『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』~仏教興隆をもたらした梁武帝も登場!

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『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』概要と感想~仏教興隆をもたらした梁武帝も登場!

今回ご紹介するのは2005年に講談社より発行された川本芳昭著『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』です。

早速この本について見ていきましょう。

第5巻は、220年の後漢滅亡から隋の天下統一(589年)にいたる大分裂の時代を取り上げる。

前漢・後漢の400年の大帝国は、後漢末期の混乱の中に崩壊し、魏・蜀・呉が争う三国時代を経て、晋の司馬炎による再統一をみるが、まもなく匈奴・鮮卑・羯・羌など異民族の大侵攻を招いていわゆる「五胡十六国」の大混乱時代に突入する。

華北はやがて鮮卑が建てた北魏が統一し(439年)、東魏、西魏、北斉、北周と興亡を繰り返す。一方、江南には漢民族の王朝である宋に続き、斉、梁、陳と次々に王朝が交替する。胡漢の勢力がたがいにしのぎを削るなかで、華北では雲岡や龍門の壮麗な石窟寺院が営まれ、江南には建康(現在の南京)を中心に陶淵明、顧ガイ之らで名高い六朝文化が栄える。

この魏晋南北朝時代は、日本列島には邪馬台国や倭の五王が登場し、朝鮮半島には高句麗・百済・新羅が興って、東アジアの「世界秩序」が形成された。その中心をなす「中華」も分裂と融合を繰り返し、非漢民族が漢化(中国化)するなかで拡大し、新たな中華世界を形作っていったのである。現代に続く中華意識と民族問題を視野に、東アジア世界の秩序の源流へとさかのぼる一冊。

Amazon商品紹介ページより

この本は三国時代終結から隋の中国統一までの動乱期について説かれた作品です。

仏教を学ぶ私にとってこの本で何より興味深いのは梁武帝の存在です。

梁武皇帝(在位502-549)(国立故宮博物院蔵)Wikipediaより

中国仏教の発展において梁武帝の存在は欠かせません。この人物についてこの本ではまず次のように述べられます。

武帝について述べる際、彼の熱烈な仏教信仰について述べなければならない。武帝はもともと仏教に対する理解を持っていたが、その在位半ばごろから、その信仰はいっそう熱を帯びるようになり篤い仏教信者となっていった。そして彼の信仰は仏教を政治の世界にまで導入し、それを通じて理想社会の実現を求めるといったレべルにまで高まっていったのである。

彼は多くの寺院を建立して大法会を催し、中国では本来牛などの生き物をささげるべきものされた祖先に対する祭祀の供物を(これを血食という)、仏教における不殺生戒に反するとして果物などに替えるということを実行している。

講談社、川本芳昭『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』P157

梁武帝がいかに仏教を熱心に信仰していたかがよくわかります。中国では儒教や道教を政治の原理に立て統治するというのが基本線にありましたがここで彼が圧倒的な熱量で仏教を持ち込んだのでありました。

思えば仏教が日本に伝来したのは538年のことです。まさに梁武帝の治世です。日本に仏教が伝来しその後政治理念として用いられたのもこうした中国での動向があったのでした。

またこうした仏教興隆は単に梁武帝一人の信仰によってなされたのではなく、次のような背景もあったことが説かれます。

仏教は中国に伝播し、本巻が取り扱っている魏晋南北朝時代において爆発的にその教線を拡大した。それは現在にまで残る多くの仏教遺跡から如実にうかがうことのできることであるが、仏教がそのように中国の大地に根を下ろし得た背景には、四〇〇年にもわたる安定した漢帝国の崩壊を受けて始まった、この魏晋南北朝という動乱の時代の民衆が、それまでの儒教的価値観ではなし得ない自己の救済を、異国の宗教である仏教に求めたからにほかならない。

また、この時代に中国へ移住してきた非漢民族にとっても仏教は、同じ異国に起源をもつ宗教であるだけに、受け入れやすい教えであった。仏教がこの時代の中国に広く深く浸透していった背景にはこうした時代の状況があったが、であればこそこの時代の為政者は仏教を取り入れることによって人心の収攬を図ろうとした。その具体的事例については本書第二章においても取り上げたところであるが、ここに取り上げた武帝の捨身という行為はそうした歴史の動向を踏まえるとき、このような歴史状況の一つの帰結と見ることができる。

講談社、川本芳昭『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』P159

仏教が中国で興隆したのは当時の時代背景が大きな役割を果たしていた。

これは宗教というものの存在を考える上で非常に大きな意味があります。

当時の中国が長きにわたって戦乱に苦しんでいたこと、そして中国へ移民してきた非漢民族が多かったということも大きな要因としてここで説かれます。民族の垣根を越えて和を説く仏教の教えがこの時代にフィットしたということができると思います。

こうした時代背景があったからこそ仏教が興隆し、さらにそこから中国の土壌に合った仏教が育っていく。

これから先弾圧などの憂き目にも遭うことにはなりますが、中国仏教の発展に大きな影響を与えた時代が今作で説かれる魏晋南北朝時代になります。宗教は宗教だけにあらず。様々な社会要因も絡んで人々に伝わっていきます。

今作『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』は時代背景と仏教のつながりについても知れるおすすめの一冊です。

ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『中国の歴史05 中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』~仏教興隆をもたらした梁武帝も登場!」でした。

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