ボスニア紛争を学ぶためのおすすめ参考書15作品をご紹介
ボスニア紛争、スレブレニツァの虐殺を学ぶためのおすすめ参考書を紹介!『アイダよ、何処へ?』をもっと知るために
当ブログでは現在「冷戦世界の歴史、思想、文学に学ぶ」をテーマに更新しています。
その流れで共産圏崩壊に伴って起きたボスニア紛争も取り上げるつもりでしたが、それはもう少し先の予定でした。
ですが9月より「ある映画」が公開されることになり、それに合わせて改めて私もボスニア紛争を学び直したいという思いが起こってきました。ですのでブログ更新の流れから少し外れてしまいますがこれからしばらく、ボスニアを学ぶためのおすすめ参考書を紹介していきたいと思います。
さて、本を紹介する前にその「ある映画」について少しだけお話しします。
こちらは『アイダよ、何処へ?』というボスニア紛争のスレブレニツァの虐殺を題材にした映画です。今年度のアカデミー賞にもノミネートされ、今話題になっています。
この作品について公式ホームページでは次のように紹介されています。(※2023年リンク切れ)
わずか四半世紀前のボスニアで何が起こったのか?
戦後ヨーロッパ最悪の集団虐殺事件
「スレブレニツァ・ジェノサイド」の真実とは-ボスニア紛争末期の1995年7月11日、ボスニア東部の街スレブレニツァがセルビア人勢力の侵攻によって陥落。避難場所を求める2万人の市民が、町の外れにある国連施設に殺到した。国連保護軍の通訳として働くアイダは、夫と二人の息子を強引に施設内に招き入れるが、町を支配したムラディッチ将軍率いるセルビア人勢力は、国連軍との合意を一方的に破り、避難民の“移送”とおぞましい処刑を開始する。愛する家族と同胞たちの命を守るため、アイダはあらゆる手を尽くそうと施設の内外を奔走するが――。
『ノーマンズ・ランド』以来19年ぶりにボスニア映画としてアカデミー賞ノミネート!
『アイダよ、何処へ?』公式ホームページより
故郷ボスニアの紛争による傷跡を描き続ける女性監督ヤスミラ・ジュバニッチの最高傑作。
実は私も2019年にこのスレブレニツァの地を訪れています。
紛争を経験したガイドさんと共にここを訪れ、お話を聞かせて頂いた体験を私は忘れることはできません。スレブレニツァは私の旅の中で最も心に残った場所でした。
だからこそ私はこの映画をぜひとも観たいなと思ったのでありました。
次の記事からボスニア紛争、スレブレニツァの虐殺を学ぶためのおすすめ参考書を紹介していきます。途中からはルワンダ、ソマリアで起きた虐殺の本もありますが、これらもボスニア紛争とほぼ同時期に起きた虐殺です。 長有紀枝著『スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察―』にルワンダ、ソマリアの虐殺のことが述べられていました。この三者は紛争や虐殺が起こった背景や、それを防ぐことができなかった国際機関のメカニズムが非常に似ています。ボスニア紛争、スレブレニツァの虐殺の理解を深めるためにもこれはぜひ重要と感じ、ここで紹介させて頂くことにしました。
これからしばらくは重い内容が続く更新になりますが、ここで改めて人間とは何か、なぜ虐殺は起こってしまうのかということを考えていきたいと思います。
以下、これから紹介していく本たちです。
柴宜弘『ユーゴスラヴィア現代史 新版』
「ユーゴスラヴィアの現代史はまだ幕を下ろしていない」
民族、国家、宗教、言語……。独自の社会主義連邦の道を歩んできたユーゴの解体から三〇年。暴力と憎悪の連鎖がひきおこしたあの紛争は、いまだ過ぎ去らぬ重い歴史として、私たちの前に立ちはだかっている。内戦終結から現在にいたる各国の動きや、新たな秩序構築のための模索などを大幅に加筆。ロングセラーの全面改訂版。
岩波書店、柴宣弘『ユーゴスラヴィア現代史 新版』
この本は1990年代に深刻な分裂、内戦が起きたユーゴスラヴィアの歴史を解説した作品です。
この本を読んでいると、ユーゴスラヴィアという国家がいかに複雑な原理で成り立っていたかがよくわかります。
ボスニア内戦は宗教や民族の違いによる争いと言われることも多いですが、実際には事はそんなに単純ではありません。
そして著者がこの本で指摘するように、この内戦は近代史にともなう現象であり、このような悲惨な争いは私達とも全く無関係ではありません。
この本はボスニアだけでなく、ユーゴスラヴィア全体からその歴史を考えていくことができるので非常にありがたい作品です。
ぜひおすすめしたい1冊です。
柴宜弘『ユーゴスラヴィア現代史 新版』ボスニア内戦とは何だったのかを学ぶために
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・梅原季哉『戦火のサラエボ100年史「民族浄化」もう一つの真実』
この本は1992年から始まったボスニア紛争の流れを知るのにおすすめな作品です。
ボスニア紛争はあまりに複雑な背景の下起こった悲劇でした。
その複雑な背景を知るにはボスニアの歴史、ユーゴスラビアの歴史を知ることが不可欠です。
この本はそんなボスニア史を含めて、大きな視点で紛争の背景を見ていくのが特徴です。
ボスニア紛争を学べば学ぶほど、この紛争の複雑さに驚くことになります。「じゃあどうしたらいいのだ?」と読んでいて途方に暮れることも多々あります。目を覆いたくなる解決困難さがここにあります。
