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ソ連や全体主義との恐るべき共通点ーカラマーゾフとのつながりも「『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』を読む」記事一覧

目次

「『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』を読む」11記事一覧

ここでご紹介するのは2010年に中央公論新社より出版されたトビー・グリーン著、小林朋則訳『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』です。

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異端審問: 大国スペインを蝕んだ恐怖支配 (INSIDE HISTORIES)

異端審問: 大国スペインを蝕んだ恐怖支配 (INSIDE HISTORIES)

「『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』を読む」シリーズでは、スペインにおける恐怖政治、「異端審問」がどのようなものだったかを学んでいきます。

私がこの本を読もうと思ったのはソ連、特にスターリンの粛清の歴史を学んだのがきっかけでした。

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スターリン時代はちょっとでもスターリン体制から逸脱したり、その疑いありとされただけで問答無用で逮捕され、拷問の末自白を強要されます。実際に有罪か無罪かは関係ありません。

こういったソ連の歴史を読んでいると、私は思わずかつての中世異端審問を連想してしまいました。

異端審問も拷問の末自白を強要され、何の罪もない人が大量に殺害、追放された歴史があります。

そしてこの異端審問というものはドストエフスキーにもつながってきます。

ドストエフスキーと異端審問といえば、まさしく『カラマーゾフの兄弟』の最大の見どころ「大審問官の章」の重大な舞台設定です。

というわけで、ソ連、異端審問、ドストエフスキーの3つが一本の線でつながりました。

この本はとても興味深く、勉強になる一冊ですのでじっくりと読んでいきたいと思います。

では早速始めていきましょう。

多宗教の共存とその終焉ースペインにおける異端審問の広がり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』を読む⑴

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(1)スペイン異端審問はなぜ始まったのか~多宗教の共存の実態とその終焉について 異端審問が導入された当初、町の人々がそれを拒んだというのは驚きでした。人々は国から送られてきた役人、つまり異端審問官が町の文化や社会を壊してしまうことを察知していたのです。 共存しながら生活していた人々が恐怖や憎しみ、嫉妬、相互不信によって引き裂かれていく過程を見ていきます。
  • 1 多宗教の共存とその終焉ースペインにおける異端審問の広がり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』を読む⑴
    • 1.1 多宗教が共存していたスペインと異端審問の導入
      1.2 異文化共存の伝統
      1.3 スペインにおける異文化交流の例
      1.4 15世紀末、そんな共存にも影が・・・
      1.5 スペインキリスト教社会の尚武的な性格とレコンキスタ
      1.6 攻撃性が戦いを求め、スペインは内乱状態へ
      1.7 危険な攻撃性をどこに向けるか。スケープゴートが生まれる背景

この記事では実際に異端審問がどのようなものであったかを見ていく前に、スペインにおける共存の歴史を見ていきます。

そしてそんな共存がどのように壊れていったのかを見ていくことになります。

多宗教の共存とその終焉ースペインにおける異端審問の広がり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』を読む⑴

スペイン異端審問の政治的思惑と真の目的『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑵

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(2)スペイン異端審問の政治的思惑と真の目的とは 異端審問というと宗教的な不寛容が原因で起こったとイメージされがちですが、このスペイン異端審問においては政治的なものがその主な理由でした。 国内に充満する暴力の空気にいかに対処するのかというのがいつの世も為政者の悩みの種です。 攻撃性が高まった社会において、その攻撃性を反らすことができなければ統治は不可能になる。だからスケープゴートが必要になる。悪者探しを盛んに宣伝し、彼らに責任を負わすことで為政者に不満が向かないようにする。これはいつの時代でも行われてきたことです。
  • 1 スペイン異端審問の政治的思惑と真の目的『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑵
    • 1.1 1478年、スペイン王の勅書から見る異端審問の真の目的
      1.2 告発が告発を呼ぶー誰がいつ自分を売るのかわからない密告合戦

異端審問というと宗教的な不寛容が原因で起こったとイメージされがちですが、このスペイン異端審問においては政治的なものがその主な理由でした。

国内に充満する暴力の空気にいかに対処するのかというのがいつの世も為政者の悩みの種です。

この記事ではなぜ異端審問が始まっていったかをお話ししていきます。

スペイン異端審問の政治的思惑と真の目的『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑵

敵を打ち負かし、理想の実現を図るため拷問は行われる~犠牲者を人とすら見なさない心理『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑶

