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ローマカトリック総本山サンピエトロ大聖堂~想像を超える美しさに圧倒される イタリア・バチカン編④

目次

美の殿堂!サンピエトロ大聖堂~想像を超える美しさに圧倒される 僧侶上田隆弘の世界一周記―イタリア・バチカン編④

バチカン美術館の見学を終えると、そのままサンピエトロ大聖堂へと向かう。

通常サンピエトロ大聖堂に入場するには外で大行列に並ぶ必要があるのだが、美術館入場者は大聖堂に直結する回廊を使ってそのまま大聖堂に入ることができる。

こちらがその大行列。写真ではここまでしか写っていないがまだまだ後ろまで列は続いている。

これをスキップできるのは非常にありがたい。

サンピエトロ大聖堂。こここそローマカトリックの大本山。

10億人を超える信徒の聖地として、比類なき荘厳さを誇る大聖堂だ。

屋根の上には聖人たちがこちらを、いやローマ中を見下ろしている。

入場してすぐに驚く。

あまりのスケールの大きさに圧倒されてしまった。

「なんだこの空間は・・・!」

息を呑むほどの荘厳さ。

柱の太さも尋常ではない。

そしてその一つ一つには巨大な彫刻や絵画、祭壇が飾られている。

中央祭壇までやって来た。

あまりに圧倒的な光景にぼくは呼吸をすることすら忘れてしまっていた。

空いた口が塞がらない。

何なのだ・・・一体何なのだここは・・・!

ぼくはこんな教会を見たことがない。

正面の黒い背の高い彫刻は何だ?

その奥に見える黄金のステンドグラスは?その下のブロンズ像は?そもそも祭壇の横は壁なのか?柱なのか?

もうすべてわからない。

こんな構図で作られた教会をぼくは知らない。

さすがバチカン。想像のはるか上を行く世界だ・・・!

実はぼくはサンピエトロ大聖堂の予習をまったくしてこなかった。

キリスト教の歴史や聖書の予習に時間を割くあまり、一つ一つの教会まで手が回らなかったのだ。

サンピエトロ大聖堂が素晴らしいのは予想ができた。

だからこそ「見ればわかる。すごいに決まっている」と変にたかをくくっていた。

今思えば不思議なことにぼくは映像はおろか写真ですらサンピエトロ大聖堂の内部を見たことがなかったのだ。

しかしだからこそ、この大聖堂を初めて見た時の衝撃たるやものすごいものがあった。

何の前知識もないことがここではプラスに働いた。まったく知らなかったからこそ全身を打ち付けるような衝撃を感じた。

何も知らないからこそ得ることができる感動もあるということを改めて知った。

だがやはり同時に思う。予習しておけばもっと楽しめたかもしれないと。

これこれは何を意味して、これはこういう目的を持って作られている。

それを知ることで見えてくるものがそれこそ膨大にあるのだ。

その発見が「なるほど!そういうことか!」という興奮をもたらしてくれる。

事前に知るべきか、知らないべきか。これはジレンマだ。

黒い柱と天蓋の先で黄金に輝くステンドグラスには、写真では見えにくいが神の象徴であるハトが描かれている。

信じられないほどの美しさ、そして厳かさだった。

さすがはカトリックの総本山。

圧倒的だ・・・

これだけ巨大な装飾や黄金に輝く祭壇を見ても、不思議と「豪華だ・・・」という思いは出てこなかった。

純粋にぼくはこう思った。

「これは・・・人類が達成したひとつの到達点だ」と。

バチカン美術館やシスティーナ礼拝堂もそうだ。

ここには人類の英知が結集されている。

純粋にそのことに感動を覚えた。

想像をはるかに超えていた。

ここまで素晴らしいとは思っていなかった。

そしてこの大聖堂の中には、ミケランジェロ作のピエタ像というものがある。

前の記事ミケランジェロの圧倒的な才能の源泉を解説!古代ローマ芸術とのつながり イタリア・バチカン編③で述べたあのミケランジェロが24歳の時に製作した作品だ。

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ミケランジェロの彫刻家としての才能がいかんなく発揮された作品。

ぼくにとってこれがバチカン全ての中で1番心に残ったものになった。

マリアの悲しくも慈愛に満ちた表情。

そして死したイエスの表情。力の抜けた肉体。

大理石から質量が失われてしまったかのような衣の軽やかさ。

目が離せない・・・あまりに美しすぎる・・・!

ぼくはただただ夢中でこの像を見続けていた。その間、ぼくの心はほとんど無だ。何も考えられない。何も浮かんでこない。

ただ視界に映るピエタ像だけがぼくのすべてだった。

そしてふと我に返ると15分も時間が経っていた。

15分も意識を持っていかれるほど心を奪われてしまっていたのか。

芸術に魅了されるというのはこういうことなのかと心底驚いた。

結局ぼくは1時間近くこの像を見続けた。

そして毎日ここに来る度にこの像に心を奪われ続けた。

自分でも信じられなかった。

芸術の、美の圧倒的な力をまざまざと感じることになった。

恐ろしいほどの美しさだった。

サンピエトロ大聖堂を出ると目の前にはサン・ピエトロ広場が。

バチカンのスケールの大きさを感じさせる。

バチカンと言えばスイスの衛兵も有名だ。

話に聞いていた通り、ものすごく男前だった。

選ばれし者のみがここに立てるというのは本当なようだ。

サンピエトロ大聖堂は想像をはるかに超える美しさだった。

人間の英知を感じさせる場所、ぼくはそう思う。

本当に素晴らしい場所だった。

巡礼の聖地、または観光地としてあまりにも有名なこのサン・ピエトロ大聖堂。

次の記事では今回紹介したサン・ピエトロ大聖堂とはそもそもどんな建物でどんな歴史を経てきたのかをご紹介したい。

続く

※ローマやイタリアを知るためのおすすめ書籍はこちらのカテゴリーページへどうぞ
「ローマ帝国の興亡とバチカン、ローマカトリック」
「イタリアルネサンスと知の革命」

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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