そしてこの本では紛争を経験した方の声をたくさん聴くことになります。
生きた人間の歴史としてこのボスニア紛争はある。それは単に「仕方がなかった」で割り切ってしまえないものです。私達に語りかけてくるものがあるからこそ、「単純にものごとを考えてはいけない」と諭されるような気がします。
この本はボスニア紛争を学ぶ参考書として非常におすすめです。入門者にも読みやすく書かれていますし、もちろん、この紛争についてもっともっと深く知りたい方にもおすすめできる内容です。
ボスニア紛争の流れを知るのにおすすめ!梅原季哉『戦火のサラエボ100年史「民族浄化」もう一つの真実』
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戦火のサラエボ100年史 「民族浄化」 もう一つの真実 (朝日選書)
高木徹『ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争』
「情報を制する国が勝つ」とはどういうことか―。世界中に衝撃を与え、セルビア非難に向かわせた「民族浄化」報道は、実はアメリカの凄腕PRマンの情報操作によるものだった。国際世論をつくり、誘導する情報戦の実態を圧倒的迫力で描き、講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をW受賞した傑作!
講談社、高木徹『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』裏表紙
書名からして刺激的なこの一冊ですが、その内容もかなり強烈です。
上の本紹介にもありますように、ボスニア紛争においてはアメリカのPR会社が背後で絶大な影響を与えていました。
ボスニア紛争には非常に複雑な背景があります。たしかにムスリム人側の被害は甚大でしたが、セルビア人側にも多くの犠牲者も出ています。紛争中、互いに村々を奪い合い、悲惨な争いが続いていました。
ですので簡単に善玉悪玉を分けることは本来非常に慎重にならねばならない問題でした。
ですが現実にはセルビア側が民族浄化を繰り返す悪玉として一方的に報道されることになります。それによってセルビア側への厳しい措置につながり、紛争後もそれは尾を引いています。
どうしてそうなってしまったのか。
それこそこの本のタイトルにもあります「戦争広告代理店」の存在なのでした。
私たちはわかりやすい善玉悪玉論に流されてしまいがちです。しかし、ものごとはそんなに単純ではありません。
特に、国際紛争の場ではその複雑さは想像を絶するものです。「こうだからこう」というのが通用しない世界です。
この本ではそうした世界の複雑さを知ることができます。そしてそんな世界においてメディアによるPR戦略がいかに重要であるかも知ることになります。
この本では単純な善玉悪玉論の危うさを語っていますが、もちろん、セルビア人側の暴力行為が正当化されているというわけではありません。
私も2019年にボスニアを訪れ、紛争を経験したガイドさんにサラエボ包囲戦やスレブレニツァの虐殺のお話を聞かせて頂きました。
単純な善玉悪玉という分け方はないにしても、やはりそこには暴力によって多くのものを失った人たちの苦しみがあります。
単純に善玉悪玉論で考えてしまうのも間違いですが、「善玉も悪玉はない。どちらも暴力を行っていた」と割り切って終わりにしてしまうのも何か危険を感じてしまいます。
この問題の難しさはいつも感じてしまいます。紛争の複雑さをこの本ではものすごく目の当たりにすることになります。
ぜひ皆さんにも手に取って頂きたい一冊です。とても読みやすい本です。著者の語り口にぐいぐい引き込まれます。
高木徹『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』メディアの絶大なる影響力~知られざる紛争の裏側
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ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)
ハリロビッチ・ヤスミンコ『ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992-1995 』
この本は幼少期にボスニア紛争を経験したヤスミンコ・ハリロビッチがSNSで通して集まった声をまとめて作られた作品です。本の前半部分ではボスニア紛争、サラエボ包囲戦の概要が簡潔に解説され、そこから実際に紛争を体験した人たちの声を聴くことになります。この本も衝撃的です。
紛争下で生きるというのはどういうことなのか。そしてそれを子供時代に経験するというのはどういうことなのか。この本ではそのことをストレートに突きつけられることになります。
ぜひ、この本もおすすめしたいです。
子供達から見たボスニア紛争とは『ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992-1995』
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FAMA『サラエボ旅行案内 史上初の戦場都市ガイド』
