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【アルメニア旅行記】(23)アルメニア・マトサヴァンク修道院の圧倒的な廃墟感!時が止まった姿に言葉を失う
アルメニア滞在二日目。
この日は朝から山道を走り、マトサヴァンク修道院を目指す。
この山道がものすごかった。まったく整備されていない。穴ぼこを避けながら蛇行運転していくしかない。時速10キロほどのスピードでしか進めない。
とにかく揺れる揺れる。そしてかなり山奥まで入っていく。
おいおい、大丈夫なのだろうか・・・これからこんなとこを2時間も歩くというのか・・・
つい軽い気持ちでここまで来てしまったが、こんなつもりではなかったんだけどなぁ・・・まさしく「水曜どうでしょう」の気分である。
この山専門のガイドの後ろに付きいざ登山開始。
思っていたより坂がきつい。そして暑い・・・。これは骨が折れそうだ。
そして10分ほど歩くとジュフタク修道院に到着した。こちらも現役の修道院。
私たちが着いた時、ちょうど礼拝の時間だったようでお祈りの声が聞こえてきた。
神父と20人ほどの信徒がいるのが外から見えた。
それにしても建物そのものは完全に時が止まったかのよう。そしてそこに現代人がぽつんといる感じ。どうも時間のつながりを感じられない。これはアルメニアに来てずっと感じている違和感だ。あまりに異質すぎて私の理解が追い付かない。
さぁこれからいよいよ本格的に山道の始まりである。ここから1時間半近く歩くとのこと。
ガイド兼通訳の女性とドライバーもこの道中にはかなり苦戦していた。ところどころ川も渡らなければならない。水曜どうでしょうのジャングルを思い出す。彼らを思い出すと不思議と笑えてきて元気が出てくる。「何でこんなとこまで来てこんなことしてるんだろう」と自分を笑いたくなる。
へとへとになりながらようやく到着。歩くペースが少し早かったからかジュフタク修道院からは1時間少々で着くことができた。
木々の間から修道院がぬおっと視界に入って来た時の嬉しさたるや!
苦労した分余計にありがたさを感じる。
こちらがマトサヴァンク修道院。13世紀に建てられたそうで、その外観はまさに廃墟そのもの。そして屋根には草がびっしりと生い茂っている。今にも崩れ落ちそうだ。日本ならば歴史遺産として整備をするだろうがここはアルメニアの奥地。そういうわけにもいかないのだろう。
錆びた金網のドアを開けて中に入る。このドアがいかにも廃墟の雰囲気を醸し出している。
おぉ、これは・・・!
言葉が出てこない・・・ただ圧倒される感覚。「うわぁ・・・」としか言えない。恥ずかしながらこれしかない。
頭上から差し込む光がなんと神々しいことか・・・!
完璧なまでの廃墟感。完全に時間が止まっている。異世界としか言いようがない。日常の時間から完全に切り離された空間だ。
そしてこの苔の緑が素晴らしい。きっと天井から雨水がここに落ちてくるのだろう。上の写真でも石の隙間から木が生えているのが見える。人の手が入らない建物がどんどん緑に侵食されていく姿をまざまざと見せつけられる。
人間のはかなさ、時の流れを感じる。かつてここで祈りが捧げられていた。しかしいつしかその人々は消え去っていった。そして残ったのはそこで時が止まったかのような廃墟のみ。だがそれも徐々に自然に帰っていく・・・。
これほど「時」を感じさせる建物も珍しい。
世界中にこれより古い教会や修道院はそれこそ無数にある。
しかしそれらは今も祈りの場として使われたり観光地として賑わっている。言うならば「過去から今につながっている」 存在だ。当然、時代に合わせて改修したり、内装や装飾も変わっている。つまり教会そのものは古くとも「今の私たちと共に生きている」存在だ。そして私たちはそれを無意識に感じる。
しかしこのマトサヴァンクはどうだろう。ここから過去から現在への時のつながりを感じられるだろうか。マトサヴァンクだけではない。これまで回ってきたアルメニアの教会すべてにこれは言える。私はどうしてもアルメニアの教会に過去と現在のつながりを見出せない。時が止まった教会と現代人の存在がどうしても噛み合わないのだ。私はそこに強烈な違和感を感じた。
このことについては後の記事で改めてお話ししていくが、この違和感が私を困惑させた。
過去と現在のつながりが見えないが故にかえって「時」の存在を感じさせるという稀有な例がこのマトサヴァンクではないだろうか。
はるばるここまでやってきて本当によかった。
そしてこの修道院から帰り道、私は意外なことを聞くことになった。
なんと、この山のガイドは以前日本人の研究者をここに案内したとのこと!
もしかして、あの篠野志郎氏のことではないだろうか!私がアルメニアに来たいと思ったのは篠野先生の本 を読んだからこそだ。
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帰り際の話ですぐに別の方向に流れてしまったので篠野先生かどうかは確かめることはできなかったがこれは嬉しいことを聞くことができた。仮に篠野先生ではなくとも日本人研究者と同じように私もここを歩くことができたのならば嬉しいことだ。
体力的にかなりハードな一日であったが、実に有意義なアルメニア滞在2日目であった。
続く
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