木村汎『プーチン 外交的考察』~ロシアはなぜ戦争をするのか。ウクライナへのハイブリッド戦争を知るのにおすすめ
国民からの支持を得るために外敵を設定し、戦争を行う。そのためには手段を選ばない。
ただ、全面戦争ではアメリカやNATOから猛攻撃を受けるのでそうならないように細心の注意を払い、政治経済システムが脆弱な旧共産圏の国を狙いハイブリッド戦争を仕掛け自国に有利な展開を作ろうとする。
こうしたプーチン大統領の外交姿勢を学ぶのにこの作品はうってつけです。
国民からの支持を得るために外敵を設定し、戦争を行う。そのためには手段を選ばない。
ただ、全面戦争ではアメリカやNATOから猛攻撃を受けるのでそうならないように細心の注意を払い、政治経済システムが脆弱な旧共産圏の国を狙いハイブリッド戦争を仕掛け自国に有利な展開を作ろうとする。
こうしたプーチン大統領の外交姿勢を学ぶのにこの作品はうってつけです。
この作品はかなり細かくプーチン大統領の国内政治を見ていきます。
その中でも特に印象に残ったのはやはりメディア統制によるプロパガンダです。なぜプーチン大統領が国民からここまで支持され、長期政権を可能にしているのかがよくわかります。
また、ナワリヌイ氏についての分析も非常に興味深かったです。
そして本の後半ではプーチン政権が抱える問題点が考察されていきます。「強いロシア」を掲げて他国への圧力を強めるプーチン大統領ですが、その副作用に苦しむ実態が明らかにされます。
この作品では彼の幼少期からKGB時代、ペテルブルク、モスクワでの官僚時代、大統領時代とじっくりとその道筋を見ていきます。ニュースではなかなか知ることのないプーチン大統領の姿を知ることができます。
また、プーチン大統領の政治のキーポイントとなる彼のメンタリティーについての分析も非常に興味深いです。
プーチン大統領とはいかなる人物かということを学ぶのにぜひぜひおすすめしたい作品です。
この本も衝撃的でした。
プーチン政権がいかにメディアを掌握し、国民に対して情報を統制しているかがよくわかります。
著者はテレビプロデューサーとして実際にロシアのメディア業界を体感し、その実態をこの本で記しています。
ロシアのテレビ業界に働く人々の雰囲気や、プーチンから厳しく監視されているメディア業界の緊張感がこの本で感じられます。まさにプロパガンダの最前線。よくこんな本を出せたなと驚くばかりです。
スターリンその人に才能があったことは確かですが、時代がそれを求めていなければ表舞台に上がることなく消えていくのが定めです。スターリンが登場したのはまさにスターリンがその力を発揮するのにもっとも適したタイミングだったのです。
革命の暴力的な状況はスターリンをロシアの巨大な指導者へと成長させていく場となりました。そのような状況があったからこそスターリンが生まれ、スターリンがいるからこそ暴力的な支配構造がどんどん確立していく相互作用が生まれたのでありました。
秘密警察に追われ、地下に潜伏した「ソソ」ことスターリン。
彼はその類まれなカリスマと指導力でいつしかギャングの統領のような立場になっていました。
スターリンはグルジアの武装組織を指導するまでになっていました。そして単に武装勢力を指導するだけでなく、地域の有力者たちとのつながりまで獲得します。ここまで来ると単に強いだけではなく、圧倒的なカリスマと交渉能力、世の中を読む力がないとできません。この時すでにスターリンは後の姿の片鱗を見せ始めていたのでありました。
スターリンは若い時から圧倒的な力を持っていました。育ちのいいエリート政治家ではなく、アンダーグラウンドで名の知れたギャングのトップという存在でした。こうした闇の世界でも生き残ることができる強さが混沌としたロシア革命期においてレーニンから信頼を受ける大きな要因となったのでした。
前作の『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち』も刺激的でかなり面白い書物でしたが、続編のこちらはさらに面白いです。独裁者スターリンのルーツを見ていくのは非常に興味深いものでした。
彼の生まれや、育った環境は現代日本に暮らす私たちには想像を絶するものでした。暴力やテロ、密告、秘密警察が跋扈する混沌とした世界で、自分の力を頼りに生き抜かねばならない。海千山千の強者たちが互いに覇を競い合っている世界で若きスターリンは生きていたのです。
この本を読めばスターリンの化け物ぶりがよくわかります。運だけで独裁者になったのではありません。彼は驚くべき経験を経てカリスマへと成長していったのです。その過程を学ぶことは世界の歴史や戦争とは何かを学ぶ上で非常に重要な示唆を与えてくれるものであると思います。
スターリン自身が「私だってスターリンじゃない」と述べた。
これは非常に重要な言葉だと思います。
スターリンはソ連の独裁者だとされてきました。しかしそのスターリン自身もソヴィエトというシステムを動かす一つの歯車に過ぎなかったのではないか。スターリンが全てを動かしているようで実はそのスターリン自身もシステムに動かされていたのではないかという視点は非常に興味深いものでした。
独裁者とは何かを考える上でこの箇所は非常に重要であると思います。
この本は単純にスターリンを大悪人として断罪するのではなく、なぜロシア人は今でもなお彼を評価するのだろうかという観点を軸にスターリンとは何者かを解説していきます。
スターリン入門として読みやすく、偏りのない記述ですのでこの本はおすすめです。