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鹿島茂『職業別 パリ風俗』概要と感想~19世紀パリの人々の生活と職業、時代背景を知るならこの一冊!
今回ご紹介するのは1999年に白水社より発行された鹿島茂著『職業別 パリ風俗』です。
早速この本について見ていきましょう。
バルザックの《人間喜劇》に代表されるように、19世紀フランスほど、人間の欲望や本質が剥き出しになった面白い社会はないだろう。現代の日本における「女子高生」(JK)のように、当時のパリにおいては「お針子」たちが男性たちのファンタスムを掻き立てる欲望のアイコンであった。また、医者や弁護士といった実用的な職業を目指さず文学部や理学部に進学し、その後ドロップアウトして田舎の高校の復習教師になった、「黒服の悲惨」と呼ばれる高学歴ワーキングプアがごまんといた。その他、法廷では弁護をしない「代訴人」、情報通の「門番女」、医者より儲かる「薬剤師」、自営業としての「高級娼婦」……カラー挿絵版画付の風俗観察百科『フランス人の自画像』やバルザックやフロベールの小説に描かれた様々な職業の実態から、19世紀フランスの風俗や社会が手に取るようにわかる! 読売文学賞受賞作。
Amazon商品紹介ページより(この解説は単行本ではなく新書版のものです)
この本では19世紀中頃のパリの人々の生活を職業という面から見ていきます。
この本を読めばフランス文学がものすごくわかりやすくなります。
これを読むことでフランス文学を読んだ時の印象がきっと変わると思います。
小説が書かれた当時に当たり前だったことはわざわざ書かれたりはしません。
ですがその当たり前は「現代人たる私達の当たり前」とはまるで異なります。仮に小説中に弁護士という職業の人間が出てきたとしても、私達の想像する弁護士とはだいぶ違った仕事や生活ぶりをしていたのです。学生や医者、教師、グリゼット、警察、ジャーナリストなどなど、この本では様々な職業の「当たり前」を知ることができます。
また、その職業の内容だけではなく、そうした職業が生まれてきた背景や当時の人たちがどのような生活をしていたのかということも詳しく語られていきます。
これはフランス文学という範囲に関わらず、現代日本に生きる私たちの生活を違った側面から見る素晴らしいきっかけになります。前回紹介した『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』でお話ししましたように、フランス文学を知ることは現代日本を学ぶことと同じなのです。私達の生活はこの頃のフランスと繋がっています。私達のライフスタイルのルーツがここにあるのです。
フランス文学に興味のある方だけではなく、フランスそのものに興味のある方、歴史や文化に興味のある方にもぜひ手に取って頂きたい作品です。非常に興味深い本です。とてもおすすめです!
次の記事ではこれまで紹介してきた『レ・ミゼラブル』とも関係の深い「グリゼット」という職業について、そしてその後はバルザックの『ゴリオ爺さん』やスタンダールの『赤と黒』とつながりの深いパリの伊達男「ダンディー」についてこの本を参考にお話ししていきます。
以上、「鹿島茂『職業別 パリ風俗』19世紀パリの人々の生活と職業、時代背景を知るならこの一冊!」でした。
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