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(3)敵を打ち負かし、理想の実現を図るため拷問は行われる~犠牲者を人と見なさない心理とは 異端審問官であれどさすがに自分の手を汚すのは精神的にダメージがあります。そこで自分たちの心が痛まないように神という絶対的な権威を利用していたのでした。これはスターリンやヒトラーによる虐殺の時にも見られたものです。絶対的な権威による免罪があるからこそ、淡々と暴力を振るうことができたのでした。
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑶
    • 1.1 プラド美術館所蔵、ベルゲーテ「異端審問」ー異端審問官の無関心さ。犠牲者を人とすら見なさない心理
      1.2 異端審問官と執行人の良心の曇りを払ってから行われる拷問
      1.3 敵を打ち負かし、理想の実現を図るため拷問は行われる

「私は不本意だがこれからお前を拷問にかける。お前が悪いことをしたから悪いのだぞ?神はそれを知っておられる。神は絶対に正しい。その神より委託を受けている私たちも正しい。お前は拷問によって苦しむかもしれんがそれは自業自得だ。だがそれによりお前は罪を償うことができるのだ。むしろ我々に感謝してもらいたい。」

異端審問官であれどさすがに自分の手を汚すのは精神的にダメージがあります。そこで自分たちの心が痛まないようにこうして神という絶対的な権威を利用していたのでした。これはスターリンやヒトラーによる虐殺の時にも見られたものです。絶対的な権威による免罪があるからこそ、淡々と暴力を振るうことができたのでした。

なぜ彼らは拷問をするのか。

それは理想の実現のためでした。

この記事では人間は理想のためなら何だってやってしまう存在なのだということを述べていきます。

敵を打ち負かし、理想の実現を図るため拷問は行われる~犠牲者を人とすら見なさない心理『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑶

秘密主義と密告の横行による社会不信~疑心暗鬼の世界へ『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑷

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(4)スペイン異端審問時代の秘密主義と密告の横行による社会不信~疑心暗鬼の地獄の世界へ この記事で見ていくのは単に「異端を裁くだけのシステム」と思われていたものが、社会全体の病気となっていく過程です。 最初は疑わしき者を罰するだけでした。 しかしそれがどんどんエスカレートし、もはや誰が誰に密告されるなどわからない疑心暗鬼の世界に変わっていきます。 ここまで監視と密告が定着してしまえば、人間同士の信頼関係は崩壊です。 こうなってしまえばひとりひとりの国民にはほとんどなす術がありません。スペインは徐々に活力を失っていくのでありました・・・
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑷
    • 1.1 拷問の効果ー人々に恐怖を植え付け、全体主義主義政治を行いやすくなる
      1.2 疑わしきは罰せよ
      1.3 秘密主義と密告の横行による社会不信

異端審問も最初は疑わしきものを罰するだけでした。

しかしそれがどんどんエスカレートし、もはや誰が誰に密告されるなどわからない疑心暗鬼の世界に変わっていきます。こんな世界で人と人との温かい交流などありえるでしょうか。私たちがこれまで当たり前のように交わしていた楽しいつながりはありえるでしょうか。

ここまで監視と密告が定着してしまえば、人間同士の信頼関係は崩壊です。

こうなってしまえばひとりひとりの国民にはほとんどなす術がありません。スペインは徐々に活力を失っていくのでありました・・・

この記事ではそんな社会不信の過程をお話ししていきます。

秘密主義と密告の横行による社会不信~疑心暗鬼の世界へ『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑷

衝撃!セルバンデスの驚異の風刺技術!ガレー船での漕役刑と『ドン・キホーテ』のつながり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑸

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(5)セルバンテスの驚異の風刺技術!ガレー船での漕役刑と『ドン・キホーテ』のつながりとは この記事内で説かれる箇所を読んだ時、私はビリビリっとしたものを全身に感じました。 と言うのも、ガレー船での漕役刑というのはセルバンテスの『ドン・キホーテ』にも登場し、漕役囚たちとドン・キホーテのエピソードは私の中で非常に大きなインパクトを占めていたからです。
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑸
    • 1.1 自白を勧めることしかしない弁護士。その理由とは。
      1.2 異端審問所の過酷な牢獄
      1.3 衝撃!セルバンデスの驚異の風刺技術!ガレー船での漕役刑と『ドン・キホーテ』のつながり

この記事ではセルバンデスの小説『ドン・キホーテ』と異端審問のつながりについてお話ししていきます。

『ドン・キホーテ』という作品のあまりのすごさに改めて衝撃を受けました。セルバンデス、恐るべしです。

衝撃!セルバンデスの驚異の風刺技術!ガレー船での漕役刑と『ドン・キホーテ』のつながり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑸

