トビー・ドッジ『イラク戦争は民主主義をもたらしたのか』ロシアのウクライナ侵攻を考えるためにも

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

トビー・ドッジ『イラク戦争は民主主義をもたらしたのか』ロシアのウクライナ侵攻を考えるためにも

今回ご紹介するのは2014年にみすず書房より発行されたトビー・ドッジ著、山岡由美訳の『イラク戦争は民主主義をもたらしたのか』です。

早速この本について見ていきましょう。

2003年3月のアメリカ主導によるイラク進攻からまる10年.
かつては「開戦の是非」という一大論点をめぐり世界中で激論が交わされたが,
イラク戦争を回顧的に検証しなければならない今,議論の焦点は見えにくい.
イラクが内戦に陥り政治が複雑化するにつれ,情報を追跡し整理するのが
困難になったのが一因だろう.このような状況で本書は,明快な解説と鋭敏な分析を
提供するコンパクトな一冊として高評価を得,学術書ながら英国『エコノミスト』誌
2013年ベストブックスにも選出された.

国家崩壊後の治安の真空により急増した略奪と暴力は反体制暴動に発展し,
2005年の選挙後に内戦に突入.米国が対暴動ドクトリンを導入すると治安は改善し,
選挙では宗派主義的ではなく政府機能の向上を目指した投票動向が高まった.
しかしこの民主的政治の可能性を,マーリキー首相はじめ既存の宗派主義政治から
利益を得る勢力は「バース党の脅威の排除」の名目で阻止した.これによって
武装勢力が再興,アルカーイダのメンバー拡大を許すに至る.
政治は再び利益の奪い合いの場となり,マーリキー首相は権威主義的傾向を強めた.
ただし,国民に基本的サービスを提供できない腐敗政治への抗議の声は大きい(「イラクの春」).
暴力への依存を深める権威主義的体制,分裂したまま放置される社会――.
終戦から2012年までのイラクを明快に解き明かす好著.

Amazon商品紹介ページより

私がこの本を手に取ったのはロシアによるウクライナ侵攻がきっかけでした。

上の記事で紹介した『アフガン侵攻1979-89 ソ連の軍事介入と撤退』もウクライナ侵攻をきっかけに読んだ作品です。この本を読んだことでソ連という大国がいかにしてアフガニスタンに軍事侵攻したのか、そしてその経過を学ぶことになりました。

そしてこうした大国による大規模軍事攻撃ということを改めて考えてみると、やはり2003年のアメリカ・イラク戦争も想起してしまいました。

当時ニュースでアメリカによる攻撃が盛んに報道されていましたが、私もその報道に同調し、さらに言うならば他人事のように漠然とそのニュースを眺めていたように思います。まるでゲームのように画面上で繰り広げられる戦争。ミサイルがどんどん打ち込まれ破壊されていくイラクの街・・・当時私は13歳だったということもありましたが、その後もこの戦争について本当にじっくり考えてきたかというと、恥ずかしながら勉強不足でした。

もちろん、ウクライナ侵攻とイラク侵攻ではその背景も異なるので一概に比べることはできません。

ですが、ウクライナ攻撃が激化していく中で、改めてアメリカによるイラク侵攻というのはどのようなものだったのかということを考えるのも大切なのではないかと思います。

そして今回紹介している『イラク戦争は民主主義をもたらしたのか』では、そのタイトル通り、侵攻後のイラク情勢について詳しく見ていくことができます。戦争は武器の撃ち合いが止まったら終了という、単純なものではありません。戦争は停戦後もまだまだその爪痕を残し続けます。

独裁国家を他国の軍事力で打倒したとして、その後平和な民主主義は本当に根付くのか。

破壊されたインフラや数え切れないほどの人的喪失。秩序も崩壊した街や村々・・・そこでどのようにして治安を維持していくのか。

そもそも、民主主義こそ絶対的にいいものだという前提でこれを適用しようとしていますがそれがはたしてどこの国でも成立するのだろうかという問題も出てきます。

この本では民主化を掲げて再出発しようとしたイラクがその後どうなってしまったのかを詳しく見ていきます。

アフガンの時もそうだったのですが、正直ため息が止まらなくなるような悲惨さです。

民主化といえば聞こえはいいですが、選挙で勝つために宗教や民族的な対立を煽る政治家が台頭し、過激な争いがどんどん噴出していきます。そしてそれを取り締まる国家組織も汚職で機能不全。アメリカもなんとか経済的、人的介入を進めるのですが泥沼化を止められない現実・・・

まさしくこれはアフガンでも起きたことでした。

この本はイラク侵攻後のイラク情勢について書かれた本なので、なぜイラク戦争が起きたのかやその経過についてはほとんど書かれていません。イラク戦争そのものについて学ぶのならば他の本を読むのをおすすめします。ですが、武力侵攻の後にいかなることが起こりうるのかということを考えるのには非常に参考になる作品です。

ロシアによるウクライナ侵攻とはそのメカニズムは異なるでしょうが、他国に軍事侵攻するということはどういうことなのかを考えるのに素晴らしい作品だと思います。

この本の細かい内容については長くなってしまうのでお話しできませんでしたが、ロシア・ウクライナ問題で揺れる今、あえてイラク戦争について学ぶことも大きな意味があるのではないでしょうか。

以上、「トビー・ドッジ『イラク戦争は民主主義をもたらしたのか』ロシアのウクライナ侵攻を考えるためにも」でした。

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