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間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』あらすじと感想~ガンディーの人柄や思想の核を知るのにおすすめの参考書!

ガンディー
目次

間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』~ガンディーの人柄や思想の核を知るのにおすすめの参考書!

今回ご紹介するのは2023年に筑摩書房より発行された間永次郎著『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』です。

早速この本について見ていきましょう。

贅沢な食事をしないこと、搾取によってつくられた服を着ないこと、性欲の虜にならないこと、異教徒とともに生きること、そして植民地支配を倒すこと――。ガンディーの「非暴力」の思想はこのすべてを含む。西洋文明が生み出すあらゆる暴力に抗う思想・実践としての非暴力思想はいかに生まれたのか。真実を直視し、真実と信じるものに極限まで忠実であろうとしたガンディーの生涯そのものから、後の世代に大きな影響を与えた思想の全貌と限界に迫る。ガンディー研究を一新する新鋭の書!

Amazon商品紹介ページより
糸車を廻すガンディー(1869-1948)Wikipediaより

マハトマ・ガンディーといえば誰もが知るインド独立に大きな役割を果たした偉人中の偉人です。

本作『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』はそんなガンディーの思想や人柄、そして社会に与えた影響についてわかりやすく見ていけるおすすめの参考書になります。

ガンディーの有名な「非暴力」は私達もよく知る言葉です。しかしこの「非暴力」がはたしてどういうものなのかというのが実はあまり知られていない、いや誤解すらされている。そんな問題提起が本書ではなされていきます。

特にガンジーの宗教観、そして家庭問題について説かれる第5章、6章は衝撃的です。私も「え?そうだったの!?」と驚いてしまいました。

ただ、この本は単なるゴシップのようなものではありません。ガンディーの思想や人柄を様々な資料によって明らかにしていきます。著者は本書における立場について終章で次のように述べています。

これまでの本書の議論全体を鑑みた上で、ニ一世紀の現代において重要なことは、ガンディーの非暴力思想の盲目的受容ではなく、その批判的継承にあると言えるだろう。

筑摩書房、間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』P271

まさに本書は聖人化されたガンディーを盲目的に称えるのではなく、批判的に考察していきます。

「批判的」というと相手を否定したり貶めたりするように感じる方もおられるかもしれませんが、「批判」は「中傷」とは違います。

事実や資料に即して何が正しいか正しくないかを冷静に考察していくのが「批判」です。

ガンディーはまぎれもなく偉人です。ですがいくら偉人といえどガンディーも一人の人間です。欠点や失敗した体験も当然あります。その逆に今まであまり顧みられなかった彼の偉大さも存在しています。

通俗的に語られる聖人ガンディーの奇跡のような偉業をそのまま盲目的に信じるのではなく、彼の思想や業績を一歩引いた目で見ることの大切さを本書で学ぶことになります。

先ほども申しましたが私は本書第5章、6章を読んで強い衝撃を受けました。これまでのガンディー観が変わってしまったほどです。

特に第6章の家族の問題は浄土真宗の開祖親鸞聖人とその子善鸞の関係性を連想してしまいました。もちろん、違いもあるのですが偉大過ぎる父とそれを追いかける子の問題はいつの世も難しいものがあるのだなと感じました。

ここではそのことについてはお話しできませんがぜひ本書を読んで確かめて頂けたらと思います。この本ではそうしたガンディーの意外な側面と、改めて彼の偉大さ、強靭な精神力について知ることになります。本書の「偉人に対するアプローチ」はあらゆる場面においても重要であると私は感じています。素晴らしい作品です。ぜひぜひ皆さんも手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』~ガンディー人柄や思想の核を知るのにおすすめの参考書!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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