あらゆるインフラが破壊され、水や食料も不足し、いつ狙撃されるかもわからない生活。死が日常となった世界でサラエボ市民はいかにして生き延びていたのだろうか。
この本はそのことを明らかにしていきます。
そして、この本で最も特徴的なのは「ユーモア」を強調しているという点です。悲惨な生活の中でユーモアがどんな意味を持っていたのか、そのことをこの本では強調しています。
そして当時の人々は何を食べ、どんな生活をしていたのか。普通なら絶望に沈んでしまうであろう中、ユーモアたっぷりに彼らの生活が語られていきます。
サラエボ市民がいかに過酷な生活をしていたかがものすごく伝わってくるのですが、このユーモアのおかげで不思議と重苦しさを感じません。
むしろサラエボ市民の力強さを感じさせられます。
特に後半で語られる文化や芸術活動の紹介には驚いてしまいました。生活物資もなく、いつ狙撃されるかもわからない極限状態の中で「精神の自由」を求めて人々は闘っていた。その姿をこの本では知ることができます。
本のタイトルにもありますように、この本はガイドブック風に書かれていますのでとにかく写真も豊富です。当時の様子をたくさんのカラー写真で見れるのはとてもありがたいです。
現在この本は絶版になっておりなかなか手に入りにくい状態となっています。大きな図書館には置いていると思いますのでぜひ手に取って頂ければなと思います。
ユーモアたっぷりに語られるボスニア紛争下の生活『サラエボ旅行案内 史上初の戦場都市ガイド』
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長有紀枝『スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察―』
この本はボスニア紛争末期に起きたスレブレニツァの虐殺にスポットを当てた1冊です。 スレブレニツァの虐殺は、現在公開されている『アイダよ、何処へ?』の題材になった悲劇です。
スレブレニツァについて書かれた本はかなり貴重です。この本ではものすごく詳しくスレブレニツァについて学ぶことができます。
また、この本では単に出来事の流れを追っていくのではなく、「なぜそうなってしまったのか、それを止める手立てはなかったのか」ということを常に考察していきます。悲劇を繰り返さないためには何が必要なのかという視点が強く感じられます。
さらに、他のジェノサイドと比較されている点。これも私にとって印象に残った部分でした。ボスニア紛争とほぼ同時期に起こっていたルワンダの虐殺についての言及は衝撃でした。 ルワンダの虐殺についてほとんど何も知らなかった私にとってその悲惨さは絶句してしまうほどでした。
そしてその虐殺とスレブレニツァの虐殺を比べることでよりジェノサイドについて深く考えていけるというのは素晴らしい視点だなと思いました。 この本をきっかけに私はルワンダの虐殺やソマリアのブラックホークダウンについても関心が向くようになりました。
この本はスレブレニツァの虐殺について学ぶのに最適の1冊です。内容も、初心者にもわかりやすくありながらもかなり詳しいところまで伝えてくれるので非常に勉強になります。
読みやすさも抜群ですのでぜひおすすめしたい1冊です。
長有紀枝『スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察』スレブレニツァの虐殺を学ぶのにおすすめ
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長有紀枝編著『スレブレニツァ・ジェノサイド 25年目の教訓と課題』
この本は上で紹介した長有紀枝著『スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察―』の続編と言ってもいい作品です。
『スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察―』 は2009年に出版され、今回ご紹介する 『スレブレニツァ・ジェノサイド 25年目の教訓と課題』 はそこからさらに11年を経た2020年に出版されました。2020年はスレブレニツァの虐殺が起きてからちょうど25年に当たります。
25年という年月によって事件発覚当時では掴みきれなかった全容がようやく少しずつ明らかになって来ており、様々な角度から検証や研究が進んできています。この本はそんな長期にわたる研究の成果が詰まった1冊となっています。
どの項目も興味深く、「なるほどな」と思う所がたくさんあったのですが、私が特に印象に残ったのは第8章の「スレブレニツァと国連PKO」の章でした。
スレブレニツァの虐殺は平和維持のために派遣された国連PKOのオランダ軍がいたにも関わらず、虐殺を防ぐことはできなかったと非難されることが多いです。しかしこの国連PKOによる平和維持活動の難しさをここで感じることになりました。
国連という多国籍な組織において、自国の兵士を紛争地に送るというのはどの国もできれば避けたいと思っている。しかも仮に派遣されたとして規模も小さく、認められる行動も数少ない。そんな中でどう活動せよと言うのか。 100人の兵士に対して1000人の敵兵で襲われたらどうせよというのか。
