ドストエフスキーとロシア正教を学ぶならこの1冊!高橋保行『ギリシャ正教』

ドストエフスキーとキリスト教

本日は講談社出版の高橋保行『ギリシャ正教』をご紹介します。

著者の高橋保行は1948年に東京で生まれ、1972年にニューヨーク聖ウラジミル神科大学院を卒業、1974年に日本ハリストス正教会の司祭に叙任され、ロシア正教に関する多数の著作を執筆しています。

この本の特徴はロシア正教とドストエフスキーについて詳しい解説がなされている点にあります。

この本を読んで私はとても驚きました。キリスト教といえば無意識にローマカトリックやプロテスタントのことを考えていましたが、ロシア正教はそれらとはかなり異なった教えや文化を持っているということをこの本によって知りました。

そもそもロシア正教とは何なのか。

カトリックやプロテスタントと何が違うのか。

それらがこの著書に詳しく書かれています。

ラファエロ『聖体の論議』 筆者撮影

さて、ローマカトリックとロシア正教の違いを端的に感じるには目で見るのが1番です。

こちらはローマカトリックの大本山バチカンにあるラファエロ作『聖体の論議』という作品です。

1500年代のカトリック全盛期、ラファエロだけではなくミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの偉大な天才たちによるキリスト教芸術が花開いた時代の作品です。

カトリックはこのように、見るものをうっとりさせるような芸術によって信仰を伝えようとします。

イスタンブール、アヤソフィアのイコン 筆者撮影

それに対してロシア正教ではこの写真のように、かなり違ったスタイルで描かれます。

もちろん、アヤソフィアのこの絵(イコン)はラファエロの時代から500年以上も先立つ絵ではあります。

しかしロシア正教では今でもこのような絵のスタイルを守り続けています。

イスタンブールと平安京~意外な共通点 釈隆弘の世界一周記―トルコ編④の記事でも少しお話ししましたが、ローマ帝国は4世紀に首都をローマからイスタンブールへと移しました。

そして同時期にキリスト教がローマ帝国の国教となり、教会の中心もイスタンブールへと移されました。

それによって教会の総本山はイスタンブールにあることになり、ローマはあくまで支部のひとつという形で存続することになりました。

しかし、時代を経てイスタンブールを中心とする教会と、元々あったローマの教会が仲違いし分裂することになります。

それがローマカトリックとイスタンブールのギリシャ正教なのです、

私たちはローマカトリックはキリスト教のはじめからずっと存在し、ずっと主流派だったと考えてしまいがちですが、ギリシャ正教の側からすれば、カトリックは分裂していった宗派であるという見方になります。

昔からの伝統を守り続けているのはギリシャ正教であるというのが彼らの立場であります。

そしてそのギリシャ正教の教えを忠実に継承しているのがロシア正教であるということがこの本で解説されています。

ざっくりと考えるならば、ギリシャ正教とロシア正教の関係はほとんどイコールの関係と考えてもよさそうです。ややこしい問題ですが書名が『ギリシャ正教』とされている所以はここにあります。

この本はギリシャ正教とは何かということをテーマにした本ではありますが、その中のかなりの分量をドストエフスキーとの関連で述べています。

ドストエフスキーが誤解されて世の中に伝わっているとすれば、それはロシア正教の教義が理解されていないからではないかというのが著者の問題提起であります。

カトリックやプロテスタントとはかなり違った思想がロシア正教にはあります。

この本ではキリスト教という大きな枠で一括りしてドストエフスキーを見てしまうと見落としてしまうものがあることを気づかせてくれます。

よくよく考えれば、たしかにそうです。日本だって仏教すべてで一括りにしてしまったら見えてこないものがたくさん出てきます。仏教といっても宗派もたくさんあり、それぞれの思想はまったく異なります。

大きくひとまとめにしてしまうことはシンプルでわかりやすくて楽なのですが、その危うさというものを教えられた本であります。

読んでみると、かなり意外な発見が出てくると思います。とても興味深い内容となっています。

ドストエフスキーとキリスト教をさらに深く学びたい方には非常におすすめです。

以上、高橋保行『ギリシャ正教』でした。

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