衝撃の一冊!ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』

スターリンとヒトラーの虐殺・ホロコースト

ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』

今回ご紹介するティモシー・スナイダー著、布施由紀子訳『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』は2015年に筑摩書房より出版されました。

早速この本の概要を紹介していきたいと思います。

ホロコーストといえば、アウシュビッツに象徴される強制収容所でのユダヤ人殺害を思い浮かべるだろう。その数500万とも600万とも言われるが、それはヒトラーとスターリンによる犯罪の犠牲者のほんの一部でしかない。事件は、ドイツでもソ連でもなく、両者に挟まれた不幸な地で起こった。意図的な饑餓、強制労働、放火、銃殺、ガス殺まで、ありとあらゆる手段で民間人が虐殺されたが、彼らは死者にすら数えられていない―。

ウクライナ、べラルーシ、ポーランド、バルト三国。ドイツとソ連の双方から二度三度と侵略され、翻弄された流血地帯(ブラッドランド)。この地で起きた未曾有のジェノサイドの全貌が、いま初めて明らかにされる。

世界30カ国で刊行、アーレント賞はじめ12以上の国際賞を受賞した歴史ノンフィクション、ついに刊行。

筑摩書房、ティモシー・スナイダー著、布施由紀子訳『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』上巻表紙裏

ドイツとソ連に挟まれたこのブラッドランド(流血地帯)は、第二次世界大戦において最大の民間人犠牲者を出した。だが、その犠牲の全貌が明るみに出されることはなかった。

ヒトラーとスターリンがこの地を舞台に虐殺を繰り広げている間、欧米諸国は意図的にそこから目を逸らし続けてきたためだ。そして戦後もなお、冷戦構造にいたる過程で事実は隠蔽・歪曲され、さらなる犠牲者を生むことになる―。

証言者なき殺人の証拠を求めて、犠牲者たちの手紙や日記、教会に刻まれた最期の言葉まで掘り起こし、歴史家が執念でたどりついたのは、政治的にあまりに不都合な真実だった。

20世紀最大の愚行とその悲しみをリアルに描き出し、数多くの新聞雑誌が年間べストブックに選出。全世界から圧倒的な讃辞を集めた歴史書の金字塔。

筑摩書房、ティモシー・スナイダー著、布施由紀子訳『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』下巻表紙裏

上の概要紹介から明らかなようにこの本はスターリンとヒトラーの大量虐殺について書かれたものです。

しかもこれまで語られてこなかった事実がこの本で明るみに出されます。これは以前紹介した『スターリン伝』と同じく、新たな資料がソ連崩壊によって次々と発見されてきているからです。

そして何より、この本はナチスによるホロコーストについても多くの言及があります。

私は2019年にアウシュヴィッツを訪れました。人類の犯した悲惨な過去を学ぼうと思ったからです。

しかしです。この本を読んで自分がいかに何も知らないのかということを思い知らされることになりました。

それは次の記事からこの本を読んでいく過程で皆さんにも明らかになっていくと思います。アウシュヴィッツに対する見方が変わってしまうほど衝撃的な事実がそこにはありました。

最後に訳者あとがきよりこの本について述べられた箇所を紹介します。

一九三〇年代の主たる殺戮場はソヴィエト西部だった。ウクライナではスターリンが引き起こした人為的な飢饉で約三三〇万人が命を落とし、その後の大テロル(階級テロルと民族テロル)でも三〇万人が銃殺された。

一九三九年以降は独ソが共同でポーランドを侵略し、ポーランド国民二〇万人を殺害した。一九四一年にはヒトラーがスターリンを裏切ってソ連に侵攻、ソヴィエト人戦争捕虜やレニングラード市民など四二〇万人を故意に餓死させた。

さらに、一九四五年までに、占領下のソ連、ポーランド、バルト諸国でユダヤ人およそ五四〇万人を銃殺またはガス殺し、べラルーシやワルシャワのパルチザン戦争では報復行動などで民間人七〇万人を殺害した。

それで締めておよそ一四〇〇万人。ここには戦闘による死亡者はいっさいふくまれない。それでも、第二次世界大戦中の独ソの戦死者数の合計を二〇〇万人も上まわるという。しかもこの一帯では戦後も、ドイツ人への報復や民族浄化の嵐が吹き荒れて、多大な犠牲が生まれたのだった。

著者はそうした殺戮劇のひとつひとつを丹念に記述していく。信じがたい数値を示しつつ、犠牲者の遺書や手紙や日記、加害者側の記録や手記も引用し、被害者が生きた証を伝える配慮もしている。そこには著者の静かな怒りも感じられるようだ。しかしどの物語にも救いはない。あるのは、想像を絶する苦しみと恐怖のみだ。

アウシュヴィッツの強制収容所では一〇〇万人のユダヤ人が殺されたが、著者はそれでさえ、ホロコーストの一部でしかないと言う。モロトフ=リッべントロップ線以東の地域では、はるかにすさまじい残虐行為が繰り広げられていた。

しかしその事実の多くは大戦終結後におろされた鉄のカーテンによって封印された。ユダヤ人以外の人々も差別を受け、生命軽視の対象となった。だが時と場合が異なれば、彼らもまた復讐の鬼と化し、殺戮に手を染めたのだ。

率直に言って、読むのはつらい。人はこうも残忍に、利己的になりうるのか。こんな理不尽な生があってよいものか。あとからあとから繰り出される犠牲者数の膨大さは息苦しいほどだが、徐々に見慣れてくる自分が空恐ろしくなってきたりもする。

しかし加害の歴史を持つ国に生まれた者としては、読み進めずにはいられない。真実を追い求める信念がそうさせるのだろう。過去との向き合い方を語る最終章の『結論―人間性ヒューマニティ』は圧巻だ。
※適宜改行しました

筑摩書房、ティモシー・スナイダー著、布施由紀子訳『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』下巻P299-300

訳者が「読むのはつらい」と言いたくなるほどこの本には衝撃的なことが書かれています。しかし、だからこそ歴史を学ぶためにもこの本を読む必要があるのではないかと思います。

そもそもこの本を読むきっかけとなったのはスターリンの大テロル(粛清)と第二次世界大戦における独ソ戦に興味を持ったからでした。

スターリンはなぜ自国民を大量に餓死させ、あるいは銃殺したのか。なぜ同じソビエト人なのに人間を人間と思わないような残虐な方法で殺すことができたのかということが私にとって非常に大きな謎でした。

その疑問に対してこの上ない回答をしてくれたのがこの『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』でした。

次の記事から「『スターリン伝』を読む」と同じようにこの本で気になった箇所を紹介していきます。かなりな分量になりますのでしばらくの間この本を紹介し続けていくことになりますが、私にとっても非常に重要なことなのでじっくりと進めていきたいと思います。

以上、「衝撃の一冊!ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』」でした。

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