ルネサンス

『ローマ旅行記』~劇場都市ローマの魅力とベルニーニ巡礼

(35)サンピエトロ広場の柱廊は未完成!?知れば見え方が変わるベルニーニの本来の設計案とその意図とは

サン・ピエトロ大聖堂の目の前に広がる巨大な広場。バチカンと言えばこの広場というほど有名な広場ですが、これもベルニーニの設計によるものでした。ベルニーニは彫刻だけでなく抜群の建築センスも具えています。

しかも現在のサン・ピエトロ広場は実は未完成なのです。ベルニーニ本来の建築案は財政難やその他ローマの政治事情によって中止されてしまったのです。もしこの案が実行されていたらバチカンはもっと魅力的な劇場空間となっていたことでしょう。この記事ではそんなバチカンの裏話を紹介していきます。読めばきっと驚くと思います。

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(34)サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂を訪ねて~ベルニーニのライバル、ボッロミーニの傑作建築!

前回の記事ではベルニーニの傑作建築サンタンドレア・アル・クイリナーレ聖堂を紹介しましたが、実はその聖堂から150メートルほどの距離にベルニーニのライバル、ボッロミーニの傑作建築が立っています。

ボッロミーニはベルニーニとは真逆の性格、作風の持ち主でベルニーニ失脚の折には激しいバトルを演じた男でもあります。ですがその才能は紛れもなく突出しており、鬼才というにふさわしい独創性に溢れた建築家でした。そんなボッロミーニの傑作とベルニーニの傑作がほぼ隣通しに立っているというのは奇跡というほかはないでしょう。

正直、インパクトという面ではベルニーニのサンタンドレア・アル・クイリナーレを超えています。何かよくわからないがものすごいパンチ力で一撃必殺されるような感覚。それがこの聖堂です。

『ローマ旅行記』~劇場都市ローマの魅力とベルニーニ巡礼

(33)サンタンドレア・アル・クイリナーレ聖堂を訪ねて~ベルニーニのパンテオンたる、建築の最高傑作!

ここはローマ観光におけるメインルートには設定されない教会だと思います。パンテオンやコロッセオや真実の口など、ローマにはそれこそ名所中の名所が山ほどあります。それら名所中の名所を回るだけで日程が終わってしまうのも無理はありません。ですがこのサンタンドレア・アル・クイリナーレ聖堂はものすごい場所です。マニアックと言えばマニアックかもしれませんがぜひここも訪れてみてほしいです。本当にここにパンテオンがあるのです。しかも困難な条件の下でそれを成し遂げてしまったという驚異の建築なのです。ローマ滞在の折にはぜひベルニーニの最高傑作を皆さんにも味わってほしいです。驚愕すること間違いなしのすばらしい聖堂です。

私はこの聖堂に一瞬で魅了され、ローマ滞在中4度ここを訪れ、その度に感嘆していました。

『ローマ旅行記』~劇場都市ローマの魅力とベルニーニ巡礼

(32)イエズス会総本山ジェズ教会と創始者イグナティウス・デ・ロヨラの『霊操』の瞑想法を彫刻に取り入れたベルニーニ

今回の記事ではベルニーニの芸術に大きな影響を与えたイエズス会の創始者イグナティウス・デ・ロヨラの『霊操』の瞑想と総本山ジェズ教会についてお話ししていきます。

あのザビエルが所属していた修道会がこのイエズス会です。そして私も学んでいて驚いたのですが、イエズス会ができたのはなんと1534年のことで、ローマ教皇パウルス五世に正式に認可されたのが1540年という割と最近の話だったのである。ザビエルはその創設メンバーの一人だった。イエズス会というと、植民地戦略や政治的な面をイメージしてしまいがちですが、実は瞑想や宗教的実践を強く重んじていた側面もありました。そしてベルニーニはまさにそうした宗教的実践を重んじ日々生活していて、それが作品に顕著に表れていたのでした。これは非常に重要なポイントであると私は思います。

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(31)サンタ・マリア・デル・ポポロ教会のダニエルとハバククの像~ベルニーニの神秘性と古代ローマのインスピレーション

