マルクス伝記おすすめ12作品一覧~マルクス・エンゲルスの生涯・思想をより知るために
マルクスの生涯を知るのにおすすめの伝記12作品一覧
今回の記事ではこれまで当ブログで紹介したマルクス・エンゲルスの伝記を一覧にして紹介していきます。
この記事の中でもお話ししましたが、私はマルクス主義者ではありません。
ですが、マルクスを学ぶことは宗教や人間を学ぶ上で非常に重要な意味があると考えています。
マルクスは19世紀ヨーロッパに生きた巨大な思想家です。彼ほど後の世界に影響を与えた人間は歴史上ほとんど存在しません。
世界中の人をこれだけ動かす魔力がマルクスにはあった。それは事実だと思います。
ではその魔力の源泉は何なのか。
なぜマルクス思想はこんなにも多くの人を惹きつけたのか。
マルクス思想はいかにして出来上がっていったのか。
そもそもマルクスとは何者なのか、どんな時代背景の下彼は生きていたのか。
そうしたことを学ぶのにこれから紹介する伝記は大きな助けになってくれます。
☆マークがついている作品が私の中でも特におすすめの作品です。
リンク先ではそれぞれの本についてより詳しくお話ししていきますので、気になった本があればぜひそちらもご覧ください。
☆ジョナサン・スパーバー『マルクス ある十九世紀人の生涯』
著者のジョナサン・スパーバーはニューヨーク生まれの学者で、近現代ドイツの政治史、宗教史、社会史を専門とする歴史家です。
マルクス関連の本はどうしてもそれぞれの主義主張が入り込んでしまう度合いが大きくなってしまいます。それが一概にいいか悪いかは言えませんが、この本に関しては、著者は歴史学者としてなるべくそうしたステレオタイプに基づいた研究から距離を置こうとしています。この点はこの本随一のおすすめポイントです。
他にもマルクスを後の時代の視点から見るのではなく、あくまで彼の生きた時代においてマルクスがどう生きていたのかを重要視して著述していく点など、歴史学者ならではの伝記となっています。
本そのものもとても読みやすいです。マルクス伝記の1冊目としてぜひおすすめしたい伝記です。
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E・H・カー『カール・マルクス その生涯と思想の形成』
この伝記の作者のE・H・カーはイギリスの国際政治学者、歴史家であります。
E・H・カーは1892年生まれで、ケンブリッジ大学で学んだ後、外交官の道を歩んでいます。外務省のロシア課に勤務した経験からロシアの歴史や文化に関心を持つようになっていったそうです。
1936年に職を辞してからはウェイルズ大学の国際政治学の教授として活躍していました。
カーといえばドストエフスキーの伝記や以下の著作でも有名です。
カーの伝記の特徴は事実をベースに淡々と、できるだけ客観的にその人物の人生を追っていく点にあります。とにかく冷静です。
ですので読みやすさと言いますか、物語としての面白さという点では若干固さを感じます。楽しい読み物という雰囲気ではありません。ですので正直、伝記部分は読むのが辛いです。
個人的には、マルクスの生涯の流れを知るためにはこの伝記はあまりおすすめできません。これを一冊目に読んだらおそらく挫折する可能性はかなり高くなってしまうと思われます。
ですがこの伝記にはそうした面をすべて補いうる圧倒的な長所があります。
それがタイトルにもあります、「マルクスがなぜこんなにも人々を惹きつけたのか」という分析です。
当ブログでも以前「歴史家E・H・カーによるマルクス主義への見解~なぜマルクス主義は人を惹きつけるのか マルクス主義は宗教的現象か⑴」の記事でこの分析は紹介しました。
この分析は伝記の最終盤に出てきます。上の記事ではその一部を紹介しましたが、この本ではかなり詳しくこのことについて分析がなされます。これは非常に興味深い内容です。この分析を読むだけでもこの本の価値はものすごくあります。いや、むしろこの分析を読むためにこの本を手に取るべきとすら言えるかもしれません。それほど鋭い分析です。これはぜひおすすめしたいです。
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ジャック・アタリ『世界精神マルクス』
ジャック・アタリはフランスのジャーナリストで、ミッテラン政権のブレーンもこなしたフランス社会党党員として知られています。
この伝記はマルクスの専門家によって書かれたものではありません。そのため原著では多くの間違いがあった作品だったそうです。
ですが、訳者によってその間違いは本文中でできるだけ訂正され訳注でも解説が加えられたということで、その問題はある程度クリアされているのではないでしょうか。
また、この伝記の巻末にはマルクスの年表も掲載されており、とても便利です。私も記事を書く際に参考にしています。
そして、著者は立場的には「私はマルクス主義者」ではないと言いつつも、マルクスのことが大好きなのは伝わってきます。マルクスをかなり評価して書かれた伝記です。何事も完全な中立は難しいことではありますが、マルクス擁護的な雰囲気を感じます。中立で歴史的事実に基づいているというポーズで、結果的にマルクスを弁護し、かなり讃美する形になっているなというのが私の感想です。
