MENU

阿刀田高『シェイクスピアを楽しむために』あらすじと感想~難しそうなシェイクスピア作品が一気に身近になるおすすめ入門書!

阿刀田高
目次

シェイクスピア入門におすすめ!阿刀田高『シェイクスピアを楽しむために』概要と感想~これを読めばシェイクスピアが一気に読みやすくなります!

ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)Wikipediaより

シェイクスピアの代表作といえば、『ハムレット』や『マクベス』、『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』などが挙げられますが、ここには挙げきれないほどの名作傑作を彼は生み出しています。

ただ、いきなりそれらの名作を読もうと思っても意外と苦戦することになります。

なぜなら日本の歌舞伎と一緒で、その演目の時代背景や人物、あらすじを知っていないとなかなかすぐには物語には入り込めないということが起こるのです。

シェイクスピア作品は基本的に舞台で演じられるものですので、読み始めるといきなり物語が幕を開け、登場人物の会話から始まります。

せっかく舞台が始まったのに、そこから舞台背景をわざわざ説明調で演者に解説させるのも演劇として無粋な話。

最初の段階でおおまかなあらすじや舞台背景を知れなければそのまま誰が何を言いたいのやらがまったくわからないまま物語が進んでしまいます。これだとやはり物語の面白さもわからず、読むのも挫折してしまうということになってしまうでしょう。

というわけでシェイクスピア作品を読むときにはあらかじめある程度の知識が必要となってくるのです。

そこでおすすめなのが今回紹介する阿刀田高氏の『シェイクスピアを楽しむために』という本です。

早速この本の紹介を見ていきましょう。

ハムレット→悩んだ人、

ロミオとジュリエット→悲恋、

リア王→裏切られた王様、

ご正解! でも、もう少し知りたくありませんか?

[シェイクスピア] 1564~1616 (ひとごろしイロイロと覚えます。謀略・発狂・嫉妬・情死、作品の登場人物は、考えられる限り様々な理由でこの世を去ります)。誕生目と命日は同じ4月23日。欧米の大衆娯楽演劇の原点、ハリウッドで最も売れている脚本家、世界で一番有名な作家です。名前は知っているけど、作品も大体見当がつくけど……、という方のための〈アトーダ式〉解説本。

Amazon商品紹介ページより

続いて阿刀田高氏のプロフィールをご紹介します。

1935 (昭和10)年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、’78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。’79年『来訪者』で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞、’95(平成7)年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。他に『あらし』『シェイクスピアを楽しむために』など著書多数。

新潮社 阿刀田高『シェイクスピアを楽しむために』

阿刀田氏はこの作品の他にも『ギリシア神話を知っていますか』、『旧約聖書を知っていますか』、『新約聖書を知っていますか』、『コーランを知っていますか』など難解で長大な書物の入門書を数多く手がけています。以前当ブログでも今作の他に『ホメロスを楽しむために』を紹介しました。

あわせて読みたい
阿刀田高『ホメロスを楽しむために』あらすじと感想~ギリシャ神話『イリアス』、『オデュッセイア』の... この本は非常におすすめです。とにかく面白く、わかりやすい!しかも深い所まで連れて行ってくれます。内容はかなり本格的です。巻末の里中満智子氏による解説でもそのことは絶賛されていました。 これを読めば『イリアス』『オデュッセイア』の流れをかなりがっちりつかむことができます。逆に言えばもしこの本を読んでいなければ『ジュリアス・シーザー』の時と同じように挫折していたかもしれません。この本のありがたさが身に沁みます。 ぜひぜひおすすめしたい作品です。

そして今回ご紹介する『シェイクスピアを楽しむために』もそのひとつで、数多くあるシェイクスピアの名作をわかりやすく、そして楽しく解説してくれます。

第1話ではシェイクスピアとはそもそもどんな人物なのかを歴史をふまえてざっくりと解説し、第2話から具体的な作品解説に入っていきます。この本では以下の作品について解説していきます。

『ハムレット』
『ロミオとジュリエット』
『オセロー』
『夏の夜の夢』
『ヴェニスの商人』
『ジュリアス・シーザー』
『ヘンリー四世』
『ウィンザーの陽気な女房たち』
『リチャード三世』
『マクベス』
『リア王』

どれもシェイクスピアの名作として有名ですが、これらのあらすじや舞台背景をわかりやすく紹介してくれています。

これを読めば早くシェイクスピア作品を読みたくなりうずうずしてくるほどです。それほどシェイクスピアの作品を魅力たっぷりにお話ししてくれます。

私自身もこの本にとても助けられました。

特に『ジュリアス・シーザー』では最初何の解説もなしに読み始めたのですがなかなか物語に入り込めず挫折してしまったのですが、この本を読んであらすじや舞台背景を知った後に読み返して見るとこれが面白いのなんの!

