石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』~美術、歴史、宗教、全てを網羅した最強のローマガイドブック!

ローマ帝国の興亡とバチカン、ローマカトリック

石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』概要と感想~美術、歴史、宗教、全てを網羅した最強のローマガイドブック!

今回ご紹介するのは1991年に吉川弘文館より発行された石鍋真澄著『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』です。

早速この本について見ていきましょう。

「永遠の都」ローマは歩くたびに新たな発見がある。本書は新進の美術史家が実際に歩きながら、遺跡や聖堂、 噴水や広場について歴史的エピソードをまじえて平易に解説した「エッセー風」ローマ案内。ローマ旅行に必携。

吉川弘文館商品紹介ページより

はじめに言っておきます。この本は最高です!

ローマの魅力を堪能するのにこれほど優れた作品は存在しないのではないでしょうか!それほど素晴らしい作品です。

表紙裏ではこの本について次のように書かれています。

ゲーテが「世界の歴史は全部この地に結びついている」と感嘆したローマは、その壮大な歴史を今日に伝える歴史・美術遺産に満ちた、興味尽きない都市である。それゆえ、中世に広く読まれた『ローマの驚異』以来、無数のローマ案内が著されてきた。しかし、不思議にも、日本では、古代遺跡だけをあつかった若干の本を除いて、ローマについての本格的な書物は著されていない。

本書は、気鋭の美術史家がローマに滞在して諸文献を読破し、多くのモニュメントを実見しながら書いた、わが国で最初の本格的なローマ案内である。

著者は、古代から中世、バロックをへて近代にいたる、主要な遺跡や聖堂、広場や噴水を詳説し、「永遠の都」の全体像に迫ろうとする。その説明は、該博な知識と繊細な感受性、そしてローマに対する真摯な愛情に裏打ちされ、しかし平易で読みやすい。本書によってローマの魅力を会得した読者は、熱い旅心を呼び覚まされるにちがいない。
※一部改行しました

吉川弘文館、石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』より

「本書によってローマの魅力を会得した読者は、熱い旅心を呼び覚まされるにちがいない。」

まさにこれです!この本を読むとものすごくローマに行きたくなります!そして観たい場所が一気に増えるので旅行スケジュールがパンパンになること間違いなしです(笑)

こちらが本書の目次になります。

ローマのメジャーどころもビシッと押さえられていますし、あまり聞いたことのない場所もあるかもしれませんが、読んでみると「おぉ!そうなのか!」と面白く読めます。ひとつひとつが発見の連続です。

この本の素晴らしさを感じて頂くために、本書の一番最初の紹介ポイント、「ポポロ広場」についての著者の言葉を紹介したいと思います。少し長くなりますが私はこの箇所を読んで心底ぐっときました。「この本はすごいぞ・・・!」と早くも確信した瞬間でした。

ローマ、ポポロ広場 Wikipediaより

一九世紀までは、ヨーロッパ各国から陸路ローマにやってきた旅行者は、トスカナを経てカッシア街道を通ってきた者も、最後はフラミーニア街道を通ってローマの北の城門、ポポロ門からローマ市中に入るのが普通であった。モンテーニュもゲーテもスタンダールも、ポポロ門をくぐって、初めてローマを目にしたのである。

これに対して、われわれは列車でテルミニ駅に着くか、あるいはフィウミチーノ空港に着いてから、リムジンでテルミニ駅に行き、そこからローマ滞在を始めるのが普通である。テルミニ駅のあたりには、統一以前にはヴィッラ・モンタルトという一六世紀の末にできた広大なヴィッラ(別荘)があった。

しかし、近代の都市整備ですっかり都市化されたうえ、大都市のターミナル駅の常として、いろいろな人びとが出入りするため、あまり感心した地域ではなくなってしまった。このテルミニ駅からナツィオナーレ通りにかけては、大きなホテル、とりわけ日本人の団体を受け入れるホテルが多い。したがって、このあたりの環境が、多くの日本人旅行者にローマの印象を悪くさせ、そしておそらく盗難の被害をも増やしているのではないかと思う。

ともあれ、長い日にちをかけてようやくローマにたどり着いたかつての旅行者と、安易な手段によって旅するわれわれとでは、ローマに着いたという感激がまったく異なるのはいたし方あるまい。おまけに、現代の都市は市街がだらしなく続いており、いつその都市に入ったのかさえはっきりしない。城門をくぐる、というかつての崇高な儀式は永遠に失われたのである。

とはいえ、イタリアの中世都市を訪れると、この城門をくぐるという、スリリングな感覚を今でも味わうことができる。たとえば、サン・ジミニャーノやアッシシがそうだ。まったく、城門をくぐって見知らぬ都市に入るときの、一種晴れやかな感じには、名状しがたいものがある。

