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(8)ブッダ最初の説法のすごさがわかればインド仏教の特徴が見える?

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『シン日本仏教史』(8)ブッダ最初の説法のすごさがわかればインド仏教の特徴が見える?

さて、前回までの記事でヒンドゥー教の聖地であるハリドワールをご紹介しました。

そしていよいよここからはインドの仏教に入っていきます。

とはいえ、仏教の開祖であるブッダについてはすでに当ブログの『仏教入門・現地写真から見るブッダの生涯』ですでに詳しくお話しさせて頂きましたので、ここではざっくりとブッダのご生涯を概説するにとどめたいと思います。

ブッダは紀元前463年にネパールのルンビニーで誕生し、383年にインドのクシナガラで亡くなられた実在の人物です。しかしこの生没年も諸説あり、100年以上の差がある説もあります。インドでは詳しい年代を記述する文化がなく、諸説の誤差が100年200年ほどに収まっているだけで奇跡であるとすら言われるほどです。さすがインド。時間感覚が永遠悠久、巨大すぎます。

ブッダはシャカ族の王子ゴータマ・シッダールタとして生まれるも、人生の問題に悩み29歳で家を捨て出家し、修行者としての生活を始めます。

断食仏(パキスタン・ラホール美術館蔵)「ガンダーラの最高傑作「断食仏像」に会いにパキスタンのラホール博物館へ!あのブッダの目が忘れられない!」より

この時の厳しい苦行時の様子が有名なこちらの仏像になります。

そして6年の修行を経てついにブッダは覚りを開きます。

35歳で悟ったブッダはガンジス河で有名なベナレス郊外のサールナート(鹿野園)を訪れ、かつて共に修行をしていた5人の仲間に説法をします。これが仏教教団の始まりだと言われています。この出来事を初転法輪しょてんぼうりんといい、ブッダの生涯において非常に重要な意味をもつ出来事として知られています。

サールナートの初転法輪像 「サールナート博物館の至宝アショーカ獅子柱頭とインド仏像の最高傑作「初転法輪像」を堪能!」より

ちなみに上の最初の写真がその初転法輪を表した仏像になります。

クシナガラの涅槃仏 「ブッダ入滅の地クシナガラへ~独特な形の涅槃堂と早朝の聖地。やはり「寺は朝」!」より

そこからブッダは80歳で亡くなるまでの45年間、説法をしながら旅を続け、最後は故郷のネパールにも近いクシナガラで息を引きとります。

これが極おおまかに見たブッダの生涯になります。

今回の連載はこの『現地写真から見るブッダの生涯』『親鸞伝』に続く第三弾という位置づけですので、ブッダの生涯そのものに関しては『現地写真から見るブッダの生涯』を読んで頂けましたら幸いです。

そしてここではインド仏教の特徴を考える上で重要なブッダの最初の説法、初転法輪を復習したいと思います。

ブッダの説く四つの真理

仏教教団がスタートするきっかけとなった初転法輪。

そこで5人の修行仲間に説法したのが「四聖諦ししょうたい」という教えになります。

四聖諦は4つの聖なる真理という意味です。そしてその4つの真理とは「じゅうめつどう」の4つの言葉で表されます。これがブッダの仏教における最も基本的な教えになります。では、これからそのひとつひとつの真理を見ていくことにしましょう。

苦諦(くたい)~一切皆苦。この世は苦しみの世界である

一つ目の真理、「苦諦」。

これは文字通り、この世は全て苦しみの世界であるという真理です。何とも身も蓋もない真理ですが、仏教ではこの世のあらゆるものが私達の苦しみの源であると考えます。

ブッダはこれを一切皆苦いっさいかいくと表しました。さらに具体的に言うならばこれは「四苦八苦」ということになります。

「四苦八苦」という言葉は私達も日常的に口にする言葉ですよね。私達が何気なく発するこの「四苦八苦」が実はブッダが説いた真理の一つだったのでした。

具体的に見ていきましょう。

まず四苦八苦の前半、4つの苦しみは「生・老・病・死」であるとブッダは説きます。

生きることそのものは苦しみであり、老いも苦しく、病も苦しく、そして死も避けがたい苦しみだとブッダは言います。「生」を「生きること」ではなく、「生まれること」と解釈することもありますがここではまず「生きること」という理解で受け取っていきましょう。

そしてこの4つの苦しみに「愛別離苦あいべつりく怨憎会苦おんぞうえく求不得苦ぐふとっく五蘊盛苦ごうんじょうく」の4つを足して四苦八苦ということになります。

「愛別離苦」は文字通り、愛する人と別れる苦しみを指し、「怨憎会苦」は嫌いな人と会わなければならない苦しみです。「求不得苦」は求めても得られない苦しみ、そして「五蘊盛苦」は人間の肉体と心が思うままにならない苦しみを指します。

こう言われてみると四苦八苦はどれも私たちにも頷けるものがありますよね。このようにブッダはこの世のあらゆるものは苦しみであると結論付けます。

ですが、私達からすると「ちょっと待って!生きていれば楽しいこともあるではないですか!それにこの世が苦しみしかないなんてあまりに悲観的すぎます!それでは生きる意味なんてないと言っているようなものではありませんか!」と思ってしまいますよね。