スペイン料理や名物タパスに隠された意味ー食文化と信仰のつながり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑹

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(6)スペイン料理や名物タパスに隠された意味~食文化と信仰のつながりとは スペインの食文化を代表するタパスには実は裏の意味がありました。 スペインではキリスト教徒、改宗ユダヤ教徒・イスラム教徒は共存し、もはや同化していましたので単に見た目だけでは誰が何を信じているのかはわかりませんでした。ですのでこうした食べ物を通して信仰の如何を確かめようとしていたのです。 例えばですが、ある家で会食をしようとなったときに、客たちはそれぞれ料理を持ち寄ることになります。そしてその時に豚肉のソーセージをわざと持ち寄るのです。それで家の主人や他の客人がそれを食べようとしなければ隠れユダヤ教徒やイスラム教徒であることがばれてしまうのです。
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑹
    • 1.1 疑心暗鬼の隣人たちースペイン料理や名物タパスに隠された意味
      1.2 極端な監視社会へ向かって行くスペイン
      1.3 監視社会のさらに極端な例ー監視社会は不信社会になり、分断社会へ
      1.4 他人の詮索・噂話の快楽・監視社会の弊害ー創意工夫や創造性が社会から失われ、人々の生活は停滞する

スペインではキリスト教徒、改宗ユダヤ教徒・イスラム教徒は共存し、もはや同化していましたので単に見た目だけでは誰が何を信じているのかはわかりませんでした。ですので食べ物を通して信仰の如何を確かめようとしていました。

例えばですが、ある家で会食をしようとなったときに、客たちはそれぞれ料理を持ち寄ることになります。そしてその時に豚肉のソーセージをわざと持ち寄るのです。それで家の主人や他の客人がそれを食べようとしなければ隠れユダヤ教徒やイスラム教徒であることがばれてしまうのです。

生活のすべてにおいて互いに監視し合う社会がそこにはありました。

スペイン料理や名物タパスに隠された意味ー食文化と信仰のつながり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑹

権力を手にした者たちの腐敗ースパイたちの横暴『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑺

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(7)中世スペインとソ連。権力を手にした者たちの腐敗~官僚やスパイたちの横暴を探る スパイがどこにいるかわからないという社会。権力の維持のために秘密警察を利用し、体制を守ろうとするのは中世スペインですでに大々的に行われていたのでありました。 権力を持った人間がそれを悪用する恐ろしさがこの記事では感じられると思います。 「権力こそ正義であり、権力さえあればどんな不正も許される」 このことはまさしくソ連時代のレーニン、スターリンも掲げていたお題目でした。
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑺
    • 1.1 権力を手にした者たちの腐敗
      1.2 スパイ網の整備
      1.3 権力こそ正義であり、権力さえあればどんな不正も許される

ここからいよいよこの本の核心に入っていきます。

ここからまさしくソ連時代ともリンクしていきます。

スパイがどこにいるかわからない。

権力の維持のために秘密警察を利用し、体制を守ろうとするのは中世スペインですでに大々的に行われていたのでありました。

権力を手にした者たちの腐敗ースパイたちの横暴『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑺

権力自壊の前兆~強大な官僚主義と膨大な事務の弊害『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑻

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(8)中世スペインの権力自壊の前兆~強大な官僚主義と膨大な事務の弊害とは  異端審問による弾圧と追放は単に政治的な問題だけではなく、経済面にもとてつもないダメージを与えたのでした。この引用箇所はこの本の中でも特に印象に残ったもののひとつです。 他者を排除することは結果的に自分たちの首を絞めることになるということをここで思い知らされます。感情に任せて悪者をやっつけたつもりになっても、実際は何一つ問題の解決にはなりません。
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑻
    • 1.1 強大な官僚主義と膨大な事務処理
      1.2 盛者必衰は世の定めー権力自壊の前兆
      1.3 権力崩壊の過程の一例~モリスコ(改宗イスラム教徒)追放による経済崩壊
      1.4 異端審問と官僚機構がもたらした衰退
      1.5 数百年に及ぶ権力乱用と官僚主義的停滞の影響をどのように評価すればよいのだろうか

ソ連が崩壊する前は誰しもがそんなことはありえないと思っていました。実際に戦後から冷戦時代、あれほど強大な力を持っていたソ連も最後は自壊してしまいました。

歴史は形を変えて繰り返す・・・

スペインで起きた権力自壊は歴史上何度も繰り返されることとなったのです。

この記事ではそんなスペインの崩壊について見ていきます。

権力自壊の前兆~強大な官僚主義と膨大な事務の弊害『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑻

モンテーニュと異端審問のつながり~衰退するスペインとヨーロッパ啓蒙思想の拒絶『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑼

