活動しています。本書はそんなオシム監督の帰国後の活動を通して、紛争から20年経った今のボスニアについて知ることができる作品となっています
オシム監督は2007年66歳の歳に脳梗塞で倒れられ、日本代表監督を退任しました。ですが彼はそこから驚異の回復を遂げ、後遺症を残しながらも精力的に祖国の融和のために活動しています。本書はそんなオシム監督の帰国後の活動を通して、紛争から20年経った今のボスニアについて知ることができる作品となっています
これまで「ユーゴサッカー三部作」としてストイコビッチ氏とユーゴ紛争について語られてきましたが、最終作はサラエボ出身のオシム氏とボスニア紛争についてじっくり見ていくことになります。
この三部作を読めばユーゴ紛争についてかなり広い視点を得ることができます。
オシム監督の偉大さにただただ圧倒される一冊です。オシム監督が病に倒れられたことが本当に悔やまれます。
サッカーファンだけでなく、すべての方におすすめしたい作品です
先に言わせて頂きます。この本は凄まじいです。とにかく読んでほしいです。それも今すぐ!できるだけ早く!
ロシア・ウクライナ戦争に揺れている今だからこそ大切な一冊です。
この本で語られることはあまりに衝撃的です。引用したいところが山ほどあるのですが分量の制限もありますので今回の記事ではこの本の中でも特に印象に残った箇所を紹介していきます。
1990年生まれの私はピクシーことストイコビッチ氏といえば監督のイメージがあったのですが、この本を読んでストイコビッチ氏がいかにすごい選手だったかがよくわかりました。
全世界から悪者と一方的に報道され制裁を受けたセルビア。そのセルビア(ユーゴ)代表として苦難の道を歩むこととなったストイコビッチ氏のサッカー人生は凄まじいものがあります。
私はこれまでボスニア紛争について学んできましたが、セルビア側から見たユーゴ紛争を知れたのは非常に貴重な読書になりました。
ディナモ・ザグレブやディナモ・キエフなどのチームは知ってはいました。ですがまさかそれが内務省や秘密警察から来ていたとは・・・!
内務省といえばロシアいうとあのKGBです。現在はFSBに名前が変わっていますが、KGBはプーチン大統領が在籍していたことでも知られる組織です。ソ連時代の恐るべき組織が「ディナモ」の由来だったと知り本当に驚きました。
これは名著です。思わぬところでものすごい本と出会うことになりました。
この本はサッカーを通して東欧の国々の歴史や文化を見ていく作品です。
特に一番最初に紹介されるクロアチアではユーゴスラビア紛争のきっかけとなったとも言われる1990年の「5.13」暴動事件について詳しく語られます。
著者は東欧を揺るがしたこの事件について詳しく検証していき、さらにはこの地で荒れ狂っていた民族対立の構図を取材していきます。サッカーを通して見えてくる民族対立の背景は非常に興味深いものがありました。
ロシア・ウクライナ戦争をきっかけに知ることになったロシアのオリガルヒ(新興財閥)。
その中でも最近ニュースで取り上げられているのが名門サッカークラブチェルシーのオーナー、アブラモビッチ氏です。
経済制裁によってアブラモビッチ氏の資産が凍結され、それに伴いチェルシーの運営が立ち行かなくなるというニュースには私も衝撃を受けました。
この本はそんなアブラモビッチ氏とは何者なのか、そしてなぜチェルシーのオーナーとなったのかを知ることができる作品です。
著者のクルコフはマイダン革命が起きた広場のすぐ近くに住んでおり、この革命の流れを最も近くで見ていたひとりです。そんな作家による混乱の日々の記録が本作品になります。
日記体で書かれているので当時の状況がかなりリアルに感じられます。
この本に書かれているのは現在のロシア・ウクライナ戦争に直接繋がる出来事です。この戦争をより知るためにもこの作品はぜひおすすめしたいです。
国民からの支持を得るために外敵を設定し、戦争を行う。そのためには手段を選ばない。
ただ、全面戦争ではアメリカやNATOから猛攻撃を受けるのでそうならないように細心の注意を払い、政治経済システムが脆弱な旧共産圏の国を狙いハイブリッド戦争を仕掛け自国に有利な展開を作ろうとする。
こうしたプーチン大統領の外交姿勢を学ぶのにこの作品はうってつけです。
この作品はかなり細かくプーチン大統領の国内政治を見ていきます。
その中でも特に印象に残ったのはやはりメディア統制によるプロパガンダです。なぜプーチン大統領が国民からここまで支持され、長期政権を可能にしているのかがよくわかります。
また、ナワリヌイ氏についての分析も非常に興味深かったです。
そして本の後半ではプーチン政権が抱える問題点が考察されていきます。「強いロシア」を掲げて他国への圧力を強めるプーチン大統領ですが、その副作用に苦しむ実態が明らかにされます。