インド

スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

ゴンブリッチ、オベーセーカラ『スリランカの仏教』~スリランカ仏教は新しい?衝撃の名著!

スリランカの仏教といえば厳密な戒律を守る上座部仏教というイメージがあるかもしれませんが、実は現代スリランカの仏教自体は最近構築されたものでした。スリランカ仏教は最も原始教団に近い仏教と言われることもありますが、それは実はここ数世紀で作り上げられたイメージだったのです。この本を読めば確実に驚くと思います。スリランカの仏教に対しての印象ががらっと変わると思います。

本書の帯では「発祥の地、インドで滅びた仏教が、なぜスリランカでは生き続けているのか」と書かれていますがまさに本書では現代スリランカ仏教の実態を詳しく見ていくことになります。

スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

杉本良男『仏教モダニズムの遺産』~スリランカ内戦はなぜ起こったのか。仏教ナショナリズムと宗教と暴力のつながり

スリランカの研究者オベーセーカラはダルマパーラの生み出したスリランカ仏教を「プロテスタント仏教(改革仏教)」と呼びました。スリランカの仏教といえば最も古い仏教を今でもそのまま継承しているというイメージがあるかもしれませんが、実はそうではなく19世紀から活発化した運動のひとつだったのでありました。その流れで仏教とシンハラ人のナショナリズムが結びつき、内戦へと向かっていったという歴史をこの本では詳しく見ていくことになります。特にこのダルマパーラについては伝記のようにその生涯をじっくり見ていくことになります。その生涯を見ていきながらスリランカ仏教の独特な歴史を知ることができます。

スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

澁谷利雄『スリランカ現代誌』~スリランカの民族紛争と宗教の関係がわかりやすくまとめられたおすすめ作品

本書は書名にありますように現代スリランカと紛争について解説された作品になります。これまで当ブログではスリランカの歴史や仏教についての様々な本を紹介してきましたが、1983年から2009年にかけて続いたスリランカの内戦について特化した作品は本書が初めてになります。

スリランカの内戦は大きく見れば人口の多数を占めるシンハラ仏教徒と少数派タミルヒンドゥー教徒の内戦でした。つまり、宗教が内戦の大きな原因のひとつなのでありました。

もちろん宗教だけが主要因というわけではなくそれまでの歴史や政治経済問題が大きく絡んでいるのですが、仏教が内戦に絡むことになってしまったことに私は大きなショックを受けたのでありました。本書はそんなナショナリズムと結びついた仏教についても知ることになります。

スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

上田紀行『スリランカの悪魔祓い』~悪魔祓いは非科学的な迷信か。人間と宗教のつながりを問い直す名著!

この本では単にスリランカの「悪魔祓い」だけでなく、宗教とはそもそも何か、なぜ人は「癒される」のだろうかということが語られていきます。

コロナ禍で科学や迷信、デマ、陰謀論、同調圧力など様々なことを考えさせられることになりましたが、私達の命や健康、生命力と「心」のつながりについて改めて考えさせられる素晴らしい作品です。ぜひ多くの方に手に取って頂きたい名著中の名著です。

私も強く推薦する一冊です。素晴らしい出会いでした。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

R・ゴンブリッチ『インド・スリランカ上座仏教史』~「ブッダの教えは誰が聴いたのか」社会と仏教のつながりを考えさせられる名著

この本はスリランカの仏教の大枠を学ぶのに非常におすすめな作品です。

スリランカといえば本書タイトルにありますように日本の大乗仏教とは異なる「上座部(テーラワーダ)仏教」が根付く国です。そのスリランカにおける仏教の歴史をインドにおける仏教誕生から遡って考えていくのが本書の大きな流れとなります。

本書で特徴的なのは「仏教の社会史」という視点があることです。本書では単に思想的、歴史的な問題だけでなく、当時の社会との関わりの中において仏教がどのように存在していくかを見ていきます。この本を読めば皆さんもきっと驚くと思います。ぜひぜひおすすめしたい名著です。

インド思想と文化、歴史

間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』~ガンディーの人柄や思想の核を知るのにおすすめの参考書!