ジャーナリストによる作品ということで読みやすさという点でおすすめな作品です。
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フランシス・ウィーン『カール・マルクスの生涯』
著者はイギリス人のジャーナリストです。実際、この伝記を読んでいるとジャーナリストらしい明快でわかりやすい文章に驚くと思います。
著者はこれまで書かれてきたマルクスに関する書物は「マルクスを血と肉を備えた一個人として扱うことを彼に対する冒涜と考える学者や狂信者によって書かれた」と述べています。そして「マルクスを神のように考える一派とは私は違う立場である」と主張します。
つまり、「中立的」な立場から伝記を書いたと彼は述べています。
ですが、この本を読めばわかるのですが、彼はマルクスのことが大好きだということが伝わってきます。『資本論』についてはその熱気が特に伝わってきます。彼は『資本論』の素晴らしさをかなり熱く語ります。これまで数々の批判がされてきたがそれはすべて的外れであり、ある批判に対してはそんな批判をするなど「薄ら馬鹿」とさえ述べています。
ただ、あらゆるジャンルのものについてもそうなのですが、マルクスほど「中立な立場」で見ていくことが難しい人物はいないかもしれません。マルクスの本を色々読んできましたがこれは特に感じるものです。
私は攻撃的な言葉や嘲笑が多い本はあまり読みません。ですがマルクスに関してはそうも言っていられません。マルクスがどのような人にどのようにして受け入れられ、そして広まっていったのか、そうしたことを知るにはこの本で度々出てくる攻撃的な文章も重要な手がかりになるからです。
マルクスを考えていく上で難しいのはそうしたことをふまえた上で何が正しくて何がそうでないのかを考えていかなければならないことです。すぐに判断ができません。判断保留にしなければならないことが多々出てきます。
フランシス・ウィーンは「私は中立だ」と言って伝記を書きますが、完全な中立は不可能です。
「マルクスはかつて神や悪魔のように描かれたが人間マルクスは実はこうだった。その人間マルクスこそ真の姿であり、『資本論』も現代を予言した、今でも価値ある素晴らしい書だ。今こそマルクスの教えを聞くべきだ」
結論はそうなっていきます。
かつてのマルクス理解は間違っていたが、今こそ真のマルクスの教えが生きてくるのだと。
たしかにかつてのようなイデオロギーごりごりのマルクス理解とは違い、現代にも通用する知恵をマルクスから学ぶというのは重要なことだと思います。
ですが、だからといって「今こそ真のマルクスの教えを聞くべきだ。マルクスの思想の下、世界を変えるのだ、立ち上がれ」というのは怖さを感じます。
この伝記は読みやすさはあるものの、注意して読まなければならないタイプの書籍であると私は感じました。このことに関してはリンク先でより詳しくお話ししていますのでぜひそちらも読んで頂けたらなと思います。
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☆『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』
この作品はケインズの研究者による、行き過ぎた資本主義の問題点について語る一冊です。
経済成長にはどんな意味があるのか。はたしてそれを追求するのは正しいことなのか。
これは最近よく耳にする「脱成長」という言葉を彷彿とさせます。
この本では行き過ぎた資本主義が信仰のごとく成長を追求し続けるメカニズムを文学、思想、経済学、様々な視点を総動員して分析していきます。最近よく話題に出るマルクス主義の脱成長とケインズ学者の語る脱成長の違いを感じられてとても興味深かったです。
また、後半には環境問題についても深く考察がなされます。
これも斎藤幸平氏の『人新世の資本論』の中心テーマでもありますが、地球環境を守ることはどの立場であろうと最大の課題であるのは間違いありません。ですが行き過ぎた資本主義が環境を破壊しているのは事実だとしても、はたしてそもそも環境保護主義者の言う極端な環境政策には根拠があるのだろうかと著者は疑問を呈します。
本書で述べられる「環境保護主義の拠りどころは信仰であって科学ではない」という言葉は非常に鋭い指摘ではないでしょうか。
ここでは紹介できませんが著者はかなりの分量を割いてこのことについて丁寧に論じていきます。
「脱成長」「コモン」「環境問題」
斎藤幸平氏の『人新世の資本論』ではこれらが語られ、ベストセラーとなりました。
この本をきっかけに経済のことや環境問題に関心を持った方がたくさんおられることでしょう。
であるならば、ぜひ今回ご紹介した『じゅうぶん豊かで、貧しい社会―理念なき資本主義の末路』もきっと興味深く読み進めることができると思います。
