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(51)ABCの友とは~レミゼを彩る若者たちについて

ユゴーの原作『レ・ミゼラブル』を読む
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「ユゴーの原作『レ・ミゼラブル』を読む」(51)ABCの友とは~レミゼを彩る若者たちについて

第三部 マリユス 第四章 ABCの友

祖父ジルノルマンと喧嘩し家を飛び出したマリユス。

その行方を追う前に、ユゴーは再び脱線し、当時の政治結社についての話を始めていきます。

そしてその中でもユゴーが特に力を入れて語ったのが「ABCの友」という結社についてでありました。もちろん、この結社はレミゼのためにユゴーが創作した存在でありますが、彼らこそミュージカルの大人気を支える若者たちの集団になります。

それもそのはず、ミュージカル映画ではメンバーの皆がとんでもなく男前で清々しいナイスガイたちなのです。そして何より歌が良い!上の映像は代表曲「 Do You Hear the People Sing?(民衆の歌)」ですが、この歌は映画のラストシーンでも再び流れるほどこの作品を象徴する楽曲となっています。

さて、この「ABCの友」という政治結社はそもそもどんな存在なのでしょうか。ミュージカルを見ているとその辺の細かいことはあまり気にはなりませんが、原作ではこの辺りの事情も実に詳しく説かれています。

ABCの友とはなんだろうか?表向きは、子供の教育が目的だったが、実は大人の再教育が目的だった。

ABCア ベ セーの友と自称していたが、つまり「下層の者アベセー」で、民衆のことだった。(中略)

ABCの友は数が少なかった。萌芽状態にある秘密結社で、徒党も英雄になれるものなら、徒党といってもよかった。彼らはパリの二つの場所に会合した。中央市場の近くの、あとでまた問題になる「コラント」という酒場と、パンテオンの近くの、今ではなくなっている「キャフェ・ミュザン」という、サン・ミシェル広場の小さなキャフェであった。第一の集会所は労働者、第二の方は学生が出入りした。

ABCの友のいつもの秘密集会は、キャフェ・ミュザンの奥の部屋で行われた。この部屋は、店からかなり離れており、店とは非常に長い廊下でつながっていて、二つの窓と、グレー小路に出る、隠し梯子のついた出口があった。みなはそこでタバコをふかしたり、酒を飲んだり、トランプをしたり、笑ったりした。どんなことでもとても大声で話したが、あることは小声で話した。壁には、共和国時代の古いフランスの図がとめてあったが、それだけで警官にかぎつけられるに十分だった。ABCの友の大部分は学生で、何人かの労働者と心から理解し合っていた。ここに主な人たちの名前をあげよう。この人たちはある程度歴史上の人物になっている。つまり、アンジョルラス、コンブフェール、ジャン・プルーヴェール、フイイ、クールフェラック、バオレル、レグルまたはレーグル、ジョリー、グランテールである。

これらの青年は、友情のおかげで、互いに一家族のようだった。レーグルのほかは、みな南部の出身だった。

新潮社、ユゴー、佐藤朔訳『レ・ミゼラブル㈢』P130-132

そしてここから主要人物の解説が語られていくのでありますが、それを全てお話しするとかなりの量になってしまうのでざっくりとリスト化して彼らの特徴を見ていくことにしましょう。

・アンジョルラス~ABCの首領。彫刻のような美青年。革命を志す潔癖なまでの理想主義者。戦闘も辞さない。
・コンブフェール~アンジョルラスの潔癖で戦闘的過ぎる考えを補完する平和主義的な哲学者。
・ジャン・プルーヴェール~猛烈な読書家で思索家。博識。コンブフェールよりもさらに穏やかな詩人。
・フイイ~扇屋の職人。独学で学問を学ぶ。苦労人だが心が広い。
・クールフェラック~明るい人柄で皆の中心になる人物。
・バオレル~大学生活11年目。喧嘩が大好き。豪快な好人物で他のグループとの懸け橋になる。
・レーグル~ボシュエと呼ばれる。何をやってもうまくいかないが、この上なく陽気で楽観的。
・ジョリー~医学を学んだが、気を病む性格のためむしろ病人のようになってしまう。基本的に穏やか。
・グランテール~全てを疑う懐疑家で酒飲み。アンジョルラスを崇拝し、愛している。

これが「ABCの友」の主要メンバーになります。

文字面だけですとなかなかイメージしにくいと思いますが、ここでぜひおすすめしたい漫画があります。それがこちらです。

こちらは榮恵愛氏による『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』という作品なのですが、これが実に素晴らしいのです!

やはりビジュアルで見るとわかりやすいですよね。ひとりひとりの個性がそのビジュアルからも浮き上がってきます。著者の榮恵愛氏のレミゼ愛も半端ではありません。ユゴーの原作を深く読み込み、それをこの漫画に巧みに落とし込んでいます。ミュージカルの副読本としてもぜひこの漫画はおすすめしたいです。ミュージカルをもっと楽しめること間違いなしです。

さて、「ABCの友」について語られたところで、いよいよ彼らとマリユスが交差していきます。

その出会いのきっかけとなったのがなんと、何をやってもうまくいかないボシュエだったのでした。この残念な星の下に生まれた青年がマリユスの運命を大きく変えることになったのです。

続く

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ユゴーの原作『レ・ミゼラブル』を読む

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この記事を書いた人

2019年「宗教とは何か」をテーマに80日間で13カ国を巡り、その旅をもとにした世界一周記を全国9紙で連載。
現在は北海道新聞「みなみ風」で『インド・スリランカ仏跡紀行』を連載中。

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