あわせて読みたい
シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』あらすじと感想~カエサルの名言「ブルータス、お前もか」で有... 「賽は投げられた」、「ルビコン川を渡る」、「来た、見た、勝った」、「ブルータス、お前もか」 これらを見てピンとくる方もおられると思います。 私自身、ジュリアス・シーザーという名ではピンと来なかったのですが、この人物のローマ式の本名はと言いますと、ガイウス・ユリウス・カエサルとなります。 『ジュリアス・シーザー』は私の中でも強烈な印象を残した作品でした。あらすじや背景を知ってから読むと最高に面白い作品でした。非常におすすめです。

今では『ジュリアス・シーザー』が特にお気に入りになったくらいです。

それほどこの本はシェイクスピアを読むにあたって大きな助けになります。

ぜひシェイクスピアを読む前にこの本を読んでみてください。物語の楽しみが何倍にもなること請け合いです。

強くおすすめします。

次の記事からは私が読んだシェイクスピア作品を紹介していきます。

以上、『シェイクスピア入門におすすめ!阿刀田高『シェイクスピアを楽しむために』~難しそうなシェイクスピア作品が一気に身近になるおすすめ入門書!」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

次の記事はこちら

あわせて読みたい
シェイクスピア『ハムレット』あらすじと感想~名言「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」を生んだ名作 シェイクスピアの演劇というと小難しいイメージもあるかもしれませんが、実際はまったくそんなことはありません。現代人たる私たちが見てもとても楽しめる作品です。その中でも『ハムレット』は特にドラマチックで感情移入しやすい作品となっています。 シェイクスピアの演劇はカッコいい言葉のオンパレードです。 このセリフの格好良さ、心にグッとくる響きがなんともたまりません。

おすすめシェイクスピア作品一覧はこちら

あわせて読みたい
シェイクスピアおすすめ作品12選~舞台も本も面白い!シェイクスピアの魅力をご紹介! 世界文学を考えていく上でシェイクスピアの影響ははかりしれません。 そして何より、シェイクスピア作品は面白い! 本で読んでも素晴らしいし、舞台で生で観劇する感動はといえば言葉にできないほどです。 というわけで、観てよし、読んでよしのシェイクスピアのおすすめ作品をここでは紹介していきたいと思います。

関連記事

あわせて読みたい
シェイクスピアのマニアックなおすすめ作品10選~あえて王道とは異なる玄人向けの名作をご紹介 シェイクスピアはその生涯で40作品ほどの劇作品を生み出しています。日本ではあまり知られていない作品の中にも実はたくさんの名作が隠れています。 今回の記事ではそんなマニアックなシェイクスピアおすすめ作品を紹介していきます。
あわせて読みたい
シェイクスピアおすすめ解説書一覧~知れば知るほど面白いシェイクスピア!演劇の奥深さに感動! 当ブログではこれまで様々なシェイクスピア作品や解説書をご紹介してきましたが、今回の記事ではシェイクスピア作品をもっと楽しむためのおすすめ解説書をご紹介していきます。 それぞれのリンク先ではより詳しくその本についてお話ししていますので興味のある方はぜひそちらもご覧ください。