このように、仏教が「この世は全て苦しみにすぎない」という悲観主義、虚無主義に受け取られてしまいがちなのは事実なのですが、実際にはそうではありません。

この世が「私たちの願望に基づいた世界ではない」と私達が気づくために、まずはこの世が苦しみに満ちていることを自覚する。そしてその上で私達に何ができるかを考え、実践していく。こうしたステップを踏んでいくためには「一切皆苦」の認識が不可欠なのです。自分の煩悩に基づいた世界観を一度打ち壊し、そこから新たな世界認識の下、人生を切り開く。ある意味、悲観的どころか実に積極的な人生観が仏教にはあります。これ以上詳しくはここではお話しできませんが、興味のある方はぜひ佐々木閑先生による仏教入門書『仏教の誕生』を手に取って頂ければと思います。

集諦(じったい)~苦しみの原因は煩悩にあると知るべし

「この世の全ては苦しみである」という真理「苦諦」を受けて、次の真理は「集諦じったい」というものになります。

集諦は「苦しみの原因は私達の煩悩にある」という真理です。

この世の全ては苦しみである。そしてその原因は我々自身の煩悩にある。

こうしてブッダは人間世界の道理を明らかにしたのでありました。

滅諦(めったい)~煩悩を断ずることで苦しみの世界を離れた悟りに至る

苦諦、集諦と見てきたことで、この世は苦しみの世界であり、その原因は私達の煩悩にあると明かされました。

そしていよいよ「煩悩を断ずれば救いを得る」という滅諦という真理が語られます。

ただ、煩悩を断ずるといっても何をもって煩悩を断じたと言えるのか、そしてそもそも煩悩とは何ぞやという話が出てきます。私達の日常生活でも煩悩という言葉はよく出てきますが、もし人間の欲全てが煩悩だと言われてしまったら私たちはどうすればよいのでしょうか。食欲、睡眠欲は人間にとって欠かせぬものです。それを全て断じるとしたら生命活動の放棄を意味することでしょう。

厳密に考えていくとこれまた厄介な問題がどんどん出てくるのですが、ここではまずブッダの人生をざっくり把むという目的がありますので、ここでも思想の細かいところまでは立ち入りません。まずはこの四聖諦において、この世は全て苦しみであり、その原因は私達の煩悩にあり、その煩悩を滅することで救いを得られるとブッダが説いたことをぜひ頭に入れて頂ければと思います。

道諦(どうたい)~煩悩を滅するための8つの正しい修行法

さあ、ここまでの3つの真理によってブッダの基本的な世界観が見えてきました。

この世は苦しみの世界であり、煩悩を滅することでこの苦しみの世界から救われることができる。

では、そのために何をすればよいのかというのが最後の真理「道諦」になります。

「道諦」はその言葉が表すように私達が進むべき道を示しています。

その基本的な姿勢としてまず「中道ちゅうどう」が挙げられます。

「⑹苦行を捨てついに悟るブッダ。マーラ(悪魔)との対決やスジャータのミルク粥の逸話も」の記事でもお話ししましたように、ブッダは厳しい苦行も、安楽に満ちた生活もどちらも悟りには適さないと結論付けます。両極端を離れた中道こそ悟りに至る道であることをブッダは発見しました。

そしてそこから悟りに至るまでの明確な修行法として「八正道はっしょうどう」を説きます。

「八正道」とは文字通り、8つの正しい道(行い)という意味です。

その8つの道は以下の通りです。

正見 (正しいものの見方)
正思惟(正しいものの考え方)
正語 (正しい言葉遣い)
正業 (正しい行為)
正命 (正しい生活)
正精進(正しい努力)
正念 (正しい集中力)
正定 (正しい瞑想)

具体的にこれらがどのようなものかについて見ていくとまた大変になってしまいますのでとりあえずはこういう8つの修行法があることを知って頂ければまずは十分だと思います。何度も言いますが、もっと詳しく知りたい方はぜひ様々な参考書を読んで頂ければと思います。

何はともあれ、ブッダは初転法輪でこの「四聖諦」を説きました。

この世は苦しみの世界で(苦)、その原因は我々の煩悩にあり(集)、煩悩を滅すれば救われ(滅)、その道筋こそ八正道の正しい修行である(道)。

言葉にすれば信じられない程シンプルな教えですが、この教えを聞いた5人の修行仲間は直ちに悟りを開いたとされています。現代を生きる私達がこれらの教えを聞いても瞬時に悟れはしませんが、ブッダから直接教えを学んだ修行者たる彼らにとってはブッダの教えはまさに驚天動地のものだったようです。

次の記事からはインドの宗教事情についてお話ししていきます。当時の時代背景がわかればブッダの教えのどこが革新的だったのかがよくわかります。そして時代背景がわかれば5人の修行仲間の驚きの意味もわかってきます。一見シンプルに見えるこの教えのどこが画期的だったのか、ぜひ一緒に見ていくことにしましょう。

続く

主要参考文献一覧

〇インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧
〇インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧
〇仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧
〇中国仏教・中国思想のおすすめ解説本一覧
〇親鸞聖人や日本仏教を学ぶためのおすすめ参考書一覧

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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