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(64)テナルディエの仲間となるパリの大悪党「パトロン・ミネット」とは

ユゴーの原作『レ・ミゼラブル』を読む
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「ユゴーの原作『レ・ミゼラブル』を読む」(64)テナルディエの仲間となるパリの大悪党「パトロン・ミネット」とは

第三部 マリユス 第七章 パトロン・ミネット

前章のラストでコゼットが突然雲隠れしてしまい、これからどうなってしまうのかと気になるところでありますが、ここでユゴーはいつもの脱線を繰り出します。

それが章題にもあります「パトロン・ミネット」というパリの悪党組織になります。

もちろん、これはユゴーの創作ではありますが、パリという大都市におけるアンダーグラウンドの悪党たちというのは実在しています。ユゴーはそこから着想を得たのでありましょう。

では、この「パトロン・ミネット」とはどんな組織なのか。ユゴーはまずその主要人物を紹介します。

クラクズー、グールメール、バべ、モンパルナスという四人組の悪党が、一八三〇年から一八三五年にかけて、パリの奈落を牛耳っていた。

新潮社、ユゴー、佐藤朔訳『レ・ミゼラブル㈢』P266

彼ら4人の名前はミュージカル版でも出てきますのでぜひ注意して聞いてみてください。そしてユゴーはこの四人の特徴と恐ろしさを詳しく述べていくのでありますがここでは割愛したいと思います。重要なのはここからの解説です。

この四人組の悪党は、プロテウス(訳注 種々の変身ができる海神)のようなもので、警察の網の目をくぐって歩きまわり、「樹や炎や泉など、いろいろの姿になって」、ヴィドック警部の執拗な目をのがれようとし、互いに名前や手口を貸し合い、自分たちの闇の中に隠れ、秘密の小屋や隠れ家にかくまい合い、まるで仮面舞踏会で付け鼻を取りはずすように、人相を変え、ときには四人が一人であるかのような姿をし、ときには、コロ・ラクールでも、四人を群衆かとまちがえるほど、たくさんいると見せかけた。

これら四人の男たちは、四人ではなかった。パリで大仕事をしている四つの頭を持った一人の不思議な盗賊だった。社会の穴蔵に住む悪の恐ろしい生き物だった。

その小枝や網の目のような地下組織によって、バベ、グールメール、クラクズー、モンパルナスは、セーヌ県の悪だくみを全部引き受けていた。通行人にたいして、下層階級のクーデタを行なった。この種の仕事を思いついた者、夜のたくらみを考えた者は、実行について彼らに相談しに行った。四人のやくざにたくらみを提供すると、彼らは演出を引受けた。彼らは筋書どおりに仕事をした。一肌脱ぐ必要があり、しかも十分に金になるような犯罪には、いつでもそれにふさわしい、適当な人物をさし向ける用意があった。犯罪人が腕をほしかっていると、共犯者を又貸しした。一群の暗黒の役者を持っていて、洞窟のあらゆる悲劇に自由に使いわけていた。

新潮社、ユゴー、佐藤朔訳『レ・ミゼラブル㈢』P270-271

彼らはみんな同じ能力を持っている。乞食から浮浪者まで、その種族は純粋さを保持している。ポケットの財布を見ぬき、内ポケットの時計の匂いをかぎつける。彼らにとって、金と銀はある匂いを持っている。いかにも盗みやすい様子をしている単純なブルジョワどもを執念深くつけ狙う。外国人や田舎者が通ると、蜘蛛のように興奮する。

こんな連中に、真夜中ごろ、人けない通りで出会ったり、あるいはちらっと見ただけでも、ぞっとする。彼らは人間とは思えない。生きた靄でできているように見える。あたかも、いつも闇と一つになって、区別がつかず、暗黒以外の魂を持たず、彼らが夜から抜け出してくるのは、ほんの一時だけで、しばらく恐ろしい生命を生きるためだというようだ。

新潮社、ユゴー、佐藤朔訳『レ・ミゼラブル㈢』P274

いかがでしょう。「パトロン・ミネット」が実に恐ろしい悪党であることがよく伝わったのではないでしょうか。

そしてユゴーがわざわざマリユスの話を中断してまでこのことを話したのは他でもありません。彼ら「パトロン・ミネット」がこの後すぐに物語に登場してくるからなのです。

先回りしてお伝えすると、この「パトロン・ミネット」はなんとテナルディエの仲間として登場してきます。そしてこの大悪党たちの存在をマリユスが知っていたからこそ新たな展開が開けてくることになります。

つまり、ここでもユゴーは脱線を通して用意周到に伏線を張っているのです。やはりこの脱線も必要不可欠なものでした。

そしてこの短い脱線を終えると、話はまたマリユスに戻っていきます。

コゼットを見失ったマリユスはどうなってしまったのでしょうか。引き続き見ていくことにしましょう。

続く

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この記事を書いた人

2019年「宗教とは何か」をテーマに80日間で13カ国を巡り、その旅をもとにした世界一周記を全国9紙で連載。
現在は北海道新聞「みなみ風」で『インド・スリランカ仏跡紀行』を連載中。

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