目次
石鍋真澄『サン・ピエトロ大聖堂』概要と感想~美の殿堂の歴史とその魅力をもっと知るためにおすすめの参考書
今回ご紹介するのは2000年に吉川弘文館より発行された石鍋真澄著『サン・ピエトロ大聖堂』です。
早速この本について見ていきましょう。
殉教した使徒ペテロの墓の上に建てられ、ルネサンス期に建て直されたサン・ピエトロ大聖堂は、2000年におよぶ宗教と芸術の偉大な記念碑である。聖年を迎えたキリスト教美術の真髄である聖堂を細部まで紹介する。
Amazon商品紹介ページより
この本はローマカトリックの大本山バチカンの誇るサン・ピエトロ大聖堂について解説した作品になります。
私も2019年にこの大聖堂を訪れ、その圧倒的なスケールに度肝を抜かれた記憶があります。
サン・ピエトロ大聖堂については以前当ブログでも塩野七生、石鍋真澄著『ヴァチカン物語』をご紹介しましたが、本作『サン・ピエトロ大聖堂』はもっと詳しくこの大聖堂について知りたい方にうってつけの作品となっています。
著者はこの本の「はじめに」で次のように述べています。
ミケランジェロの大ドームをいただくサン・ピエトロ大聖堂。疑いなく世界で最も大きな、そして最も有名な聖堂だ。毎日、多くのカトリック信者や観光客が、世界中の国々からここを訪れる。
この大聖堂は、宗教と歴史と芸術の殿堂であり、聖地である。かくも多くの人々がここを訪れ、たとえカトリック信者でなくとも、歴史と芸術のエッセンスを、そしてなにがしかの精神性と人間的連帯を感じるとしたら、それ自体すばらしいことにちがいない。
ローマは古代以来、「永遠の都」あるいは「世界の首都」と呼ばれ、「万人の祖国」といわれてきた。「皇帝のローマ」が滅んだのちも、「教皇のローマ」が、その伝統と権威を受け継ぎ、ローマの名はその魔術的響きを失うことはなかった。サン・ピエトロ大聖堂は、「選ばれた都市」ローマの象徴であり、その驚くべき歴史の縮図である。
「世界の歴史はこの地にむすびついている」とゲーテは言い、クルティウスは、ローマでは「われわれは歴史の原石の上に立つ」と記した。実際のサン・ピエトロ大聖堂を前にしては、その圧倒的な存在感に、歴史に思いを巡らす余裕はとてももてないが、遠く離れて思い起こすと、その壮大な歴史が大聖堂の威容と重なるように思われる。現実と歴史を同時に感じることのできるそのイメージは、比類がない。
中世の巡礼者の間では、『ミラビ亠リア・ローマ』(ローマの驚異)という本が広く読まれたが、まったくローマは驚異の都市だ。何げなく立っているその地面の下に、予想もしない遺跡が隠されているかもしれないし、街角を飾る小さな彫刻の断片が、われわれを壮大な歴史へと導く手がかりとなるかも知れない。サン・ピエトロ大聖堂は、その歴史の連続性と重み、そして芸術作品としての価値によって、ローマの驚異の筆頭にあげられるべきモニュメントである。
サン・ピエトロ大聖堂の歴史の概要を振り返り、その驚異の一端を明らかにしようというのが、本書の目的である。
吉川弘文館、石鍋真澄『サン・ピエトロ大聖堂』Pⅲ-ⅳ
サン・ピエトロ大聖堂はその歴史を知らずとも圧倒される驚異の建築です。
ですがその歴史や観るべきポイントを知ることでその魅力をもっと味わうことができます。
私も2019年に訪れた時はただただそのスケールと美しさに圧倒され、じっくり味わうどころではありませんでした。予習する時間もなかなか取れず、帰国してから「もっと予習してから行きたかったな」と悔いが残ったものでした。
ですので次に行くときはしっかり勉強してから向かおうと心に決めたのでした。
そんな私にとって最高の参考書となったのがこの作品でした。
ものすごく面白い作品です。ぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「石鍋真澄『サン・ピエトロ大聖堂』~美の殿堂の歴史とその魅力をもっと知るためにおすすめの参考書」でした。
Amazon商品ページはこちら↓
サン・ピエトロ大聖堂
次の記事はこちら
あわせて読みたい
石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』あらすじと感想~美術、歴史、宗教、全てを網羅し...