これは「なるほどな」と思いました。国連軍がそこに派遣されたならもう安心だと私たちは思ってしまいがちですがそんな単純な話ではなかったのです。ルワンダやソマリアでもPKOによる介入は失敗しています。平和維持軍の難しさをここで知ることになりました。
また、スレブレニツァの虐殺をどのように捉えるのかという問題もこの本では非常に厳密に見ていきます。
単に極悪非道なセルビア人が無実のボシュニャク人を虐殺したという話で語られがちなこの事件ですが、この本ではその背景がどれだけ入り組んだものだったのか、そしてそれをどのように法的に解釈し、裁判が行われていくかということをじっくり見ていきます。
この本を読めばその複雑さにきっと皆さんも驚くと思います。私も読んでいてその複雑さに何度ため息をついたことか・・・
上で紹介した『スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察―』と合わせて、この本はジェノサイドとは何なのかということを学ぶ上で最高の参考書になります。
ぜひ皆さんにもおすすめしたいです。
長有紀枝編著『スレブレニツァ・ジェノサイド 25年目の教訓と課題』ジェノサイドを様々な視点から考える1冊
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フィリップ・ゴーレイヴィッチ『ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実』
まずはじめに申し上げます。この本はあまりに衝撃的で、私は心底参ってしまいました ボスニア紛争やスレブレニツァを学ぶ流れで手に取ったこの本でしたが、あまりの悲惨さに言葉を失ってしまいました・・
あなたはルワンダという国の名前を聞いたことがあるだろうか?それが世界地図のどこにあるかご存じだろうか?
ぼくは知らなかった。わずか十年前にその国がかつて見たことがないような苛烈な大虐殺を経験し、国が崩壊に追いこまれたことも知らなかった。ジェノサイド=民族虐殺は周到に準備されており、加害者たちだけでなく被害者たちまでもが起こるのを待ちかまえていたというのも知らなかった。国連をはじめとする国際社会はみなジェノサイドが起きていると知りながら、介入したくないために百万人を見殺しにしたことも知らなかった。(中略)
本書はアフリカの小国で起きた民族虐殺についてのルポルタージュである。一九九四年四月六日、ルワンダの首都キガリで、独裁者ハビャリマナ大統領と隣国ブルンディのヌタリャミラ大統領が乗った飛行機が撃墜された。休戦中だった反政府勢力RPFと政府軍との戦いが再燃し、混乱の中で多数派フツ族は少数派ツチ族を虐殺した。その数は八十万人、ルワンダ人口のほぼ一割に当たる。世間で流通している話はこんなところだ。だが、これはルワンダ虐殺の恐怖を百分の一も伝えていない。そもそも人口八百万人の国で八十万人が殺されるというのはどういうことなのか。虐殺がはじまる前、殺人者と犠牲者は隣りあって暮らしていた。フツ族とツチ族の結婚も当たり前のことだった。にもかかわらず、ある日殺害がはじまると、殺人者たちは山刀と釘を埋め込んだバットを手に、隣人を、親戚を、商売相手を殺していったのである。あまりにも多くの人が、あまりにも簡単に殺人者となることを選んだ。
WAVE出版、フィリップ・ゴーレイヴィッチ著、柳下毅一郎訳 『ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実』 P483-484
たった数か月足らずで少数民族であるツチ族80万人が虐殺された。
しかもその虐殺の方法があまりに残虐でした。銃による殺害ではなく、上の解説にもありますように山刀(マチェーテ)で切り刻むという、極めて原始的な方法での殺害でした。
しかもこの本を読めばわかりますが、単に殺害するだけでなくゆっくりと苦しめて殺すため、あえて急所を狙わず、手足を切断したり脚の腱を切ったまま放置し、犠牲者が苦しむ様を虐殺者は楽しんでいました
そしてさらに恐ろしいことに、こうした虐殺を行ったのが一部の人間なのではなくフツ族の大多数が殺害に加わり、ほぼすべての人が何らかの形で虐殺に関わるという異常な状況でした。
この本ではそんな悲惨な虐殺がなぜ起こったのか、そしてどのような経緯で行われていったのかが語られます。
また、この本で特徴的なのはタイトルにもありますように、これまで世界で無視され続けていたルワンダの悲劇の実態を告発する点にあります。平和維持のために介入していたはずの国連はなぜ虐殺を止められなかったのでしょうか。そしてさらに衝撃的なのは、国連を含め世界各国は虐殺をしていたフツ族側に支援物資を送っていたという事実すらあったこと・・・これには絶句しました・・・
読んでいて本当に心が痛みます・・・というより、具合が悪くなってきます。それほどショッキングで恐ろしい事実が語られます。
そしてこの本は出版社さんもかなり力を入れて出版された本だと思われます。
というのも、この写真を見て下さい。
わかりますでしょうか?本のページが赤く染められているのです。しかも単に真っ赤にしているのではなく、よく見てみると染みのようなムラがあるのです。そうです、まさに血で染まったかのように・・・ 正直、こんな本は初めて見ました。出版社さんの並々ならぬ思いが伝わってきます。
衝撃の一冊です。ぜひおすすめしたいです。