「行き過ぎた資本主義に対する批判」という共通な話題を、違った視点から語るこの作品はきっと得るものが大きいと思います。
比べてみることでそれらの姿がよりくっきりと見えてきます。じっくり比べて吟味した上で選んだならば、それこそその人の信念です。
ですが、あるひとつの説だけを聞いてそれを絶対に正しいと思うことは危険なことでもあります。
『人新世の資本論』に魅力を感じた方にはぜひ、あえてこの本も読んでみることをおすすめします。読んでいない人にもぜひおすすめしたい面白い本です。資本主義、マルクス主義だけではなく、「人間とは何か」ということも考えていく非常に興味深い作品です。正確にはこの本はマルクス伝記ではありませんが、彼のことを知るために非情に役に立つのでここで紹介させて頂きました。ぜひぜひおすすめです。
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じゅうぶん豊かで、貧しい社会 ――理念なき資本主義の末路 (ちくま学芸文庫)
『神話なきマルクス―その生涯と著作に関する編年史研究』
この作品は特定のイデオロギーによって神話化されたマルクスや、逆にそれに敵対する陣営からの批判によって悪魔化されたマルクスではないマルクスとは何かということを明らかにしようとする伝記となっています。
この本のありがたい点はマルクスが何に影響をうけていたのか、何を参考にどのような研究をしてきたかということが詳細に解説されているところです。
しかもそれが年代順にリスト化もされているので、マルクス研究において非常にありがたい作品となっています。私もこの作品のおかげでこれから先何を読んでいこうか参考にすることができました。
マルクスは猛烈な読書家、勉強家として有名ですが彼が何を読んでいたのかが一目瞭然なのでこれは非常に興味深かったです。
『神話なきマルクス―その生涯と著作に関する編年史研究』というタイトル通り、この本は伝記というよりは編年史となっています。
物語的な伝記の面白さを求める方には正直あまりおすすめできません。それは著者自身も述べていることです。私も読んでいて、その辺がちょっと苦しかったのですが、マルクスが何を参考にして自らの思想を練っていったのかを知るには非常に有益な作品となっています。
マルクスをより深く研究するための参考書としてこの本はおすすめしたいと思います。
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☆ウルリケ・ヘルマン『スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋』
はじめに申し上げます。この本は大変おすすめです!これは素晴らしい本です!
アダム・スミス、マルクス、ケインズについての本というと、何やら難しい本のようにも思えますが、著者は一般の読者にもわかりやすいように書いています。しかもそれによって解説の質が下がることもありません。当時の時代背景や思想の流れ、彼らの経済思想がいかに独創的だったかをわかりやすく解説してくれます。
この本はマルクスを学ぶのに最適な本のひとつです。
この本ではまずマルクスに至るまでの経済学の歴史、時代背景をアダム・スミス、リカード、マルサスを中心に見ていきます。そしてそこからいかにマルクスが独自な方法で自らの経済学を生み出したのかを知ることができます。
さらにはマルクスの後に出てくるケインズの経済学や時代背景を見ていくことで、マルクスとケインズの違いも知ることができます。
マルクス以前とマルクスはどこが違うのか。マルクス以後とマルクスは何が違うのか。
この本はそうしたことを比べながら見ていくことができるので非常にわかりやすいです。やはり比べてみて初めて見えてくることもありますよね。
マルクスのことを歴史の流れ、時代背景と絡めながら見ていけるこの本は素晴らしいです。非常に広い視野で書かれた逸品です。
これはぜひぜひおすすめしたい1冊です。マルクスだけでなく、アダム・スミスやケインズを学びたい方にもおすすめです。この本の前半でまず語られるのがアダム・スミスなのですが、この解説がものすごくわかりやすく、その時点ですでに心を掴まれてしまいました。面白くて面白くてそこからは一気呵成に読み切ってしまいました。
ぜひ手に取って頂きたい作品です。
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トーマス・ニッパーダイ『ドイツ史 1800-1866上下』
この作品はマルクス・エンゲルスの伝記というわけではありませんが、彼ら二人を生んだ19世紀ドイツの時代背景を知るのに最適な作品です。
この本は上下巻合わせて1000ページを超えてくる大作ですが、中身も濃厚です。
この本の特徴は18世紀末から19世紀にかけてのドイツの時代背景を様々な角度から詳しく見ていく点にあります。
思想、文化は当時の時代背景に大きな影響を受けます。ある一人の人間の思想や理論が世界を動かしたというのでなく、その背後には複雑な政治情勢、国際政治、歴史の流れが関係してきます。時代背景や歴史、文化を見ず、思想やイデオロギーありきで世界を語っていくことの危険性をこの本は指摘しています。
