目次
『秋に記す夏の印象 パリ・ジョージア紀行』序
2022年8月中旬から9月の中旬までおよそ1か月、私はジョージアを中心にヨーロッパを旅してきました。
フランス、ベルギー、オランダ、ジョージア・アルメニアを訪れた今回の旅。
その最大の目的はジョージア北部のコーカサス山脈を見に行くことでした。
あわせて読みたい
トルストイとカフカース(コーカサス)の強いつながり~圧倒的な山岳風景とトルストイの軍隊経験
トルストイは1851年、23歳の年にカフカース(コーカサス。旧グルジア、現ジョージア)を訪れています。
そしてその圧倒的な自然やそこで出会った人々、命を懸けて戦った経験が彼の文学に大きな影響を与えています。
この記事では藤沼貴著『トルストイ』を参考にトルストイの「カフカース体験」を見ていきます。
トルストイの文学や人柄の特徴を見ていくためにもこれらは非常に参考になります。
私は「親鸞とドストエフスキー」をテーマにここ三年間研究を続けてきました。そして今年に入ってドストエフスキーをもっと知るために正反対の存在と言われるトルストイのことも学ぶことになりました。
そしてその過程で知ったのがこのコーカサスの山々だったのです。
コーカサス山脈 Wikipediaより
上の記事の中でお話ししたようにコーカサスの山々はトルストイに巨大な影響を与えました。
トルストイといえば『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』などの大作が連想されますが、これらの作品にも彼のカフカース体験は大きな役割を果たしていますし、晩年の非暴力主義もこの時の経験がその根っこにあったのではないかと思われます。
だとしたらぜひ私もそのカフカースの山々を見てみたい。トルストイはここで何を感じたのだろうか、ぜひそれを考えてみたいと私は思ったのでありました。
先ほども申しましたようにドストエフスキーとトルストイはまさに正反対です。以前紹介した「G・ステイナー『トルストイかドストエフスキーか』~ロシアの二大文豪の特徴をわかりやすく解説した名著!」の記事でもそのことはお話ししました。
あわせて読みたい
G・ステイナー『トルストイかドストエフスキーか』あらすじと感想~ロシアの二大文豪の特徴をわかりやす...
「トルストイかドストエフスキーか」。両方はありえない。 このことはこれまでトルストイ作品を読んできて強く感じたことでしたがこの作品はそのメカニズムを見事に解明してくれる名著です。
ドストエフスキーとトルストイは正反対である。
これは逆に言えばトルストイを学べばその正反対のドストエフスキーのことも知ることができるということでもあります。
だからこそ私はトルストイが大きな影響を受けたカフカースの山に強い関心を抱くようになったのでした。そしてこの旅行記の後半で述べることになりますが実際にこの山々を見て、私はドストエフスキーに関しても大きな印象を受けることになりました。やはりトルストイを学ぶことで結果的にドストエフスキーが見えてくることをこの旅で実感したのでありました。
では次の記事より旅行記『秋に記す夏の印象』を始めていきたいと思います。
次の記事はこちら
あわせて読みたい
【パリ旅行記】(1)ドストエフスキーとトルストイの眼で眺めるパリ~彼らはパリに対してどんな思いを持...
ドストエフスキーは1862年、トルストイは1857年にそれぞれパリを訪れています。
彼らはそこで目にした出来事やそれらに対する思いを書き残し、後の作家活動の糧としていました。
この記事ではそんな二人を通して今回の私の旅についての思いをお話ししていきます。
関連記事
あわせて読みたい
上田隆弘『秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅』記事一覧~トルストイとドストエフスキーに学ぶ旅
2022年8月中旬から九月の中旬までおよそ1か月、私はジョージアを中心にヨーロッパを旅してきました。
フランス、ベルギー、オランダ、ジョージア・アルメニアを訪れた今回の旅。
その最大の目的はトルストイとドストエフスキーを学ぶためにジョージア北部のコーカサス山脈を見に行くことでした。
この記事では全31記事を一覧にして紹介していきます。『秋に記す夏の印象』の目次として使って頂けましたら幸いです。
あわせて読みたい
(20)いざジョージアへ~なぜ私はトルストイを学ぶためにコーカサス山脈へ行かねばならなかったのか
皆さんの中にはきっとこう思われている方も多いのではないでしょうか。
「それにしても、なぜジョージアまで来なくてはならなかったのか。ドストエフスキーとトルストイを学ぶためと言ってもそのつながりは何なのか」と。
実際私も出発前に何度となくそう質問されたものでした。「何でジョージアなの?」と。 たしかにこれは不思議に思われるかもしれません。ドストエフスキーとトルストイを学ぶために行くなら普通はロシアだろうと。なぜジョージアなのかという必然性が見当たらない。 というわけでこの記事ではそのことについてお話ししていきます
あわせて読みたい
トルストイ『襲撃(侵入)』あらすじと感想~戦争に正義はあるのかと問う若きトルストイのカフカース従軍
この作品は1852年にカフカースに向けて出発し、従軍経験をした若きトルストイによる実体験をもとにした小説になります。
トルストイはこの時のカフカース体験に大きな影響を受けていて、彼は晩年になると戦争反対、非暴力を強く主張します。
それはこの時に感じた戦争への疑問が残り続けていたからかもしれません。
あわせて読みたい
トルストイ『コサック』あらすじと感想~カフカースの圧倒的美しさを描いたトルストイの傑作中編!あの...
『コサック』はトルストイのカフカース体験の集大成とも言える作品です。
カフカースの美しさをここまで表現するトルストイにはただただ脱帽するしかありません。
『コサック』はあの大作『戦争と平和』にも直接繋がっていく非常に重要な作品となっています。
文豪トルストイのスタイルが定まる記念碑的な作品とも言えるかもしれません。
あわせて読みたい
トルストイおすすめ作品10選と解説書、作品一覧~ロシアの巨人の圧倒的なスケールを体感!
今回の記事ではこれまで当ブログで紹介してきた作品の中から特におすすめの作品を10作まずは紹介し、その後おすすめの解説書とその他作品の一覧を紹介していきたいと思います。
あわせて読みたい
ドストエフスキー『冬に記す夏の印象』あらすじと感想~西欧社会を厳しく批判!異色のヨーロッパ旅行記
この『冬に記す夏の印象』はドストエフスキーのヨーロッパ観を知る上で非常に重要な作品です。
また「奇妙な旅行者」ドストエフスキーの姿を見ることができる点もこの作品のいいところです。小説作品とはまた違ったドストエフスキーを楽しむことができます。
文庫化された作品ではありませんが、『冬に記す夏の印象』はもっと世の中に出てもいい作品なのではないかと強く感じます。
日本人には特に共感できる内容なのではないかと思います。
コメント