『観察力を磨く 名画読解』概要と感想~ものの見方が変われば世界が変わる!ぜひ学生に読んでほしい名著!

観察力を磨く 僧侶の日記

『観察力を磨く 名画読解』概要と感想~ものの見方が変われば世界が変わる!ぜひ学生に読んでほしい名著!

今回ご紹介するのは2016年に早川書房より発行されたエイミー・E・ハーマン著、岡本由香子訳の『観察力を磨く 名画読解』です。

早速この本について見ていきましょう。

“知覚=五感を鍛えることで、現実世界というビッグデータを処理する。
ビジネスの武器になる技法だ”
――成毛眞氏(早稲田大学ビジネスクール客員教授)

フェルメールが描いた女性の表情から、あなたは何が読みとれる?
アートを分析する力は、仕事にも活かせる!
バイアスにとらわれない洞察力、重要な情報を引き出す質問力、
確実に理解してもらえる伝達力、失敗しない判断力など、
FBIやNY市警、大手企業で実践されている手法を身につけよう。

■著者紹介
エイミー・E・ハーマン Amy E. Herman
美術史家、弁護士。FBIやCIA、ニューヨーク市警、ロンドン警視庁、アメリカ陸海軍のほか、ジョンソン&ジョンソンやHSBC銀行など大手企業で、美術作品によって観察力・分析力を高めるためのセミナーを行なっている。

Amazon商品紹介ページより

この本は「有名絵画を題材に私たちの観察力を養い、日々の生活にも応用していきましょう」ということをテーマにした作品です。

「絵画の見方を学ぼう」

これ自体は特に何ら新しいことでも、珍しいことでもありません。これまでこうしたテーマでそれこそ無数の本が出版されてきました。ですがこの本はそうした無数の本とは一味違います。

まず、この本の実績がものすごい!

本書の冒頭でこの本が生まれた経緯が述べられているのですが、これを読めばこの本がどれほど強力なのかが一発でわかります。少し長くなりますがぜひご紹介したいと思います。

私たちはふだん、当たり前のように何かを見て、それについて誰かに伝えている。ただし正確に見て、適切に伝えているかどうかは疑問だ。空港でまちがったゲートからまちがった飛行機に乗ろうとしたり、書くべきでないことを書いたメールを、送るべきでない人に送ったり、目の前にある大事な情報を、いとも簡単に見逃したりする。なぜか?見ることや話すことと同様に、まちがうことも生来、私たちのなかに組み込まれているからだ。

人間が一度に見られるものの数は限られており、脳が処理できる数となるとさらに少ない。弁護士だった頃、私は目撃者の証言や当事者の話がどれほどあてにならないかを思い知らされた。ただし、ものの見方や伝え方について本気で考えるようになったのは、転職してからだ。ニューヨーク市にあるフリック・コレクションで教育部門のディレクターに就任した私は、イェール大学医学部の皮膚科学教授から、アートの分析を通じて医大生の診断スキルをあげることはできないかという相談を受けた。そして医大生をフリック・コレクションに招いてアートの分析を体験させたところ、体験しなかった学生と比較して五六パーセントも診断能力が向上したのである。私はがぜん興味を持った。アートを見るという単純な行為が、どうして医大生の診断能力を向上させたのか、その科学的根拠を知りたかった。

すっかり神経科学オタクになった私は、学術論文を読みあさり、研究者に会いにいった。神経科学者が開発したオンラインゲームに登録もした。すると、ものを見るという行為に関して、自分がまちがった認識を持っていたことがわかった(たとえば網膜は、目ではなく脳の一部なのだ!)。ただ、肝心な点において、私の直感は当たっていた。つまり訓練さえすれば実際に、より細かく、より正確に見られるようになるのである。

すばらしい発見をすると、すぐ人に教えたくなるのが私の性分だ。九・一一のあと、まだニューヨークの街にテロの恐怖が蔓延し、武勇伝や胸のつぶれるような悲話が飛び交っていた頃、友人たちと外食をした際に、さっそくこの発見を披露した。すると友人のひとりが、警官や救急隊員に教えたら社会の役に立つのではないかと言った。そんなことはまったく考えていなかったけれど、ロー・スクール時代に怒声が響く廊下に立ったときのことを思い出して、なるほどと思った。だいいち警官にレンブラントを見せるなんて画期的だ。次の月曜日、さっそくニューヨーク市警に電話をかけた。