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(9)モンテーニュと異端審問のつながり~衰退するスペインとヨーロッパ啓蒙思想の拒絶 モンテーニュは啓蒙思想で有名なフランス人ではありますがその血筋のルーツはスペインのコンベルソであったと言われています。驚くべきことに、異端審問が横行していたスペインの歴史がモンテーニュの思想に大きな影響を与えていたのでありました。
  • 1 『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑼
    • 1.1 衰退するスペインとヨーロッパ啓蒙思想の拒絶
      1.2 コンベルソの血筋だったモンテーニュ。彼の思想と異端審問のつながり
      1.3 言葉と行為が一致していなければその言葉は信用できない
      1.4 文面の裏側に隠されたモンテーニュの本当の信条

モンテーニュはフランス人ではありますがその血筋のルーツはスペインのコンベルソであったと言われています。

異端審問が横行していたスペインの歴史がモンテーニュの思想に大きな影響を与えていたと著者は述べています。

この記事ではそんなモンテーニュと異端審問のつながりについてお話ししていきます。

モンテーニュと異端審問のつながり~衰退するスペインとヨーロッパ啓蒙思想の拒絶『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑼

『ドン・キホーテ』のおすすめエピソード「焚書詮議の物語」と異端審問のつながり『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑽

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(10)『ドン・キホーテ』のおすすめエピソード「焚書詮議の物語」と異端審問のつながり 今回ご紹介する『ドン・キホーテ』の焚書詮議の物語は私の大好きなエピソードです。何回読んでもくすっと笑ってしまいます。セルバンデスのユーモアがこれでもかと詰まったシーンです。 『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読んだことで、そんな私の大好きなシーンが異端審問とつながり、新しい視点を得ることができました。セルバンデスの驚くべき手腕にただただ感嘆するのみです。
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑽
    • 1.1 抑圧される知性ー科学的思考を拒絶した異端審問
      1.2 異端審問と焚書ー『ドン・キホーテ』とのつながり
      1.3 『ドン・キホーテ』の焚書詮議の物語とは
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『ドン・キホーテ』の焚書詮議の物語は私の大好きなエピソードです。何回読んでもくすっと笑ってしまいます。セルバンデスのユーモアがこれでもかと詰まったシーンです。

『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読んだことで、そんな私の大好きなシーンが異端審問とつながり、新しい視点を得ることができました。セルバンデスの驚くべき手腕にただただ感嘆するのみです。

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異端審問を学ぶことは「人間とは何か」「現代とは何か」を考えること『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑾

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(11)異端審問を学ぶことは「人間とは何か」「現代とは何か」を考えることである 異端審問のシステムは中世スペインだけではありません。現代に生きる私たちの世界にも連綿と続いています。そうした人間そのものについて考えることが必要なのではないでしょうか。
  • 1 トビー・グリーン『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑾
    • 1.1 人間は不寛容な存在なのか
      1.2 異端審問と冷戦時代の東ドイツ、中国共産党との思想的つながり
      1.3 「異端審問の物語の核心に残るのは、人間の心理である」
      1.4 異端審問の心理探究と文学ードストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」・カフカの『審判』
      1.5 おわりにー著者からのメッセージ

異端審問のシステムは中世スペインだけではありません。現代に生きる私たちの世界にも連綿と続いています。

ソ連やナチス体制はもちろんのこと、冷戦時代の東側陣営の抑圧体制の悪名高さは有名です。そしてアジアでもそれは変わりません。世界中でこうした異端審問のシステムが存在し続けています。

そしてこの記事ではドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』やカフカの『審判』という有名な小説作品と異端審問のつながりについてもお話ししていきます。

異端審問を学ぶことは「人間とは何か」「現代とは何か」を考えること『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』を読む⑾

おわりに

ここまで全11記事をご紹介しました。

中世スペインの異端審問は過去の遺物ではなく、現代につながる人間の本質的な問題であることをこの本で学びました。

これまで学んできたレーニン、スターリンのソ連や独ソ戦と非常に強いつながりを感じました。

そしてこの本の面白い所は所々で著者の思いが吐露されていて、単なるデータの羅列には終わらない点にあります。読み応え抜群です。読んでいて本当に面白い本でした。 この本はとてもおすすめです。ぜひ皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。

以上、「ソ連や全体主義との恐るべき共通点ーカラマーゾフとのつながりも「『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配』を読む」記事一覧」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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