マハトマ・ガンディーといえば誰もが知るインド独立に大きな役割を果たした偉人中の偉人です。

本作ではそんなガンディーの思想や人柄、そして社会に与えた影響についてわかりやすくかつ詳しく見ていけるおすすめの参考書になります。

ガンディーの有名な「非暴力」は私達もよく知る言葉です。しかしこの「非暴力」がはたしてどういうものなのかというのが実はあまり知られていない、いや誤解すらされている。そんな問題提起が本書ではなされていきます。

特にガンジーの宗教観、そして家庭問題について説かれる第5章、6章は衝撃です。私も「え?そうだったのか!?」と驚いてしまいました。

ですがこの本は単なるゴシップのようなものではありません。ガンディーの思想や人柄を様々な資料によって明らかにしていきます。

インドにおける仏教

松本照敬『ジャータカ 仏陀の前世の物語』~大乗仏教に大きな影響を与えた仏教説話のおすすめ入門書

本書はブッダ滅後2、300年頃に原型が出来上がったとされるジャータカのおすすめ入門書です。

ジャータカとはブッダの前世の物語のことで、利他や自己犠牲が説かれた素朴な物語です。そしてその代表的なお話が法隆寺の玉虫厨子にも描かれている「捨身飼虎」です。飢えた母虎を救うために自らの身体を与えたという有名な物語です。こちらももちろん本書に収録されています。

有名な物語以外にも興味深い説話がどんどん出てきますので、ジャータカの雰囲気を感じる上でもこの本はとてもおすすめです。また、こうした仏教説話から大乗仏教の流れが始まってくるという意味でもジャータカを学ぶ意義は大きいと思います。

日本仏教とその歴史

吉田一彦『民衆の古代史』~『日本霊異記』から見えてくる古代の仏教と人々の生活を知るのにおすすめ!

今作は奈良時代の僧景戒によって書かれた『日本霊異記』をもとに当時の人々の生活を見ていく作品です。

本書では奈良時代にしてすでに人々の間で仏教信仰が根付いていたことが明らかにされます。そしてその信仰がどのようなものだったのかということも知ることになります。貴族や僧侶たちではなく、民衆が求めた仏教の救いとは何だったのかということも本書では考えさせられることになります。

日本仏教を考える上でも非常にありがたい作品でした。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

日本仏教とその歴史

『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』~日本の仏教受容や聖徳太子についての驚きの事実を知れるおすすめ参考書!

まず言わせてください。

本書『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はものすごく面白いです!

これまで当ブログでは『新アジア仏教史』シリーズの第一弾である『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』から何冊も紹介してきましたが、その全てが「え!?そうなの!?」という驚きが満載の参考書でした。

そしてその中でも今作『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はトップクラスに刺激的で興味深い内容が語られていました。

日本仏教の基礎を学ぶ上でこの本は非常に素晴らしい一冊です。ぜひぜひおすすめしたい名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

中国仏教と思想・歴史

森三樹三郎『梁の武帝 仏教王朝の悲劇』~仏教信仰に篤かった中国王の善政とその悲劇を知るのにおすすめ!曇鸞とのつながりも

本書では梁武帝の政治と宗教の問題を詳しく見ていくことになります。武帝は当時としては考えられないほどの善政を行っていました。武帝の仏教的な平和文化路線は明らかに人々の生活を豊かにしました。しかしその善政そのものに国の崩壊の原因があったというのは何たる悲しい皮肉ではないでしょうか。

本書ではそんな武帝の善政と国家の崩壊を詳しく見ていくことになります。上の引用にありましたように、国が滅亡していく様はものすごく悲しくなります。武帝自身も脇の甘さと言いますか、失策がもちろんないわけではないのですがそれでもやはり「歴史のもし」を想像したくなります。

また、今作の主人公梁の武帝は浄土真宗にとっても実は非常に深いつながりのある存在です。そうした意味でも本書はとてもおすすめな作品です。