a

あわせて読みたい
松岡和子『深読みシェイクスピア』あらすじと感想~翻訳・演劇の奥深さ、そして役者の力に驚くしかない... この本の最初のテーマは『ハムレット』なのですが、そこで語られる松たか子さんのエピソードはいきなり私の度肝を抜くものでした。 この他にも山﨑努さん、蒼井優さん、唐沢寿明さんのエピソードが出てくるのですがどのお話もとにかく格好良すぎます。超一流の役者さんのすごさにただただ驚くしかありません。
あわせて読みたい
中野好夫『シェイクスピアの面白さ』あらすじと感想~シェイクスピアがぐっと身近になる名著!思わず東... この作品は「名翻訳家が語るシェイクスピアの面白さ」という、直球ど真ん中、ものすごく面白い作品です。 この本はシェイクスピアを楽しむ上で非常にありがたい作品となっています。シェイクスピアが身近になること間違いなしです。ぜひおすすめしたい作品です。
あわせて読みたい
シェイクスピア『ロミオとジュリエット』あらすじと感想~圧倒的スピード感で進展する恋!恋愛劇の王道! 『ロミオとジュリエット』は悲劇的な純愛のドラマというイメージがかなり根強くありましたが、ロミオが実はその直前まで他の女性を狂うほど熱愛していたという事実はなかなかに衝撃的でした。読んでみてびっくりでした。 そういう発見があるという意味でもこの作品を読んでみるのはとても面白いです。もちろん、恋愛悲劇という本筋もさすがはシェイクスピア。傑作と言われるだけあります。物語の展開に引き込まれ、ぐいぐい読まされてしまいます。
あわせて読みたい
シェイクスピア『オセロー』あらすじと感想~勇将オセローの嫉妬と激情の悲劇!イアーゴーの巧みな騙し... この作品はオセローが主人公ではありますが、実はイアーゴーの方が出番が多く、しかも生き生きと描かれます。イアーゴーがタイトルでもいいくらい彼の奮闘ぶり、策の鮮やかさが描かれています。 『アラジン』のイアーゴもそうですが、人を騙す悪役ではあるのですがなぜか憎めない不思議な魅力があります。そんなイアーゴーの立ち回りもぜひ楽しんでみてください。
あわせて読みたい
シェイクスピア『ヴェニスの商人』あらすじと感想~機知に富んだ見どころ満載の名作喜劇 この作品の大筋は借金を返せなかったアントーニオーと高利貸しシャイロックとの対決なのですが、そこはシェイクスピア。このメインストーリーと並行して続いていくお話がこれまた面白い! そしてシェイクスピアはこの作品で悪徳な守銭奴、吝嗇漢の象徴となったシャイロックを生み出しました。シャイロックの造形はこれ以降、世界中の文学者たちにインスピレーションを与えることになります。
あわせて読みたい
シェイクスピア『マクベス』あらすじと感想~「バーナムの森がダンシネインにやって来るまでは」 魔女にそそのかされて王位を狙ったマクベスの悲劇、それがこの作品のメインテーマです。 ストーリー展開もスピーディーで息もつかせません。魔女の不思議な預言も絶妙な伏線となっていて、それがどう回収されるのかは本当に面白いです。 そしてこの作品はそのストーリー展開も非常に面白いですが登場人物の内面の葛藤やおののきの描写もすさまじいです。
あわせて読みたい
シェイクスピア『リア王』あらすじと感想~世界最高峰の傑作悲劇!「誰が言えよう、『俺も今がどん底だ... この作品はリア王を含め幾人もの人間が悲惨な運命を辿ります。その悲惨さは目を覆いたくなるようなものがあり、彼らの悲痛な叫びには思わず圧倒されてしまいます。 ですがこの作品は単に悲劇的な厭世的な物語というわけではありません。苦痛の中にこそ人間の偉大さや測り知れぬ神秘があるのだと述べられています。
あわせて読みたい
シェイクスピア『アントニーとクレオパトラ』あらすじと感想~シーザー亡き後のローマ帝国が舞台!愛に... 今作『アントニーとクレオパトラ』は以前紹介した『ジュリアス・シーザー』の続編にあたる作品です。 この作品は『ジュリアス・シーザー』からの流れで読んでいくと、ローマ帝国の壮大な栄枯盛衰を感じられて非常に面白い作品となっています。 この作品だけを単独で読むのはかなり厳しいとは思いますが『ジュリアス・シーザー』を読んだ後にこの作品を読めばその面白さを感じることができるのではないかと思います。 ぜひ『ジュリアス・シーザー』とセットで読んで頂きたい名作です。
あわせて読みたい
シェイクスピア『夏の夜の夢』あらすじと感想~恋人たちと妖精のドタバタ喜劇!メンデルスゾーンの序曲... 『夏の夜の夢』は有名どころの作品と比べて、たしかに影の薄い作品かもしれませんが、大好きな作品です。 とにかく笑える愛すべき作品です。「スパニエル」、「石垣」がもう愛しくてたまりません。心がふっと軽くなる夢のような楽しい劇です。 シェイクスピア作品でこんなに笑える劇と出会えるなんて思ってもいませんでした。 ぜひぜひおすすめしたい作品です!
あわせて読みたい
シェイクスピア『あらし(テンペスト)』あらすじと感想~『リア王』と対をなす大団円!爽やかな読み心... 『あらし』には『リア王』の悲劇がその背後に流れています。 プロスペローの境遇は娘たちに裏切られたリア王や息子に裏切られたグロスター伯を彷彿とさせます。 『リア王』ではそんな彼らが救いようのない絶望に叩き込まれて物語は終わるのですが、『あらし』ではなんと、プロスペローはその地位を回復し、さらには敵とまで和解するという離れ業までやってのけます。 この作品はシェイクスピアが単独で書いた最後の作品になります。自身の演劇人生のフィナーレにこうした物語を持ってきたというのも何とも味わい深いですよね。
あわせて読みたい
シェイクスピア『お気に召すまま』あらすじと感想~「この世はすべて舞台」の名言で有名な名作!才気煥... 『リア王』や『マクベス』などの悲劇群は読んでいて正直重いです。その重さがそれらの最大の魅力でもあるのですが今作『お気に召すまま』や『夏の夜の夢』、『あらし』は非常に読みやすく明るい作品です。軽やかさがあります。 シェイクスピアの含蓄溢れる名言を味わうもよし、ストーリーの軽やかさを堪能するもよし、それこそ「お気に召すまま」です。 気軽に親しむことができるのがこの作品のありがたいところではないかと私は思います。 ぜひおすすめしたい作品です。
あわせて読みたい
福田恆存『人間・この劇的なるもの』あらすじと感想~シェイクスピア翻訳で有名な劇作家による名著!「... この本は1956年に初めて刊行され、今でも重版されている名著中の名著です。現代においてもまったく古さを感じません。 自分とは何か、個性とは何か、自由とは何か。 私たちの根源に迫るおすすめの1冊です。非常におすすめです!ぜひ手に取って頂ければなと思います。
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次