「警官を美術館に招いて、アート作品を見せたいのですが」

電話を受けた警察委員は困惑していた。唐突な提案で、電話を切られても仕方のない状況だった。しかしその人は、やってみようと言ってくれた。数週間後、フリック・コレクションに初めて拳銃が持ちこまれた。私のセミナー〝知覚の技法〟が産声をあげた瞬間である。

それから一四年のあいだに、ニューヨーク市警の一三の部署がセミナーを受け、さらにワシントンDC、シカゴ、フィラデルフィアの警察も、バージニア州警察、オハイオ警察署長協会も、私を講師に招いてくれた。知覚の技法の評判は口コミで広がって、FBIや国土安全保障省、スコットランドヤード、アメリカ陸海軍、ナショナルガード、シークレットサービス、連邦保安局、連邦準備銀行、司法省、国務省、国立公園局からも依頼があった。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』は私のセミナーを取りあげて、知覚の技法が警察や軍の要員によい効果をもたらしていると評価してくれた。さらにセミナーを受けて観察力があがったというFBI捜査員の話を掲載してくれたのである。その捜査員は、セミナーで習った手法を活かして、ギャングによるゴミ回収シンジケートを摘発し、三四の有罪判決を勝ちとって、六〇〇〇万ドルから一億ドルの資産を没収したという。この記事が掲載されるやいなや、企業や教育機関、そして労働組合から問い合わせが殺到した。日々の生活においてはあらゆる人が—親も教師も、客室乗務員も投資銀行家も、ホテルのドアマンも、一定の観察力と伝達力を必要としているからだ。

国防総省は私のセミナーを〝たいへん価値がある〟と評し、海軍作戦部長は〝将来の戦いに活かせる革新的な技法〟と太鼓判を押してくれた。FBIナショナル・アカデミーでセミナーに参加したべンジャミン・ネイシュ警部は「(セミナーで)目を開かれた気分だ。警官としてあんなに風変わりな訓練を受けることもないだろう」と述べ、フィラデルフィア市警にセミナーを推薦してくれた。乳房が腹まで垂れた全裸の女性を教材に観察力やコミュニケーションカを鍛えようというのだから、風変わりといわれても仕方ない。

しかも効果は抜群だ。

事務所、図書館、オークション運営会社、病院、大学、大手企業、エンタメ業界、銀行、労働組合、そして教会に至るまで、さまざまな組織に属する何千人という人々が私のセミナーに参加し、観察力をのばしてきた。次は、あなたの番だ。

核となる情報を見いだし、優先順位をつけて、結論を導き、誰かに伝えるという行為は、何も医者や警官の専売特許ではない。カプチーノの注文をまちがえたり、一〇〇万ドルの契約をふいにしたりするのも、ささいな見落としやコミュニケーションの不具合が原因だ。大統領でも、郵便局員でも、べビーシッターでも、脳神経外科医でも、見落としをしない人などいない。

一方、訓練すれば見落としが減るのも事実である。技術者であれ、画家であれ、文書係であれ、学生であれ、監視員であれ、セミナーに参加した受講生たちは漏れなく、、、、、観察力が向上した。次は、あなたの番だ。(中略)

本書もこのインスタレーション(※ブログ筆者注 本書掲載の写真)のように、世界に対するあなたの見方をひっくり返したい。うまくいけば、思いもよらなかったところに色や光、ディテールやチャンスを見いだすことができるだろう。何もないと思っていた空間に、命や可能性、そして真理が見つかるだろう。これ以上ないほどの混沌のなかに、秩序と答えが見つかるだろう。そうなれば二度と、昔のように世界を捉えることはなくなる。

私のセミナーは、光栄にも受講生の口コミで広まってきた。感謝のメールもたくさんいただいた。仕事に自信が持てるようになったとか、昇進したとか、サービス向上に役立ったとか、会社の経費を大幅に節約できたとか、事業資金が二倍、三倍も集まるようになったとか、試験の点数がよくなったとか、なかには特別学級に入ったほうがいいと言われていた子どもが、ふつうの子どもたちと同じクラスで勉強できるようになったというメールもあった。

大事なものを見る力は世界を変える。本書を読めばあなたも、ずっと目を閉じて生きてきたことに気づくのではないだろうか。

早川書房、エイミー・E・ハーマン著、岡本由香子訳『観察力を磨く 名画読解』P10-16

いかがでしょうか。きっと皆さんもこの本に興味が湧いてきたのではないでしょうか。

「事務所、図書館、オークション運営会社、病院、大学、大手企業、エンタメ業界、銀行、労働組合、そして教会に至るまで、さまざまな組織に属する何千人という人々が私のセミナーに参加し、観察力をのばしてきた。次は、あなたの番だ。」