この本は最高です!
ローマの魅力を堪能するのにこれほど優れた作品は存在しないのではないでしょうか!それほど素晴らしい作品です。
「本書によってローマの魅力を会得した読者は、熱い旅心を呼び覚まされるにちがいない。」
まさにこれです!この本を読むとものすごくローマに行きたくなります!
前の記事はこちら
あわせて読みたい
トマス・ア・ケンピス『キリストにならいて』あらすじと感想~修道士の精神生活に巨大な影響!驚きの力...
この作品の持つ力強さには衝撃しかありません。この本がこれだけ世界に影響を与えたのもわかる気がします。ここまで力強さを感じる本はなかなかありません。
ベルニーニとのつながりから読んだこの作品でしたが素晴らしい読書になりました。僧侶としても非常に刺激を受けた作品でした。
関連記事
あわせて読みたい
僧侶ならではのローマおすすめ観光スポット15選!王道からマニアックな教会まで美の極致を味わう
この記事では私も大好きなローマのおすすめ観光スポットをご紹介していきます。
サン・ピエトロ大聖堂やコロッセオなどの有名どころだけではなく、観光客があまり訪れないマニアックな教会もこの記事ではご紹介していきます。
ローマは実に素晴らしい街です。ですがあまりに見どころが多すぎるが故の罠もあります。ぜひ当ブログの記事が皆様のお役に立てれば何よりでございます。
あわせて読みたい
ローマおすすめ参考書一覧~歴史、文化、宗教、芸術!ローマがもっと面白くなる名著を一挙ご紹介!
ローマはあまりに奥が深い。そして知れば知るほどはまってしまう底なし沼のような存在です。私もこのローマの浪漫にすっかりとりつかれてしまいました。
あわせて読みたい
(13)関係者以外立入禁止のバチカン市国内部を特別に見学!サン・ピエトロ大聖堂の貴重な裏側も!
バチカン市国には国家としての機構も当然あります。銀行や郵便局、裁判所などなど様々な施設が領内に存在します。ただ、大聖堂や美術館以外のエリアは関係者以外は立ち入り禁止のため、それらを目にすることは一般観光客にはできません。
ですが、なんと!そこに私は入場できることになったのでした!
この記事ではそんな私の体験をお伝えします。普段見ることのできないバチカンの姿を皆さんにご紹介します。
あわせて読みたい
石鍋真澄『ベルニーニ バロック美術の巨星』あらすじと感想~ローマの天才のおすすめ伝記!これを読めば...
芸術とはそもそも何なのか。なぜ私たちはローマに惹き付けられるのか。
その鍵がベルニーニにある。
ベルニーニを知れば新たに見えてくるものがあるということを強烈に感じた1冊でした。
素晴らしい名著です!
あわせて読みたい
石鍋真澄『教皇たちのローマ』あらすじと感想~15~17世紀のローマ美術とバチカンの時代背景がつながる...
私はこの本に衝撃を受けました。それは私の中にあった常識が覆されたかのような凄まじいショックでした。
この本ではそんな衝撃のローマ史が語られます
あわせて読みたい
アンドレ・シャステル『ローマ劫掠 1527年、聖都の悲劇』あらすじと感想~神聖ローマ帝国軍によりローマ...
この本は石鍋真澄著『教皇たちのローマ』とセットでおすすめしたい作品です。
荘厳で圧倒的な美しさを誇るバチカンの信じられない歴史を目の当たりにすることになります。
私はこの本を読んでからのこの一か月弱、いまだにそのショック状態から抜け出せておりません。それほどの衝撃です。
あわせて読みたい
石鍋真澄『カラヴァッジョ ほんとうはどんな画家だったのか』あらすじと感想~誤解された生涯やマタイ問...
