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ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『神の王国は汝らのうちにあり』概要と感想~非暴力主義に基づいた徹底的な体制批判。当局から「最も有害」と断罪された告発の書

この作品は非暴力主義を掲げるトルストイがロシア帝国や教会のあり方について徹底的に批判を述べたものになります。 ですので、当然検閲を通るはずもなく当局から発禁処分とされ、国内で出版されることもありませんでした。 ここまで当ブログでもトルストイの宗教的著作をご紹介してきましたが、彼の宗教信仰の中心は非暴力主義にあります。そんなトルストイにとって当時の暴力的な国家体制のあり方は到底容認できるようなものではありませんでした。

この記事ではそんなトルストイの非暴力主義と体制批判について見ていきます

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(64)エンゲルスによるマルクス主義最高の手引き書『反デューリング論』とは

エンゲルスの『反デューリング論』はマルクス主義が広まる上でとてつもないインパクトを与えることになりました。

ですが、それに対して近年は「エンゲルスはマルクスを歪めて広めた。その後のマルクス主義が起こした出来事はエンゲルスがその原因である」という批判が強くなります。

はたしてエンゲルスは本当にマルクスを歪めたのか。それともマルクスの難解(理解不能)な思想を見事に噛み砕き解説したのか。これは非常に大きな問題です。

そのことについてこの記事では考えていきます

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(63)エンゲルス『自然の弁証法』~マルクス思想と弁証法を科学に応用!後の共産党世界に絶大な影響

エンゲルスはかつて経済学と人間の歴史にヘーゲルを適用したように、今度は科学技術にまでもヘーゲルの弁証法を適用しました。

イデオロギーは科学にも適用できるのです。科学と言えば数式のような客観的なデータを連想しますが、それをもイデオロギーの世界観の下構築できるというのは驚きしかありません。

しかもそれらが大真面目に話されていたというのですから、それこそ別世界です。

共産圏の科学の枠組みにさえ影響を与えたエンゲルス、恐るべしです。

ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『クロイツェル・ソナタ』あらすじと感想~不倫疑惑の妻を殺した夫。賛否両論を巻き起こした問題作

この作品は嫉妬に狂った夫が不倫疑惑の妻を殺してしまうという筋書きなのですが、これがとにかくやりきれない小説なんです・・・

この悲劇的な作品は、いかにして生まれてきたのか

それには、実はトルストイ自身の家庭崩壊や理想と現実との乖離が大いに関係していたのでありました。

この記事では作品だけでなくトルストイの悲劇的な家庭生活についてもお話ししていきます

ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『人生論(生命論)』あらすじと感想~人はいかにして幸福な人生を送るのか。仏教とのつながりも

この作品を読んでいて私が感じたのは仏教的なエッセンスがかなり感じられる点です。

トルストイはショーペンハウアーに傾倒していた時期があり、その関係で仏教や老子の思想も研究しています。

「死とは何か」「命とは何か」「生きるとは何か」を考える際に、やはり仏教は大きな問いを私たちに投げかけます。トルストイも仏教から感じたものが大きかったのであろうことがこの作品を読んでいてとても感じられました。

この作品は文庫本で250ページほどという分量ですがものすごく骨太な作品です。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(62)葬儀でのエンゲルスの演説とマルクスの神格化のはじまり

後に数え切れないほどの人たちに影響を与えることになった大人物マルクスの葬儀に参列したのはたったの11人・・・

これには私も驚きました。

ですが逆に言えば、ほとんど世に知られていない、あるいは評価されていなかったマルクスがここからいかにして世界中に旋風を巻き起こしていったのかというのは気になるところでありますよね。

となると、ここからあの男がいよいよ存在感を増してくることになります。

エンゲルスの働きがここからいよいよ大きなものとなっていくのでした。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(61)『資本論』第2巻、3巻を完成できぬまま亡くなるマルクス

1881年、マルクスは妻の最後を看取ることもできず、自身も病気と闘っていました。世界を動かした巨人マルクスも、晩年は病気に苦しめられ、執筆もほとんど捗ることがありませんでした。

そしてマルクスは『資本論』第2巻、3巻を完成させることなく1883年に亡くなります。

ですがマルクスが死しても、マルクスの物語は終わりません。むしろ、死して後、彼の思想はより巨大なものとなって世界中に大きな影響を与えることになります。そこにいたのはやはりあの男、エンゲルスでした

ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『イワン・イリッチの死』あらすじと感想~死とは何か。なぜ私たちは生きるのだろうか。トルストイ渾身の中編小説

この作品は読んでいてとにかく苦しくなる作品です。心理描写の鬼、トルストイによるイワン・イリッチの苦しみの描写は恐るべきものがあります。

幸せだと思っていた人生があっという間にがらがらと崩れていく悲惨な現実に「平凡な男」イワン・イリッチは何を思うのか。その葛藤や苦しみをトルストイ流の圧倒的な芸術描写で展開していきます。

そして、私はこの作品を読んでいて、「あること」を連想せずにはいられませんでした。

それがチェーホフの存在です。チェーホフの『退屈な話』という中編がこの作品と酷似しているのです。

ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『人にはどれほどの土地がいるか』あらすじと感想~人間の欲望の果てしなさ、虚しさを語るトルストイの傑作民話

この作品は「ある村の百姓が、より大きな土地をもらえるという儲け話に乗っかり、次々と欲望を増大させていき、最後にはその欲望のゆえに命を落とす」という、筋書きとしてはかなりシンプルな物語です。

ですがそこは最強の芸術家トルストイ。彼の手にかかればそうしたシンプルなストーリーがとてつもなく劇的で奥深いものになります。

トルストイ民話の中で一番好きな作品はどれかと言われましたら私はこの作品を選びます。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(60)マルクスはロシアでの共産主義革命についてどのように考えていたのだろうか

マルクス・エンゲルスの革命理論によれば資本主義が成熟し、経済が崩壊した後にプロレタリアート革命が起こるということだったのですが、1870年代にはそうした理論もあまり重要視しなくなっていたのでしょうか、資本主義が全く成熟していないロシアでプロレタリアート革命が起こるとエンゲルスは自信満々に述べます。これでは必ず通るであろう「歴史の法則」という概念そのものが成立しなくなっているように思えるのですがどうなのでしょうか。

そのことについてこの記事は見ていきます