P・ゴーレイヴィッチ『ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実』信じられない惨劇がアフリカで起きていた・・・
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レヴェリアン・ルラングァ『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』
この本は尋常ならざる本です。普通の歴史の本とは違います。事実の流れを追って解説していく本ではありません。ジェノサイドを経験した著者の実体験とその魂の内奥がここに記されています。あまりにショッキングで読んでいて血の気が引くような感覚になりました。
彼は目の前で残酷なやり方で家族を殺されました。そして彼自身も鉈で片腕を切断され、片目をえぐられ、生きているのも不思議な傷を受けました。そんな著者が語る壮絶なジェノサイドの現実をこの本では見ていくことになります。
この本の中で特に印象に残ったのは「殺戮者たちは、赤ん坊二人を教会の薔薇色の壁にぶつけて頭蓋骨を割った後、子供の血の海に母親の顔を浸してから、母親を殺した」という描写です。
ルワンダはキリスト教が熱心に信仰されていた国でした。教会ではフツ族、ツチ族が一緒にお祈りをしていました。しかしまさにその教会で殺戮が行われ、殺戮が終わった後には彼らは何事もなかったかのように神に祈りを捧げていたのです。
神とは殺戮を犯した者を赦す存在なのでしょうか?なぜ犠牲者は苦しみ、絶望のまま死ななければならなかったのでしょうか。なぜ赤子は母親の目の前で、しかも教会で殺されなければならなかったのでしょうか。
これはドストエフスキーを読まれた方にはきっとぴんと来るかと思います。これは『カラマーゾフの兄弟』で語られる残虐行為と非常に似ています。
神がいるのになぜこんな虐殺行為があるのだろうか。なぜ神はこんな悪を放っておかれるのか。 ドストエフスキーは神への反逆を試みるイワンの口を通して、そんな神への疑問を作中で展開していきます。この本の著者ルアングァもまさしくそんな問いや怒りをこの本で記しています。
なぜ神はこの残虐をお認めになるのか。なぜ被害者は救われず、殺戮者はのうのうと生きながらえているのか。なぜ被害者が彼らを赦さなければならないのか。目の前で親類を残虐に殺されたのに、そんなことができるとでも言うのかと著者は苦しみながらこの本を書いています。
実際、著者のルラングァはこの本の第9章「暗闇の三日間」のエピグラフにドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に出てくる「たった一人の子供が流す、たった一粒の涙を償えるものなどない」という言葉を引用しています。
ドストエフスキーを意識してこの本を書いたのか、それとも彼の悲惨な体験がドストエフスキーへと自然と繋がっていったかはわかりません。 ですが著者の想像を絶する苦しみや絶望、怒りが圧倒的な迫力で伝わってきます。 凄まじい本です。ぜひ読んで頂けたらなと思います。
神はなぜ虐殺から救ってくれなかったのか…『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』
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ポール・ルセサバギナ『ホテル・ルワンダの男』
この本は映画『ホテル・ルワンダ』のモデルになったポール・ルセサバキナが自らの体験を綴った作品です。
映画では作品制作の都合上脚色などもあり、事実そのままではありませんが、彼が1200人もの人を危険を承知で匿い、その命を救ったのは事実です。
この本ではそんな彼の体験が詳しく語られることになります。
敵対者と暴力や憎しみで向かい合うのではなく、言葉を尽くして相手と話し合い、妥協点を探り穏便に切り抜けるその機転や精神力には読んでいて驚くしかありません。 この本も一気に読んでしまいました。この本もルワンダの虐殺を知る上で非常に貴重な一冊です。
なぜ人々はあっという間に虐殺者に変わってしまったのか。 著者はその原因を「言葉」だと言います。さあ、これはどういうことなのでしょうか。私は著者の次の言葉に非常に強い印象を受けました。
「ラジオ局のアナウンサーによって発せられた言葉が暴力の最大の引き金となった。ラジオは一般市民に対して、ツチ族の隣人宅へ押し入り、その場で住民を殺害することを公然と奨励していた。そうした指示は誰にでもわかるような暗号で表現された。
『背の高い木を切れ。近隣を清掃せよ。義務を果たせ』
標的の住所と名前が電波の上で読み上げられた。逃げ出す者があれば、それが実況放送され、聴衆はスポーツの試合のようにラジオの向こうの追跡劇に耳を傾けた。民族的優位を称え、為すべき仕事を果たすよう人々に訴えかけた数々の言葉は、三ケ月間にわたってルワンダに信じがたい現実を作り上げた。」
私はこの箇所を初めて読んだ時、鳥肌が立ちました。 私は伊藤計劃さんの『虐殺器官』を連想してしまったのです。ラジオ局から流れる虐殺の言葉が人々を駆り立てた・・・ 伊藤計劃さんがこの本を読んでいたかどうかはわかりません。ですが、『虐殺器官』ではこうした虐殺が何度も語られることになります。これはかなり衝撃でした。詳しくは、この作品を読めばわかります!おすすめです!