この記事ではポポロ広場にあるサンタ・マリア・デルポポロ教会内キジ礼拝堂に納められたベルニーニ作『ダニエル』と『ハバクク』についてお話ししていきます。

この教会自体はベルニーニよりもカラヴァッジョの絵画で有名ですが、ここもベルニーニ巡礼には欠かせません。

『ダニエル』、『ハバクク』は後期ベルニーニの熟練の技と神秘表現がいかんなく発揮された作品です。彼の後期作品の特徴を知る上でもこれらの作品は非常に重要なものとなっています。

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(30)新たなパトロン教皇アレクサンデル七世の登場!ベルニーニ第二の黄金期を支えた建築教皇の存在!

教皇イノケンティウス十世が亡くなり、その後を継いだアレクサンデル七世というのがこれまたスケールの大きな人物でした。この人物の登場によりベルニーニは第二の黄金期を迎えることになります。

これから先の記事ではキジ礼拝堂やサンピエトロ広場、サンピエトロ大聖堂の『カテドラ・ペトリ』と『スカラ・レジア』、サン・タンドレア・アル・クイリナーレなどベルニーニの傑作を紹介していきます。

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(29)ベルニーニ『マリア・ラッジの墓』~サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会の独特な大理石彫刻

「彫刻」と言うにはあまりに独特な姿の『マリア・ラッジの墓』。この作品があるサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会はパンテオンからすぐ近くの場所にあります。私もパンテオンとセットでこの教会を見学しました。

それにしても独特。この作品が本当に石でできた彫刻なのかと驚きました。色もそうですが波打つような質感には開いた口が塞がりません。大理石で波打つ衣を表現するというその発想力!人間の彫刻において衣の質感を追求するというのはよくあることです。しかし布そのものを主役にして作品を作ってしまおうという大胆さには脱帽です。色の組み合わせもベルニーニらしさを感じる素晴らしい作品です。

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(28)ローマ・ナヴォーナ広場の『四大河の噴水』~ベルニーニ、失脚からの完全復活!敵対していた教皇も絶賛した傑作!

今回の記事では堅物なイノケンティウス十世の即位によって不遇の身となったベルニーニが完全復活を果たすきっかけとなったナヴォーナの広場の『四大河の噴水』をご紹介していきます。

現在でもローマ市民や観光客の憩いの場となっているナヴォ-ナ広場。この広場で一際目を引く噴水もベルニーニの優れた発想力の賜物でした。この噴水の素晴らしさと魅力をお伝えします。

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(27)ベルニーニ『聖テレジアの法悦』~バロック美術の最高傑作!コルナーロ礼拝堂の驚異のイリュージョン!

この記事ではベルニーニの最高傑作『聖女テレサの法悦』をご紹介します。

官能的とすらいえるほどの恍惚境が表現された衝撃的な彫刻です。

実際に現場で観てみた私も衝撃を受けました。この彫刻がバロックの最高傑作と言われるのがよくわかります。

私はローマ滞在中何度もこの教会を訪れました。何度観ても感嘆してしまいます。電気もライトもない時代にこれほど完璧に光を操ったというのは衝撃的としか言いようがありません。ベルニーニ恐るべしです。

『ローマ旅行記』~劇場都市ローマの魅力とベルニーニ巡礼

(26)ベルニーニの挫折と失脚~パトロンウルバヌス八世の死と鬼才ボッロミーニの台頭

イノケンティウス十世の即位によって失脚してしまったベルニーニ。黙々と『真実』の像を彫り続けるベルニーニであったが、やはり彼は偉大な男でした。

この『真実』という作品について石鍋真澄は「我々がこの作品から学びうるのは、べルニーニは常に何か仕事をせずにはいられない勤勉な性格の持主だったということ、そして彫刻は彼にとって究極的表現手段だったということである。」と述べています。

失脚し、人生初の挫折、屈辱を味わった時でもベルニーニは彫り続けたのです。ここにベルニーニの人柄が凝縮されていると思います。

そしてこの像とともに「真実こそ最大の美徳だ」という言葉を子どもたちに残したというのも彼らしい誠実さが伝わってくるのではないでしょうか。