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(16)ナポレオン敗北の地ワーテルローを訪ねて~ユゴーがレミゼ完成のためにわざわざ訪れた古戦場

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【ベルギー旅行記】(16)ナポレオン敗北の地ワーテルローを訪ねて~ユゴーがレミゼ完成のためにわざわざ訪れた古戦場

パリを出発した私が向かったのはベルギー国内にある古戦場ワーテルローの地。

ベルギーの首都ブリュッセルからはバスでおよそ1時間ほど。

ブリュッセル南駅のバス停から乗車。ブリュッセルは想像していたよりも寂れているというか、言い方が悪くなってしまうが汚い雰囲気があり、治安にも不安を覚えてしまった。

ワーテルローの古戦場近くのバス停に到着。バス停がわからず降りそびれてしまい終点まで行ってしまうというミスもあったがなんとかたどり着いた。ローカル路線のバスは初見ではやはり難しい。

右の小高い山が「ライオン像の丘」と呼ばれるワーテルローのモニュメント。

このワーテルローの古戦場には大きな博物館があり、見学者はじっくりとその戦いの歴史を学ぶことができる。

そしてこの博物館を見学して建物を抜けると、例のライオン像の丘がどんと目の前に現れるのだ。

見れば見るほど札幌のモエレ山を連想してしまう。しかもモエレ山と同じように階段でこの山は登れるようになっている。35度近い炎天下の中、せっかくここまで来たので私も登頂に挑戦することにした。

想像以上に階段は急勾配。これはかなり厳しい!炎天下の中これを上るのはかなり骨が折れた。

間もなく頂上。ライオン像がすぐ目の前に。

上から見下ろす。写真ではその急な階段ぶりはあまり伝わらないがこれはかなりの達成感。

ライオン像の周りは展望台になっていて、ワーテルローの古戦場をぐるりと360度眺めることができる。そしてこの写真のように各陣営の布陣まで示してくれるのでこれは助かる。

ライオン像の丘から見渡すワーテルロー。1815年、ここでナポレオンの最終決戦があった。

そしてユゴーはわざわざここまで来て『レ・ミゼラブル』最後の原稿を書き上げたのである。

実はユゴーは1852年にナポレオン三世がフランス皇帝となったことから、イギリスのガーンジー島に亡命を余儀なくされていた。その亡命中に書き上げられたのが『レ・ミゼラブル』という作品だったのである。そんな故郷の地を踏めないユゴーがその大作の仕上げの地に選んだのがこのワーテルローだったのだ。

なぜワーテルローだったのか。本当のところは本人のみぞ知るである。

だがヨーロッパの歴史がこのワーテルローでナポレオンが敗北したというところから再スタートしたということをユゴーが強く意識していたことは間違いないだろう。

彼が敗北したことは運命だったのだ。

ではなぜ敗北することが運命だったのか。それが運命ならばこれから先フランスは、ヨーロッパはどんな運命をたどるというのだろうか。このことこそユゴーの大きな関心事だったのではないか。レミゼを書き終えるためにわざわざはるばるここまでやって来たというのは非常に大きな意味があると私は思う。

『レ・ミゼラブル』は全五巻の大作だ。彼は着想から十年以上の歳月をかけてこの作品を書き上げた。ただ、この大作は全て順番通りに書かれたわけではない。その最後の最後まで残されていたのが二巻の冒頭で描かれる「ワーテルローの戦い」だったのだ。

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ユゴーは単にレミゼをここで完成させたのではない。

わざと二巻の冒頭の「ワーテルローの戦い」の部分を取っておいて、レミゼの原稿のフィニッシュをわざわざワーテルローの古戦場その地で書き上げるという念の入れようだったのである。

ユゴーがどれだけナポレオンの存在、ワーテルローの存在に思い入れがあったかがうかがわれるエピソードではないだろうか。

ナポレオン以後の世界の始まりをもたらした「ワーテルローの戦い」を『レ・ミゼラブル』の原稿のフィニッシュに持ってきたことの意味。これは少なからぬ意味を持つのではないかと私は思う。

続く

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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