中世の小都市でさえかくのごとくだ。いわんや憧れのローマの城門をくぐって、初めて市中に入ったときの感じは一体どんなだっただろうと思う。

実際、ポポロ門をくぐった旅行者の眼前には、すばらしいスペクタクル、ポポロ広場のまるで舞台のような眺めが広がっていた。一八世紀の末から一九世紀にかけて版を重ねたヴァージのガイドブックは、誇らしげにこう記している。

ポポロ門が与えるような、高貴で壮麗な入城を供する都市は他にない。広大な広場、その中央の大きなエジプトのオべリスク、双子の美しい聖堂、そして三本の広々とした、長い道路のパースペクティヴが形成する眺めはすばらしく、それを一目見た、まさに最初の瞬間に、ローマの壮麗さの正確な概念を得るに充分なほどである。

このヴァージの記述がガイドブックの宣伝文句でないことは、たとえば「この都市の最初の眺めほど、ローマの偉大さの完璧な概念を与えるものはないしと記した、一八世紀の著名な著述家シャルル・ド・ブロッスのような、多くの旅行者の証言によって確認できる。そしてなによりも、実際にポポロ広場に立って、われわれ自身の目でこのすばらしい眺めを見るならば、だれしもが納得するのではなかろうか。

ともあれ、かつての旅行者にとってローマという都市がいかなるものであったかを理解するには、まず、このポポロ広場が彼らに与えた「目の一撃」の強烈な効果を思い描いてみる必要がある、と私は思う。だから、このありし日のローマ入城の疑似体験、もっとも簡便には地下鉄A線のフラミーニア駅で降りて、ポポロ門から市中に入る、という実験はやってみる価値がある。

もしも読者がフラミーニア街道をもっと手前から歩いてくるとすれば、進むにつれてポポロ門からオべリスクと双子の聖堂がのぞき、そして門をくぐると突如広場が開け、巨大なオべリスクの向こうに、ちょっと風変わりなドームをいただく双子の聖堂と、それらをはさむ三本のまっすぐな道路がつくる見事なパースペクティヴが見渡せるはずだ。まさに舞台の背景のような眺めといえるだろう。オペラの序曲が終わって幕が開いた瞬間の舞台のように、そこにはこれから始まる壮大なドラマの予感のようなものがある。

そして実は、このポポロ広場の景観は、ローマの「壮麗さ」ばかりでなく、ローマという都市の性格そのものをも理解させてくれているのである。このことを分かってもらうには、以上の装飾がどんなふうに行われたかという歴史的経緯について少し話をしなければなるまい。
※一部改行しました

吉川弘文館、石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』P16-19

いかがでしょうか。私は冒頭で「モンテーニュもゲーテもスタンダールも、ポポロ門をくぐって、初めてローマを目にしたのである」という言葉を目にした時点で撃ち抜かれています。ゲーテの『イタリア紀行』が好きな私にとって、文学と絡めて解説されるともうイチコロですね。

また、「ポポロ広場が彼らに与えた「目の一撃」の強烈な効果」についての言葉も印象的だったと思います。これを読めばローマに行ってぜひ確かめてみたくなりますよね。

そしてこのポポロ広場の解説の最後に著者は次のように述べます。

古代には「皇帝の都市」であり、後には「教皇の都市」であった口ーマは、宿命的に虚構性と「ショー的」性格をもつ都市であった。長い旅路の末、ようやくローマに着いてポポロ広場に立った旅行者は、ローマの「壮麗さ」とともに、このことをも納得させられたのである。だからもしも、このポポロ広場の眺めをわざとらしく、不真面目だと思う人がいたら、その人はローマとは肌の合わない人である。けれども逆に、このシェノグラフィックな景観にぞくぞくするような興奮を覚える人がいたら、その人こそローマに魅了される「才能」をもって生まれた人なのである。

吉川弘文館、石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』P24

さあ、読者の皆さんは一体どちらでしょうか。

ちなみに私はこの「ショー的」なローマに魅了されてしまった一人です。

2019年に私はローマを訪れましたが、まさに私はこうした街並みに衝撃を受けたのでありました。

当時行った頃にはこの本は読んでいません。ローマの歴史もほとんどわからない状態での旅でした。

ですので今この本を読んで再びローマに行ったらどんなことになってしまうのか楽しみで楽しみでなりません。

この本は終始このようなわくわくする名解説を楽しむことができます。

その深さ、広さには驚くしかありません。漠然と見えていたローマの景色が変わること請け合いです。

最強のローマガイドブック、ここに極まりたり!!

ぜひぜひおすすめしたい逸品です!

以上、「石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』~美術、歴史、宗教、全てを網羅した最強のローマガイドブック!」でした。

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