映画でも有名!『ホテル・ルワンダの男』アフリカのシンドラーと呼ばれた男の物語
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ジャン・ハッツフェルド『隣人が殺人者に変わる時―ルワンダ・ジェノサイド生存者たちの証言』
ルワンダのニャマタという町では4月11日から虐殺が 始まり、地獄のような状況の中生存者は逃亡を続けたのでありました。そして最終的に、この一か月ほどの間に五万人の犠牲者が出ることになります この本ではその生存者の言葉を聞くことができるのですが、読んでいて具合が悪くなるほどの地獄でした。
この本は 「隣人が殺人者に変わる時」三部作の第一作目に当たります。 続編の『隣人が殺人者に変わる時 加害者編』 と『隣人が殺人者に変わる時 和解への道―ルワンダ・ジェノサイドの証言』もこれまた強烈です。いや、むしろ進めば進むほど恐ろしさは増していきます。 この三部作はとにかく衝撃的です。
平和とは何か。人間とは何か。罪と罰とは。善と悪、神の問題。赦しの問題。 人間における根本の問題がここに詰まっています。答えはありません。ですが、極限状態に生きた人たちの声がここにはあります。その声に耳を傾け、自分は何を思うのか。これは非常に重要なことだと思います。
ぜひおすすめしたい作品です。
衝撃の三部作!ルワンダ虐殺の実態『隣人が殺人者に変わる時 ルワンダジェノサイド 生存者たちの証言』
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隣人が殺人者に変わる時―ルワンダ・ジェノサイド生存者たちの証言
ジャン・ハッツフェルド『隣人が殺人者に変わる時 加害者編』
前回紹介した『隣人が殺人者に変わる時―ルワンダ・ジェノサイド生存者たちの証言』ではルワンダの虐殺の生存者のインタビューが収められていましたが、この作品ではそれとは逆に加害者の声を聞くことになります。
正直、読んでいて暗い気持ちになり、胸がむかむかしてきます・・・被害者は全てを失い、生き残った者も絶望的な苦しみを味わい続けています。しかし、それに対し加害者側はどうなのか。この本ではそれを知ることになります。
「生き地獄を体験し、身内も財産も社会に対する信頼も奪われた生存者の証言と比べて、殺人者の告白はあまりにも軽い」という訳者の言葉は私にとっても非常に印象深いものでした。
そしてこの本を通して私が感じたのは「赦し」とは何なのかということでした。 いくら加害者が謝罪したところで、亡くなった方はもう帰ってきません。生き残った方の心の傷や生活も元通りになるわけがありません。 ですが、加害者は「自分のこれからの生活のため」に被害者に赦しを求めます。
しかも、真に心から悔やんでいるとは到底思えない態度で「赦してくれ」と被害者に求めるのです。そして彼らはほとんど裁かれることなく釈放され、今まで通りに生活を始めるのです。 これは読んでいて精神的にかなり苦しかったです。
そして一番強烈だったのは、これほどの悪を犯した者自身が『自分たちには「赦し」が与えられなければならない』『新しい生活をしたい』と無邪気に言えてしまうその恐ろしさでした。 この「赦し」の問題については以前紹介した『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』でも出てきました。
家族を目の前で惨殺され、自身もなぜ生きているかわからぬような傷を負いながらも生き延びたルラングァ氏は「彼らを赦すことはできない」と述べていました。なぜあんな悪行を犯した人間がのうのうと街で生きているのかと怒りをにじませていました。
「赦し」とはそもそも何なのでしょうか。 そもそも誰が誰に対してするものなのでしょうか。被害者?法?国家?神? 加害者が赦されるというのはどういうことなのか。逆に永遠に罰せられ苦しめられることこそ償いなのでしょうか。
この本を読んでいると頭が混乱しぐるぐるしてきます。 この『隣人が殺人者に変わる時』の三部作はあまりに強烈な作品です。 前回の作品に引き続きぜひ手に取って頂きたい作品となっています。
加害者は虐殺後何を語るのか『隣人が殺人者に変わる時 ルワンダ・ジェノサイドの証言 加害者編』
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ジャン・ハッツフェルド 『隣人が殺人者に変わる時 和解への道―ルワンダ・ジェノサイドの証言』