この本の「カラヴァッジョに関しては、事実と推測や仮説とが節操なく語られているのが実情だ」という著者の指摘はドキッとするものがありました。
案の定、この本では「え!?そうなの!?」という事実がどんどん出てきます。
あわせて読みたい
ローマカトリック総本山サンピエトロ大聖堂~想像を超える美しさに圧倒される イタリア・バチカン編④
ローマカトリックの総本山バチカンのサンピエトロ大聖堂。
そのあまりの美しさと迫力に圧倒されてしまいました。
そしてミケランジェロのピエタ像にも魅了され、衝撃的な時間を過ごすことになりました。
まさかここまですごいとは・・・!予想をはるかに超えた素晴らしさにただただ絶句するのみでした。
あわせて読みたい
ミケランジェロとベルニーニが設計したサン・ピエトロ大聖堂の美の秘密を解説 イタリア・バチカン編⑥
この記事ではサン・ピエトロ大聖堂の建築とミケランジェロ、ベルニーニという二人の天才についてお話ししていきます。
ミケランジェロが建築家としてサンピエトロ大聖堂を設計していたという驚きの事実や、それを引き継いだベルニーニがいかに人々を魅了する芸術を生み出していったかを紹介していきます。皆さんもきっと彼らの天才ぶりに驚くと思います。
あわせて読みたい
高階秀爾『バロックの光と闇』あらすじと感想~ベルニーニの魅力やバロック芸術とは何なのかを時代背景...
この本ではダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロなどのルネッサンス全盛期の芸術とバロックは何が違うのか、どのようにしてバロックの技術が生まれてきたのかということがわかりやすく説かれます。
バロック芸術そのものだけではなく、その時代背景まで知れるこの作品はぜひぜひおすすめしたい逸品です。
あわせて読みたい
(35)サンピエトロ広場の柱廊は未完成!?知れば見え方が変わるベルニーニの本来の設計案とその意図とは
サン・ピエトロ大聖堂の目の前に広がる巨大な広場。バチカンと言えばこの広場というほど有名な広場ですが、これもベルニーニの設計によるものでした。ベルニーニは彫刻だけでなく抜群の建築センスも具えています。
しかも現在のサン・ピエトロ広場は実は未完成なのです。ベルニーニ本来の建築案は財政難やその他ローマの政治事情によって中止されてしまったのです。もしこの案が実行されていたらバチカンはもっと魅力的な劇場空間となっていたことでしょう。この記事ではそんなバチカンの裏話を紹介していきます。読めばきっと驚くと思います。
あわせて読みたい
(21)ベルニーニ『バルダッキーノ』~サン・ピエトロ大聖堂で一際目を引く傑作ブロンズ像!パンテオン...
ローマ・カトリックの総本山バチカンの象徴サン・ピエトロ大聖堂。その中央祭壇にどんと鎮座するのが何を隠そうベルニーニ作のバルダッキーノです。
ブロンズで作られたこの巨大なバルダッキーノ。ひねりが加わった柱に黒々としたその巨体。私も2019年に初めてこれを見た時には度肝を抜かれました。まさに言葉を失ってしまうほどの衝撃でした。
あわせて読みたい
(22)ベルニーニ『聖ロンギヌス』~サン・ピエトロ大聖堂の巨大彫刻。ベルニーニのイリュージョンが炸...
サン・ピエトロ大聖堂にある『ロンギヌス』はバルダッキーノやその先に見えるカテドラ・ペトリのちょうど反対側の向きにあります。そのため多くの人がこの像を見逃して帰ってしまうかさっと流して終わってしまいます。ですがそれはあまりにもったいないです。ぜひこの像にも時間を割くことをおすすめします。
ベルニーニの魔術がこれでもかと炸裂した傑作です。細部にまで彼得意の超絶技巧が施された必見の彫刻です!
コメント