そして、私がこの本で特に興味深いと思った箇所は19世紀のドイツの宗教事情です。
無神論を説いたマルクスやエンゲルスを生んだドイツ19世紀は、社会的にもそのような空気が支配していたのかと思いきや、19世紀ドイツはものすごく宗教的な熱狂が強まっていった時代だったということがこの本では語られます。
なぜこの時代にドイツでは宗教熱が高まっていったのか。
逆に言えば、なぜそのようなドイツでマルクス、エンゲルスのような人物が生まれてきたのか。
この流れは非常に刺激的で興味深いものがありました。
この箇所を読むだけでもこの巨大な本を読んだ価値があったなと思うほどでした。
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玉川寛治『『資本論』と産業革命の時代―マルクスの見たイギリス資本主義』
著者の玉川寛治氏はマルクス思想の学者ではなく、現場で働いていた技術者でもありました。
この本ではそんな技術者でもあった著者が実際に現地に取材に赴き、産業革命時代の遺産を紹介してくれます。
そして何より、マルクス・エンゲルスが見たであろう視点から産業革命を考えていきます。
さすが技術者ということで、当時の機械の仕組みなどもかなり詳しくこの本では語られます。
ですがマニアックすぎるような内容でもなく、歴史の流れや当時の労働者の様子などもわかりやすく解説してくれるのでとても読みやすい作品です。写真やイラストも多いのもありがたいです。
産業革命について書かれた本はいくつもあれど、「マルクスとエンゲルスが見た」視点から産業革命をじっくり見ていこうという本はなかなか貴重です。
マルクスとエンゲルスは実際に産業革命時代を目の当たりにして生活していました。そんな彼らの実体験があったからこそ彼らの思想、作品は生まれてきています。彼らの思想を学ぶ上でも産業革命とはどのようなものだったのか、そして彼らがそれをどのように考えていたかを知ることは非常に重要なことだと思います。
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☆トリストラム・ハント『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』
マルクス・エンゲルスと二人セットで語られることも多いエンゲルス。マルクス思想が世界に広まっていく上で欠かせない存在だったエンゲルスですが、実際エンゲルスとは何者だったのかというとほとんど知られていません。かく言う私もこの本を読む前はほとんど知りませんでした。
ですがこの本を読めばマルクスの活動においてエンゲルスがいかに大きな役割を果たしていたか、そしてエンゲルスという人物そのもののスケールの大きさを知ることができます。マルクスの陰に隠れてあまり目立たなくなってしまいましたが、やはりエンゲルスも歴史上ずば抜けた存在であったことがよくわかります。
この伝記はマルクスやエンゲルスを過度に讃美したり、逆に攻撃するような立場を取りません。そのようなイデオロギー偏向とは距離を取り、あくまで史実をもとに書かれています。
語り口も絶妙で非常に読みやすく、面白いです。ぜひマルクスの伝記もこの方に書いてほしいと思いました。(マルクスの伝記は読みにくいものが多かったり、偏りもどうしても出てきてしまうのでかなり神経を使わなければなりません)
また、この本で最もありがたいなと感じたのは、エンゲルスがどのような思想に影響を受け、そこからどのように彼の著作が生み出されていったかがわかりやすく解説されている点です。
当時の時代背景や流行していた思想などと一緒に学ぶことができるので、歴史の流れが非常にわかりやすいです。エンゲルスとマルクスの思想がいかにして出来上がっていったのかがよくわかります。この本のおかげで次に何を読めばもっとマルクスとエンゲルスのことを知れるかという道筋もつけてもらえます。これはありがたかったです。
そしてこの本を読んだことでいかにエンゲルスがマルクスの著作に影響を与えていたかがわかりました。かなり驚きの内容です。
当ブログでもこの本を参考に「マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」というテーマの連続記事を書いています。
マルクスの伝記や解説書を読むより、この本を読んだ方がよりマルクスのことを知ることができるのではないかと思ってしまうほど素晴らしい伝記でした。マルクスの伝記に加えてこの本を読むことをぜひおすすめしたいです。
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☆ジャック・バーザン『ダーウィン,マルクス,ヴァーグナー 知的遺産の批判』
この本は「ダーヴィンとマルクスがなぜこんなにも世界を席巻したのか」という、私が最も知りたかったことを解説してくれる刺激的な作品でした!これは面白いです!