この本は『隣人が殺人者に変わる時』三部作の最後を飾る作品です。ラストの作品にふさわしく、この本も凄まじい1冊です。個人的には三部作中最も印象に残った作品です。あまりに厳しい現実をこの本で突きつけられることになりました・・・
第一部では虐殺の生存者を、第二部で加害者側を、そしてこの第三部では両者に対しインタビューを試みます。というのも、上の解説にありますように、加害者側であるフツ族が国の復興のために釈放されることになり、ツチ族とフツ族がまた同じ場所で生活をするという状況が生まれてきたのでありました。
「こんなむごい歴史があり得るのか」 著者はそう述べます。 この三部作はそんな恐るべき歴史を現地に生きる人たちの言葉から見ていくことになります。 正直、こんなに強烈な本を読むことになるとは思ってもいませんでした。
スレブレニツァの虐殺を学ぶ過程で知ることになったルワンダジェノサイド。 この三部作と出会えてよかったなと心の底から思います。 精神的には非常に厳しい読書になりましたが、まったく悔いはありません。 少しでも多くの方にこの三部作が広まってくれたらなと思います。
虐殺者と共存する地獄~赦しとは一体何なのか『隣人が殺人者に変わる時 和解への道―ルワンダ・ジェノサイドの証言』
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隣人が殺人者に変わる時和解への道: ルワンダ・ジェノサイドの証言
マーク・ボウデン『ブラックホーク・ダウン―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』
1993年10月3日、ソマリアの首都モガティシュに米軍特殊部隊が空挺降下。任務は国連の活動を妨げる武装組織アイディド派の幹部を拉致すること。それは一時間ほどで終わるはずだった。だがブラックホーク・ヘリが撃墜されたことで部隊は絶望的な孤立状態に陥ってしまう……兵士や現地の人々の視点から凄絶な戦闘を再現し、ポスト冷戦の一大転換点を刻印した傑作戦争ノンフィクション!大型映画原作。(上巻)
ハイテク装備のブラックホーク・ヘリ2機の墜落は、タスク・フォースの兵士たちに大きな動揺をもたらした。救援のための車輛部隊も混乱をきたし、増え続ける負傷者の後送は困難をきわめる。刻々と事態は悪化し、水や食料、弾薬の不足に苦しむ彼らは絶対数で勝る敵に追いつめられてゆく……ー昼夜におよぶ緊迫した局地戦の全貌を抜群の構成力と映像的な筆致で描破し、全米大ベストセラーとなつた話題作。(下巻)
早川書房、マーク・ボウデン、伏見威蕃訳『 ブラックホークダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』 裏表紙
この作品はリドリー・スコット監督の大ヒット映画『ブラックホーク・ダウン』の原作となった作品です。
上で紹介したあらすじにもありましたように、世界最強の特殊部隊だったはずのデルタとレンジャーが激戦地で孤立し、絶望的な戦闘に巻き込まれるというのがこの作品の大きな流れです。
このソマリアでの戦闘は後のアメリカの軍事介入に大きな影響を及ぼすことになりました。
これまで当ブログでも紹介してきたボスニア紛争やルワンダの虐殺で国連の平和維持活動が機能不全に陥ったのもまさにこの事件の影響が非常に大きかったとされています。
それまでのアメリカや先進諸国は圧倒的な武力をもって介入すれば、発展途上国の紛争は簡単に鎮圧できると考えていました。しかしその楽観的な考え方が崩壊した事件こそこのブラックホークダウンだったのです。
この時点でルワンダの虐殺やスレブレニツァの虐殺の最終カウントダウンが始まっていたのかもしれません・・・
大ヒット映画の原作!ソマリアの惨劇『ブラックホークダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』
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ブラックホ-ク・ダウン: アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (上) (ハヤカワ文庫 NF 264)
栁澤寿男『バルカンから響け!歓喜の歌』
ユーゴスラビア紛争の爪痕はいまだ消えず、今もなお残る民族対立。
かつて「ヨーロッパの火薬庫」と呼はれたバルカン半島でひとりの日本人指揮者か立ち上がった!
