鹿島茂『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』おすすめフランス文学案内書!

『レ・ミゼラブル』とドストエフスキー

フランス文学入門に最適!鹿島茂『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』

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今回ご紹介するのは2016年にNHK出版より発行された鹿島茂著『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』です。

早速この本について見ていきましょう。帯には次のようなことが書かれています。

フランス文学って、知っているようで、実は知らない…
読んでみたいけれど、どれから読んでいいかわからない…
そんなあなたのための「フランス文学講座」です

アラ・フィフ女性がいかに年下男と付き合うべきかを知りたいあなた。

恋愛において「やってはいけないこと6か条」を学びたいあなた。

だめんずにひかれてしまうあなた。

あなたも今日から文学の朋です。
鹿島先生の講座へ、ようこそ!

NHKテキスト「テレビでフランス語」好評連載の単行本化

鹿島茂著『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』帯

皆さんはフランス文学といえばどのようなことが思い浮かぶでしょうか。

ここで述べられているように、フランス文学といえば「恋愛」を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

たしかにフランス文学は恋がものすごく大きな要素を占めています。これは間違いありません。

ですが、単に「恋愛もの」だと侮るなかれ。フランス文学は現代社会を生きる私たちに恋愛だけでは収まらない大きな知恵を与えてくれる文学です。

この本ではフランス文学者鹿島茂氏が17世紀から20世紀までのフランス文学の代表作を取り上げ、その作品の概要とそこから学べる教訓を語ってくれます。これはフランス文学入門として最高の手引きとなります。

少し長くなりますが鹿島氏の言葉を聞いていきましょう。

書名にもある「フランス文学は役に立つ」とは実際にはどういうことなのでしょうか。

鹿島氏はまえがきで次のように語っています。

私は古本集めが好きということからわかるように、「世間の人がまったく価値を認めていないもの」の中に価値を見いだし、そこから新しい価値体系をつくりだすことを、大袈裟にいえば「人生の目的」にしてきました。私の著作はたいていこうした観点から書かれたたものです。

ところで、フランス文学を専門にしようと決意してから40年近くたった今日、なんとしたことでしよう、気がつけば、我が愛するフランス文学が「世間の人がまったく価値を認めていないもの」の仲間入りをしているようなのです。新刊書店の棚ではフランス文学の占める面積がますます狭くなり、大学のフランス文学科はどこも定員割れが続いて存廃の岐路に立たされています。

「これはまずい!」と思いました。そこで、「読む価値なし」と見なされてしまったらしいフランス文学の中に蘇らせるべき価値を探すことにしたのです。具体的にいえば、現代日本の社会を理解するのに何かしら「役に立つ」ようなものはないかと考えて、昔親しんだフランス文学を読み返してみたのです。

すると、驚いたことに、「役立つ」ものがたくさん見つかったのです。

個(自我)と家族、個(自我)と社会の関係に関するものでした。それには大きな理由があります。

フランスは大革命の人権宣言に明らかなように、個こそが最も尊い価値であり、社会の目指すべき方向は個の解放にあると定めた最初の国だからです。ようするに、1人の人間が自分の人生を自分の好きなように使って「やりたいことをやる」と思ったとき(これを、普通、「自我の目覚め」と呼びます)、たとえ家族や社会のルールとぶつかろうと、基本的にはそれを貫くのは「良い」ことだと見なした最初の国がフランスであり、フランス文学はその見事な反映だということです。

たとえば、無一文で無一物な若者が上の階級にはい上がろうとするときにどんな障害に出遭い、それをどのようにして克服してゆくのか(『ぺール・ゴリオ』『赤と黒』とか)、あるいは、親が子どもに階級上昇の夢を託そうとしたとき子どもはどのような思いをするのか(『子ども』)とか、また、女性がだれの助けも借りず、結婚もせずに社会で生きてゆこうと決意するとどのようなかたちの恋愛が残されているのか(『シェリ』)とか、あるいは少年少女が大人になることを拒否して永遠に子どもの世界にとどまろうとするとどのような社会の掟と抵触するのか(『恐るべき子どもたち』)とか、フランス文学のテーマはいずれも「個」が「個」として生きる選択肢を選んだ場合の問題を扱っているのです。

ところで、ふりかえって現代の日本社会を眺めてみると、これらのテーマはみな日本の社会がいま直面している問題にほかならないことがわかります。

なぜでしょう?

それは「個」の解放の先進国であるフランスが大革命後、あるいは第一次大戦後に直面した問題が、第二次世界大戦後にアメリカからの外圧を受けて遅ればせながら「個」の解放を始めた日本社会に、200年あるいは100年のタイムラグを伴って出現し、ようやくアクチュアルな課題となりつつあるからです。

裏を返せば、日本の社会はフランス文学を現代文学として読み得るまでに成熟してきたともいえるのですが、それならば、フランス文学を「役に立たない」「無価値なもの」と捨て去ってしまうのはあまりにもったいないということになります。

そう、いままさに、フランス文学は日本の社会にとって「役に立つ」ようになったのです。

このように、改めて「そうだ、フランス文学は役に立つんだ!」と思ったときに、タイミングよくNHK出版の「テレビでフランス語」の編集部からフランス文学入門のようなものを小説中心に執筆してもらえないかという提案をいただきましたので、まさに渡りに船でお受けして、毎月1作品ずつ小説を選んで、2年間連載を続けることになりました。

誰でも名前くらいは知っている名作から、知る人ぞ知る隠れた名作まで24編を選んで、これを「いまの日本を理解するのに役に立つか否か」という観点から論じたのが「鑑賞」の部分ですが(単行本化にあたって「講義」と変えました)、その前に読者の理解を助けるために「あらすじ」をつけました。また、テレビのフランス語講座のテキストという性質もあり、フランス語の原文の中から重要なテキストを選んでみました。いずれも編集部の提案であり、私の発案ではありませんが、結果的にはこれがなかなかよい効果を生んでいると思います。

本書をお読みになった読者が、これを導きの糸として、翻訳にしろ原書にしろ、フランス文学の作品を実際に手に取ってみることを強く希望します。そして、実際に読んでみて、「なるほど、フランス文学は役に立つ!」と実感されるようなことがありましたら、40年近くフランス文学に携わってきたものとしてこんな幸せはありません。

鹿島茂著『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』P4-7

このまえがきを読めばきっと「なるほど!」という思いになると思います。

フランス文学を学ぶことは現代日本を知ることにもつながるのです。

現代を生きる私達のライフスタイルの多くがこのフランスにルーツがあります。私達の生活がどのようにして生まれてきたのかを学ぶことは決して無駄になりません。いや、私達の生活そのものをじっくり見返す大きなきっかけになります。

この本ではそんなフランス文学の代表作を通して当時の時代背景や文化を見ていきます。もちろんこれまで紹介してきた『レ・ミゼラブル』も含まれています。

せっかくですので目次の写真をアップします。

このように17世紀から20世紀までバランスよく作品が配置されています。これらすべてを読んでいくもよし。自分の気になるものを読むのもよし。また、読んだ本の参考書として利用するもよしと非常に便利な1冊となっています。

フランス文学に興味のある方はぜひおすすめしたい作品です。

以上、「鹿島茂『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』おすすめフランス文学案内書!」でした。

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