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佐藤清郎『ツルゲーネフの生涯』あらすじと感想~文豪の生涯と特徴を知れるおすすめ参考書!

ツルゲーネフの生涯
目次

ツルゲーネフのおすすめ参考書!佐藤清郎『ツルゲーネフの生涯』概要と感想

ツルゲーネフ(1818-1883)Wikipediaより

ここまでツルゲーネフ作品をご紹介してきましたが、今回はツルゲーネフを知る上でいつも助けてもらったおすすめの参考書『ツルゲーネフの生涯』についてお話ししていきます。

著者の佐藤清郎氏のプロフィールをご紹介します。筑摩書房『ツルゲーネフの生涯』昭和52年第一刷の巻末を参考にします。

佐藤清郎(さとう・せいろう)
1920年、東京にて生まれる
哈爾濱(ハルビン)学院・大同学院卒業
現在、大阪大学教授(教養部)
著書、『チェーホフの生涯』
   『ゴーリキーの生涯』
   『チェーホフの文学』(塙新書)他
訳書、『チェーホフの言葉』(弥生書房)
   『クドリャツェフ『革命か神か(ドストエフスキーの世界観)』(新潮社)他

筑摩書房『ツルゲーネフの生涯』昭和52年第一刷

巻末のプロフィールの情報が少なめでしたのでWikipediaからも引用したいと思います。

佐藤 清郎(さとう せいろう、1920年(大正9年)11月26日)は、日本のロシア文学者。

東京生まれ。1942年満洲国立大学哈爾浜(ハルピン)学院卒、大同学院卒。大阪大学教養部助教授、教授、1975年言語文化部教授、1980年早稲田大学客員教授、1991年退任。チェーホフを中心に帝政ロシアの文学者について伝記的著作を多く行った。

著書
『チェーホフの生涯』筑摩書房 1966
『若きゴーリキー』筑摩書房 1968
『チェーホフの文学 その本質へのアプローチ』塙書房「塙新書」 1972
『ゴーリキーの生涯』筑摩書房 1973
『ツルゲーネフの生涯』筑摩書房 1977
『チェーホフ芸術の世界 覚醒と脱出へのいざない』筑摩書房 1980
『チェーホフ劇の世界 その構造と思想』筑摩書房 1980
『チェーホフへの旅』筑摩書房 1987
『孤愁の文人 ノーベル賞作家ブーニン』私家版、1990
『観る者と求める者 ツルゲーネフとドストエフスキー』武蔵野書房 1993
『二葉亭四迷研究』有精堂出版 1995
『トルストイ心の旅路』春秋社 2001
『わが心のチェーホフ』以文社 2014
翻訳
イ・エヌ・カザンツエフ『ソヴェトにおける授業の方法』勝田昌二共訳 明治図書出版 1956
ヴェ・ア・ヴェイクシャン『トルストイと教育論』新評論社・教育新書 1956
エヌ・フェーレ『愛と規律の教育者 わが師マカレンコ』東洋館出版社 1957
ワンダ・ワシレフスカヤ『新中国紀行』大日本雄弁会 講談社 1957
『自選エレンブルグ文学・芸術論集 附・雪どけ論争』新興出版社 1957
ヴェ・カッシス『チベット横断記』ベースボール・マガジン社 スポーツ新書 1957
ミハイル・ニキーチン『ドストエフスキーの初恋』一橋書房 1957
エリ・フバート『謎の大陸 南極探検物語』ベースボール・マガジン社 秘境探検双書 1958
ポスムイシ『現代東欧文学全集 第7 パサジェルカ』恒文社 1966
アナトーリイ・ルイバコフ『ソスニャーキの夏』恒文社 1966
ア・ロナ・タシ『蒙古の遊牧民をたずねて』ベースボール・マガジン社 秘境探検双書 1966
『チェーホフの言葉 人生の知恵』 彌生書房 1968、新版1997。訳編
『世界文学全集 第43 チェーホフ 六号室 かわいい女 犬をつれた奥さん いいなずけ』集英社 1969
クドリャフツェフ『革命か神か ドストエフスキーの世界観』新潮社 1971

Wikipediaより

Wikipediaで見てみると佐藤氏が多くの作品を世に出していることがわかりました。

さて、早速この本の内容ですが、ツルゲーネフの全生涯を振り返りながら、その出来事と作品のつながりをわかりやすく、そして深く掘り下げていってくれます。

単に生涯をたどるだけでもなく、単に作品の解説をするだけでもない。生涯と作品を結び付けて何がツルゲーネフの作品に影響を与えているかをとてもわかりやすく解説してくれます。

これまで私のブログでもツルゲーネフ作品を紹介してきましたがそこでもたくさん引用させて頂きました。

難しい理論的な話ではなく、実際の人生と作品の結びつきが物語的に語られるので肩肘張らずに作品を理解できます。

アンリ・トロワイヤの『トゥルゲーネフ伝』はツルゲーネフの生涯を楽しく学ぶには最適の本ですが、作品の内容については少し分量が少なく、そういうときに『ツルゲーネフの生涯』があるとものすごく助かりました。

この2冊があるだけでかなり読書がはかどります。ツルゲーネフを読んでいてわからないところやもっと知りたいところがあってもこの2冊があればだいたい網羅できます。

ドストエフスキーとツルゲーネフの関係もかなり詳しく書いています。ツルゲーネフ側から見たドストエフスキーを知ることができるのも最高に嬉しいです。

そしてツルゲーネフを学んでいく上で意外だったのはトルストイとツルゲーネフの関係です。

ツルゲーネフのライバルといえばドストエフスキーだとずっと思っていたのですが、ツルゲーネフからすれば芸術家としてのライバルはトルストイであり、私生活でもかなり交流がありました。

ツルゲーネフの生涯にはトルストイが何度も重要な役柄として関わってきます。

この二人の関係性を知る上でもこの本はとても興味深いものとなりました。

ツルゲーネフの参考書として非常におすすめです。

以上、「ツルゲーネフのおすすめ参考書!佐藤清郎『ツルゲーネフの生涯』」でした。

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ツルゲーネフの生涯 (1977年)

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ツルゲーネフの生涯

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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