ヴォルテール

河童三島由紀夫と日本文学

芥川龍之介『河童』あらすじと感想~河童の国へ迷い込むとそこには?奇妙な異世界を通して近代日本を風刺した名作

芥川は「河童の世界」を通じて痛烈に日本のありさまを問うてきます。

ひとりひとり(一匹一匹?)の河童がなんと個性的でユーモラスなことか。そして、なんと不気味なことか・・・。

これが芥川龍之介の決死の抗議、人生最後の警告の意味も込めての作品だったかと思うとぞっとします。彼はこの作品の発表後一年も経たずして自殺してしまいます。

芥川龍之介の死から間もなく100年になります。ですが100年経っても芥川の作品は決して色あせません。文学の力は連綿と今を生きる私たちに受け継がれています。

フランス文学と歴史・文化

G.ホルムステン『ルソー』~入門書に最適なおすすめ伝記!

この本のありがたいのは絵や写真などのビジュアル資料も豊富な点です。当時の様子などもイメージしやすかったです。

また、伝記としても当時の時代背景などの知識がない人にもわかりやすく伝えるように書かれています。非常に読みやすく、すらすらと進むことができます。波乱万丈なルソーの生涯やその思想の特徴を楽しく学ぶことができます。

これまで当ブログでも紹介してきたヴォルテールも同時代人です。そのヴォルテールとの因縁もこの本では詳しく知ることができます。ヨーロッパ思想を切り開いた両者がなぜ犬猿の仲になったのか、それも非常に興味深かったです。

フランス文学と歴史・文化

ヴォルテール『寛容論』~狂信、宗教対立に対するヴォルテールの告発とは!今こそ読みたい名著!

この本は「カラス事件」をきっかけに書かれ、当時の狂信に対するヴォルテールの激しい反発が込められています。

しかし、全体を読んでみると厳しい言葉や攻撃的な言葉が意外と少ないことに気づきます。彼は一線を越えないのです。この辺のバランス感覚の絶妙さがヴォルテールのヴォルテールたる所以であるように感じました。

彼はこの本で宗教的不寛容の実例をいくつも紹介し、その弊害を説きます。

『寛容論』は現代にも通じる名著です。寛容さが失われつつある現代こそ、この本は非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。ぜひおすすめしたい1冊です。

フランス文学と歴史・文化

ヴォルテール『カンディード』あらすじと感想~最善説への反論、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』とのつながりも

『カンディード』は18世紀中頃の作品ではありますが、全く古さを感じない作品です。物語もドラマチックでストーリーにぐいぐい引き込まれます。とても面白い作品でした。

そして『カラマーゾフの兄弟』をとのつながりを感じながら読むとこれまた味わいが増してきます。ドストエフスキーファンの方にもぜひおすすめしたい1冊です。

フランス文学と歴史・文化

保苅瑞穂『ヴォルテールの世紀 精神の自由の世紀』~ヴォルテールの生涯をわかりやすく解説したおすすめ伝記!

この作品は450ページを超える大作です。ですが一気に読めてしまうほどの面白さがこの本にはあります。著者の劇的な語り口によって、まるで小説を読んでいるかのような気持ちになります。

そして何より、ヴォルテールという人物の魅力!これに尽きます。

『哲学書簡』や『寛容論』、『カンディード』などで有名なヴォルテールですが、名前や作品は有名ではあってもこの人物がどんな時代に生きて、どんな生涯を送ったかというとほとんど知られていないというのが実際のところではないでしょうか。かく言う私も彼についてはほとんど知らなかったというのが正直なところでした。

ですがこの本を読んで驚きました。ヴォルテールという人物がどれほど革新的で、後の世にどれだけ大きな影響を与えたのかというのかが明らかになります。

愛すべき遍歴の騎士ドン・キホーテ

(9)モンテーニュと異端審問のつながり~衰退するスペインとヨーロッパ啓蒙思想の拒絶

モンテーニュは啓蒙思想で有名なフランス人ではありますがその血筋のルーツはスペインのコンベルソであったと言われています。驚くべきことに、異端審問が横行していたスペインの歴史がモンテーニュの思想に大きな影響を与えていたのでありました。

敵対的な思想を持つ者を抹殺しようとした異端審問でしたが結局こうしたもっと強大な存在を生み出すことになってしまったのです。教会への不信や懐疑論、無神論の流れは教会の権威を徐々に蝕んでいきます。

近代的なヨーロッパの哲学者がいかに生まれてきたということに異端審問が大きな影響を与えていたというのは非常に興味深いものでした。