この作品はマルクスの『資本論』を読んだ際にも参考にしました。
ダーヴィン、マルクス、ヴァーグナーが世界にここまで大きな影響を与えたのはなぜなのか。
そしてそこからそれは過去の歴史の特別な現象だったのではなく、現代を生きる私たちにもそのメカニズムは生き続けていると著者は説きます。
彼らがなぜ世の中にここまで神聖なものとして扱われるようになったのか、それを時代背景や彼らの作品を通して分析してみると驚くべき事実が浮き上がってきます。
まさに彼らは「時代が望んでいた存在」であったのであり、まさしく「宗教的なプロセス」を経て世に現れてきたのでした。
私にとっては特にマルクスにおけるそのような現象が非常に興味深く思われました。ダーウィンとヴァーグナーと比較しながら考察していくことで『資本論』がなぜ聖書のごとく扱われるようになったのかがとてもわかりやすく解説されていきます。
まさに目から鱗の衝撃的な話がこの本では語られます。
時代背景と作品分析を通して彼らの影響力の秘密を探っていくこの作品は非常におすすめです。この本を読んでから『種の起源』や『資本論』を読むと驚くような発見がどんどん出てきます。
正確にはこの本は伝記ではないのですが、マルクスを考える上で非常に重要な見解が説かれていましたのでここに紹介させて頂きました。
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ダーウィン、マルクス、ヴァーグナー: 知的遺産の批判 (叢書・ウニベルシタス 633)
チェ・ゲバラ『マルクス=エンゲルス素描』~ゲバラはマルクス主義に何を思う?あのゲバラがマルクスの伝記を書いていた!
この作品はチェ・ゲバラによるマルクス・エンゲルスの簡潔な伝記になります。
そしてこの作品はチェ・ゲバラのマルクス主義に対する立場がどこにあるかが非常に重要なポイントとなっています。
まず、私たちはマルクス主義というとソ連を思い浮かべてしまいますが、ゲバラからするとソ連式マルクス主義は本来のマルクスから歪められているように見えていたようです。ソ連は硬直した官僚主義になっており、その実態はゲバラの理想とするマルクス主義とは異なっていました。(そのことについては以下の記事参照)
ではゲバラの考える理想のマルクス主義は何なのか、その一端をこの作品から見ることができます。
「われわれが忘れてはならないことは、マルクスは常に、その人間性において至高の存在であったということである」
「マルクスは、共感能力が世界じゅうで苦しむ人びと全体に及んでいるような人間的な人物」
ゲバラが見ていたマルクスは上のような人物としてのマルクスです。
ですがこれが本当に正しいか正しくないかは実はそこまで大きな問題ではありません。重要なことは「ゲバラがマルクスをどのような存在として見ていたか」という点にあります。
ゲバラは「貧困に苦しむ民衆のために生きたマルクス」を見ていたのです。それはゲバラ自身が若い頃に南米を旅し、革命家を志したのと同じ姿です。
ゲバラは「高潔で人間愛に満ちた革命家マルクス」をそこに見ていたのでありました。
この『マルクス=エンゲルス素描』ではそんなゲバラによるマルクス・エンゲルス伝が語られます。ゲバラがマルクス・エンゲルスをどのように見ていたのかが非常にわかりやすい作品です。ゲバラのマルクス観を知るにはうってつけな作品となっています。
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まとめ
今回の記事では12冊のマルクス関連書籍をご紹介しました。
その中でも☆マークを付けた、
ジョナサン・スパーバー『マルクス ある十九世紀人の生涯』
ロバート・スキデルスキー、エドワード・スキデルスキー『じゅうぶん豊かで、貧しい社会―理念なき資本主義の末路』
ウルリケ・ヘルマン『スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋』
トリストラム・ハント『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』
ジャック・バーザン『ダーウィン,マルクス,ヴァーグナー 知的遺産の批判』
の5作品は特におすすめしたい作品となっています。
マルクスの生涯を学ぶことは人間を動かす思想がどのように出来上がっていったのかを学ぶことに繋がります。
これはマルクス一人の問題ではなく人類普遍の問題です。
そうしたことを考えていく上でもこれらの本は非常に有益だと私は考えます。
ぜひ手に取って頂けたらなと思います。
以上、「マルクス伝記おすすめ12作品一覧~マルクス・エンゲルスの生涯・思想をより知るために」でした。
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