(65)腑抜けのマリユス、エポニーヌと遭遇。物語がついに動き出す!

「ユゴーの原作『レ・ミゼラブル』を読む」(65)腑抜けのマリユス、エポニーヌと遭遇。物語がついに動き出す!
第三部 マリユス 第八章 腹黒い貧乏人 ⑴
愛するコゼットを見失い、マリユスはすっかり腑抜けになっていました。ユゴーも次のように語っています。
彼はますます孤独な生活に戻り、思いまどい、意気銷沈して、すっかり心の悩みに取りつかれ、罠にかかった狼みたいに苦悩にもがきまわった。見失った女を捜し求める、恋にうつけた男になりさがってしまった。
新潮社、ユゴー、佐藤朔訳『レ・ミゼラブル㈢』P278
まあ、あれほど恋に熱狂していたのですから無理もありません。初めての恋。それも、熱烈な恋!その夢が消え去った今、彼はその反動に苦しんでいたのでありました。
そして月日は流れ、翌年1832年の2月、再び物語は動き始めます。
この日もいつものように呆然としながら通りをふらふらしていたマリユス。なんと、彼は半年経っても腑抜けのままだったのでした。
そんな抜け殻のような彼に突然の衝撃・・・、誰かが出合い頭に彼にぶつかってきたのです。
我に返ったマリユスがその姿を追うと、ぼろを着た二人の娘が走り去っていくのが見えました。そして彼女たちの会話から、憲兵か警察に追われているのだろうと彼は察します。
マリユスはしばらく呆然と立ち止まっていたのですが、ふと足元にある小包に気付きました。きっとあの娘たちが落としてしまったものに違いありません。すぐに彼女たちに向って声を上げてみましたが、すでにどこかに行ってしまったようです。
こういうわけでマリユスはその小包をなんとなしにポケットに入れ、食事へと出かけたのでありました。
そしてその日の晩、ふと彼はこの小包のことを思い出し、中に住所が書かれていないか確認することにしました。住所さえわかればこれを落とし主に届けることができるだろうと思ったのです。
ですが、この小包に入っていた手紙というのが実に奇妙なものでした。
一通目の宛て名は「グリシュレー侯爵夫人さま」、そして差出人は「スペイン王党派騎兵大尉ドン・アルバレス」。
二通目の宛て名が「モンヴェルネ伯爵夫人さま、差出人が「バリザールの妻」と、4通全ての宛て先と差出人が全て異なるという謎の手紙だったのでした。しかもそのどれもが同じ筆跡、同じ紙、同じタバコの匂いでありました。そうです。この手紙は全て同一人物によって書かれたものだったのです。
ですがなぜこんな奇妙な手紙をこの人物は書いたのでしょう。マリユスもすっかり困惑してしまいます。
考えても謎は深まるばかり・・・。それに、そもそもこの小包そのものも本当にあの娘たちが落としたものか確証はありません。たまたま足元に小包が落ちていただけの可能性もあります。
だんだんマリユスは考えるのも嫌になり、手紙を封筒に戻してさっさと寝ることにしたのでありました。
そして明朝、誰かが部屋をノックする音が聞こえてました。
マリユスの家を訪ねてくる人間などほぼ皆無と言っても過言ではありません。人付き合いをほとんどしない彼です。そんな彼の下を訪ねてくる人間など、管理人の老婆以外考えられもしませんでした。
当然、そのおばあさんがやって来たと思いこんでいたマリユスは「どうぞ」と言いますが、彼の部屋に入ってきたのはなんと、昨日ぶつかってきたあの娘だったのでした。
皆さんももうお分かりになられますよね。そうです。この娘こそ我らがエポニーヌなのです。ミュージカルでは主役級の活躍をするあの天使エポニーヌです。
原作ではこうしてマリユスとエポニーヌは出会ったのでありました。
そして部屋に入ってきたエポニーヌは彼に何を話すのでしょうか。引き続き次の記事で見ていくことにしましょう。
続く
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