そう、まさに私たちの番なのです。この本では様々な絵画や芸術作品を通して数々の実践をこなしていくことになります。

フェルメール『夫人と召使』Wikipediaより

あの有名なフェルメールを通しての実践はものすごく刺激的で面白いです。

何気なく見るだけでは決して気づくことのできない細部の描写。この絵に実際に何が描かれているのか。この本を読めば私たちがいかに何も見えていないかがよくわかります。試しにまずはこの本を読んでみて下さい。自分の世界の見方の漠然さに衝撃を受けると思います。

著者が、

「世界に対するあなたの見方をひっくり返したい。うまくいけば、思いもよらなかったところに色や光、ディテールやチャンスを見いだすことができるだろう。何もないと思っていた空間に、命や可能性、そして真理が見つかるだろう。これ以上ないほどの混沌のなかに、秩序と答えが見つかるだろう。そうなれば二度と、昔のように世界を捉えることはなくなる。」

「大事なものを見る力は世界を変える。本書を読めばあなたも、ずっと目を閉じて生きてきたことに気づくのではないだろうか。」

と言うのもまさにその通りです。この本で学んだことはまさに私たちの世界の見え方を一変してしまうほどの破壊力があります。

私がこの本を初めて読んだのは2019年の3月のことです。私はkindleでこの本を購入し、アフリカのタンザニアでこの本を読んでいたのです。と言いますのも私は2019年3月に世界一周の旅に出ていました。そこでまず現地で手始めに読んでいたのがこの本だったのです。

せっかく旅に出て世界遺産や様々な芸術作品を見るならできるだけ深く味わいたい。私はそう思いこの本を手に取り、まさに衝撃を受けることになりました。そしてこの本で学んだことを実践しながら旅を続けていったわけです。

しかし旅も中盤を過ぎ、気の緩みもあったのか私はその観察力を疎かにしてしまったのです。そしてその結果私はボスニアで強盗に遭うことになってしまいました。まさに注意力、観察力の欠如は生き死に関わる問題として私に降りかかってきたのです。

そしてその後私はショックで体調を崩し、宿にこもり何もできない日々を過ごしていたのですが、改めてこの観察力の大切さを思い返したのでありました。

上の記事ではシャーロック・ホームズを通して観察力について改めて考えたことをお話ししましたが、それはまさにこの『観察力を磨く 名画読解』あってこそのお話です。

私はボスニアでの体験から、「ここから先は本気で観察力を鍛えよう。ここから先は死に物狂いで世界を観るんだ!」と決意しました。

するとどうしたことでしょう、本当に世界の見え方が変わっていったのです。それまでの日々とは明らかに世界の見え方が違う。そして見えてきたものに対する感性や思索もどんどん湧き上がってくるのを感じたのです。この変化には私も心の底から驚きました。

ただ漠然と「観察力を磨こう」と過ごしていてもなかなかすぐには身に付きません。ですがはっきりと意識して観察を続けるなら、確実に世界の見え方が変わります。

「見る」と「観る」の違いがこんなにも大きいものだったのかと私は衝撃を受けることになりました。

これは勉強をする上でも、仕事をする上でも、いや、生きること全てにおいても大切な技術です。これはぜひ多くの人に体感して頂きたい驚異のプログラムです。

「名画を観る」というと小難しく感じるかもしれませんが安心してください。そのような小難しい知識や哲学用語などは一切出てきません。問題は、「あなたがその絵の中に何を見たか」ということそれに尽きます。名画はあくまで観察力を磨く材料に過ぎません。絵画の知識がなくとも全く問題ありません。むしろ何もない方が何の先入観もなく観れるのでよいかもしれません。

まずはとにかく読んで実践してみて下さい。

これはぜひできるだけ若いうちに読むことをおすすめします。なぜならこれは「一生ものの財産」になるからです。20歳でこれを知れば50年60年もこの観察法を実践しながら生活することができます。つまり、50歳から始めるより30年もアドバンテージがあるわけです。この差はあまりに絶大です。

もちろん何歳から始めても問題はありません。始めることに手遅れなんてことはありません。誰しもにおすすめしたい名著中の名著です。

私はこの数年間でさまざまな名画や芸術作品を観てきましたが、この本のおかげで得れたことは数知れないと思います。私の実践面で非常に助けとなったのがこの本です。ぜひこれはおすすめしたい作品です。

ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『観察力を磨く 名画読解』概要と感想~ものの見方が変われば世界が変わる!ぜひ学生に読んでほしい名著!」でした。

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