対立する民族を一堂に集めた奇跡のオーケストラ「バルカン室内管弦楽団」が世界中の人々の心に響かせる交響曲第9番『歓喜の歌』
平和・民族共栄への祈り、今あなたの胸に届け!晋遊舎、栁澤寿男『バルカンから響け!歓喜の歌』帯より
さて、いきなりこう申し上げるのもお恥ずかしいのですが、私はこの本を読んでいて感極まってしまいました・・・
これまでボスニア紛争やルワンダ・ジェノサイドなどについての本を紹介してきましたが、本を読み、記事を書くのも本当に辛い日々でした。あまりの悲惨さ、救いのなさに正直苦しくてどうしようもなくなってしまっていた自分がいました。
ですが、この本には救いがあります。悲惨な憎しみの世界にあって音楽の力で平和と希望を蘇らせるのだという強いメッセージが伝わってきます。
この本ではまず、著者がマケドニアで受けたバルカンの洗礼と挫折が語られ、そこからいかに立ち上がり、「バルカン室内管弦楽団」が成功していったかを私達は目の当たりにすることになります。
紛争後の複雑な政治情勢や荒廃したインフラ、民族感情など、著者の語る苦労は並々ではありません。
ですがそんな中でも音楽の力を信じ突き進み、奇跡を起こしたこの物語には本当に痺れました・・・!
YouTubeでも栁澤寿男氏の活動やこの本で書かれていたことを見ることができます。
以下にそちらをご紹介しますが、ぜひ本と合わせてこちらも見て頂けたらなと思います。
次の映像ではボスニアの映像もたくさんあります。ボスニアの今を知る上でもとても貴重な映像です。
この本には希望があります。絶望的な紛争が起きたバルカンが立ち上がりつつあるのだということを知ることができます。
思い返せば、私も2019年にボスニアを訪れています。その時にお世話になった現地ガイドのミルザさん、松井さんもこう仰られていました。
「ボスニアはたしかに悲惨な紛争が起こりました。今でも多くの人が苦しんでいます。ですが、ボスニアは魅力的な国です。優れた文化があり、素晴らしい景色もたくさんあります。ボスニアは復興が進んでいます。ぜひたくさんの方にこの国の魅力が伝わってくれたらなと思います。紛争の暗い側面を学ぶことももちろん大切なことですが、ぜひボスニアの素晴らしさも紹介して頂けらなと思います。」
紛争のことを学んでいるとどうしても苦しくなっていきます。ましてやそうした内容の記事だけを紹介した場合、ボスニアという国が「怖くて重い国」というイメージになってしまいます。ですが、現地の方はその苦しさを抱えつつも復興のため日々を生きています。
暗い側面だけでなく、希望や明るい側面も大切だと心の底から思います。
非常におすすめな1冊です。ぜひ多くの方に読んで頂きたい1冊です。
バルカンに平和と希望を!栁澤寿男『バルカンから響け!歓喜の歌』
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おわりに
上に紹介した本の中でも、旅に出る前に私が読んだのは 『戦火のサラエボ100年史「民族浄化」もう一つの真実』、『ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争』、『ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992-1995 』 の3冊だけです。
他の本は帰国後、あるいは『アイダよ。何処へ?』をきっかけに最近読み始めた本ばかりです。特にルワンダとソマリアに関してはほとんど何も知りませんでした。ですがこれらの本を読んでいてボスニア、ルワンダ、ソマリアのそれぞれが特異で異常なのではなく、人間の本質としてそういうことが起こり得る、誰しもがやってしまいかねないものを持っているのだということを改めて思い知らされることになりました。
このタイミングでまたボスニア紛争を学び直すことができたのは私にとっても大きなものになりました。
そしてこれから紹介していく記事の中でもお話ししていきますが、実はこの民族と宗教間の殺戮の問題はドストエフスキーとも絡んできます。ドストエフスキーは悲惨な虐殺について『カラマーゾフの兄弟』の中で語っており、そこにおいて語られる神の問題はまさしくこれらの出来事と関わってきます。私がボスニア紛争をもっと学びたいと思ったのもこうしたことが背景にあります。ドストエフスキーが語っていたことが現実に起きている。そしてそれに対して自分はどう思うのか。そうしたことを考えながらも皆さんと一緒に学んでいけたらなと思います。
以上、「ボスニア紛争を学ぶためのおすすめ参考書を紹介~『アイダよ、何処へ?』をもっと知るために~」でした。
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