上座部仏教

生活の世界歴史5インド思想と文化、歴史

辛島昇・奈良康明『生活の世界歴史5 インドの顔』~インド人の本音と建て前。生活レベルの精神性を幅広く知れるおすすめ本!

実際の生活には「本音と建て前」があります。これを無視してどちらかだけを取り上げてしまうと全く別のものが出来上がってしまうという著者の指摘にはたしかに「なるほど」と頷けるものがありました。

本書ではこうした宗教面だけでなく、カーストや芸術、カレーをはじめとした食べ物、政治、言語、都市と農村、性愛などなどとにかく多岐にわたって「インドの生活」が説かれます。仏教が生まれ、そしてヒンドゥー教世界に吸収されていったその流れを考える上でもこの本は非常に興味深い作品でした。

原始仏教の思想インドにおける仏教

中村元選集第15,16巻『原始仏教の思想Ⅰ、Ⅱ』~最初期の仏教を思想面で見ていく参考書

今作の分量はなんと二冊合わせておよそ1800ページという驚異の大ボリュームです。

仏教の入門書としては正直おすすめすることはできませんが、原始仏教についてより深く学ぶには非常におすすめな作品です。

この本は原始仏教における思想を原典に即して見ていくところにその特徴があります。最初期の仏教教団はどのようなことを説いていたのか、そしてどのように思想が発展、体系化されていったのかを原典を読みながら解説していきます。原典の引用がとにかく膨大です。

思想面にフォーカスしてがっちり説かれるこの本は読みごたえ抜群の名著です。

原始仏教の成立インドにおける仏教

中村元選集第14巻『原始仏教の成立』~仏教はどのようにして生まれたのか。最初期の教団を取り巻く状況を知るのにおすすめ

この本は仏教教団の最初期について解説された作品です。中村元先生は最初期の仏教教団の様子を当時の時代背景や思想界の様相と絡めてこの本でお話ししていきます。

仏教が起こってきた時代背景については以前当ブログでも紹介した中村元著『古代インド』でも語られていました。この『古代インド』は初学者でもわかりやすく読むことができる入門書として非常におすすめな作品ですが、本作『中村元選集〔決定版〕第14巻 原始仏教の成立 原始仏教Ⅳ』ではさらにかっちりと古代インドと原始仏教教団のつながりを見ていくことができます。

仏弟子の生涯インドにおける仏教

中村元選集第13巻『仏弟子の生涯』~最初期のブッダ教団にはどのような人がいたのか。その出自や性格を知るのにおすすめ

仏弟子といえば舎利弗や目犍連、摩訶迦葉を筆頭とした十大弟子が有名ですが、この本では彼ら十大弟子だけではなく、教団に所属していたたくさんの修行者たちの姿も知ることができます。

この作品では最初期のブッダ教団がどのような雰囲気だったのかを知ることができます。原始仏教について学ぶ上で非常にありがたい作品でした。

中村元インドにおける仏教

植木雅俊『仏教学者 中村元 求道のことばと思想』~日本を代表する仏教学者の桁外れのスケールと生涯を知るのにおすすめ!

実は私はこの本を読むまで、中村元先生その人のことをほとんど知りませんでした。ですが、この本を読んで驚いたのですがまさに異次元とも言える業績を残された方でありました。

この本を読んで、大きな視点で世界を見ていく中村元先生のあり方に私も心打たれるものがありました。

この本は仏教とは何かを考えさせられる、非常に大きな意味を持った作品です。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。先生の異次元の業績に驚くこと間違いなしです。

古代インドインドにおける仏教

中村元『古代インド』~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書!

この本はまずインドの先史時代から始まり、インダス文明、アーリア人の侵入、バラモン教の発展など、仏教が生まれ、衰退するまでの過程を詳しく知ることができます。なぜ仏教は生まれたのか、どのような人にブッダの教えが響いたのか、どのようにして仏教教団がインドに広がっていき、最後には衰退することになってしまったのか、それらの大きな流れをわかりやすく学ぶことになります。

仏教の教えや思想を解説する本はそれこそ無数にありますが、それらの思想が生まれてきた時代背景や気候風土をわかりやすくまとめた本は意外と少ないです。この本は私達日本人にとって意外な発見が山ほどある貴重な作品です。これを読めばきっと驚くと思います。

インド文化入門インド思想と文化、歴史

辛島昇『インド文化入門』~謎の国インドを映画、食、物語、言語など様々な切り口で見ていくおすすめ入門書

この本はインド初学者でも楽しく読み進めることができるとても面白い作品です。語られる内容も多岐にわたっていますので、きっと読者ひとりひとりにぐっと来る章が必ずあると思います。

私の中で一番印象に残ったのは第十章の「カレー文化論―南アジアの統一性」です。インドといえば「カレー」というのは私もイメージとして強くあったのですが、ではいざ「そのカレーってそもそも何なのだろう」と聞かれるとなかなか難しい。漠然としか「カレー」という存在を考えたことのなかった私にとってこの章はとても刺激的でした。まさかカレーがインド文化そのものを知る大きな鍵となっていたとは!

とても刺激的で面白い作品です!

中村元の仏教入門インドにおける仏教

中村元『中村元の仏教入門』~仏教の基本を学べるおすすめ入門書!初学者にもうってつけの名著

本書は中村元先生の講義録を基にして作られた作品です。中村元先生は1999年に亡くなられました。その中村元先生の講義の雰囲気を感じられる本書はまさに貴重な一冊となっています。

中村元先生の教えは仏教を思想だけでなく、時代背景や実際にインドを訪れた体験を通して語るところにその特徴があります。初学者でもわかりやすい言葉で興味深い内容をたくさん語ってくれる中村元先生です。仏教の入門書としてまず間違いないでしょう。

この本は仏教の基本を学びたい方への格好の入門書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

ゴータマ・ブッタインドにおける仏教

中村元『ゴータマ・ブッダ』~原典を駆使して「人間ブッダ」を明らかにした伝記。神話化されていないブッダの姿とは

神話化されていない仏伝。それがこちらの『ゴータマ・ブッダ〈普及版〉』です。

正直、私たちが普段馴染んでいる仏伝や思想とは異なるものも書かれていますので、驚くこともあるかもしれません。まして日本の僧侶側からすると都合の悪い点もないとは言い切れません。ですがそうして都合の悪いことを隠したりごまかしたりしては思想の発展や仏道は閉ざされてしまいかねません。歴史を検証できる今だからこそそうした事実に向き合い、改めて私自身のあり方を問うことが大切なのではないでしょうか。