『ホロコースト全史』ホロコーストの歴史をもっと学ぶならこの一冊がおすすめ

スターリンとヒトラーの虐殺・ホロコースト

創元社、マイケル・ベーレンバウム著、芝健介日本語版監修『ホロコースト全史』

今回ご紹介するのは創元社より1996年に出版されたマイケル・ベーレンバウム著、芝健介日本語版監修『ホロコースト全史』です。

前回の記事ではホロコーストを学ぶ入門書としておすすめな芝健介著『ホロコースト』をご紹介しました。

今回の記事では『ホロコースト全史』という、そこからより詳しくホロコーストについて学ぶのにおすすめな一冊を紹介したいと思います。

では早速この本について日本語版監修者序文より引用します。

本書は、ナチと第三帝国の体制に関与協力した人びとが、第二次世界大戦中、六百万人近いユダヤ人を組織的に殺害した「ホロコースト」について、その全体史を跡づけた著作である。本書では、何よりまず犠牲者の視点に立って、この途方もない歴史的ジェノサイドの過程が克明にたどられている。

創元社、マイケル・ベーレンバウム、芝健介日本語版監修『ホロコースト全史』P1

本書の著者マイケル・べーレンバウム氏は、ジョージタウン大学神学部準教授を務めながら、アメリカ合衆国・国立ホロコースト記念博物館の付属研究所の所長を務めている人物である。本書は、関係者の証言のみならず、同博物館に展示している犠牲者の遺品、写真、地図等を満載しているが、この本自体は博物館の解説書、カタログではなく、あくまでべーレンバウム氏によって叙述・分析されたトータルなホロコースト史なのである。

創元社、マイケル・ベーレンバウム、芝健介日本語版監修『ホロコースト全史』P6

先程も述べましたように、この本はホロコーストの歴史をさらに詳しく学ぶには最適な一冊です。

なぜホロコーストは起こったのかという歴史的な背景はもちろん、他の本ではあまり触れられないショッキングな事実についても述べられます。少し長くなりますがその点を解説した箇所を引き続き引用します。

ナチによる絶滅政策は、細部にわたるまで綿密に計画され、命令一下、一直線に実行されたものではなく、むしろ「試行錯誤」を経て、技術者や官僚の熱意にも支えられて、手探りで進んでいったものであることは、本書からも明らかである。この問題については、強制移送の全メカニズムを詳細に分析したラウル・ヒルバーグの研究がよく知られているが、本書はこの研究もよく参照している。

ユダヤ人たちは、ゲットー(ユダヤ人居住区)への隔離をはじめ、あらゆる形での差別・迫害にさらされていた。にもかかわらず、絶滅政策の史上例を見ない性格のために、彼らはガス室やガス・トラックなどの存在を信じられず、最後までだまされたまま絶滅収容所に移送されていった。

また、想像を超える規模ゆえに全システムを把握できないというホロコーストの特性は、軍を含めて各部分で絶滅の歯車を回転させていた個々の加害者に、「知りませんでした」「上から命令されたとおりにやっただけです」という弁明と責任回避を可能にさせた。

官僚、技術者、強制移送用の特別列車のダイヤ編成を行なったエリート鉄道マンなどは、それぞれの個人を見てみれば、他人に害をなすようには思えない「普通の人びと」だった。ホロコーストの想像を絶する規模と特異な性格が、彼らの心から、自らが恐るべき犯罪にかかわっているという認識を駆逐した点も無視しえない。

当時の他の国の人びとも、ほとんどはポーランドの絶滅収容所で何が起こっているのか知らなかった。しかし本書では、当時ロンドンに置かれていたポーランド亡命政権から派遣されたヤン・カルスキが、必死の努力をしたにもかかわらず、ユダヤ人の惨状が結局諸外国から無視されてしまった事実、さらには連合国サイド、とりわけアメリカでも「ホロコースト隠し」の動きまであった事実など、ショッキングな事実にも触れている。

これまで、影響力をもった具体的な証言さえ当時なされていれば、連合国側もこの犯罪に注目し、ホロコーストの展開自体、違ったものになっていたのではないかという見方もあった。だが実際には、情報は連合国の側にも伝わっていたのである。こうした事実に初めて接する読者は、恐らく驚かれるであろう。

しかし、アメリカの国立ホロコースト記念博物館の公式の歴史書として出された本書が、アメリカのそういった過去、さらにはホロコーストの犯罪者たちを戦後入国させていた事実を容赦なく暴いていることも、忘れてはならないだろう。
※適宜改行しました

創元社、マイケル・ベーレンバウム、芝健介日本語版監修『ホロコースト全史』P4-5

ナチスによるホロコーストが試行錯誤の末進められていったその過程がかなり詳しく語られます。そしてアメリカをはじめとした連合国がホロコーストの事実を知っていながらそれを無視したという驚きの事実もこの本では語られます。

ホロコーストの現場で何が起きていたのかという視点と、それに対して連合国がどのように対応していたのかというマクロな視点がこの本では繋がっていきます。ホロコーストを国際情勢からも見ていくことでよりその実像に迫ろうとしています。

また、この本は時系列に沿ってホロコーストの経過を解説していくので、何かわからないことや調べたいことがあるときにもピンポイントで調べることができとても便利です。

そして何よりこの本で私の印象に残っているのは掲載されているたくさんの写真でした。

この本は写真資料が豊富です。しかもその写真がかなりショッキングなものばかりです。

ガリガリに痩せほとり、服を着ていない無数の遺体が巨大な穴の中に折り重なっている写真など、他の本ではあまり掲載されないようなものも多々あります。ホロコーストの悲惨さがストレートに伝わってきます・・・

ホロコーストについてより深く学ぶにはこの本はとてもおすすめです。資料集として利用するのにも抜群だと思います。

これはぜひおすすめしたい1冊です。

以上、「『ホロコースト全史』ホロコーストの歴史をもっと学ぶならこの一冊がおすすめ」でした。

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